聖闘士星矢~クリスタルエレジー~Final Edition   作:水晶◆

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オープニングはペガサスファンタジー。
エンディングは永遠ブルー。
例のテーマと田中さんのナレーションはお休み。


第17話 アフロディーテvs教皇

「今ここで、このわたしをお討ち下さい――」

 

 ――その杖で。

 

「……!」

 

 己を討てという教皇。

 その真意を測りかねる沙織に告げられた言葉に、沙織の視線が手元の黄金の杖に向けられた。

 幼き頃より、気付けばいつも自分の手元にあったこの杖。その事に対し、今まで何の疑問も持たなかったが……。

 

「その黄金の杖は、アテナの象徴たる勝利の女神(ニケ)像が姿を変えたもの。持つ者の意思でいかなる敵をも滅する力を持つといいます。

 その大いなる力でどうか……」

 

 ――このわたしを消滅させて下さいませ。

 

 そう懇願する教皇の姿は、神を前にして己の罪を告白する信徒のようで。

 

「……あなたは……自ら、死を選ぶと、望むというのですか?」

 

 暗く澱んだ瞳からは、何の力も感じられず、ただただ深い絶望があった。

 まるで裁かれる事が、死こそが救いであると訴える教皇の姿に、沙織は「違う」と感じた。

 

「時間が……ありません。どうか、どうか一刻も早く――」

 

 そこまで口にして、教皇の様子に異変が生じる。俯き、呼吸を荒げ、肩を震わせ始めたのだ。

 

「う、うぅうう……」

 

「……教皇?」

 

 教皇のただならぬ様子に、どうしたのですかと、沙織が近付こうと立ち上がると――

 

「わたしに――近付いてはなりません!」

 

 教皇の一喝によりその足を止めた。

 

 見れば、教皇の右手には黄金の短剣が握られており、その刃を左手で掴んでいる。

 よほど強く握りしめているのであろう。

 刃を伝って赤い血が床に滴り落ちていた。

 

「アテナよ……大いなる……神よ。わたしが……これ以上、罪を重ねる前に――」

 

 ――どうか、裁きを。

 

 顔を上げた教皇の見せた表情は、懇願を通り越し、もはや、それは哀願であった。

 

 故に、沙織は確信をもって教皇に告げる。

 

「できません」

 

 神がその力をもって人を裁くことは間違いである、と。

 そして――

 

「それに、あなたは今、命をかけてわたしを守ろうとしている」

 

 違いますか?

 そう語る沙織に対して、教皇は一瞬、その表情を呆けさせると「ああ」と、呟いた。

 まるで、泣き笑いの様な顔で。

 その短い言葉にどれほどの思いが込められていたのか。

 

 それを知ることは、もう叶わない。

 

「――残念だったな、時間切れだ」

 

 愚かなアテナ。あなたはわたしを討てる唯一のチャンスを逃したのだ。

 そう言って立ち上がった教皇の青い髪が灰色に変わり、絶望に澱んでいた瞳は赤く染まり、ギラギラとした力に満ち溢れていた。

 

「クックックッ。いかな戦女神(アテナ)とはいえ、市井で育てばこうも感傷的になろうとはな。やはり、この大地を統べるのは、わたしこそが相応しいのだと確信したぞ!」

 

 その手に握られた黄金の短剣を振り上げ、自身を見上げる沙織へと向かって振り下ろす。

 

「さらばだアテナ! いかなる敵が現れようとも、わたしがいる限りこの大地は誰にも渡しはせん!! 安心して死ぬがいい――」

 

 

 

「あなたは、誰なのです?」

 

 

 

「――何?」

 

 自分を真っすぐに見つめながら、そう呟いた沙織の言葉に、黄金の短剣を振り下ろす教皇の手が止まった。

 

「あなたは、先程までの、あの人とは違います。あなたは、一体誰なのですか?」

 

「――だ、だまれぇえええええええッ!!」

 

 しかし、それも一瞬。

 

 振り下ろされた黄金の短剣が、沙織の身体を貫き――

 

 

 

 ――真っ赤な薔薇の花弁となって舞い散った。

 

「ッ!? こ、これは――薔薇……だと? まさかっ!!」

 

 教皇が舞い散る花弁の奥へとその視線を向けたその瞬間、飛来した何かが教皇の手に握られた黄金の短剣を弾き飛ばす。

 

 キィンという甲高い音を立てて転がる短剣の側に、一本の赤い薔薇が突き立った。

 

「……どういうつもりだ?」

 

「アテナを無事に送り届ける事。それが、教皇がわたしにお命じになられたこと……」

 

