どの道○される男   作:ガラクタ山のヌシ

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続き出来ました〜。


第78話

 

連絡を受けたジャスレイ達が港に向かうと、不審な小型艇が港の裏手に接収されているところだった。

余計な混乱を招かないようにするため、そこにいるのは港を任されている『JPTトラスト』の部下達をはじめ、ジャスレイとその護衛、そしてサンポとユハナの兄妹と、極少人数だ。

 

「アレです」

 

ジャスレイはそう案内されるなり歩み寄る。

外観は宇宙空間で目立たないようにするためか黒く塗装されている。

装甲は見るからに薄く、内部の機器も最新の小型ステルス装置を除けば、ジャスレイが見てすぐに分かる程度には年代物だ。

 

「随分と古い船ですねぇ」

「船っつっても、一人用の小型艇なんて久々に見ましたぜ」

「だが、手入れは随分と行き届いてるな」

 

ジャスレイとその部下たちがそんなことを話していると、ひょっこりとユハナが現れ

 

「なになに?レアもの?コレクターに売ればどれだけの値段になるかなぁ?」

 

そう現金なことを言いながら船体の表面をペシペシと軽く叩く。

 

「いや、生憎とこのタイプは量産型だな。昔はそれなりに流行ってたんだが、大型船の技術が上がってきて、それと同時に廃れた安モンさ。売っても二束三文、バラしてみて状態のいいパーツがありゃあ、ちったぁマシになるレベルのシロモンだなぁ」

「ちぇ〜、な〜んだ…」

 

そう言うユハナをたしなめつつ、ジャスレイは船の一部分…もっと言えば船体に刻まれたうねる蛇のマークを睨む。

 

「このエンブレム…どっかで…」

「オヤジ、この船の持ち主らしき野郎の目撃情報が…」

 

ジャスレイが思案していると、彼の部下の一人がそう声をかける。

 

「おうそうかい。そんで…どっちの方に向かったか分かってるのか?」

「いえ、それが…」

 

振り返ったジャスレイが訊ねるなり、部下は少し言い淀み…。

 

「あの…オヤジが寄った孤児院のある路地の方に向かっていったと…」

 

その言葉を聞くや、ジャスレイは血相を変える。

 

「オメェら!!今すぐ戻るぞ!!」

 

そう言って、裏口から外の夜の闇の中を走り出す。

 

「え、ちょっとオジサン!?危ないよ〜!?」

「この辺なら土地勘もある!!心配はいらねぇよ!!」

「オヤジぃ!!お供させてくだせぇぇ!!」

「オウ!!着いて来い!!」

 

駆けるジャスレイ、そしてその部下たち。

それに戸惑った様子のユハナとサンポが続く。

孤児院への道は存外入り組んでおり、それなりに時間がかかる。

未だ侵入者がそこまで辿り着いていないことを願いながらジャスレイ達は向かう。

そしてもう少しで孤児院に着く、と言ったところで、道中にひとりの男が立っていた。

 

「ヒッヒ…やぁっと見つけたぜぇ?ジャスレイ・ドノミコルス」

「テメェは…」

 

相手は小柄で、酒灼けしたような濁った声に、煤けたような格好をしていた。

頬は痩せこけ、丸目のサングラスから覗く瞳は狂気と憤怒を感じさせる。

 

「オレの船が人目につきゃあ、呼ばれると思ったぜ?オメェは昔っから徹底して現場第一主義だからなぁ…」

 

ニタニタと笑みを浮かべるその男に、

 

「オジサン…知り合い?」

 

引き気味にユハナがジャスレイに問う。

するとジャスレイはユハナを庇うように前に出て、男を睨む。

 

「そうらしい。嫌われモン『蛇蠍』のウィニー…ディアブロ兄弟のコバンザメが、今更ノコノコ出てきて何の用だ?」

 

ディアブロ…若い二人には聞いたことの無い名だ。

しかし、ジャスレイの部下達がその言葉を聞いて身構えているのを見るに、昔それなりに有名だった人物だったようだ。

しかしコバンザメ、という言葉に何やら思うところがあったのか、ウィニーと呼ばれた男はカチンと来たようだ。

 

「こっ、コバンザメだと?」

「あん?金魚の糞の方が良かったか?オメェ、上に媚びるばっかで同輩やら下からの人望なんぞ見るからに皆無だったじゃあねぇかよ。連中がいなくなった今、オメェひとり出てきても別に怖くも何ともねぇんだよ」

 

しかし、その言葉とは裏腹に、警戒は解けていない。

当然だ。本拠点で無いとはいえ、警備の目を潜り抜けた手腕は本物なのだから。

 

「テメェ…ナメてんじゃあねぇぞ!?オレ様を天国から地獄に突き落としてくれたツケ、ここで返させてもらうぜぇ!!」

 

そう言うなり、物陰から何やらグイッと持ち上げる。

その正体は…。

 

「う…ジャスかい…」

 

恐らく不意をつかれたのだろう、額から血を流すシスター・イングリッドだった。

暗がりだが、足元で散らかっている荷物からして、買い物の最中に襲われ、道案内でもさせられていたのだろう。

尤も、まだ辿り着けていないことからして、かなり時間を食わされている様子だが。

 

「イングリッド…」

 

