聖闘士星矢~クリスタルエレジー~Final Edition   作:水晶◆

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水晶の章~シベリア激闘編~
第2話FE 俺vs氷河&星矢


 群がるヒャッハー共を鎧袖一触。

 無双系の如く吹き飛ぶ雑兵たち。

 

「き、貴様ッ、血迷ったか水晶聖闘士!」

 

 敵の存在を認識する。オートロックオン。

 そこからターゲットサイトが無数に表示されてマルチロックオン(イメージ)。

 決定ボタンを押したらフルバースト(拳)。

 相手は死ぬ。

 

「う、撃てっ! 撃て撃て撃て撃てーーーーっ!!」

 

 銃弾の雨?

 見てから余裕。インド人を右に!

 まさか、指と指の間で銃弾を挟み止められる日が来るとは。

 

 気がかりだったのは、人質を取られる事と流れ弾による被害だったが、凍気によるクリスタルウォールもどきで氷壁を形成することで要救助者の皆さんへのセーフティーゾーンを確立。

 即興のシェルターにしては予想以上にハイスペックで、個人で携行できるような重火器程度ではとてもとても。

 

 これで後顧の憂いなし、聖闘士無双はっじまるよー、と浮かれていたら……。

 

 このハイスペックな肉体が、見たくないモノを見せて下さいました。

 

 はい。

 要救助者な皆さんの絶望に満ちた表情をばっちりと。

 その中には、必死になって脱出しようと壁面に拳を叩きつける人とか泣き出す人もいます。

 

 いきなり銃撃戦に巻き込まれたらそうもなるか。

 

 ……。

 

 ひょっとして、銃撃が怖いんじゃなくて、逃げ出さないように氷の檻に捕らえられたと勘違いされている可能性?

 

 …………。

 

 これ、どっちが悪人か分からんな。

 彼らからすれば、俺は裏切り者かつ誘拐犯なワケだし。

 

 突然の憑依状態に超人的な戦闘能力を得たことで調子に乗っていたことは事実。

 それでも、巧緻よりは拙速だろうと事を起こした判断自体は間違ってはいないと思うが……この状況は罪悪感が半端ない。

 信じて貰えるかどうかは分からんが、皆を助けに来たとだけでも伝えておこう。

 言葉にしないと分からない事ってあるからな。

 

 ……とりあえず、さくっと終わらせるからもうしばらく我慢してほしい。

 

 

 

 そう思って振り返ろうとした俺の耳に、水晶聖闘士にとって聞き慣れた声が届いた。

 

「先生! これは、これは一体どういうことなんですか! どうしてこんな非道を!!」

 

 振り向けば、そこにはキグナスの聖衣を身に纏った氷河と――

 

「先生? だとすればあの男が、氷河の師匠の水晶聖闘士なのか!」

 

 ――同じくペガサスの聖衣を身に纏った主人公、星矢の姿が!?

 

 

 

 え? ちょっと待って!?

 何で君たちがここにいるの?

 

 確か、星矢は氷河と水晶聖闘士が一戦交えてから合流してたよな?

 記憶を辿るが、水晶聖闘士はまだ氷河と再会していない。

 だからこそ、速攻で問題を片づけてイベントフラグを失くそうとしたんだぞ?

 特に星矢君。君、何でそんなにヤル気に満ちてるの?

 あ、ペガサスのマスクがヘルメットタイプってことは、やはりここはアニメ基準の世界なのね。

 いやいやいや、ちょっと待て。

 今、氷河は何と言った?

 

 ――非道?

 

「……久しぶりだな、氷河。そしてその聖衣、察するに……お前がペガサスか」

 

 動揺しまくっている内心の俺に反して、無駄なイケボでクールに応える外の人。

 思考しながら動けるって便利だね。ってどうでもいいわ!

 

「ヤコフから聞きました。オレが日本に向かってすぐに、変な男たちが現れて村を襲い皆を連れ去ったと。オレは聞きました、先生はどうしていたのかと」

 

 あれ、ちょっと待って。この流れって……非常にマズくね?