 赤い瞳に怒りの炎を灯らせて教皇が問えば、涼しげな声で返される。

 薄暗い神殿内にあって、その人物が身に纏う黄金の輝きはあまりにも鮮明であった。

 

「あなたは……」

 

 黄金の輝きに抱きとめられた沙織が見上げれば、そこには、まるで女性と見紛うほどに美しい顔があった。

 それは、十二宮最後の双魚宮を守る黄金聖闘士。

 その美しさは、八十八の聖闘士の中でも随一といわれる。

 天と地の狭間に輝きを誇る美の戦士――。

 

「どういうつもりだと聞いているのだ。答えよ――」

 

 ――魚座(ピスケス)のアフロディーテ!

 

 

 

 

 

 第17話 どこまで行けるのか、見てみたくなったのだ

 

 

 

 

 

「これは異なことをおっしゃられる。このアフロディーテにお命じになられたではありませんか。アテナを無事に送り届けよ、と。

 ならば、この場でアテナを害そうとする輩を排除することに何の問題がありましょうや?」

 

 しばし、ご辛抱を。

 そう言うと、アフロディーテは抱き留めていた沙織をゆっくりと下ろし、自身の背後へと下がらせる。

 

「……本物のアテナを前にして尻尾を振る、か。まさか、今更、聖闘士としての正義に目覚めたとでも言うつもりか? このわたしを裏切ろうというのだな、アフロディーテよ」

 

「ふむ、何か勘違いをしているようだ……。わたしの抱く正義に変わりはない。そして、この忠誠を捧げる相手も。もとより、お前に従っているつもりもない。

 それに、裏切りと言うが……。むしろ、この状況であれば、裏切られているのはわたしの方だと言っておこう」

 

 もっとも、お前に言ったところで分かるまい。

 アフロディーテは「失礼」と呟き、沙織のドレスの胸元に刺していた赤い薔薇を抜き、その手に取った。

 

「これは警告だ。このまま、わたしがアテナを送り届けることを、大人しく見送るならばそれで良い。しかし、邪魔だてをするというのであれば――」

 

 ――ただで済むとは思わぬことだ。

 

 薔薇の花弁を教皇へと突き付けて、アフロディーテがそう宣言する。

 

「――クッ、ククク……。フハハハハハ――!!」

 

 それを受けての教皇の返した答えは――嘲笑であった。

 

「笑わせてくれる!! お前ごときが、このわたしを相手に随分と大きく出るではないか! 飼い主の手に噛み付く番犬などに用は無いが……。

 よかろう、ニ度とわたしに刃向かえぬように躾直してやろう」

 

「……水晶聖闘士の様に、か?」

 

「――何だと?」

 

「あの日にあった事、他の者たちであればともかく、十二宮にいたわたしが気付かなかったとでも思っていたのか?」

 

「ッ!? そうか、お前の“目”か!」

 

「お前の命じた内容が、日本に集まった青銅聖闘士たちへの制裁であったためにあの場は見逃したが……。しかし、その後の話を聞くに、お前の技は水晶聖闘士に破られている」

 

 それも、お前の予期しなかった方法で。

 

「水晶聖闘士のメッセージを受けた時のお前の反応を見れば、その程度のことは推察できる。さて、そんな不完全な技が、このわたしに通用するとでも?」

 

「……お前は、何を、どこまで知っているのだ?」

 

「フッ、全てが自分を中心に回っているとでも思っているのか? 人は皆、善きにせよ、悪しきせよ、己の思惑のもとに動いているもの。

 その全てを知ろうと、地上の全てを統率しようと考えているのならば――」

 

 ――神すらも成せぬ、それを己であれば成せると考えているのであれば。

 

「己のことすら理解出来ていない、お前がそう思っているのであれば。それは、もはや、ただの思い上がりに過ぎないと言っておこう」

 

「……使える駒と思い、ある程度は自由にさせていてやったが。どうやら、それは大きな間違いであったようだな。

 お前が、一体誰に刃向かおうとしているのかを、その身をもって知るが――、こ、これは……!?」

 

 ぐらりと、教皇の視界が揺らめき、気付けば片膝を突いていた。

 立ち上がろうと、力を入れようとするが、身体はまるで熱病に浮かされた様に力が入らず、その視界に映るアフロディーテの姿が二重三重にぼやけ始める。

 

「言ったはずです、己のことすら理解出来ていないと。本来のあなたであれば、このような策に陥ることなどあり得なかったでしょう」

 

「この周囲に漂う香気――そうかッ!」

 

