「申し訳ありませんでしたオヤジィィィィ!!」
ウィニーを捕え、港に戻ったジャスレイ達を出迎えたのは信頼する部下達の土下座姿だった。
「オヤジにここを任されておきながらこの失態…かくなる上はオレら全員エンコを…」
身を震わせる部下に対し、ジャスレイは静かに話しかける。
「いや、それは別にかまわねぇよ」
「でもオヤジぃ…それじゃあ、オレらはどう償えば…」
「せめてケジメはつけさせてくだせぇ!!」
部下達はガバリ、と顔を上げて、まるで迷子になった子どものような声でそんなことを言う。
「あの孤児院はオレらにとっても守るべき家なんです。それを危険に晒してこれまで通りのうのうとしてるなぞ…」
その言葉を手で制し、黙ったのを見るや、ジャスレイは言葉を発する。
「反省してんなら儀礼じゃあなく行動で示せ。それに…」
「それに?」
「今のこの情勢からして、ここを治めることに慣れてるオメェらを処分する行動はテメェの首をテメェで絞めるに等しい。そうなりゃあ喜ぶのは『夜明け』の連中だ。オレはわざわざ敵を喜ばせてやるつもりはねぇよ」
そう言って、見上げてくる部下達に手を差し伸べる。
「さ、立ちな。膝ァ痛めると後がキツイぜ?」
冗談めかしてそう言うなり、部下達は一人ずつジャスレイの手を取り立ち上がる。
「オヤジィィ…」
「ったく、泣くかぁ?そこでよ」
………………………………
「ったくジャスのヤツ、またあの子ら泣かせて…」
「え〜?いつもああなの〜?」
「まぁねぇ…」
男連中の話し声が聞こえる医務室で、寝そべるイングリッドの背中をマッサージしながら世間話に花を咲かせるユハナ。
なぜ、そんなことをしているのかと言うと、ウィニーに人質にされた際、イングリッドが無理に起きあがろうとして強か腰をぶつけてうまく動けないため、無理をしないようにとの配慮と、暇つぶしの話し相手も兼ねている。
「はぁ〜…やっぱり歳かねぇ〜」
「おろ?随分弱気なんだね〜」
気分が沈みそうになるイングリッドに、ユハナはわざとかそれとも天然なのか、明るく振る舞う。
やがて聞こえてくる声に嗚咽が混じり出すと、イングリッドは呆れたようにため息をひとつつく。
そんな彼女を見かねたのか、ユハナは再び話題を振る。
「うぅ〜ん…サンポもそうだけどさ〜、男連中は色々考えすぎだと思うんだけどねぇ〜」
「…ま、立場ってモンがあるしねぇ」
「それにしてもだよ〜」
ケラケラと、愉快そうに笑う。
「オジサンもこ〜んな可愛いユハナちゃんにユーワクされてもノって来ないなんてさ〜?ちょっとだけショックだったかも〜?な〜んて」
「そうかいそうかい。ま、本気ならその内気づかれるさね」
「アタシはいつだって本気だよ〜〜?」
ニコニコと、子どもらの話を聞くようにうんうんと頷きながらユハナの話を聞くイングリッド。
しかしそれも無理からぬこと。裏社会のそれも重鎮であるジャスレイにとって、色恋とは罠であり、警戒の対象だ。
そんなジャスレイからすれば、ユハナのそれは良くも悪くも小動物がじゃれついて来ている感覚なのだろう。
だから警戒もしないし、ジャンマルコという旧知のツテが間にいるという安心感もあってか、ある程度の気心も知れている。
何よりそばに置いている事からして少なくとも嫌ってはいないだろうことも分かる。
「アイツは昔っから、ヘンなのにモテるからね…」
「ちょっと〜〜?まるでアタシがヘンなコみたいじゃ〜ん?」
ぶーたれるユハナにクスリと穏やかに笑う。
そっと、瞼を閉じて初対面の時を思い出す。
「ようオレはジャスレイ。ジャスレイ・ドノミコルス。覚えなくてもいいぜ」
あの地獄に燦然と輝く炎のような男が現れた、その時のことを。
次回、過去編。
若かりしジャスおじ(イングリッド視点)を描いていけたらなぁなんて。