ジャスレイが報告のために歳星へと通信を繋げ、事情を説明するや以前の如く安否を確認され、一息ついた頃にマクマードが話し出す。
「ったく…流石にこりろよ?オメェはその辺のチンピラに殺されていいヤツじゃあねぇんだからよ」
映像通信越しに若干の呆れ顔で「いつものことだがよ」と聞こえよがしのため息をつく。
「ハッハッハ!!いやぁ〜まぁた心配かけちまったかい?」
「ハァ…ったく、オレの寿命が縮んじまったら半分はオメェのせいだぞ?」
両者、冗談を返せるくらいには落ち着いた様子。
「オウ、オレもこれ以上親不孝はしたかねぇや」
言い方こそ軽いが、流石に反省した様子のジャスレイに、マクマードは本題に移る。
「…そんで?『夜明け』の連中は動きそうなのか?」
「いんや、今回のは無関係の組織か、もしくは『夜明け』の内部で先走って独断した野郎の暴走だろうさ。少なくとも今回の件で連中が動くこたぁ十中八九ねぇさ」
「ほう?…その根拠は?」
試すように目を細めるマクマード。
まぁ確認がてら、心配をさせられた意趣返しと言ったところか。
「仮にも三千の頭を務める人間が、こんなチグハグな策を弄するとも思えねぇからさ」
ちょくちょく見かけるようになったユーゴーが囮なのだとしても、そもそもなぜ人望もないウィニーに重要な仕事を任せたのか。
それが分からないほどロイターは無知でも世間知らずでも無いはず。
『蛇蝎』…つまり、嫌われ者と呼ばれる男に重大な仕事をさせるほどに特別な事情がある訳もない。
それこそ人格が問題にならないほどに優秀であったり、逆に弱みでも握られてでもいなければ彼ほど向いていない人選もないだろう。
如何に能力主義とはいえ、人からの評価や評判はどうしたって気になるもの。
ともすれば己の評判さえ落としかねない。
評判の下落はそのまま利益の散逸にも繋がりかねず、だからこそ、大組織のトップほど賭けの決断には慎重になるものだ。
何よりそのリスクを冒してなお、有能とされる人間はかなり限られる。
そしてウィニーは事情を知る人間のうち、誰がどう見てもその枠の内にはいない。
「と、まぁ…これがオレの憶測さ。マルコの兄貴の情報、そして現状を加味して考えりゃあ妥当じゃあねぇか?」
「そんで…そっからの奴さんの動きやら対策は立ててんだろうな?」
「そりゃあもう。ウィニーの野郎が吐いた唯一有益な情報によりゃあ…連中、ひと月ほど前まで圏外圏と地球圏のちょうど中間…アリアドネでいやぁ、ここいらにいたって話さ」
宙域図を画面に表示して、その一部分からピコンっとマーカーが反応する。
アリアンロッドの偵察域とのスレスレ…距離にして100kmもない正しく目と鼻の先の地点だ。
「ま、もう移動はしてるだろうが…行き先は大方絞れる」
そう言うなり、ジャスレイは更にマーカーを二、三点滅させる。
「ほう…」
「兄貴とウィニーの吐いた情報、そして経過した時間からして、連中は…ディアブルの残党にコンタクトを取る可能性が高いと見るぜ」
更に言えば、連中の背後にノブリス・ゴルドンの支援金があるとするならば、時間はかかればかかるほど面倒になる。
かと言って急いては事を仕損じる。
何よりこう言った水面下での交渉はマクマードが得意とするところ。
そして、それを言葉にしなければ分からないほどマクマードは耄碌してはいない。
「そんで?オメェはオレに何を求めてんだ?」
マクマードはズイ、と前のめりになって画面に顔を寄せる。
「なぁに、オヤジにゃあ
その言葉を聞いた際の彼の雰囲気は、とても上機嫌なものだった。
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ふぅ〜…。
オレ、オヤジを頼ってばっかだなぁ〜。
いつか見放されるんじゃあなかろうか。
「しかしオヤジ。これで勝ったも同然ですね!!」
あ〜…それねぇ〜…。
だったらよかったんだけどねぇ〜…。
「いんや、アレはあくまでも推察の域を出ねぇモンさ。穴だって探しゃあ幾らでもある。それをこれから詰めようってのさ」
実際オレはマルコの兄貴からの情報を元に組み立ててるだけだし。
そもそもウィニーが嘘をついてないとも限らないわけで…。
そう考えると今回の憶測もなかなかガバいよなぁ…。
「それに、サンポとユハナの二人だっていつまでもここにいるわけにゃあいかんだろ」
あの二人…特にユハナちゃんはガンダムフレームに乗ってる訳で…。
敵からすれば垂涎モノだよなぁ…。
安全を保証できるのもテイワズのナワバリを出るまでの間だけだし。
「あっ、それならダイジョーブだよ〜!!」
後ろからやけに元気な声が聞こえてくる。
「オウ、ユハナ…大丈夫っつぅのは?」
「アタシは残るから〜!!」
「ユハナ!?」
えぇ〜…。
ユハナちゃん…お兄ちゃんも困惑してるんだけど。
いつもの如く、齟齬があったら申し訳ない、