 教皇の揺らぐ視線が、アフロディーテの手にした赤い薔薇に注がれる。

 

「わたしのこのロイヤルデモンローズの香気は既に、お前の身体を蝕んでいたのだ。アテナを害そうと、お前が近付いた時点でな。

 陶酔の果てに死に至るこの香りを受け、その程度の影響で済んでいるのはさすがと言える。だが、その身体でこのアフロディーテと事を構えるつもりか?」

 

 あまり、わたしを甘く見ないでもらおうか。

 

 

 

 沙織の目の前で行われるアフロディーテと教皇の問答。

 語られる内容の多くが、沙織には理解できないものであったが、それでもこの会話を聞き逃してはならないと、直感が訴えていた。

 何か、とても重大な事を話しているのだと。

 

 黄金の杖を掴む手に、知らず力が籠められる。

 そして、ぼう、と。

 黄金の杖が、その輝きを増していた。

 

 

 

 ―――

 ―――――…

 

 押しては退く、波の音が響き渡る海岸に、さばぁ、と大きな飛沫が舞った。

 

「ごほっ、げっほ!? あ~、しょっっぱい!!」

 

 ペッペッと唾を吐きながら、姿を現したのは星矢だ。

 その肩に――ミスティを担いで。

 

 しばらく塩ッ気のある料理は見たくない。

 そうぼやきながら、波を掻き分けて砂浜に辿り着いた星矢は、そこで力尽きたのか肩に担いだミスティ諸共に砂浜に向かって倒れた。

 ……顔から。

 

「ぶふっ!? ペッペッペッ!! 砂が――鼻や口に!?」

 

 慌てて飛び起きた星矢は、顔に付着した砂を払おうとその手を使い――

 

「うわっ!? 目が! 砂が目にッ!!」

 

 あー、と叫びながら大騒ぎする星矢。

 その姿を横目に見ながら、ミスティが口を開いた。

 

「……なぜ、わたしを助けた?」

 

「――!? うわ、ビックリした!」

 

「命を助ければ、借りを作れば、このまま見逃して貰えるとでも思ったのか?」

 

 意識があるとは思っていなかったのか。

 ミスティの声に驚いた星矢であったが、シャツの裾を破りそれで顔に付いた砂を落とすと、ようやく落ち着きを見せてその場へと座り込む。

 ミスティの顔を見れば、砂粒一つ付いていない。

 なぜだ、と首を傾げつつ、星矢は問いかけに答えた。

 

「別に、オレはアンタに恨みがあるわけじゃないし。そっちがどう考えているのかは知らないけど、敵ってのとも違う気がするんだ。

 命まで奪おうとするのは、こう、なんか違うんじゃないのか、ってさ」

 

 上手く言えないけど、と。

 言葉を選びながら、どうにか話を続けようとする星矢の様子に、仰向けになったミスティは一つ息を吐く。

 

「手加減した。いや、されたということか……わたしは」

 

「いや、それは違う。オレは全力だった。むしろ、全力を越えられたんだ」

 

 アンタのおかげで。

 

 そう言うと、疲労の残る身体に気合を入れて、星矢が立ち上がる。

 

「結構時間が経った気もするけど、魔鈴さんはまだこの辺りにいるはずだよ、な。色々と聞きたいことがあるからな」

 

「……グラードコロッセオだ」

 

「え?」

 

「グラードコロッセオで、わたしたちとは別任務に就いている二人の白銀と合流すると言っていた」

 

 答えを期待したわけでもない、ただ、自分のやるべきことを口にしただけ。

 その星矢の言葉に、ミスティが返答した。

 

「ここ最近、世界各地で人知れず起きている異変に対し、教皇は聖域の多くの聖闘士を動員させている。

 魔鈴に与えられた本来の任務については詳しくは知らないが、お前たちの粛清ではないことは確かだ」

 

「……良いのか、オレにそんなことを話して」

 

「魔鈴を助けたくば、わたしを倒せ。そう言ったのはこのミスティよ。そして星矢、お前はこのわたしに勝ったのだ。

 行け、星矢。今ならば、まだ、間に合うかもしれん」

 

「あ、ああ……分かった!」

 

 砂浜に倒れたままのミスティを一瞥した星矢であったが、軽く頭を振ると、コロッセオのある市街へと視線を向けた。

 そうして駆け出そうとする星矢の背に向けて、ミスティが続ける。

 

