どの道○される男   作:ガラクタ山のヌシ

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気がつけば七十話ですね…。

いつも読んでくださる方々、ありがとうございます。


第70話

「あれが、ガンダムフレーム…」

 

シクラーゼと部隊員達は目の前の光景に驚き、愕然すると同時に言葉を失っていた。

 

「噂には聞いていたが、聞きしに勝る性能だな」

 

ガンダムフレーム…その大半が使用不能なレベルで壊れたか、現在進行形で行方知れずとなっているという厄祭戦の忌むべき遺産。

その所以の最たるは人間をモビルスーツの一部として扱うと言う人としての倫理に背く阿頼耶識の使用を前提に組み上げられたオーバーテクノロジーだろう。

ただその割に、ギャラルホルンでの扱いもいまいち雑と言うか、せいぜいがいくつかの家の蔵で埃をかぶっているくらいという。

少なくともセブンスターズに縁もゆかりもない一般兵が普段からお目にかかれるモノでも無い。

老人達の真意としては、かつてあった厄祭戦そのものを忘れたがっているのか。もしくは単純にその維持費を面倒に思ってのことなのか。

当人達の口から説明されない限り、その実際の程は想像するより他ないが、少なくとも先述の阿頼耶識の使用は非人道的故に表立っては不可能なのも、それらが表に出ない理由の一つだろう。

 

「まぁ、老人達としては、ギャラルホルンの象徴はバエルさえあれば事足りるとの考えなのだろうさ」

 

『ガンダム・バエル』

 

最初のガンダムフレームにして、ギャラルホルン設立の立役者、伝説が児童向けの書籍に残るほどの偉人たるアグニカ・カイエルの駆ったという逸話を持つそれは、まさにギャラルホルンの正義の象徴ともいえよう。

 

セブンスターズ…特に老人達としては、偶像はそれ(バエル)に任せて現場での使用はグレイズやそのカスタム機で事足りると思っているのだろうが…。

 

「こうも実物を見せつけられると、その認識も改めて然るべきなのかもしれんなぁ」

 

壮年の部隊長はボソリと呟く。

 

誤解無く言えば、グレイズはいい機体だ。

そしてそれを純粋強化したようなカスタム機であるグレイズ・リッターもまたそうだ。

その事実に変わりはない。

無論、乗り手の操縦技能如何にもよるが、少なくとも組織だっての反抗勢力の鎮圧に実戦レベルのパイロットの駆るグレイズを数機送れば問題ないくらいには強いし、何よりクセがない機体なのだ。

それを、ああも倒すとは。

 

「しかし、いいのかねぇ?」

 

シクラーゼの同期が不意に疑念を口にする。

 

「なにがだ?」

「いや、だってよ。今ああして戦ってるイシュー家の跡取り娘、ただでさえ閑職に回されてるってぇのに、今回鉄華団連中を取り逃したら今度こそ実家に謹慎させられるんじゃあ…」

 

それに対して、部隊長は少し考える素振りを見せ、私見を述べる。

 

「どうだかなぁ。むしろあれだけの性能差を見せつけられて敵前逃亡しなかっただけ立派なんじゃあねぇのか?むしろガンダムフレームの危険性を伝えるためにオレらを集めたなんて噂まで広まるかもしれねぇぞ…」

 

カルタ・イシューの部隊は決して弱くは無い。

むしろ、後方で安穏としている部隊からして見れば、「どうしてそこまで」と言いたくなるくらいには訓練にも真面目に取り組んでおり、少なくとも平和ボケしている他部隊とは一線を画するくらいには精鋭と言える。

そんな部隊が敗北を喫したのだ。

無論、他部隊の彼らとて軍人ゆえに命令されれば戦うだろう。

だが、それだけだ。

いつの時代もプロの軍人の敵前逃亡は大罪であるし、それに比べれば「頑張りましたけどダメでした」というのは、まだ良い…いや、よくは無いが、それでも敵に背を向けて逃げ出すよりは殊更に糾弾されるものでも無い。

何より今回は、その敵の前提からして異なっていたのだから。

 

「それはつまり…」

「我々の意識改革の一環だとでも?」

「わからん。わからんが…オレたちには言われていない何かがあるとしても不思議じゃあねぇよなぁ」

「…まぁ、ともあれまずは本隊と合流しねぇとだなぁ」

 

そう言うなり、シクラーゼの小隊は森の方へ向かう。

 

「おぉい、行くぞ」

 

立ち止まり、鉄華団の方を向くシクラーゼの機体に、部隊仲間のひとりの乗るモビルスーツが近寄って声をかける。

 

「…ああ、先に行っててくれ」

 

そう返すなり、部隊の仲間たちは「早くしろよ」とだけ言って、本隊の方へと戻って行った。

 

そして、その時シクラーゼの思ったことといえば。

 

「アレさえあれば…もっとオヤジの役に…」

 

その時、通信が入る。

コードは監査局のもので、近頃は心当たりも無いし何よりなぜ今?と少し妙に思ったがシクラーゼはそれに出ることにした。

 

そうして、出たのは…。

 

「やあ、シクラーゼ・マイアーニ尉。はじめまして」

 

男の声だ。

それもかなり若い。

三十…いや、二十代か?

 

「それで、急に連絡を入れて来たアンタは?」

 

訝しげにそう返すシクラーゼ。

 

「そうだな。まずは自己紹介をしよう。私の名は…」

 

少しの間を置く相手。

勿体ぶるような物言いに若干疑念を抱きながらも通信を続ける。が…。

 

「監査局特務三佐、マクギリス・ファリドだ」

 

その相手がまさかセブンスターズの一門であったことに、驚きが勝っていた。




マッキー、再登場ですね。
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