聖闘士星矢~クリスタルエレジー~Final Edition 作:水晶◆
エンディングは永遠ブルーからの古谷さんの予告。
エルダという少女の話だ。
南海の小島にて、悪党の襲撃に遭い孤児となった彼女は、カシオペア座の青銅聖闘士――聖闘少女レベッカに救われた。
レベッカの強さと優しさに触れた彼女は、正義の炎を纏うその姿に憧れ、やがて聖闘士となるべくレベッカに師事することになる。
辛く、厳しい修行の日々であったが、エルダにとってその日々は決して苦ではなかった。
しかし、その日々も唐突に終わりを迎える。
激しい波の音と、燃え上がる炎に照らされた赤い夜。
暗黒聖闘士たちによる襲撃であった。
立ち向かったレベッカの奮闘により、暗黒聖闘士たちは撃退され、島の住民への被害も最小限で済んだものの、レベッカ自身はこの戦いにより命を落とす。
グラード財団により保護されたエルダは、繰り返された悲劇により、何者にも負けない力を求めた。
しかし、そこで幼き日の城戸沙織と出会い、エルダの運命は大きく変わることになる。
復讐のための力を求めるエルダに、沙織はアテナとしての力の一端を垣間見せ、聖衣に宿ったレベッカの遺志をエルダに伝えた。
レベッカの遺志を継いだエルダは、仲間たちを、地上の正義を守るために聖アカデミーの門を叩き、新たなるカシオペア座の聖闘士――聖闘少女となったのだ。
イオニアの手記より
・暗黒聖闘士
本来、正義のために使用されるべき聖闘士の力を私利私欲のために使い、また掟に反した振る舞いなどにより、聖闘士としての資格を剥奪され、聖域からも追放された者。
その身に暗黒聖衣を身に纏い、太平洋上に浮かぶフェニックス諸島にあるデスクィーン島を本拠地とする無法の集団を表す。
地上の守護者たるアテナからも見放された存在として、他の聖闘士たちからも忌み嫌われている。
暗黒聖闘士内でもその実力には天と地ほどの差があり、聖域における雑兵程度の者から、かつては聖闘士最強である黄金聖闘士にすら匹敵する力を持った者も存在した。
一時は、鳳凰星座の青銅聖闘士一輝の力による支配によってその活動が小康状態となっていた。
一輝の支配を離れた今、抑圧から解放された彼らが暴走する可能性は非常に高く、警戒が必要である。
「それじゃあ行くわよ、冥界の入り口――黄泉比良坂まで三名様ご案内~ってね!」
――積尸気冥界波!!
この時の感覚を何といえばよいのか。
例えるならば、エレベーターに乗った時の昇降感とでも言えば分るのだろうか?
こう、上がっているのに下がっている様な。
さて。
俺は今、蟹座の黄金聖衣を身に纏い、積尸気を操る、デスマスクを名乗る人物の手によって、冥界の入口――黄泉比良坂から皆様にリポートをお送りしております。
うん。言葉にすれば特におかしなところは何もないね。
では、ここに形容詞やらなんやらを加えてみよう。
「あら、流石ね。
ランウェイの上を歩くファッションショーのモデルの様に、しなをつくりながら、しゃなりしゃなりとこちらに歩み寄って来る、蟹座の黄金聖衣を身に纏った長身の男。
聖衣の隙間から覗く身体つきは、戦いを生業とする聖闘士にしては細目に見える。だが、それは決して痩せているという意味ではない。
無駄な脂肪の無い、引き締められた肉体だ。
その顔にはうっすらと化粧が施され、濃い目のアイシャドウが、やや垂れ目がちな目を強調し、口元のローズカラーのリップが知的で柔らかな印象を――ゴメン、無理。
いや、確かに、美人(?)だとは思う。
だが、男だ。
それも蟹座だ。
あえて評するならば妖艶、と言ったところか。
世紀末ヒャッハーな世界の妖星の人よりも、異世界で
つまりは。
この男、俺の知るデスマスクとは、全くの別人としか思えない程に乖離していたのである。
そう――オネエと化して!
ここ、まさか瞬やミロが実は女性でした、なんて世界じゃないだろうな?
第12話 お前なんか姐さんじゃない、オネエで十分だ!!
瞬やミロの性別は棚に上げるとして。
80年代後期からのオネエキャラの系譜に従うならば、このデスマスクは相当な実力者か、非常に有能な人物の可能性が高い。
俺からすれば、どうしても、あじゃぱ~や、聖衣に見放されたイメージが強すぎて、違和感が凄まじいことになっているが。
だが、そんな事は俺以外の人にとっては知る由もない事で、この世界にとっては目の前の現実こそが正しく蟹座のデスマスクなワケで。
コレ、受け入れるしかないんだろうな~。
むしろ、異物は俺の方だからして、俺こそが、目の前のありのままを素直に受け入れるべき、なんだろう。
それでも、少しばかり落ち着くための時間は欲しいが。
ん?
