どの道○される男   作:ガラクタ山のヌシ

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筆が乗ったのでできました。


第4話

ジャスレイ・ドノミコルスという男の前半生は波瀾万丈に満ち満ちている。

彼は元々どこにでもいる浮浪児だった。

外見も赤みがかった茶髪にグレーの瞳とよくある風貌で、ついでにケツアゴでもある。

技量の方も近距離での早撃ちこそ目を見張るものがあるが、モビルスーツのパイロットとしてはてんでダメなうえ、元々は凡人に毛が生えた程度しかなかった指揮能力も今でこそ低くは無いとはいえるものの、それなりの経験によって裏打ちされていることを加味しても一流半程度と言わざるを得ず、少なくとも一流とは言えないだろう。

しかし、確かな仁義とその場その場でただならぬリーダーシップを発揮し、組織と組織の間を取り持つ上では人並み以上の才を持つ男だった。

彼の部下の中にはそれこそ、幼い頃に拾われヒューマンデブリにならなくて済んだという人間も一人や二人ではない。

「こんなゴミみてぇなオレらをオヤジは拾い上げてくれたんだ」

そう言う彼の部下たちの言葉は紛れも無い本心だろう。

忠義が重いなぁ…。なんてジャスレイは思っているだろうが。

そんなジャスレイは今、和服を纏った大男…テイワズのトップであるマクマード・バリストンの前に居る。

「オウオヤジ、話ってぇのはなんだい?」

夕陽が照らす執務室にはジャスレイとマクマードの二人きりだ。

「来たかジャスレイ。ま、掛けな」

促されるままソファに腰掛け、帽子を脇に置くジャスレイ。

「ちっと待ってろ」

そう言って、マクマードは奥からカンノーリとエスプレッソを持ってくる。

「お、カンノーリ。いいのかい?それいいヤツだろ?オヤジのお気に入りの店の、一日限定何個だったかの」

箱を見ると植物と横向きの人の顔を象った何かのエンブレムが刻まれた高級店のそれだ。

少なくとも一般家庭の子供の小遣いで毎日買えるような代物ではない。

「構わんさ。お前さんならな」

そう言うと目の前のソファに腰掛け、マクマードはコーヒーを啜る。

「…調子は、どうだ?」

話題は、マクマードから切り出す。

「おぅ、おかげさまで稼げてるさ」

「…貯めてるか?お前さんはすぐに散財するからな」

「ハッハッハ!!名瀬んとこのメリビットにもおんなじこと指摘されたよ」

そう答えるや、ジャスレイはカンノーリを一つ頬張る。

「ったく…食い意地は昔っから変わんねぇなぁ」

マクマードはため息をひとつつく。

「やっぱうめぇなコレ」

マクマードは脇に置かれた帽子にチラリと目を向けて言う。

「しっかし、その帽子も随分長いこと被ってるな」

帽子の草臥(くたび)れ具合は、まさしく堂々たる年季を感じさせる。

若かりしジャスレイの引き受けた中で、荒っぽい仕事も少なくなかったと言うのに、穴のひとつも空いていない。

それだけでも、これまで相当大事にされていたのが分かる。

「オウ、オヤジにもらったヤツだからな。オレの一番の宝モンさ」

ジャスレイがなんでも無いようにそう言うと、マクマードは表情をわずかに緩ませる。

「そうか……」

その一言に込められたのは、呆れか喜びか。

「それで、本題はなんだ?」

今度はジャスレイが話を振る。

「…やっぱわかるか?」

「そりゃあな。わざわざオッサン二人でお茶会なんぞガラでもねぇだろ。さしずめ、前に言ってたガキどものことか?」

つい先日、タービンズに喧嘩を売って実力を示し、見事その傘下に入ることとなった鉄華団。

その話題はテイワズの中でも広まっていた。

「はぁ〜…オメェはなんでそうも聡いかねぇ…」

「んなこたぁねぇさ。単に長い付き合いってだけだろ」

「で、どう思う?」

バレたのなら仕方ないと言わんばかりの潔さすら感じる単刀直入。

