圏外圏、デブリ帯…。
火星と木星の中間に位置するかつての抗争の跡が生々しく残る場所に、『夜明けの地平線団』本隊はいた。
「偵察機より通達。目標勢力、急速に展開中とのことです」
旗艦デッキにて、オペレーターの言葉にロイターは満足げに頷く。
「よしよし、流石はジャスレイ率いる精鋭連中だ…。こっちのモビルスーツの特性を理解していやがるな」
彼らの主力モビルスーツ、ユーゴーは何より機動力を重視しているために、他モビルスーツと比べても装甲がかなり薄く、厄祭戦当時も大量に作られたが、その大半が落とされたと言う。
それをわかっているからこそ、船を密集させ、隙間を減らして近づいてきたユーゴーを艦隊の集中砲火で確実に仕留めようと言う魂胆だろう。
これまでは度々ちょっかいをかけていた程度とはいえ、戦闘経験を活かしているのはさしもの『夜明けの地平線団』としても油断ならない。
「連絡を聞く限り、艦隊の動きひとつとっても無駄がねぇんだろうよ…尤も、成金クセェ金ピカの船はいただけねぇがな」
ロイターは腕を組み、満足げに目を細める。
「やはり油断なりませんね…」
「ああ…アイツらに、かつての兄貴分が何人やられたか知れねぇよ…」
「…その割には嬉しそうですが」
振り返るオペレーターに緩む口元を見咎められるが、ロイターはむしろそれに肯定的に頷く。
「ったりめぇだ。連中の本気が衰えてねぇんだ。むしろそうじゃあねぇと困んのさ」
配下の指揮能力、戦力、士気、そして忠誠心…
そのどれをとっても、彼ら『JPTトラスト』は圏外圏トップクラス。
かつてはマクマードの秘蔵っ子にして、『虎豹の部隊』とまで評され、その辺のギャラルホルン部隊ならば一網打尽にできるだろう戦力が結集しているのだ。
真正面から突っ込もうものならば、鎧袖一触に蹴散らされて終わるだろう。
「…例の弾頭は?」
「この戦いで使う分には十分事足りるかと」
「よぉし、それなら問題はねぇな」
そうして、偵察隊からの連絡から艦隊がこちらに近づいているのが分かる。
「来たか…」
ロイターは前のめりになって、口角を上げる。
目視でわかる位置に現れたるは、一騎当千の伝説そのもの。
連絡にあった黄金の船はなるほど、下品に光っているかと思ったがなかなかどうして品のある輝きをしている。
大方、アレが旗艦…と来れば、乗っている人物はロイターの想像通りだろう。
互いの距離はギリギリ艦砲射撃が当たらない程度の位置取り。
ここから少しでも近づけば文字通り蜂の巣にされるだろう。
両者の艦隊は一触即発、と言った様相を呈している。
無論、その隙にモビルスーツを展開するのは忘れない。
が、その均衡を崩したのは意外にもと言うべきか、それともやはりと言うべきか…『夜明けの地平線団』であった。
「そんじゃあ景気付けに一発…いってみようかァァァ!!」
その言葉が終わるや、何かが高速で飛来し、『JPTトラスト』艦隊の一隻が爆音と共に沈んだのだった。
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えっ?ちょっ?今のなんなん?
「敵砲撃!!被弾艦半壊!!」
「慌てるな!!まずは人命を優先!!モビルスーツ隊は守りを固め、次撃に備えよ!!」
こんな時も的確な指示出しをしてくれるティアンユ…頼りになるぅ。
「先ほどの砲撃…船からじゃあねぇな?」
煙が晴れると同時にこの狙撃の犯人であろうモビルスーツが映り込む。
コレだけの射程、威力…まさか…ねぇ?
「アレは…」
そのモビルスーツは、『夜明けの地平線団』が主に運用しているユーゴーと同様のカラーリングを施されてはいるが、内部フレームは見るからに異なる。
独特のエイハブウェーブに、鉄華団の有するバルバトス、グシオンとほぼ同型の頭部パーツ。
肩部にある二門の大型の砲塔…。
え?嘘?なんでアイツがこんな所に!?
「アレはまさか…」
「三日月さんのバルバトスと同じ…!?」
鉄華団の二人は驚愕の表情で映像を見る。
「コイツは…」
嫌な汗が頬を伝う。
何せコレが見間違いでないのなら、『夜明けの地平線団』が引っ張り出して来たのは、悪魔の名を冠する伝説そのものだ。
「オヤジ!!敵艦が通信を求めていますが…」
「…繋いでくれ」
やっぱりだが、そこにはオレが今一番見たく無いドヤ顔が映り込む。
「どうだジャスレイ!!こいつがオレらの切り札…厄祭戦の遺産であるガンダムフレームのひとつ、ガンダム・フラウロスだ!!」
「ハンっ…わざわざそんなことの自慢のために通信まで繋いだのか?ご苦労なこった」
とは言え、まさかガンダムフレームかぁ…全然想定してなかったぞぅ…。
一番はやっぱアレだけど、どうにもキナ臭くってなぁ〜。どうしよ…。
それと、一番解せないのが……。
「さぁジャスレイ。切り抜けて見せろ。オメェなら出来んだろう?」
「敵モビルスーツ部隊展開!!こちらに向かってきます!!」
コイツ…オレをどうしたいんだよ!?