「いかなる理由があろうとも、お前たちが聖闘士の掟を破ったことは事実。これからも刺客が差し向けられるだろう。

この先もこのミスティを相手にしたように、上手く行くとは思わぬことだ。白銀聖闘士の中に、恐るべき存在が現れたのだからな」

 

「恐るべき存在だって? それは……」

 

「仮面で素顔を隠した謎の男――祭壇星座(アルター)の白銀聖闘士よ。あの男が何を考えているかは誰にも分からん。

 ただ一つ言えることは、仮にあの男と対峙するような状況になれば――逃げろ。決して戦おうとはするな」

 

「……祭壇星座の……白銀聖闘士」

 

 

 

 ――喋り過ぎだぞミスティ。

 

 星矢が反芻したその時、星矢とミスティの脳裏に男の声が響く。

 

 ――それ以上は利敵行為と見なし、お前も始末せねばならなくなる。

 

「この声は――誰だ!?」

 

 誰何する星矢が、どこにいると周囲を見渡す。

 

「お、お前たちは……!」

 

 立ち上がったミスティが、海岸線にこちらへと向かってくる二つの人影を捉えた。

 白銀に輝く鎧を纏った痩身の男と、身体中に無数の傷跡のある巨漢。

 

「いつまで経っても現れぬから様子を見に来てみれば。まさか、青銅ごときに敗れていたとは……」

 

 痩身の男の言葉に、星矢が身構えた。

 

「……ミスティ、こいつは?」

 

猟犬座(ハウンド)の白銀聖闘士――アステリオン。わたしとともに、日本に来た白銀聖闘士の一人だ。そして――」

 

「しかも、随分と仲が良さそうではないか。よもや、掟を破ったやつらと裏で通じていた訳ではあるまいな?」

 

「――白鯨座(ホエール)の白銀聖闘士モーゼス。白銀屈指の剛の者だ」

 

 

 

「言い過ぎだぞモーゼス。ミスティに限ってそれはあり得ん」

 

「だがな、アステリオン。聞いたところによれば、教皇の招集に応じなかったケフェウス星座が、弟子の聖闘士共々姿を消したと聞く。

 その上でこの状況よ。疑念を持つなという方が無理だろう?」

 

 身構える星矢に対し、アステリオンとモーゼスは余裕のある態度を崩さずに問答を続ける。

 

「あり得んと言ったぞモーゼス。わたしの言葉が信用ならないか?」

 

「ん? ああ、そういう事か。だとすれば、信じがたい事ではあるが。ミスティ、お前は本当に星矢に敗れたのだな」

 

「そのようだ。そして、裏切ったと言うのであれば、それは――」

 

 そう言ってアステリオンの細められた目が、星矢に向けられた。

 その様子を見てミスティが叫ぶ。

 

「いかん! 星矢!! 今すぐここを離れろ! 何も考えるな!!」

 

「は!? い、いきなり何を!?」

 

 ――裏切り者は魔鈴のようだ。

 

 確信をもって、そう断言するアステリオン。

 その言葉に、星矢が驚愕の表情を浮かべ、ミスティは「抜かった」と歯噛みする。

 

「そんな!? それはここにいたオレやミスティしか知らないはず! どうして、こいつがその事を!?」

 

「……サトリの法、だ。どこまでの深度かまでは分からんが、アステリオンは対峙した相手の心を読むことが出来る……!」

 

「そうか、魔鈴がな。思い出したぞ、そこにいる星矢の師でもあったな。獅子身中の虫とはこのことか。

 ミスティ、お前には色々と言いたいことがあるが、そこで大人しくしておけ。

 そこにいる星矢と残りの青銅共を片付けた後に、魔鈴の相手をせねばならなくなったのでな」

 

 組んだ拳をゴキリと鳴らして、モーゼスが星矢の前に立った。

 

「聞いた通りだ。お前と遊んでいる時間はなくなった。苦しまぬよう、一思いに殺してやるから感謝するんだな」

 

「クッ、やる気かこのデカブツ!」

 

 

 

「急げよモーゼス。こうなると、魔鈴が合流しようとした二人の白銀――盾座(スキュータム)南十字星座(サザンクロス)も危ないかもしれん。

 いや、最悪その二人も――裏切り者の可能性がある!」

 

 思い浮かんだ最悪の事態に、アステリオンはモーゼスに星矢を任せてコロッセオへと向かおうとする。

 

 しかし、その足が止まった。

 

「……何のつもりだ、ミスティ。そこを退け」

 

 行く手を遮るように立ち塞がったミスティによって。

 

「もう一度だけ言う。そこを退け。今ならば、何も見なかったことにしてやる」

 

