彼の出現が突発的であったように、彼女らの登場もまた突然であった。
【世界教アルトラス】、そこに所属するとされる【聖女(THE HIGH PRIESTESS) カーレ・ド・ニア】。そしてカノジョ率いる、影に対する灯の力、【恩寵(グレイス)】を授かった【奇跡の子供たち】。その少年少女らで構成された【世界教アルトラス第一次特別恩寵少年騎士団】。
二X九七年、何の前触れもなく現れた彼女らに対して、当時の、最早なんの権限も持っていないに等しい国連政府は、彼女らの行動をただ座して眺めている事しかできなかった。
そして彼女は開口一番こういった。
「はじめまして、死にかけの皆さん。ボクはアルトラス教の聖女、カーレ・ドニア。
ボク達は皆さんを病魔から救って差し上げる為にやってきました」
この言葉を世界中に発信した後、聖女率いる騎士団は壮大な大冒険の後、一カ月とかからず、ユリアノス・プテリドピュタを討伐し、その勇名をはせることになった。
そして今ではキリスト教や仏教を差し置いて、いま世界で最もメジャーな宗教になってしまった。
ユリアノス・プテリドピュタ発生以前の資料は、ほとんど失われたに等しく、それによって彼女らの存在を完全に規定する事は出来ない。
それでも幾ばくかの断片情報を結合させて整理していくと、いくつかの概要を掴むことができた。
まず、彼女らの宗教の名前となっている、「アルトラス」とは、ギリシア神話に登場する神の「アントラース」にちなんで、「支える者」の意で名付けられたとされる。
次に彼女らが崇拝している神とは、所謂一種の「自然崇拝」に近く、星や月などの天体、風や雨などの気象現象、山や海といった地形などの地球環境そのものを、人類を超越した上位存在として崇めている。
そして「聖女」とはそれら自然事物の声を聴き、お告げを得られる、いわゆる巫女・シャーマンのような存在らしい。
彼女らの起源に関しては、身に着けているものや儀式、祈りの言葉に一貫性が無く、複数の宗教の要素を含んでおり、特定は難しいと思われる。
例えば、カノジョらが首からかけている護符は、エジプト十字と呼ばれるアンク記号を逆向きにしたもので、「逆さ吊りの天使」をかたどっているという。また、纏っている制服はキリスト教の修道服(キャソック)に酷似している。執り行われる儀式や祈りの文句などは、ブードゥー教や一種の悪魔崇拝のような要素を孕んでおり、これらまちまちの装身具や所作によって本 宗教の歴史や起源を特定するのは困難を極める。
以下、聖女カーレ・ド・ニア及び、騎士団主要人の記録。
【聖女カーレ・ドニア】
出身、人種、生年月日いずれも非公開。性別に関しては、本人が「聖女」と名乗っている事から「女性」とされるが、小柄な体躯と「ボク」という一人称、発せられる中性的な声色から実際のところは不明。年齢は十五歳前後と推定される。
純白の修道服に金飾りを付け、頭には顔の半分以上を覆う「アザミ」の花を模した黄金の仮面を着けている。
褐色気味の肌に、煌びやかなブロンドの長髪、瞳の色は仮面を被っているため不明。
性格は温厚で慈愛に満ち、まさに聖人君子。不愉快になったり怒っている姿を見た人はいないらしい。感情を表に出さない穏やかな人。
【騎士団団長ナルツ・イース】
出身、人種、生年月日いずれも非公開。性別は男。年齢は十二歳前後。
服装はテンプル騎士団を思わせる、逆アンクが描かれた白い外套に、軽装甲の銀鎧。
聖女とは対極に、北ヨーロッパ系の白人の遺伝子を持っていると思われ、白磁の肌に赤い短髪。
「スイセン」の花で編んだ花冠を付けている。
非情に自信家で、使命感と正義感に満ちている。それ故にやや強引なところも。聖女の事を尊敬し慕っている様子。
【団長補佐ビリア・ブーゲン】
出身、人種、生年月日いずれも非公開。性別は女。年齢は十六歳前後。
服装はテンプル騎士団を思わせる、逆アンクが描かれた白い外套に、軽装甲の銀鎧。
団長に近しい中央ヨーロッパ系の白人を思わせる白い肌と、黒い長髪、暗褐色の瞳をしている。
「ナデシコ」の花を髪飾りにしている
活発で天真爛漫。聖女にべったりで、良い所をみせようと頑張っている。
【作戦参謀ウィン・ベリー】
出身、人種、生年月日いずれも非公開。性別は女。年齢は十六歳前後。
服装はテンプル騎士団を思わせる、逆アンクが描かれた白い外套に、軽装甲の銀鎧。メガネ。
他団員同様、西ヨーロッパ系の白人で、金髪碧眼。
「ブルーベリー」の花が彫刻された懐中時計を愛用している。
無口で感情の起伏が薄い。普段何を考えているか分からないが、地頭が良く、状況分析能力に長ける。
その他、複数名。
〈世界教アルトラス及び構成員についてのレポート3番〉より抜粋