……いや、オネエキャラでふと思ったんだが。
まさか、この世界、神甲冑纏った方々出て来ないだろうな?
あれもある意味で神話の――神々の戦いだ。
まあ、あっちはインド神話寄りで、こっちはギリシャ神話寄りだし。
……無いよな?
デーヴァ神族とかアスラ神族とか止めろよ?
神話によっては同一視される存在が、お互いの陣営に存在するとかカオスな事になるぞ。
いや……、もう少し様子を見ようか。
俺の予感だけでみんなを混乱させたくない。
でも、アスガルドは北欧神話――止めておこう。
「あら、どうしたの? 冥界酔いかしら? この空気は慣れないとキツイって言うからね」
お前のせいだよ。
ウインクするな。
やめろ、馴れ馴れしくボディタッチを行おうとするんじゃない。
と、声を大にして言ってやりたいところだが。
「……いや、あの少女はどこに行ったのかと思ってな」
「大人しくしてくれていれば良かったんだけどねぇ。アタシ嫌われちゃったみたいだから、思いっきり抵抗してくれちゃったのよね」
いや、思わせぶりな態度で接していたお前が一番悪いと思うんだが。
間に合わなかった俺の言えた事ではないが。
あの言い方では、お前が襲撃犯と誤解しても仕方がないだろうに。
あの時、デスマスクと合流した俺が聖アカデミーに到着した時には、既にそこは邪神に連なるモノの支配する世界へと化していた。
樹々の枝葉や根が、まるで触手の様に絡み合って校舎を侵食し、辺り一面を覆い尽くす弟切草の花々が、強烈な甘い香りを撒き散らす。
どこかで見た黒い靄が周囲を漂い、倒れた少女たちに纏わり憑いたかと思えば、皆が片眼を隠した半裸の女の姿となって立ち上がったのだ。
変貌し、暗い小宇宙を立ち昇らせて迫るかつては少女たちであったモノ。
異常な事態に、ならばと、闇を払う浄化の光――ピュリフィケイション・レイを放てば、彼女たちはアーレス様のように花弁となって散っていく。
中には、元の人の姿を取り戻した少女もいたが、一様に激しく小宇宙を消耗させていた。小宇宙の消耗は、命の力を消耗させているのと同義。
このままでは命の危険があると判断した俺は、彼女たちをフリージングウォールの中に閉じ込めて仮死状態にすることでその場を凌いだのだが。
「やっぱりね。宿主の魂に寄生し、融合を進めながら、小宇宙を食らい成長していたのね。だとすれば、アナタのその光は、この場においては劇薬過ぎる。
浸食の浅い者には特効薬でもあり、深く浸食された者にとってはその魂すら焼き尽くす致死毒にもなり得るわ」
薬ってそういう物だけど。そう続けると、デスマスクは俺にアカデミーの外周部へ向かうように指示をした。
「この嫌な気配は、中心部に向かう程に濃くなっているわ。残念だけど、中央はもう手遅れよ。でも、逆に言えば、外周に向かう程影響は薄い。そこなら、まだ間に合う可能性はある」
「……良いのか?」
「あら、心配してくれるの? 適材適所よ。それに、相手が魂に影響を及ぼすって言うのなら、それはむしろアタシの領分」
後でまた会いましょ。
そう言ってデスマスクに背を押された俺は、その場を離れたのだ。
「どうしたモノかしらねぇ。そこまでは離れてはいないと思うんだけど……」
そう呟き、若干肩を落としている様にも見えるその姿に演技はない。あの少女を、本気で心配している様子が窺える。
そう、心配しているのだ。
あの自己中心的で、力こそ正義、弱者は死ね、なデスマスクが。明確に敵対し、攻撃を仕掛けてきた相手を。
そして、目に見えて凹んでもいる。
誰だお前!?
