ジャスレイが
そして、議題は次から次へと変わり幾つ目かのそれへ。
「では、後はある男の処遇を決めておきましょう」
それが誰であるのか、リアリナはじめこの部屋の中にいるもので知らない者は無い人物だ。
ブブリオはそう言うなり
「入ってきてくれ」
と、入り口にむかって言う。
ガチャリ…とドアが開くと、そこには彼を連れて来たのだろう一礼する女性と、居並ぶ面々と同じタントテンポ六幹部の一人、ロザーリオ・レオーネの姿があった。
尤も、彼は縛り上げられた状態ではあるが。
「ブブリオ…テメェ…」
それに驚いたのは他の六幹部達だった。
「ロザーリオ!?ブブリオ、彼が一体何を?」
「それについては、お嬢…いや、頭目の口から聞かせてもらったほうが早いだろう」
問いかける幹部に、ジャンマルコが返す。
そして、次々と明るみになるロザーリオの黒い所業。
曰く、今回のダディ暗殺の首謀者は彼である。
曰く、自身の罪をジャンマルコに着せようとした。
曰く、それを察したリアリナ嬢に危害を加えようとした。
「更には我々に内密でガンダムフレームまで隠し持っていたうえ、数々の文書偽造。もはや言い逃れは出来ないかと」
最後にブブリオがそう付け加える。
「テメェ!!よくも抜け抜けと!!」
床に転がされながらもロザーリオが吠える。
「最初っからオレを売るつもりだったんだろうが!!」
「ロザーリオ、私は何もしてはいないさ」
一転、ブブリオは極めて落ち着いた様子だ。
「私はただ、キミに先代の遺産整理の仕事を預けた。私がしたのは本当にそれだけだろう?仮に私がキミをハメるつもりだったとして…そのために手を回していたとして…」
ゆっくりと、歩み寄りながらブブリオはロザーリオを見下ろす。
「以前のキミなら、あっさりと見抜けたはずだが?」
「ぐっ…」
ロザーリオは思うところがあったのか、ブブリオから顔を逸らす。
「…今あるのはキミがタントテンポに背信行為を行っていたと言う事実、ただそれだけだ。そして、それを裁けるのは…」
ブブリオは顔を上げ、リアリナを見遣り
「彼女だけだろう」
そう、静かに言う。
「ロザーリオ…キミは、何をそんなに焦っていた?組織内でのこれまでの功績で見ても、実力的にも、そして、お嬢様に後を継がせたがらなかったダディの性格を鑑みても…」
一拍置いて、告げる。
「あのまま順当にいくなら、何もせずとも次期頭目は他ならぬキミだったはずだ」
「ハッ!!どうだかなぁ!?」
「なに?」
「元々先代は外部の人間をひいきするような男だ。普段から酒が入る度にまず出てくるのはそこの男のことだ」
そう言うなり、ロザーリオはジャスレイを睨む。
「………それで?それがダディ・テッド暗殺に何の関係がある?」
「決まってんだろ!?このままじゃあタントテンポはタントテンポじゃあ無くなっちまう!!そしてコイツの影響をタントテンポから完全に無くすにゃあ、内部の派閥を一新するっきゃねぇ!!元々ジャスレイ派の連中は、ダディ・テッドが半分容認する形で存在できてたようなもんだ。だが、奴らの影響力はオレの想定を大きく越えてやがった。だが、当のダディ・テッドは涼しい顔で『実害もねぇし放っとけ』の一転張りだ!!危機感を感じるなって方が無茶だろうが!!」
つまりは自分がつくはずの地位が、ジャスレイに脅かされることを危惧してのことだったようだ。
これはロザーリオ自身が野心家であり、尚且つ人並み以上の才覚を有するが故に、ジャスレイの地位や能力で出来ることを想像してその範囲の広さ、影響力の大きさを考えて、ゆくゆくは自分の席が無くなることを恐れての暴走だったのだと言う。
「ロザーリオ」
「…なんだよ?」
声をかけるリアリナに、ロザーリオはふてぶてしくそう答える。
自身は彼女にとって親の仇であるし、恨まれているのは分かりきっている。
今更猫を被ったところで処断は変わらない。
ある意味で、今のロザーリオは無敵の状態だった。
「計画を進めるうえで誰か、貴方の協力者はいた?」
その言葉に、ロザーリオは目つきを鋭くした。
□□□□□□□□
オレの知らないところでオレの派閥が作られてた件。
え、なにそれこわい。って言うか初耳なんですけど。
別になんか特別なことしたつもりは無いんだけど。
強いて言うなら…。う〜〜〜ん……。
タントテンポに寄る度に仕事終わりに希望者の社員くん達と連れ立って色々出かけたりしてただけなんだけど。
あと仕事とか家庭の愚痴聞いてただけなんだけど。
あ〜、あとちょっと何人か子供が誕生日近いってんで、幾らか出したような〜…。
うん?
オレは考えに耽っていると、窓から何かキラリと光る何かを見つける。
アレは…!!
「アルジ!!ヴォルコ!!リアリナのそばを離れんな!!ロザーリオ!!オメェは姿勢を出来るだけ低くしてろ!!」
スナイパーのスコープだ!!
「口封じかクソっ!!」
気がつけばオレは、床に転がるロザーリオめがけ駆け出していた。
波乱の予感…。