どの道○される男   作:ガラクタ山のヌシ

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いやぁ〜。遅くなって申し訳ない…。


第53話

動く。動く。

黄金の船が動く。

 

「カルタ様…」

「ええ…降下の準備をなさい!!」

 

それと同時に地球の衛星上のギャラルホルンの船内も騒がしくなる。

 

「しかし…カルタ様」

 

訝しむように、カルタの部下のひとりが声をかける。

 

「なによ?」

「何にせよ、相手はあの『買収屋』の関係者…ですよね?それが本当に何もしないで時間だけ稼ぐというのは…」

「確かに、何かしらの入れ知恵はあるかも…」

「なら、その入れ知恵ごと粉砕するまで!!ちょうど良い機会だ。ヤツの顔に泥を塗ってやるわ!!」

 

カルタはおもむろに立ち上がり、号令をかける。

 

「各員、出撃準備!!」

「はっ!!」

 

同時刻、地上にて鉄華団は着々とギャラルホルンを迎え撃つ罠を張り巡らせていた。

実戦経験のまるで無い、若者ばかりの正規軍部隊が何を頼るか?

それは教本だ。

無論、教本通りをそのまま馬鹿正直に使わずとも、せいぜいがちょっとしたアレンジを加える程度だろう。

実戦で場数を踏めないことのデメリットは恐らく当人達が思っている以上に危険なことだ。

何故ならそれは、教本の外のことにはてんで弱いということに他ならないからだ。

逆に鉄華団は学こそ無いものの、場数だけで言えばこの短期間でかなりの数と濃度をこなして来た。無論、どちらが欠けていても、或いは揃っていたとしても油断はできない。

元々ギャラルホルン側が優勢なのは鉄華団としても分かりきっていること。

だからこそ、その戦術もいくらか限定出来、一番に考えられるのは数に任せた包囲戦法。

こんな降って湧いたチャンスは恐らくしばらくは望めないのに加え、上からの評価のためにもあちらは明確な手柄が欲しいし、ギャラルホルン故の正義感にも疑いも無く執着する。

であるなら、彼らはまず確実な手を選ぶはず。

モビルスーツの相手はモビルスーツでしかできないのが常識と言われている昨今、バルバトスおよびグシオンリベイク二機のガンダムフレーム、そして流星号(ピンク色のグレイズ改弍)を含めた三機のモビルスーツと、幾らかのモビルワーカーを擁する鉄華団をモビルスーツの数の有利で押し潰すというのは当然の選択。

助っ人で所属不明機としている漏影もあるが、連携の関係上、出来るだけ分断しようとして来るだろう。

それらを鑑みても明らかに自分達が有利ならば、正面切って戦った方が連携に齟齬も出ないし、却ってやりやすい。

あわよくば訓練代わりにしようという算段もあるだろう。

しかし、前述のように鉄華団側にジャスレイの助言や援助もあるだろうことは明らか。

それが如何程のものか分からない以上、多少は慎重になる。

 

「そして、そう言う相手は得てしてこう言う絡め手に弱い…」

 

オルガとビスケットの二人とライド、チャドの策のすり合わせも出来た。

前者二人は今回の作戦の基礎部分を、後者二人はその確実性を増すための補強と、万一のための保険の部分を練りに練った。

 

「あちらは恐らく綺麗に勝ちたいはずです」

「うん。その方が彼らの名誉にも繋がるだろうしね」

 

ライドのその言葉にビスケットが頷く。

 

「戦いに綺麗も汚ねぇもねぇだろうによ…」

「それだけギャラルホルンという組織が世間ズレしているのか、或いは汚いものを隠されて生きて来た本当に良いとこの生まればかりのか…」

 

オルガが呆れ気味に言うなり、チャドが冷静に思考する。

生まれは環境と同様、性格に密接に関係している。

親に何でも買ってもらえた家庭の子どもは比較的わがままになりやすく、親に盗みを教えられた子どもが泥棒行為に罪悪感を覚えないようなもの。

そこから指揮官の性質を割り出せれば優位に戦闘を進めることも容易い。

いずれにせよ、鉄華団は油断も慢心も出来はしないのが現状。

それに、そうこうしている内に仕掛けは既に整った。

相手はただでさえジャスレイの存在を警戒している。

ジャスレイの黄金の船が見えなくなっても万に一つでも引き返してくる可能性がある以上、長期間にわたっての戦闘は避けたいはず。

それは裏を返せば、一度でも追い返すことができれば二度目の接触は難しいと言うことでもある。

そして、一度敵を追い返した後は、エドモントンへ向かって蒔苗氏を堂々と護衛する計画だ。

 

「指揮系統がやられるのが今後のことも見据えると一番痛い。モビルワーカー隊は出来るだけバラけて、団長とビスケットの位置を悟られないように」

 

通信でそう伝えられ、頷く鉄華団メンバー。

 

「あとは…あっちが作戦通りに動いてくれるか…モビルワーカー隊の誘導次第だな…」

「数の不利はあるとは言え、出鼻を挫ければ後はこっちのペースでやれるからね」

「それはいいけどよ…そんな綺麗に決まるモンかぁ?」

 

訝しげにユージンがそう言うも

 

「大丈夫さ。そのための話し合いも済んだんだから」

「……」

 

ビスケットがそう返すなり、沈黙する。

それはユージンを含めたCGS時代からの団員達の信頼故だろう。

 

「ユージン」

 

オルガはユージンに落ち着いた声で声をかける。

 

「な、なんだよ?」

 

答えるユージンの声は、少し固い。

 

「頼りにしてるぜ?」

「なっ…何だよ急に!?当ったりめぇだろ!?」

 

照れたのか、声が上ずるが先ほどまでの固さはなかった。

 

ギャラルホルンの艦隊が迫るのは、それから数時間の後のことだった。

 

□□□□□□□□

 

窓の外に地球が見える。

ギャラルホルンの船は見当たらないし、既に鉄華団への攻勢に入ったんだろう。

 

「オヤジ、どうしますか?」

「うん?」

「いえ、今ならまだ引き返せますが…」

 

部下の一人が問いかけて来る。

何やかんや、あの二人を可愛がってたからなぁ〜…。

う〜ん…とは言え、これ以上は明らかに過干渉だし、彼らの成長の妨げにもなりかねない。

相談しようにも、名瀬ニキは自分の船に戻ってったし、疲れたところに追い討ちするように通信を入れるのも酷だろうし…。

 

「いや、それよりも…」

「なんです?」

 

……はぁ、仕方ない。

 

「あの女に連絡を入れといてくれ」

 

念には念…ってほどでも無いけど、ダメ押しくらいはしとくかねぇ。




戦闘描写どないしよ…。

それと展開遅くて申し訳無い‥。

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