聖闘士星矢~クリスタルエレジー~Final Edition   作:水晶◆

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Final  Edition  加筆修正版です。


序章~水晶聖闘士になった俺の華麗なる生存戦略~
第1話FE 聖闘士セイヤッ! 水晶哀歌~水晶聖闘士になった俺の華麗なる生存戦略~Final Edition


 最初に感じたのは――ただただ白い、という事だ。見渡す限りの一面が白い。

 

「……何だ? どこだ、ここは? え?」

 

 それが、吹き荒ぶ雪と氷の白であると理解した瞬間、突き刺さるような寒さが俺の全身を襲う。

 

「――っ、うおぉ……!!」

 

 それは、まるで、真冬の海に裸で飛び込んだような――そんな経験は無いが――ほどの寒さで、思わず両手で身体を抱きしめてしゃがみ込む。

 この寒さをしのげるのならば何でも良いと、翻った純白のマントを握り締めて、気付く。

 

「へぁ? 何だこれ? ……マント? え?」

 

 世紀末な世界の住人や王位争奪をしている超人じゃあるまいし。

 妄想の中でならともかく、この現代社会における日常生活の中で、マントを着こなす人間がどれ程いるのか。

 

「それに、この、何だ? 青い……全身タイツに小手? 足にはレガース? ……プロテクター? 何でこんなモンを着ているんだ?」

 

 不幸中の幸いか。

 全身タイツにマント姿だけなら通報待ったなしだが、全身を覆うプロテクターのおかげでどうにかコスプレと言い張れる。

 俺にその趣味は無いが。

 

 そう、コスプレだ。

 

 これでは、まるで、あの“聖闘士星矢”の――

 

「――ッッ……ぐぎっ!?」

 

 次いで襲い掛かるのは激しい頭痛。

 後頭部から、こめかみから、四方八方から、まるで鈍器にでも殴られたかのようにガンガンガンと。

 

「あ、が――ッ!?」

 

 これが伝え聞いた脳梗塞か?

 それとも、クモ膜下出血というやつなのか?

 まるでバットで頭を殴られたような、まともに立っていられない程の痛みがあると聞いていた。これがそうなのか?

 そういえば、この間の健康診断で血圧が高すぎると言われていたな。

 いつもの事と、放って置くんじゃあなかった。

 後悔先に立たず。あの頃の俺に説教したい。

 

「~~ッ!!!!!!」

 

 あまりの痛みに声も上げられずに蹲り、転げまわる。

 歯を食いしばる。目も開けられない。泣きそうだ。涙が出できた。吐き気もする。

 

 どれだけ時間が経ったのか。

 実際は数秒程度だったのか。

 一向に収まらない頭痛に耐え切れなくなった俺は、いっそ痛みごと無くなってしまえと、冷たい大地に自ら頭を叩きつけた。

 

 普通なら死ぬ。自殺行為だ。死ななくても大怪我だ。

 

 ならば、これで死ななかった、怪我一つとして負わなかった俺は――普通じゃあなくなっていたのだろう。

 

 後先のことなど考えない。余裕もない。

 ただただ、この苦痛から逃れるために全力で。

 

 この時の光景を傍から見る者がいれば、それはまさにダイナミック土下座であった。

 きっと『CRAAAAAASH!!』とか『BACOOOOM!!』とか『砕!!』とかの擬音やらイメージ音が背景に書き込まれていたに違いない。

 

 額を打ちつけた氷の大地に俺を中心として蜘蛛の巣状の亀裂が奔る。

 

「――む?」

 

 あれ、これヤバい?

 そう思った時には身体が動いていた。

 

 両手で大地を突き出すように勢いをつけて、その場からバク転を行い両足で着地。

 スプリングやシリンダーのように膝で勢いを吸収、その力を利用して後方へと更に跳躍。

 後方三回転ひねりを加えた無駄のない無駄な動き。

 両手を胸元に組み、真っすぐ伸ばされた身体。その姿勢、その姿は、まるで宙を舞うファラオの棺の様であった。

 

 無駄なスタイリッシュさを発揮して退避完了。

 

 俺は身に着けていた白いマントをバサリと翻すと、風雪を浴びるがままに自分が起こした目の前の惨状を観察する。

 

 頭突き一発で砕けた氷の大地。

 飛沫を上げて“シベリアの海”へと飲み込んでいくバカでかいクレーター。

 

 気付けば頭痛は既になく、眩暈や吐き気と言った症状も綺麗さっぱりとなくなっていた。

 突き刺さるような寒さも、身体に叩き付けられる風雪も苦ではない。

 

 目の前の光景を、日常のあるがままとして受け入れていた。

 

 当たり前だ。

 