イオニアの手記より
・黄泉比良坂
日本神話における生者の住む現世と死者の住む黄泉との境にあるとされる坂。
そこには一切の生あるモノの姿はなく、自我を失くした死者の魂が列をなし、暗い岩だらけの道を、死の国への入り口である巨大な穴に向かって進むのだ。
そして、一人、また一人と、深き穴の底、冥府の深淵の中へと消えて行く。
「過程は問題じゃないのよ。結果として、間に合わなかったアカデミーの子たちを切り捨てたのは事実。
それに、あのお嬢ちゃんには、ああでも言って意識をアタシに向けさせなきゃ――間違いなくあの場で取り込まれていたわ」
「
「……邪神エリスが目覚める少し前、地上に広がる邪悪な小宇宙の気配は巨蟹宮でも感じ取る事が出来た。
早急に動くべしって訴えたヤツもいたけれど、その時点では、聖域は、教皇は動かなかった。
その後に、東方で大きな小宇宙のぶつかり合いを感じたから、皆、既に何某かの手が打たれていると思っていたのよ」
「そうして、邪神を一度は討った。しかし――」
「ええ、アテナの力を借りて、ね。誤算だったのは、邪神を討っても世界中にばら蒔かれたイヴィル・シードは消えていなかったってコトなのよ。
しかも、一度芽吹くまでは気配が希薄過ぎて、それが誰に宿っているのかが分からないってオマケ付き。
邪神の残党共は各地で好き勝手やってくれちゃうし、日本では青銅聖闘士たちが掟を破って銀河戦争なんてやらかすわ、どこかの誰かさんが新教皇に喧嘩売るわで聖域はもう大騒ぎよ?
ま、エリスの残党――邪霊共も、せっかく手に入れる依り代なら、若くてスペックが高い方が良いって選り好みをしているらしくって――」
――人類全てが依り代に、ってならないだけマシなのかしら?
そう言いながら、デスマスクは周囲に集まり始めた黒い靄を纏った鬼火――邪霊へとその指先を向けた。
「代々の蟹座の聖闘士は、って言うか、少なくともアタシとアタシの師匠は、他人を肉体ではなく魂で見るコトが多いのよ。職業病とも言えるかもね。
おかげ様で、イヴィル・シードが芽吹く前でも、アタシはそれが誰に宿ったのかを判別する事が出来た。
だからこそ、依り代を選り好みしていることに気付けたし、狙われそうな場所にも当りを付ける事が出来たんだけど――」
――努力はしました。でも、結果は出せませんでした。
「それが許される立場じゃないのよ――
デスマスクの指先から放たれた白いオーラが、宙に浮かぶ邪霊共の周囲を廻る。
それに吸い寄せられるように集められた邪霊の一団が、デスマスクの生み出した積尸気の門の中へと消えていった。
「偶々ね、目についた報告書があったの。そこには白銀聖闘士アラクネの変貌と、他の人には見えない黒い靄が水晶聖闘士には見えていた、と書かれていたわ」
期待しているのよ、アナタには。出来るでしょう? そう呟き、デスマスクはちらりと横に立つ男を見た。
恐らく、彼は自分とは異なるアプローチでイヴィル・シードの力を感知しているのだろう。
仮面から覗くその視線を追えば、周囲に集まる邪霊共よりも大きな力を感じさせるナニかが、倒れたエルダの元に近付こうとしている事に気付く。
聖域とは距離を置き、教皇の招集命令にすら応じなかった五老峰の老師が、邪神に対する戦力として推薦した謎の男。
姿を消した水晶聖闘士と、今日まで、誰もその存在を知らなかった祭壇星座の白銀聖闘士。
本人はアレで隠し通せていると思っている様だが、凍気を操り、自らをアーレスと名乗るなど、正体を隠す気があるのかと問い質したいところではある。
水晶聖闘士本人がどう認識しているのかは分からないが、古参の聖闘士で彼を知らない者はいないと言うのに。
老師あたりに何か策でも与えられているのか、それとも素なのか。あまりにも露骨過ぎて判断に迷うが、その実力が本物であることに間違いはない。
「あそこにいたのね、お嬢ちゃん。邪霊共の数が増して来たわ、急ぎましょうかクーちゃん」
以前からその兆候はあったが、アテナが降誕されて以降の聖域は、教皇が支配していると言っても過言ではない状況にあった。
誰もが教皇の言葉をアテナの言葉であると信じ、その命に従う事こそが正義であると、何一つ疑いを抱く事なく盲目的に従っているのだ。
いや、少数ではあるが、教皇の行いに疑いを持つ者はいる。しかし、教皇には何か深い考えがあっての事、と。教皇への尊敬と信頼の念から、そこで思考停止してしまうのだ。
そんな中にあって、水晶聖闘士は、教皇の行いに異議を唱え、真っ向から向かって行った数少ない人物。
駆け出す背中を見ながらデスマスクは思う。
アナタの思惑が何であれ、本当に期待しているのよ、と。
「……自分に出来ない事を人に期待するってのも――情けない話だわ」
イオニアの手記より
・聖闘少女
セインティアと読む。
本来、アテナを守護する聖闘士は男子のみであり、女子が聖闘士になるためには女であることを捨て、素顔を覆うマスクを着用せねばならないという掟がある。
しかし、聖処女であるアテナが人として降誕した際に、その身辺の世話をすることを許されるのは女子のみ。その役割を受け持つために、女子のまま聖闘士となった者を聖闘少女と呼ぶ。
その職務上アテナの身体に関する情報等、聖域の深い部分の情報も知るところであり、アテナが不在の時代には必要のない役職でもある為、教皇を含めてごく一部の聖闘士のみがその存在を知る事を許されている。
故に、聖域最強の戦力である黄金聖闘士ですらその存在を伝説上のものと捉えている者も多く、実在することを知らない者もいる。
何か、後方のデスマスクからねっとりとした、熱を帯びた妙な視線を感じる。
気のせいだろうか?