「わたしに、退く気があるのかないのか。お前には、言わずとも分かるだろう?」

 

「……何故だ? なぜそこまで星矢に肩入れするのだ。下らぬ口約束を守るためか? ならば、それは星矢に魔鈴の居場所を教えてやったことで果たされたはずだ」

 

「そうだな、それは……わたしにも分からん。ただ――」

 

 ――どこまで行けるのか、見てみたくなったのだ。

 

 ミスティとアステリオンの視線が交差する。

 

「そうか。ならば、これ以上何かを言うのは無粋というものだろう。しかし、思えば、こうしてオレたちが本気で拳を向け合うことなどいつ振りか」

 

「さて、な。だが、稀にはよかろう」

 

 アステリオンが拳を構え、ミスティが両の掌を相手に向ける。

 

「フッ。破損した聖衣を言い訳にはするなよ?」

 

「お前も、な。手加減などすれば、そこで終わりだと思え」

 

 お互いの身体から立ち昇る小宇宙が、ぐにゃりと、周囲の光景を歪ませる!

 

「行くぞミスティ!」

 

「来いアステリオン!」

 

 

 

 ―――

 ―――――…

 

 ドオーーン、という轟音を響かせ、黄金の輝きが壁面へと叩き付けられた。

 

「アフロディーテ!」

 

 その場へと駆け寄ろうとする沙織を制止し、口元に流れる血を拭いながらアフロディーテが立ち上がる。

 

「……御心配には及びませんよアテナ。しかし、流石は教皇というべきか。デモンローズの香気を受けてなお、この恐るべき小宇宙……!!」

 

「お前もな、アフロディーテ。よもや、ここまで手古摺らされるとは思いもしなかった。評価を改めねばならんな」

 

 そう言って、アフロディーテへと悠然と歩み寄る教皇。身に纏った法衣の至る所に痛みが生じていたが、その動きに一切の澱みはない。

 

「さあ、次はどうする? もう一度、黒薔薇(ピラニアンローズ)を放つか? それとも、赤薔薇(ロイヤルデモンローズ)で、再びわたしの五感を攻めるのか?」

 

 教皇の翳した手が輝き、アフロディーテの身体が弾き飛ばされる!

 

「ぐぅ!」

 

「それとも、わたしの知らない奥の手があるのか?」

 

 アフロディーテの目の前に立ち、見下ろす教皇と、膝を突き、見上げるアフロディーテ。

 

「まさかとは思うが、救援を期待しているのではあるまいな? ならば無駄なことだ。このアテナ神殿に張られた結界は特別製でな。

 この中で何が起ころうとも、それが外に漏れることはない。だからこそ、この十三年間、アテナの不在を隠し通せてきたわけではあるが……」

 

 教皇の手がアフロディーテへと向けられる。

 

「その苦労も今日で終わる」

 

 拳を握り締め、振り上げた教皇。

 その手に、強大な小宇宙が収束され、収まり切れない小宇宙が周囲の光景を星々の煌めく宇宙へと塗り替えていく!

 

 その光景に、アフロディーテが白薔薇を抜き放ち身構える!

 

「その白薔薇がお前の奥の手か。だが、何をしようと無駄な――!?」

 

「――ッ!!」

 

 その瞬間、対峙した両者の表情が一変する。

 

 アフロディーテを庇うように、両手を広げた沙織が二人の間に立ったのだ。

 

「アテナ!? いけません、お下がりを!!」

 

 アフロディーテの叫び。しかし、沙織は一瞥することなく、その視線を教皇へと注ぐ。

 教皇の赤く染まった目を、何も語らず、ただ、じっと。

 その深奥へと、深く、深く、のぞき込むように。

 

 教皇もまた、その動きを止めて、じっと沙織の目を見詰めていた。

 

 そして――

 

 

 

「……アテナよ……どうか……」

 

 教皇の目が、元の輝きを取り戻した刹那、沙織とアフロディーテの姿がアテナ神殿より消失した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次々と現れる聖域からの刺客。

 だけど、たとえどんな奴が現れてもオレたちは負けないぜ!

 

 次回、聖闘士星矢

 

「暗黒の闘士復活! 戦えアテナの聖闘士たち」

 

 君は、小宇宙を感じた事があるか。

 

 

 

 

 

 to be continued……?

 

アフロディーテさんの今後についてのアンケートです。期間は短いですが参考にさせて頂きます。

  • 聖域に戻る(アフロさん)
  • 沙織の護衛(デロア・テフィさん)
  • 沙織の護衛(アフロさん)
  • 星座カーストに負けるな!
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