 なぜなら俺は、私は――

 

 このシベリアの凍土に生きるアテナの聖闘士(セイント)――

 

 水晶聖闘士(クリスタルセイント)なのだから。

 

 

 

 

 

 聖闘士セイヤッ! 水晶哀歌~水晶聖闘士になった俺の華麗なる生存戦略~Final Edition

 

 

 

 

 

 ……なのだから、と。

 

 内心気取ってみたが、これは非常に拙い、マズい。マズいですね☆

 何がマズいって、この状況の意味が分からんことがまずマズい。

 マズ・マズイってトミノキャラっぽいな。敵の戦艦クルーで第1話のエンディングのテロップの最下段辺り。

 当然、次の話からは出てこない。

 

 話が逸れた。

 

 でもオーラロードは開かれてないし、いわゆる転生トラックを食らった覚えもない。

 お約束の神様に会った覚えもないが――

 

 やっべ。この世界が本当に聖闘士星矢の世界なら……神様いるわ。

 

 となれば、神様転生じゃなくて神様憑依か?

 

 どの神様が何のために?

 

 俺ただの一般人のオッサンよ?

 心はいつまでも少年だけど。毎週飛翔しているけど。立ち読みだけど。

 

 そりゃあ、俺にはいわゆる原作知識がある。直撃世代だからね。

 原作知識チートで俺ツエーってか?

 

 ……水晶聖闘士で?

 ここは黄金(ゴールド)聖闘士とか、星矢たちと同世代のオリジナル聖闘士とかじゃないの?

 

 星座カーストは許されざるよ?

 蟹座の彼は悲惨だったな。次いで魚座と牡牛座。天秤も、だな。

 射手座の俺は勝ち組でしたけど。

 

 ……ゴメン、嘘。

 

 意外と、射手座はそこまで勝ち組ではなかったりする。

 少なくとも当時のアニメでは活躍してないからね。アトミックサンダーボルトを知っている人はどれぐらいいるのか。

 

 活躍してないのは水晶聖闘士もだよ、チクショウ。

 

 それとも全然関係ない?

 関係ない方が良いな。良いのか?

 

 今の俺の外の人であるこの水晶聖闘士は、原作漫画には存在しないアニメ版のオリジナルキャラだ。

 そして、メインキャラの一人、白鳥星座(キグナス)の聖闘士氷河(ヒョウガ)の師匠として登場する。

 アニメスタッフからすれば『我が師の師は我が師も同じ』という迷言を生み出させざるを得なかった困った存在だ。

 とりあえず、これでこの世界が少なくともアニメ版基準であることが分かる。

 

 まあ、それは良いんだ。

 問題は、この水晶聖闘士。

 教皇に洗脳されて悪事の片棒を担がされ、氷河や星矢と戦って死んじゃうってコトカナー。

 割と序盤に。

 

 なにかこう、霞がかかっている、靄がかかっているけれども、水晶聖闘士の記憶というか知識は分かる。昔のことを思い出すような感じと言えばいいのか。

 細部ははっきりしないけれども、こう、ああ、そんな事もあったな、的な。言われれば思い出すような。

 そして、この身体の使い方も――小宇宙(コスモ)理解(ワカ)る。

 正直、これがなかったら凍死まっしぐらだった。

 

 兎にも角にも。

 状況を把握するためにおっかなびっくり水晶聖闘士の記憶を辿ると――

 

 新教皇として聖域(サンクチュアリ)を実行支配しているアーレスの非道な行いに、最早我慢ならんと聖域に単身乗り込んだ模様。脳筋です。

 邪魔をする参謀長ギガースや雑兵どもを蹴散らしました。脳筋ですね。

 騒ぎを聞きつけて姿を現したアーレスに対して面と向かって事の是非を問うところなど実に強者ムーブ。脳筋でした。

 

 はい。これはもうフラグがビンビンですね☆

 

 案の定、幻朧魔皇拳(げんろうまおうけん)をまともに食らっちゃってますよ!

 やべーよ。洗脳どころか人格が反転してるじゃねーか!?

 

 世紀末なヒャッハー共を従えてシベリアに戻る外の人。

 あ、ちゃんと飛行機使うのね。

 しかし、仮にも地上の愛と正義と平和を守る女神アテナに属する組織の雑兵とはいえ、どうしてこんなヒャッハー共が存在を許されているのでしょうか?

 重火器で武装しているんですがそれは?

 そして、アニメの通りにヒャッハー共にこの辺りに住む人々を攫わせると、氷の聖帝十字陵みたいなモノ造らせてるし!

 聖域の秘密基地を建造するって意味わかんねーよ!

 この時代(80年代)に何で人力メインなんだよ! 機械を使えよ! 大型重機とかあるだろ!?