まさか、この完璧な変装がばれたのだろうか?
おかしいな。この世界、目元が隠れていれば大体正体は隠せるはずなんだが。
この変装には老師も絶賛していたし。
春麗ちゃんなんか、目を見開いて、驚愕の声を上げるのを必死に我慢していたぐらいの完成度なのに。
実際、聖域からの指令書を運んできた
アレか、ひょっとして有能なオネエキャラのみに許される“実は私だけは気付いていたのよ”的なムーヴなのか?
だとするならば、俺の正体に勘付いたであろうこのデスマスク姐さんは、やはり油断の出来ない強者であるという事か。
まあ、そんなアホな考察はどうでもいい。
今は目の前の事態に集中すべきだ。
エルダと名乗った少女を、彼女がミトと呼んだ少女が抱き締めている。
何を話しているのかは分からないが、エルダの足元から這い上がる草花と、黒く染まっていくカシオペア座の聖衣を見れば、ロクな事じゃないのは明白。
「さあ、エルダ。わたしの手を取って? 皆を手に掛けたあの聖闘士たちを倒す力が欲しいのでしょう? あなたに眠る争いの力を目覚めさせてあげる」
「……うぅっ、ミ、ミト!? や、やめ……ろ……!」
――あなたも、わたしたちの仲間として生まれ変わるのよ。
「――臭いわね。やり方が小物臭くて、ホント臭いッたりゃありゃしない。知人の姿に化けて堕とそうだなんて、やり方が外道そのものよ」
その瞬間、エルダの身体を黄金の光が包み込む!
「ぎ、ぎゃあぁああああ――!?」
ミトと呼ばれた少女の姿をした影が、黄金の光に焼かれて絶叫を上げた。
エルダの足元から這い上がっていた草花が、周囲に集まっていた邪霊が、諸共に吹き飛ばされる!
「――ぁあ?」
力無く倒れこむエルダの身体を抱き止めたデスマスクは、その光り輝く指先を、宙で苦しむ影へと向けた。
そして、告げる。
「さて。それじゃあ、綺麗な花に集る害虫の駆除を――始めましょうか」
いや、ホントに誰だお前!?
こんなんデスマスクちゃうで!?
デスマスク姐さんやん!?
「――じゃあ、クーちゃん、後は宜しくね?」
……。
…………。
………………待てやオイ!
誰がクーちゃんだ!?
ってか、ここで俺に振るのか!?
この流れで!?
何だコイツ信じらんねぇ!!
俺でも空気ぐらいは読むぞ!?
お前なんか姐さんじゃない、オネエで十分だ!! このオネエ! ウインクすんな、馬鹿!!
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戦いの中、ペガサス彗星拳を完成させたオレは、遂に強敵
ミスティ、恐ろしい相手だったぜ。
しかし、そんなオレの前に更なる刺客、白鯨星座のモーゼスと猟犬星座のアステリオンが現れる。
マズイ! アステリオンの能力によって、魔鈴さんの裏切りを知られてしまった。
ここでこの二人を倒さなければ、このままでは魔鈴さんも狙われてしまう!
そこに、信じられない援軍が現れた。
自分を倒した以上約束は果たすと、魔鈴さんを守るためにミスティがオレに力を貸してくれると言うのだ!
よおし、やるぞミスティ!
次回、聖闘士星矢
「飛べ星矢!ペガサスのように」
君は、小宇宙を感じた事があるか。
to be continued……?
アフロディーテさんの今後についてのアンケートです。期間は短いですが参考にさせて頂きます。
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聖域に戻る(アフロさん)
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沙織の護衛(デロア・テフィさん)
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沙織の護衛(アフロさん)
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星座カーストに負けるな!