ジャスレイはそれに気づいて、彼女の強かさや、とっさの機転に感心し、しかし同時に心配もしていた。

そしてそれは、彼の部下達も同様だったようだ。

 

「先生!!」

「テメェ…その人を人質にするたぁ、いい度胸してんなぁ!!」

 

ジャスレイの部下たちが憤るも、ウィニーはそれを見て得意満面になる。

 

「ククク…不覚だよなぁ…?テメェともあろう男が…だがこれもテメェのせいなんだぜ?テメェがあの時、兄貴達を仕留めてくれやがったから…」

 

それを聞くなり、ジャスレイは皮肉のように言葉を発する。

 

「…要は仇討ちかい。そんなことをするオメェとは思えねぇが…随分と根性あるじゃあねぇかよ」

「あぁ!?仇討ちだぁ?別にそんなんじゃあねぇよ…ただ、アイツらの側にいりゃあ美味しい思いが出来たってぇだけのことさ。ウメぇモン食って飲んで、女だって向こうから寄って来た!!それをぶち壊しにしてくれやがって!!お陰でオレァ」

 

如何にも小物、と言ったふうなことを言うウィニー。

 

「ハンッ…なんだい。そんなのただの自業自得じゃあ無いのさ」

「ンだとぉ!?状況わかってんのかババァ!!」

「哀れなモンだね。結局、過去に縛られて他者を貶めるやり方しか出来ない。見下げ果てられて当然じゃあ無いのさ!!」

 

その言葉に頭に来たのか、懐から何かを取り出そうとするウィニー。

ニヤリ、と笑みを浮かべる刹那…。

 

パンっ……。

 

「痛つっ…!!」

 

低く、抑えられた銃声が一発。

恐らくサプレッサーをつけていたのだろう。

その直後、キィンっ…と路地の暗がりに小さく金属音が鳴る。

よくは見えないが、恐らくは刃物なのだろう。

武器を吹き飛ばされ唖然とするウィニー。

 

「テメ…昔より早ェな…」

 

後ずさりながらも、咄嗟に予備を取り出そうとするが……。

 

「……オイ」

「ヒッ!?」

 

発せられるのは短い言葉。

しかし、それにはまるで質量があるかのようにズシリ…とウィニーを襲う。

 

「オメェは本当に昔っから変わってねぇなぁ、えぇ!?女子供人質にしてよォ…」

 

武器が無くなり、遠慮する必要がなくなったからか、ズカズカとジャスレイが歩み寄る。

 

「お…オレを殺せば…『夜明け』の情報も何も聞けねぇぞ?」

 

要は上から目線の命乞いだ。

 

しかし……。

 

「生憎と、こっちにゃあ情報のスペシャリストがごまんといる。オメェ一人いなくなったところで、別段困るわけでもねぇさ」

 

元より計画的とは言い難い犯行。

言ってしまえば、怒りに身を任せた突発的な、一度限りの特攻。

しかしそれも、死の恐怖の前に揺らぐ程度の覚悟でしか無かったのだから滑稽も良いところだ。

 

「た…頼む!!見逃して…!!」

 

ウィニーはイングリッドから手を離し、地べたに手をつけ懇願する。

 

「やかましい。こんな時間にデケェ声出したんじゃあねぇよ」

 

冷めた言葉。

それと同時に、再びパンっ…と短い銃声が響く。

 

「子どもらが起きちまうだろうが」

 

硝煙をゆらしていた銃を懐にしまうと、ジャスレイは近くのふらついているイングリッドに歩み寄り、支える。

 

「カッコつけ…」

「るせぇ…肩ァ貸すぜ」

 

そう言って、サンポに目配せする。

両脇をサンポとジャスレイに支えられ立ち上がるイングリッド。

 

「重っ…」

「悪かったねっ!!」

「オイオイ…思ったよりも元気じゃあねぇかよ」

 

再びフンッ…と鼻を鳴らすイングリッドを、今度は部下たちが守るように固まって、孤児院まで無事送り届けたのだった。

 

□□□□□□□

 

さて…肝心の侵入者くんの処遇だけども…。

 

「オヤジ、コイツどうしますか?」

 

足元への威嚇射撃で失神しているウィニーくんを蔑むような目で見下ろす部下達。

控えめに言ってめっちゃ怖いよぉ……。

 

「ま、とは言え…実際色々と聞きてぇこともあるしなぁ…」

 

なんせ、このコロニーは元々コイツらの庭だったわけだし。

隠し通路の類は粗方把握して潰したり、警備もつけてる。

にも関わらず、ここまで侵入して来られたのは純粋に驚きだね。

 

「まだ他にコイツの仲間がいるかもしれねぇしなぁ…」

 

まぁ、人望が壊滅的だった彼に着いてくる連中がいるとも思えないけどねぇ。

 

「それじゃあ!!オレらに尋問やらせてくだせぇ!!」

「ぜってぇ吐かせます!!」

 

血の気が多い…いやまぁ、気持ちは尤もって言うか、分かるんだけどもさぁ…。

大丈夫?勢い余って殺しちゃわない?

 

「まぁまずは…イングリッドの手当てだなぁ」

 

医務室に連れて来たはいいものの、未だにプリプリしているイングリッドを見遣る。

ホント…いつからこんな風になっちゃったのかなぁ…。

 




色々と書き足したら長くなっちゃった…。

齟齬があったら申し訳ない。
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