 核の炎に包まれた後の世界じゃねーんだよ馬鹿かよ!

 誰の仕業だよ! 俺だよ! 馬鹿!!

 

 

 

「――さて、これをどうするか?」

 

 どうするか、じゃねーよ!

 無駄にイケボに呟くな、外の人! 呟いたのは俺だけど!!

 

 どうも俺の意思の通りに身体は動いているが、その過程がチグハグな感じがする。

 クレーターから飛び退いた時も、あんなスタイリッシュなムーブなんかをするつもりはなかった。

 例えるなら、コントローラーで操作しているアクションゲームのキャラと言うか。

 こうしたい、という結果を出すための動きがオート化されているというか。

 意識すれば思う通りに動かせるが、逆にそうでない動きは――この身体に染みついた動きで自動化されている。

 都合が良いのか悪いのか。

 いや、バトル物の世界で指示を出せばオートで動いて戦ってくれる身体と思えば、一般人からすれば有難い話だ。

 

 このご都合っぷりよ。ホントにマジで神様憑依か?

 どの神様が何の目的で?

 

 ……いや、これ以上は止めておこう。思考がループするだけだ。考えるだけ無駄だ。下手な考え休むに似たり。

 ロクでもない事しか思い浮かばないってのは、精神衛生上宜しくない。

 今は、もっと目の前の現実を見るべきだ。

 

 具体的には、今も絶賛建造中であろう十字陵もどき。

 幸いにして、無理やり連れて来られた彼らからはまだ死者は出ていない。

 

 出ていないはずだ。

 

 ……出てないといいなぁ。

 

 アニメでは氷河と星矢の活躍で彼らは無事救われている。

 水晶聖闘士に邪魔されてもそれが出来たのだから、俺が介入しなければヒャッハー共相手に苦戦などあろうはずもない。

 イベントとして考えても、俺との戦いをスキップしたところで物語にさして影響はないはずだ。

 十字陵もどきは全てが終わってから俺が破壊すればいい。

 そうして、そのまま物語からもひっそりとフェードアウトするのだ。

 

 

 

 ――完璧な生存戦略。

 

 ……なのだが。

 

「――彼らを救わねばならない」

 

 地上の愛と正義を守るアテナの聖闘士として。

 

 水晶聖闘士の信念とも言えるそれが、勝手に身体を動かし始める。

 いや、元々俺の身体じゃないのだから勝手も何もないのだが。

 

 洗脳中であったとはいえ、水晶聖闘士のやらかしとはいえ、俺にも妙な罪悪感があるのは事実で。

 

 まあ、別に氷河や星矢でなければ彼らを救えないというワケではないし。

 原因も何も分からんが、今の俺――水晶聖闘士に幻朧魔皇拳の影響がないようだし。

 ならば、わざわざ氷河や星矢と敵対することはない。

 

 それに、物語的にも『大して影響が無い』のなら―――別に俺がやっちゃっても良いワケで。

 

 ……。

 …………。

 ………………年甲斐もなくやっちゃうか、俺ツエー。

 

 この身体は若いけど。

 多分二十代、だよな?

 アニメ版のキャラは年齢不詳過ぎてなぁ。

 アニメ版は漫画版からプラス二、三歳ぐらいのイメージだったか?

 

 と、そんなことを考えていたら目的地はもう目の前。

 ムチやら重火器やらを持ったヒャッハー共を補足。ターゲットロックオン。

 女子供老人相手にも構わずムチを振い、付近に銃撃を浴びせて威嚇しながらはしゃいでいるヒャッハー共の姿はいっそ清々しい。

 

 ああ、うん。

 一切の遠慮は要らんわ

 向こうもこっちに気付いたようだが、まさか俺が正気に戻っているなどとは思うまい。

 

 まあ、あれだな。

 

 気付いたところで――もう遅い。

 

 さあ、始めようか。

 

 水晶聖闘士になった俺の華麗なる生存戦略を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この日、東シベリアで建造されていた聖域の秘密要塞が氷原へと消えた。

 聖域へと伝えられたその急報は、参謀パエトンから参謀長ギガースへ伝わり、やがて教皇アーレスの耳へと届く。

 それを成したのは、己が魔拳によって傀儡と化した筈の水晶聖闘士だという。

 

「教皇アーレスの名において命ずる! 女神アテナに、聖域の意に背き、地上に破壊と混乱を巻き起こす者、我らが同胞を手に掛けた裏切り者――水晶聖闘士を誅殺せよ!!」

 

 

 

 to be continued……?

 

6話からのルートをアンケートしてみようかと思います。

  • TVアニメ版ルート(熱血漢祭り)
  • セインティアルート(俺つえー)
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