場の空気にも、独特の緊張が走る。

「鉄華団ってヤツらをテイワズの傘下に入れることがか?問題ねぇと思うぜ?しっかりもんの名瀬の下に入るんだろ?」

ジャスレイは気にせずカンノーリを食べ続ける。

「…連中、どこで拾って来たんだか、ガンダムフレームなんてモンも持ってやがった」

それにピタリとジャスレイの動きが止まる。

「骨董品…と呼ぶにゃ些か危険か」

ジャスレイにマクマードの懸念が伝わる。

数百年の昔に起きたと伝わる厄祭戦に於ける、人類最強の兵器。その逸話からも分かるように、万が一敵に回ると厄介この上ないだろう。

しかし同時に、作られたのは僅か七十二機しか無く、稼働も可能なものとなれば更に数は限られると言う貴重なモノでもある。

「まぁ、その監視も含めて名瀬の下に付けるんだがよ」

「なーんだよ。決定事項かよ」

ジャスレイが背もたれにもたれ掛かるとフカフカのソファがボスッと気の抜けた音を出す。

「スマンな」

謝罪の言葉を受けて、ズズッとコーヒーを啜るジャスレイは特に気にした風でも無い。

「ま、確かに連中の護衛対象のクーデリア・藍那・バーンスタインも含めて庇護下に加えるメリットはデカい。ここであのお嬢さんのご機嫌をとっとけば後で有利にもなろうさ」

「流石に耳が早いな。で…だ。まだ決まったわけじゃねぇが、ハーフメタルの利権がウチの担当になった暁にゃあ、その監督権の三割をお前さんに与えようと思う」

それは重い、とても重い信頼の言葉。

マクマードは組織の長だ。

そして、それはジャスレイも同様にそうだ。

故に、言葉は慎重に選ぶものだ。だが…。

「いやいいよ。今だけでも手一杯さ」

ジャスレイはあまりにもあっさりと即答した。

マクマードがその答えを聞いてか、場を支配していた張り詰めた空気がほどける。

「カマかけなくたっていいさオヤジ。オレはオレ自身の手のひらの大きさは理解してるさ」

そう真っ直ぐに見られると、警戒していたのも馬鹿馬鹿しくなったようで、今度は側から見ても安堵と分かるため息を吐く。

「ったく。出来のいい息子だよ」

「親の贔屓目ってヤツだと思うぜ?」

「抜かすようになったなぁ」

「で、いつにするんだ?」

「あん?」

「盃だよ」

それは、鉄華団が正式にテイワズ傘下に入るという儀式。

それが執り行われる日取りはテイワズに属する者には何を置いても重要なものだ。

「おう。明日だ」

「へ?」

「ま、オメェはオレの横で座ってりゃいいさ」

そう言うや、マクマードはガッハッハと高笑いを上げるのだった。

 

□□□□□□□□

 

え?マジで?ってことはちょっと待て。

鉄華団からすりゃあオレは自分の未来の兄貴分をアゴでこき使った悪もんってことになんない?

いやまぁ、確かにやろうと思えばできる立場だけどもさぁ?

それともオレの考え過ぎか?

い、今からでも好感度を上げる行動は…。

「オ、オヤジ?オレになんか手伝えることでも…」

「うん?別にねぇな」

オヤジはカンノーリを齧りながらそう答える。

そっかぁ無いかぁ。こんチクショウ!!

少しでも主人公勢力の好感度は上げときたい。

心象が悪いと話も聞いてもらえないって実感してるモン!!主に銃弾の嵐の中で!!

まぁ好感度を上げ過ぎて自滅したくもないけどさぁ。

それによくよく考えると前日にイベント内容を伝えるってことは事前準備も何から何まで終わってるってことじゃん!!

やっべー。

オレは落ち着くためカンノーリに手を伸ばし、食らう。

 

モグモグ…。

 

うめぇ〜〜……。

 

で〜、どーするかだけども〜〜………。

 

ん〜〜〜〜〜……。

 

ま、なんとかなるか!!




これからもマイペースにやっていきますねー。

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