どの道○される男   作:ガラクタ山のヌシ

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ジャスレイサイドのお話しです。


第58話

『黄金のジャスレイ号』と共に、無事テイワズのお膝元『歳星』に到着したジャスレイは、襲撃の件で心配したのだろう人混みをかき分けて、早速マクマードに今回のことの一部始終の報告をおこなっていた。

 

「…とまぁ、以上が鉄華団連中の出した成果と、それに対してのオレの所感だな。まだまだ改善できる点も多く見られはしたが、それもおいおいやっていけば良いだろうよ」

 

マクマードは事務所でソファに腰掛けつつ向かい合うジャスレイからの報告を聞くや「ふむ…」と顎に手を当て、考える素振りを見せる。

テイワズの新入り組織たる鉄華団は腹心たるジャスレイ、そして名瀬・タービンから見ても比較的好印象。

そして、名瀬の意見を取り入れた育成計画。

未だに危なっかしさは残るし、それなりにジャスレイやタービンズの面々が手伝ったとは言え初仕事…それもかなりの高難度の仕事で成功という結果を残した。

これは控えめに言っても評価に値する内容だ。

 

「なるほどなぁ…」

 

資料を手にして考え込むマクマードに反し、ジャスレイは机に帽子を置いて皿の上のカンノーリを頬張る。

なお、これはジャスレイが自腹で買ったものだ。

なにせ、襲撃事件以来しばらくは取っておいてもらえないのだ。食べたくなったら自分で買うより他ない。

ただ、マクマードの分も買って来ているのは律儀と言うべきか。ご機嫌取りと言うべきか。

 

「それによ。オレとしても、必要以上に資金を出したつもりはねえよ?」

「オメェの()()()()は感覚が麻痺しそうで怖えからなぁ…」

「オイオイ…ちゃんと採算は取れる分までしか使っちゃあいねぇさ」

「そう言って、どうせオメェのポケットマネーからも幾らか出してんだろう?」

 

その言葉に、ジャスレイはギクリと少し硬直する。

 

「ハハハ…バレてら…」

 

ジャスレイは誤魔化すように笑うと口の中が甘くなったのを、コーヒーを飲んで調和させる。

 

「ったく…何度も言うがなぁ、ちったぁ貯金しろっての…」

「だがよ。このデータを見てくれや」

「どれどれ?」

 

マクマードは新たに取り出された数枚の書類をジャスレイの対面に座りつつ読む。

そこには、タントテンポを配下に置いた影響により得られるだろう利益の目算が細々と書かれていた。

 

「…なるほど。確かにこれなら問題はねぇか…」

「おう。分かってもらえたんなら何よりさ」

 

ジャスレイはそう言うなり、帽子を持ってソファを立つ。

 

「なんだ。もう行くのか?」

 

少し驚いた風に、ジャスレイにそう話しかけるマクマード。

 

「おう。なんせ長く家を開けたからな。ニナのヤツにも顔を見せてやりてぇしよ」

「そうか。なら早く行ってやれ」

 

マクマードはなるほど。と納得した様子で帰宅を促す。

 

「おう。そうさせてもらうさ」

 

そう言って扉のドアノブに手をかけたジャスレイが、思い出したように振り返る。

 

「ああ…それと…」

「…なんだ?」

 

振り向いたジャスレイはフッと真面目な表情をしており、マクマードもそれを察する。

 

「『夜明け』の連中が何やらきなくせぇ動きを見せてる。情報部から何人か探りを入れさせてもらえねぇか?」

「お前がそう言うならそうなんだろうなぁ…わかった。対処しよう」

 

その言葉を聞くなり、ジャスレイは安心した様子で部屋を後にした。

 

「ったく…あれで嫁がいりゃあなぁ…」

 

ボソリとそう零したマクマードは、ジャスレイが買って来た自分の分のカンノーリにかぶりついたのだった。

 

□□□□□□□□

 

さ〜て、オヤジに報告も済んだし、久しぶりの我が家だ。

数人の部下と車で移動し、家の敷地に入る。

家の玄関前で降ろしてもらい、待っていた部下に入口を開けてもらう。

 

「帰ったぞ〜」

「おかえりなさいませ、オヤジ」

 

ニナのこともあり、屋敷を任せることにした部下達数名が揃って頭を下げている。

 

「おう。ただいま」

 

いちいちやらなくって良いって言ってるんだけどなぁ…。

 

「じゃす!!」

「お嬢!!いきなり走ったら…」

 

たたたたた…と本を抱えたニナがやって来る。

お付きの部下は顔を青くしているが。

歩み寄って目で追うと、ボフッと足に抱きついて来る。

 

「おうおう。転んだら危ねぇぞ?」

「にな、お勉強してた。えらい?」

「そっか。偉いなぁ」

 

普段の寡黙な様子とは打って変わってお喋りさんだな。

しっかし、ここまでやんちゃな子だったか?

 

「それじゃあ、部屋で勉強の成果を見せてもらおうかな?」

「うん」

 

部屋まで歩いて行くと、部下は幾らかホッとした様子で部屋の前で警護に戻る。

 

「じゃす、しばらくおうちいる?」

「そのつもりだが」

 

なんせ、全然かまってあげられてなかったからなぁ。

流石に拾っといてこれはないよなぁ…。

部下たちが世話をしてくれているとはいえ、それだけじゃあ足りないだろうし…。

 

「それじゃあ、好きな本持って来な」

「……うん」

 

コクリと頷くと、世話役の部下に重かったり高いところの本を取ってもらったりして戻ってきた。

 

「ちゃんとお礼は言ったか?」

「うん」

「よし、いい子だ」

「ん…」

 

ったく…こうしてると最初の毒舌っぷりが嘘みたいだなぁ。

 

「それじゃ、今日は特別だ。夜まで起きていっしょにいるか?」

「……うん!!」

 

……可愛いなぁ。




次回、マクマードのオヤジに動きが…?

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