どの道○される男   作:ガラクタ山のヌシ

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鉄華団視点。

多分初かな?

時系列はちょっと前です。


第46話

鉄華団の保有する強襲装甲艦イサリビ。

その船内の食堂にて、数名の若者達が休憩がてら話し込んでいた。

 

「そういやぁ…チャドとライドの二人、そろそろ帰ってくるんだっけか?」

 

そう言うのはノルバ・シノ。

鉄華団内でも比較的明るく、ムードメーカーのような立ち位置にいる。

なお、モビルワーカーの操縦も達者で、CGSの頃は三日月・オーガスに及ばずとも十分に参番組のエース格と言える実力者だ。

 

「あぁ、予定通りにことが運べばオレらが地球に着くのと同じくれぇで合流出来るはずだ」

 

淡々と返すのは昭弘・アルトランド。

寡黙で、多くを語らないタチではあるが、シノ、三日月の二人と同じく元CGS参番組エースであり、現在ジャスレイのところで世話になっているチャドと同じくヒューマンデブリ…要はカネで安く売り買いされる人間ではない道具として消耗品の扱いを受けていた。

 

「しっかし…あのオッサン、信用していいもんかねぇ…」

 

スプーンを片手に持ち、机に肘をついてそう疑念を口にするのはユージン・セブンスターク。

基本的な能力こそ高いものの思慮に欠け、鉄華団現団長であるオルガに意見することも多い。

 

「名瀬のアニキが心配ねぇって言ってたんなら、大丈夫なんじゃあねぇの?」

「いやぁ、実際わっかんねぇだろ?案外アゴでこき使われてるかも…」

 

机に身を乗り出してそんな事を言うユージンだが、それも無理もないことだ。

何せ、彼の知っている大人と言えば、CGS時代の自分達を常日頃イライラの避け口にした挙げ句に見捨てようとした最低の連中でほぼ固定されてしまっているのだ。

急に例外的な大人がやって来たから態度を改めろと言う方が無茶な話だ。

 

「そういやぁ、三日月のヤツはあのオッサンと話したんだよなぁ?」

 

シノが思い出したように、この場にいないもうひとりの仲間の名前を出す。

 

「そうだったっけかぁ?」

「ほら、オレらがテイワズの傘下に入った儀式のあとの。あの宴の時の…」

「あぁ〜!!あの帽子の…全っっ然偉そうに見えなかった…」

「なら、なおのこと怪しいよなぁ〜…案外、今の地位もカネで買ったもんだったりして…」

 

ユージンがそういうと

 

「……あんまり憶測でモノを語らねぇ方がいい。年少組連中が鵜呑みにしてデマが広がれば、せっかく仕事を紹介してくれた名瀬のアニキにも迷惑をかけることになる」

 

たしなめるように、静かに昭弘はそう言う。

 

「うっ…だけどよぉ…」

 

図星をつかれたのか、ユージンが言い淀んだちょうどそのタイミングで、彼らの団長から声がかかる。

 

「お前らぁ!!メシ休憩そろそろ終わんぞ〜!!」

「わぁってるよ〜!!」

「さ〜て、仕事仕事〜♪」

「…………」

 

その後すぐに三人は食堂を出て行った。

 

「ったく…アイツら…」

 

入れ替わりに食堂に入るオルガとビスケット。

 

「でも、あの三人の懸念は尤もだと思うよ?」

 

「よいしょっ…」と、オルガの向かいの席に着くなり、そう言うビスケット。

 

「ビスケット…」

 

そのことには、オルガ自身思うところはあった。

鉄華団は現状、オルガを中心によくまとまっている。

それ自体はとてもいいことだ。

しかし、それは裏を返せばオルガ一人にかかる負担がかなり大きいと言うことでもある。

鉄華団の現状は良くも悪くも、一枚岩といえる。

しかし、内務面…鉄華団のサイフはCGS時代の会計士デクスターと、彼から学んでいるビスケット、そして助っ人で外部からやって来たメリビットでどうにかと言ったところだ。

実際、ここ数ヶ月でオルガは鉄華団に足りないものが何なのか、薄々とだが見えてはいた。

しかし、自身の学の無さからどうしたらいいのか分からなかった。

勢いに任せて一足飛びにたまたま成功を収めたところで結局後から飛ばした分の埋め合わせはしなければならない。

今回の依頼はかなりの千載一遇だったから飛びついたが、オルガの目の前に座るビスケットはそもそもこの仕事を受けることも最初は渋っていたくらいだ。

 

「せめて、ジャスレイさんのところに向かってくれたあの二人がちょっとでも学をつけてくれればねぇ…」

 

食事をしつつも、ビスケットは考えを巡らせる。

 

「どうだろうなぁ…。そんなことしたって少なくともあっちにゃあメリットはねぇだろ?」

「あはは…全く無い訳じゃあ無いと思うけど…」

 

ビスケット、そしてオルガから見ても、決して少なくない金銭援助をしてくれた以上、感謝しているし、信じたいと思う気持ちはある。

そして、それを分かっているからか、鉄華団内部にもジャスレイに対して露骨に悪感情を抱く者はそうは居ない。

だが、そうでない者達も居ないわけではないのだ。

 

「だが…」

「なに?」

 

急に真剣味を帯びるオルガの言葉に、ビスケットは苦笑を止めて視線をそちらに向ける。

 

「もし、オレの家族も同然の鉄華団団員をこき使おうってんならそん時は…」

「…オルガ」

 

短くそう呼ぶビスケットの声に、オルガはハッとする。

 

「悪リィ…」

「まぁ、まずは信じようよ。ジャスレイさんとあの二人をさ」

「…そうだな」

 

ジャスレイ襲撃のニュースが鉄華団のところに飛び込んできたのはその直後のことだった。




そう言えば、鉄華団から見たジャスおじを書いてなかったなぁと思い書いてみた所存。

齟齬があったら申し訳ない。

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