どの道○される男   作:ガラクタ山のヌシ

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今回は月鋼のとある人物が出てきますよー。


第39話

 

発端は、その日の朝のニュース番組だった。

 

ある者はコーヒーを淹れ、ある者は目玉焼きを作り、またある者は二度寝の背徳に身を委ねるそんな時間帯に、それは起きた。

 

「それでは、次のニュースです」

 

整えられた濃紺の髪の毛と、品の良さそうなスーツ姿の若い男性アナウンサーが次のニュースを読み上げようと用紙をめくる。

と、同時に画面外からそのアナウンサーに一枚の紙を手渡される。

どうやら速報が入ったようだ。

 

「えっ……………」

 

それを見た途端にアナウンサーはフリーズ。

その間、およそ三十秒の硬直。

 

「えっ?ちょっコレっ…マジですか?」

 

その言葉に、先ほどの速報が印刷されているのだろう紙をスタッフが回し読みをして、スタジオ内にはざわめきが起こる。

 

「嫌ですよ!!絶対ひんしゅく買う!!」

 

何故かアナウンサーはそれを読みたがらない。

 

しばらく画面には花畑の映像が流れ、その裏で

 

「へ?…読まなきゃクビ?」

 

という台詞が流れたのはきっと偶然では無いだろう。

 

放送局からの勧告に観念したのか、アナウンサーは恐る恐ると言った風に切り出す。

どこかげっそりとやつれた様子だが、気にしない方が当人のためだろう。

 

「え〜…先ほどは大変失礼致しました。それでは速報…です。先日未明…月を訪れていた…木星圏の一大企業『テイワズ』傘下『JPTトラスト』代表を務める実業家ジャスレイ・ドノミコルス氏が…」

 

わなわなと震えながら少しずつ、少しずつ読み上げる。

いたずらに問題を先延ばしにするかのように。

しかし、読み上げている以上、いつかは核心部に触れる。触れてしまう。

 

「何者かに、襲撃…されたとのこと…」

 

止まったような、凍りついたような時間が一分…二分と流れる。

そして、三分もせず放送局にはひっきりなしに問い合わせの電話がかかり、それは一日中鳴り止まなかったらしい。

 

なお、同じようなことが他のニュース番組でも頻発したとか、しなかったとか。

 

その確認は、当然ジャスレイ本人にも向くことに。

 

「それで…オメェ自身は無事なんだな?」

 

心なしか、その声は硬い。

 

「オウ、ピンピンしてらぁ」

「そうか…」

 

いつもと変わらないその言葉に、普段からは考えられないほどの安堵が感じられる。

 

「オヤジ、心配かけてすまねぇ…」

「まったくだ。オメェは相変わらず無茶ばっかしやがってからに…」

「ハハ…返す言葉もねぇよ」

「しばらくはオメェの分のカンノーリは取っとかねぇからな」

「マジかよ!?」

 

通信の相手はマクマード・バリストンはじめ

 

「アニキ!!ご無事ですかい!?」

「今からアニキを撃った野郎を特定して、カチコミましょうや!!」

「戦争じゃあああ!!」

「いや、それにゃぁおよばねぇよ。だが、心配そうにしてくれてありがとうな」

「アニキィィィィ!!」

 

各企業代表や幹部一同

 

「ジャスレイさん!!撃たれたって…」

「ウチの子の名付け親が名付けてすぐに死ぬなんてやめてくださいよホント!!」

「まだ何の恩も返せて無いんですから…」

 

世話をした各企業の社員達にまで及び、確認の通信だけで三日を要するという事態に。

 

「ったく…こんなオッサンひとりそんな心配かねぇ?いや、心配してもらえんのはありがてぇけどよ…」

「ジャスレイさん…またそんなこと言って…」

「おうサンポ。世話かけるなぁ」

 

通信を終えると、コーヒーを持ってきてくれたサンポ・ハクリに礼を言う。

 

「すまねぇな。小間使いみてぇな真似させちまってよ」

「いえ、自分から名乗り出ましたから…」

 

ジャスレイは今、大事をとって取り敢えずロザーリオが我にかえるまでの間はホテルの一室から出ないようにとタントテンポ側に懇願されたのだ。

必然的に関われる人間も限定されてしまう。

サンポがコーヒーを淹れていたのもそれが理由だ。

 

「ボーナスは期待してろよな?」

「ハハ…お手柔らかにお願いしますよ」

「アタシのコーヒーは〜?」

「自分で淹れろ」

 

にべもない兄のセリフにユハナはぶーたれる。

 

「ちぇ〜ケチぃ〜」

 

なお、鉄華団の二人は現在、腕利き数名と入り口付近の警備を固めていたのだった。

 

□□□□□□□□

 

まぁ大事な話自体はもう纏まってるし、阻止する理由も無くなった今、主犯さえ捕まればなんとかなるかなぁ…。

 

「ま、気長に待とうや」

「あら、それには及ばないわよ?」

 

うおう!!ゾクっとしたぁ!!

 

「っ!!」

「アンタどこから…」

「お久しぶり。ジャスレイ・ドノミコルス」

 

げっ…やっかいなのが…。

 

「オメェ…まぁた小遣い稼ぎしてんのか」

「ええ。わたしにも目的があるから」

 

ナナオちゃんかぁ…。

神出鬼没すぎて心臓に悪いんだよなぁ…。

 

「ジャスレイさん、お知り合いで?」

「おう。コイツはナナオ・ナロリナ。まぁ本名かどうかは怪しいが…少なくともこの辺じゃあそう名乗ってるんだと。知り合いっつうか…昔ちょいとな」

 

あんま思い出したく無いんだよなぁ…。

 

「え?なに?オジサンの昔の女?」

「そんないいモンじゃあねぇよ」

「そうねぇ…わたしはフリーランスの()()()兼情報屋。今はタントテンポのブブリオ・インシンナに世話になってるわ」

「そんで?何の用で来たんだ?生憎と茶は出せねぇぞ?」

「ええ。わたしとしても長居する気は無いから気にしなくてもいいわ」

 

ああ〜よかった…。

 

「今回の件のもう一人の主犯の情報…幾らで買う?」

「…なるほど」

 

そりゃあ…興味深いねぇ。

 




ナナオさん登場回でした。

次回からお話が動く…はず。

まち○ドまぞく…急にホラーテイストになるのやめれ。
面白いけど。

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