 

あの人は悪魔に魂を売った(・・・・・・・・・・・・)のだと、そう言いました。

 オレは……その言葉を信じられなかった。例えそれが傷付いたヤコフの言葉であってもです。なぜなら、オレの知る先生は――」

 

「……止せよ氷河、言っても無駄だぜ。この光景を見ろよ。酷いことしやがる、銃を突き付けて脅すだけじゃなく――村人一人一人を氷の檻に閉じ込めて!!

 魔鈴さんの言っていた通りだ、あの男は――邪悪の手先となっているんだ!」

 

 待ちなさい星矢君。箇条書きマジックは止めるんだ星矢君。

 

 邪悪の手先て。

 星矢に何言ったの魔鈴さん?

 そんなこと星矢に言ってたっけ?

 氷河の命が危ないから助けに行け、ぐらいだったハズよね?

 あれか、ひょっとしてアニメの描写外の出来事です、って奴か?

 

 落ち着け、クールになれ。

 状況を確認しようか。

 背後を見る。

 重火器装備のヒャッハー共。銃口はこちらに向いている。はいワンアウト。

 正面を見る。

 氷の檻に捕らわれた力無き人々悲鳴付き。はい、ツーアウト。

 悲壮感満載の氷河と、正義の怒りを燃やす星矢。

 彼らと対峙するのはワケありっぽい尊敬する師匠。はい、スリーアウト。

 

 駄目じゃん。

 

 これ、アカンやつですやん?

 対峙ルート爆走してる!!

 

 

 

「な、どうしてここにペガサスとキグナスが!? ええいっ、おい、水晶聖闘士!!」

 

 誰だよ、今忙しいんだから話しかけんじゃねーよ!

 

「ひっ!? こ、これは命令だぞ! そ、そいつらを始末しろ!」

 

 どこの馬鹿野郎だと睨み付ければ、コソコソと氷河たちの影に隠れる様にどこかで見たことのあるやつがいた。

 確か、ギガース参謀長の横にいた取り巻きだったか?

 なんでそんな所に、って。

 おいおい、ヒャッハー共を置いて逃げる気満々かよ。

 

「何をしている! さっさとしろッ!! そうすれば今回の事には目を瞑ってやる!!」

 

 

 

 待てやコラ。

 

 ――余 計 な こ と を 言 う ん じ ゃ な い!!

 

 

 

「お前たちもだ! 金なら幾らでもくれてやる! 早くこいつらを殺せ! 何をしているッ、撃てーーッ!!」

 

「う、うわーーーー!!」

 

「死ね死ねしねぇーー!」

 

 狂った様に重火器を乱射するヒャッハー共。

 聖闘士に銃は通用しないと言っても、それはあくまでも戦意に満ちた、小宇宙(コスモ)を燃やしている状態であればこそ。

 超常の力を持っているとはいえ人間だ。寝ている時や日常の中のふとした瞬間、聖衣の無い生身の部分を狙われれば、当たりどころが悪ければ死に至る。

 

 その射線には氷河や星矢だけではなく俺も含まれていた。背後を見せて隙だらけに見えていたのだろうが。

 だが、問題はない。

 放たれた弾丸は、その全てが俺の身体に触れる前にピタリと静止する。

 

 俺が――時を止めた。

 

 ……嘘です。

 

 俺の周囲をキラキラと舞う雪の結晶。

 その一つ一つが強固な盾となって俺を守っている。

 たかが銃弾程度が、この凍気のバリヤーを抜くことなど不可能。

 

 まあ、抜かれてしまうと減衰なしの100パーセント貫通ダメージを食らうっぽいが。

 パリンと割れるバリヤーかよ。

 

「ッ――氷河! オレが奴らの相手をする。お前は――」

 

 ヒャッハー共に向かって駆け出す星矢。

 凍気を操る俺や氷河と違って肉弾戦メインの星矢は弾丸を躱し、あるいは掴み取りながら、次々とヒャッハー共を叩きのめしていく。

 

「分かっているさ星矢。先生は――オレが止める!」

 

 いや、止める必要はないから。

 

 君たちの邪魔をする気はないから。むしろ心情的には君たちの味方だから。

 

 そもそも誤解だからね?

