どの道○される男   作:ガラクタ山のヌシ

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アスタロトオリジン…買えなかったですわ…。


第45話

「ここか」

「ええ」

 

ジャスレイは部下と短いやりとりをすると、スッとドアに軽く握った手を向ける。

コン…コン…。

ノックの音が室内に転がり込む。

 

「入ってくれ」

 

短くそう返す声に、ジャスレイは

 

「邪魔ぁするぜ?」

 

と言って入室する。

 

「オウ、目ェ覚ましたんだってな?」

「…………」

 

無言で返すのは、ロザーリオ・レオーネ。

ジャスレイに命を助けられたタントテンポ六幹部の一人。

心なしか、その眼光はだいぶ和らいでいるように思える。

 

「オレがここに来た要件は分かってんだろ?」

「まぁ…そうだな」

「そんじゃあ起き抜けに悪りぃが、改めて、オメェの知ってることを喋ってもらおうか?嫌だとは言わねぇよな?」

 

脅しをかける、と言うよりは念を押すような物言い。

それにロザーリオはハァと一息つくと

 

「…もともと、オレはあの時死んだようなモンだ。構いやしねぇさ」

 

そう返したロザーリオに、ジャスレイとその部下達が幾つかの尋問をした結果、襲撃時に得られた動機と、ナナオによってもたらされた情報とのすり合わせ、今回の件のおおよその実像が見えて来た。

そして、その報告と情報の共有のためにジャスレイが護衛を連れてタントテンポ新頭目に就任したばかりのリアリナを訪ねる。

だが…。

 

「リアリナ嬢?」

「…なによ?」

 

タントテンポ本部ビルの最上階、その最奥部の部屋にて、リアリナはむっす〜〜と不機嫌そうに細められた勝ち気な瞳がジャスレイを見据える。

まぁ、それも当たり前と言えば当たり前だろう。

何せ、やっとの思いで頭目になって、さあこれからだという第一歩からいきなりジャスレイにおんぶに抱っこだったのだ。

それに加えて、先ほどのラスタルとの通信も「こっからは大人の時間さ」と、あからさまな子供扱いを受け、自分では何も出来なかったのだ。

元より、リアリナ・モルガトンという少女は意外と言うべきかやはりと言うべきか人一倍気位が高い。

更に…。

 

「せっかくおじさまに恩を返せると思ったのに…」

 

と、気落ちしていたのも大きいだろう。

口には出さないが。

 

「そうむくれんなって」

「別にむくれてなんてないわよ…」

 

リアリナはそう答えるが、ぶーたれた表情でそう言っても説得力は無い。

こういうところは年相応というか、微笑ましいものがあり現にジャスレイもその対応に怒るよりも親戚の子どもを見守るように微笑んでいる。

尤も、両脇に控える二人…特にヴォルコは終始ヒヤヒヤしている様子ではあったが。

 

「まぁ、今回ばかりはしゃあねぇさ。まさかギャラルホルンも絡んできてるなんてよ」

 

ジャスレイは真面目な顔をしてフォローに入る。

正直言って、こればかりは今の彼女の手には負えないものだ。

それは当人の才能云々よりも経験がモノを言う事柄だからだ。

仮に、いきなりこの急場を凌ぐ案を示せるのならそれこそ天賦のものだ。

普通は持ち合わせていないし、彼女もその例には漏れなかったというだけのこと。

そもそも一人で、或いはたったの二、三人で何でもできるようなら部下も組織も端っから必要は無いのだ。

 

「ま、あとはこれからのことだな」

 

これからリアリナのすべきことはごまんとある。

各方面への挨拶回りに始まり、新たに雇用希望者が出て来れば、その把握と斡旋はもちろんのこと、管理職としての目を通すべき資料も少なくない。

また、ジャスレイが後ろ盾についているとは言え、その本人がいつまでも月にいられない以上、彼に頼らない幹部達との信頼関係の構築も欠かせない。パッとあげただけでもこれだけあるのは、以前ジャンマルコが言っていた通りのことだ。

 

「ま、無理のねぇ範囲で頑張んな。なんなら、オレのところからも頼れる部下を数人置いてくからよ」

「オジキは、これからどうすんだ?」

 

ジャンマルコがそう、問いかける。

 

「そうさなぁ…まずは鉄華団の二人を地球に届けて…」

「えっ?」

 

その言葉に、ライドは驚きの表情を浮かべると、焦るようにジャスレイに突っかかる。

 

「オジキ!?そんなこと聞いてねぇよ!?」

「うん?なにも不思議なこたぁねぇだろ。お前さんらの当初の仕事はオレを月まで護衛すること。それが済めば、地球で他の面々と合流するってのは当然のことだろ?」

「ライド、知らなかったのか?」

 

チャドも、驚いたようにそう言う。

 

「だけど…」

 

ここを離れがたいのか、言葉に詰まるライド。

その頭をポンポンと撫でながらジャスレイは言う。

 

「ま、これで今生の別れって訳でもねぇ。それに、手土産はタントテンポに向けてだけじゃあねぇさ」

「え?」

 

部下に目配せすると、そのひとりがタブレットを持ってやってくる。

数度の操作の後、出て来たのはジャスレイの言っていた『手土産』だ。

 

「コレは…」

「おう。コレを届けてやって欲しいのさ。あの三日月ってヤツによ」

「三日月さんに?」

 

そう言うなり、ジャスレイは頷く。

 

「おう。きっと役に立つはずさ。これが、オレからお前さんらへの次の依頼さ。頼まれてくれるかい?」

「でも…」

「ライド、オジキの信頼を裏切るのか?」

 

チャドのその言葉にハッとすると、ライドはしばし目を泳がせ…。

意を決したように、自らの頬をパンパンと叩く。

 

「まっかせてよ!!オレ、頑張るからさ!!」

「おう。頼りにしてるぜ?」

 

満足げに頷くライドの頭を再びくしゃりと撫でるとジャスレイはリアリナに向き直り問いかける。

 

「リアリナ嬢…」

「なによ?」

「お前さんの親父…テッド・モルガトンの背中はデケェぞ?恐らく、お前さんの考えてる以上にな」

「……分かってるわよ」

 

親を誉められた嬉しさからか、或いはまだまだ未熟な己を恥じてか、リアリナは複雑な表情を浮かべる。

 

「長年ダチやってたオレが言うんだ。ま、信じるも信じねぇも自由だがな?」

 

そして、ジャスレイにはそれがとても懐かしくまた、眩しく見えたのだった。

 

□□□□□□□□

 

ふぅ…。とりあえず、これで月の件はひと段落ついた感じかねぇ。

 

問題は…思った以上に出費が嵩んだことだけど。

まぁ、今更オレのサイフはどうでもいいか!!

 

アレだから、どうせ忙しくって遊んでる余裕とか無いから。

 

全然個人的な買い物とか出来てないけど、気にしてないから。いいモノを長く使いたいってだけだから。

 

しばらくはまた安酒の日々よ…。

ヘヘッ…。

 




かち○ドまぞく、もんもかわええですなぁ。

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