どの道○される男   作:ガラクタ山のヌシ

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久々の2日連投。

やっぱりちょっと緊張しちゃいますね。



第66話

「オイ坊や。こんなとこで寝てると体壊すぜ?」

 

圏外圏にあるとある街。

降りしきる雨の中、路地裏にあるゴミ捨て場で見るからに腹を空かせて倒れているボロボロの少年に、たまたま通りがかったのだろう傘を持った男が近寄って声をかける。

その少年は見たところ随分と痩せているし、身なりも綺麗とは言い難い。

家出したというわけでは無く、そもそもこの少年には帰る場所がないのだろう事は男には経験則で何となくだが分かった。

少年はガバリと起き上がると「ヴゥゥゥ〜〜…」と獣のように男を威嚇する。

男は一瞬驚いたような表情を浮かべると立ち止まり、何かを察したように優しく言う。

 

「わかるぜ。腹ァ減ってると気が立っちまうモンだよなぁ…」

「ヴゥゥ〜…」

 

未だ警戒をする少年に、男はどう言ったわけかポツリポツリと語りかける。

 

「まぁそれ自体はいいことさ。そんだけオメェが本能で必死に生きようって思ってるってことなんだからよ」

 

それは、意外にも肯定の言葉だった。

これまで否定され、拒絶され続けてきた少年に、その言葉は信じ難いものであると同時に……最もかけてほしい言葉でもあった。

 

「だがな。人として生きていくんなら、それを堪えなきゃあならねぇ時もあるってなモンさ。でなけりゃあ…オメェはその辺のケダモノ…野良犬と何ら変わりゃあしねぇぜ?」

 

知ったようなことを…と憤るよりも、厳しくも優しい助言が少年の心に染み入るようで…言われた当の本人も何が何やら分からないと言った風な様子だ。

だが、あいにく少年はそれ以外に生き方を知らない。

持たざる者同士で奪い奪われる日々。

それこそが少年にとっての日常だったのだから。

 

「オメェはこれまで飢えてきたんだろうさ。食いモンだけじゃあなく、それこそ色んなモンに…わかるよ。オレもそうだったからな」

「う…」

 

言うなり、男は改めて少年に近づき、傘を差し出す。

少年が恐る恐ると言った様子で傘を受け取ったのを確認すると、男はクルリと背を向ける。

ギャラルホルンのところに連れて行ったところでありふれた孤児の面倒をきちんと見てもらえるかは怪しい。

そもそもその辺がきっちりしているなら目の前の少年のような存在は今頃もっと減っているはずだ。

 

「ギャラルホルンに連れてってもラチはあかねぇだろうし…そうだなぁ…」

 

すこし考える素振りを見せると、男は

 

「何なら、着いて来てみるか?」

 

と、軽い感じで問いかけた。

意外な発言に少年は思わず身構える。

それが気に障ったと思ったのか、男は誤解を解くため言葉を続ける。

 

「別にオレの部下になれたぁ言わねぇよ。余計なお世話だってんならこれ以上オメェに関わることもしねぇとこの場で約束するさ。ただまぁ…メシを食いに行きたけりゃあ着いて来な。尤も…まずは身綺麗にしてもらわなきゃあならんがね」

 

それが、シクラーゼとジャスレイの初対面での出来事だった。

 

シクラーゼ・マイアーという男は、圏外圏の出身者であり、ラスタルとジャスレイの仲が良好だった頃にジャスレイの紹介という形でギャラルホルンに入隊すること…厳密にはギャラルホルンの士官学校の入学…を希望し、結果としてそれは叶えられた。

何故わざわざジャスレイがラスタルを通したのか、それは彼が当時からギャラルホルンでそれなりに地位があったことともう一つ事情があった。

それというのも、当時ギャラルホルンの士官学校の入学条件に『親族に入学者当人を含め前科者がいないこと』というものがあったためだ。

確かに治安を維持する組織に入らんとする人間の身内に犯罪者がいることが世間的にいい顔をされないのは分かる。

しかし現実問題として、未だ大人も子どもも生きるのに必死な世情もあり、結果として圏外圏出身者は一部のある程度以上に裕福な家庭の人間を除いてほぼ落とされていた。

必然、圏外圏出身者はギャラルホルンの一般兵卒こそいることはあれど、発言権のある立場にまでなれる人材はなかなか出てこなかった。

 

ただ、シクラーゼはラスタルの前で披露した類稀なる操縦技能の才覚を買われてギャラルホルンの士官学校に入学が叶った。

そして、卒業後は地球圏内の遊撃部隊に所属することとなった。

とは言え、生来荒っぽい所のある彼は平和な後方よりも前線で暴れる方が向いている自覚もあり、そのことを踏まえ、アリアンロッド艦隊への異動を望んで上官に具申するも「わがままを言うな」と聞き入れられなかった。

いっそのこと脱退して傭兵稼業に乗り換えることも考えないことも無かったが、幼い頃より己を推してくれたジャスレイに恥をかかせる訳にもいかず、これまで彼なりに真剣に任務に従事して来た。

その裏で、とある活動に意欲的に取り組んできた事は一部を除き知られてはいない。

そして、何の因果か地球外縁軌道統制統合艦隊の命令で援軍として鉄華団なる組織を包囲する任務を承った際には、後々心底驚くことになるとは思ってもいなかった。

 




HGクスィーガンダムとなかなかご縁が無いです…(´;ω;`)
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