どの道○される男   作:ガラクタ山のヌシ

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ギャラルホルンフェイズです。

肉おじ結構難しい…。


第90話

ギャラルホルンを束ねるセブンスターズがひとつ、ファリド家の屋敷に来客が訪れていた。

使用人に通された客間で待たされる男…ラスタル・エリオンは終始落ち着き払っていた。

 

「これはエリオン公、ご健勝のようで何よりです」

 

背後からかけられるのは若い男の声。

 

それに振り向いて挨拶を返そうとすると、ラスタルは手で制された。

男は机を挟んだ向かいのソファに座り、この若い、セブンスターズの新たな当主は告げる。

 

「いや申し訳ない。先代が()()()()()()()()、思いのほかゴタゴタしておりまして…」

 

貼り付けた笑顔でラスタルを迎えた男…マクギリスは苦笑する。

 

「遠路よりお疲れでしょう。紅茶でもお出ししましょうか」

 

そう言ってマクギリスはテーブルの上の呼び鈴を鳴らし、やって来た使用人に慣れた様子で申しつける。

 

やがて別の使用人がティーセットを持って来て淹れ終わると、当事者二人に一礼して出て行った。

 

双方護衛を外に待機させて、二人きりでしばし談笑し、紅茶の湯気も引いて来た頃合いを見計らったように、マクギリスが切り出す。

 

「さて、それでは改めて…本日は当家にどう言ったご用件で?」

 

この顔はラスタルも見覚えがある。即ち…貴族間での交渉用の顔だ。

ラスタルは見知った顔の成長に内心笑みを浮かべると牽制球を投げる。

 

「…貴公の所業について、報告があった…と言えば分かるかな?」

「さて…なにぶん私は浅学なうえ若輩の身ゆえ、何をしようにもこれからですので…」

 

マクギリスはラスタルの言葉をのらり…とかわす。

額に汗もかいておらず、視線も逸らさず、言動の端々に固い雰囲気も無く…あくまでも余裕ある態度を崩さない。

正しく貴族の見本のような対応だ。

ラスタルは「そうか」と軽く返すと、ならばと次手を出す。

 

「『モンターク商会』…知っているか?」

「ええ。それは無論存じ上げております」

 

少しの逡巡も無く答えるマクギリス。

それも当然だろう。

何せモンタークというのは彼の旧姓。

ならば、その一族が経営しているのだろう商会について全く知らないわけはない。

むしろしらばっくれた方が怪しまれることを理解している。

わざわざラスタルが来ていることも踏まえて、粗方の調べがついていることも分かっているのだろう。

無論、重要な証拠は既に手元には無いか、処分済みだろうが。

 

「ですが…彼らが今何をしているのかまでは…」

「…ほう?何も?」

 

ラスタルはここで少し切り込む。

彼が実家を掌握しているにせよ、そうで無いにせよ、ここで彼の動かせる金銭や人員の程度がわかる。

貴族にとって実家というのは往々にして勢力の基盤ともなり得るのだ。

そして、モンターク商会のもつ資産規模は表向きだけでも長年の歴史に裏打ちされているだけあってかなりのもの。

やすやす手放すとも思えない。

 

「えぇ、何分私が幼い頃ファリド家に養子に入れられたもので詳しいことは…」

「…なるほど」

 

この目の前の男は遠回しに言っている。

旧家の名を利用し、ギャラルホルンの技術の結晶たるエイハブリアクターや、その他資源をテイワズに横流ししていることも、あくまで知らないと。

ここでこうしてセブンスターズとして振る舞うので精一杯の、若造に過ぎないと。

 

だからラスタルは…釣り針を用意することにした。

未だ確証は得られない。

決定的な証拠は見つかっていない。

そもそも旧家連中を唆したのも、あくまでも可能性の話。

だが、だからこそ聞く価値があると直観したラスタルはそこに…たっぷりと餌をつけてマクギリスの心の水面に垂らした。

 

「そうか…では、もしキミが実家と連絡を取ることがあれば伝えて欲しい」

 

そう言うなり、ラスタルはすっくと立ち上がる。

さも急用を思い出したかのように、自然に。

 

「…内容によりますが」

 

それでもマクギリスは未だに余裕の表情を崩さない。

ラスタルは扉に向かってゆっくりと歩きながら手袋をした右手の人差し指を立てる。

 

「ひとつ、別にエイハブリアクターを横流ししたことを咎めるつもりは無い。圏外圏の抑えのためにも何かしら対策は不可欠だったからな。

下手に悪用するだろう組織に渡さなかったのは寧ろ称賛に値する。ひとつふたつくれてやったところで誤差というものだ」

「……他にもなにか?」

 

問いを投げかけるも、マクギリスは動かない。

ラスタルは人差し指に次いで、中指を立てる。

 

「ひとつ、私に協力するならば…私の名を使える範疇でひとつだけ、願いを叶えよう」

「……………」

 

ここで、マクギリスが真顔になる。

大方、自身の利益と本能的欲求とを天秤にかけて考え込んでいるんだろう。

ラスタルに恩を売れるのはそれだけ大きな意味を持つからだ。

 

一方でラスタルは確信を得るが、今一歩足りないのを感じる。

そうして…ダメ押しの一手に出る。

 

「そしてもうひとつ…今回協力すれば、今後ジャスレイ・ドノミコルスと直接接触する場を用意する機会が増えるかもしれん…とね」

 

それだけ伝えて、ドアノブに手をかけると…。

 

「……少々お待ちを」

 

ラスタルが振り返ると、マクギリスが先ほどとは打って変わって、ギラギラとした目を向けていた。

 

「…分かりました。では後日、()に繋げましょう」

 

その後日、約束の通りに本題を切り出したラスタルによってマクギリスの部隊は『夜明けの地平線団』攻めの先鋒を務めることとなったのだった。

 




次回、再び本編ですはい。

ガバや齟齬があったら、申し訳ないです…。
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