 

「――聞け、氷河よ」

 

 そうだぞ。言ってやれ外の人。

 

 

 

「飛んで火にいる夏の虫とはこの事だ。氷河、師に地獄へ送って貰える事をありがたく思え!」

 

 

 

 ――何 言 っ て ん の 外 の 人 !?

 

「先生!! どうしてなんですか、先生!?」

 

「問答無用! 行くぞ氷河!! とあぁーーーーッ!」

 

 ちょ、早ッ!?

 

「ぐぅ、うわあぁあーーーー!?」

 

 弟子を殴り飛ばしたぞ外の人!?

 

「フフフフフッ、フハハハハハッ!」

 

 笑ってんじゃねぇよ!? 

 何だこのハイテンション!?

 まるで洗脳された時のよう――って、まさか!?

 

「ハァッ!」

 

 倒れた氷河に追撃する水晶聖闘士。

 氷の闘法ではない、物理的な拳の一撃。

 

「くッ」

 

 慌てて飛び退いた氷河だったが、繰り出された拳圧によって吹き飛ばされた格好だ。

 空を切った一撃がゴオンと氷の大地に突き刺さり、衝撃が放射線状に広がる。

 めくれ上がる氷の大地にギガース参謀長の取り巻き共が巻き込まれたのが見えたが、そんな事はどうでもいい。

 

「……さすが先生だ。腕はちっとも鈍ってはいない。むしろ、あの頃よりも――」

 

「フフフッ、氷河よ。射手座の黄金聖衣のマスクはどこだ?」

 

「ッ!? どうしてそれを……」

 

「知っているのか、知らないのか?」

 

「――ッツ!」

 

「答えんか……。ならば死ねぇいッ!!」

 

 

 

 これ、ひょっとしなくても、洗脳解けてなかったの?

 

 

 

 

 

 第2話FE 「非情! オーロラの対決」を台無しにする生存戦略

 

 

 

 

 

 氷河は思う。夢なら覚めてくれ、と。

 

「あなたは、本当に、オレを聖闘士として育ててくれた水晶聖闘士なのか!?」

 

 オレの目の前にいるこの男は、本当に自分の知る先生なのか、と。

 

「違う、オレの先生は、水晶聖闘士は――こんな男じゃあないッ!」

 

 辛く厳しい修行の中、水晶聖闘士の前でシベリアの大氷壁を砕いて見せたあの日の事を覚えている。

 

『氷河……よくやった!』

 

 誇らしげに自分を見る、あの優しい、暖かな眼差しを覚えている。

 

 だが、今目の前にいる水晶聖闘士の眼差しに、あの時の暖かさは微塵も感じられない。

 

「――氷河、生きては返さんぞ?」

 

「先生、オレは今でもあなたに指導を受けたことを誇りに思っています。あなたは、誰よりも立派な聖闘士のはず!」

 

 その眼差しは、氷よりも冷たく、海の底よりも深く、暗い光を灯していた。

 

 

 

 ―――

 ―――――…

 

 思い通りに動かないこの身体。

 どうにかしようと悪戦苦闘している俺を余所に、外の人と氷河のやり取りがどんどん進んでいく。

 幸い、少しづつではあるが、俺の意思に身体が反応するようになってきた。無線での操作から有線に切り替えたような。

 オートを止めてマニュアル操作にしたと言うか。

 そのおかげか、何度か氷河に直撃しそうになった攻撃を僅かにだが逸らすことに成功している。

 

「先生、オレはあなたと戦うことになった運命を呪う! 目を覚まして下さい――この、ダイヤモンドダストで!!」

 

 ダイヤモンドダスト。

 冷気によって相手にダメージを与えるだけではなく、凍結させることによって戦闘能力すら奪うデバフ付きの必殺技。

 原作での氷の闘法を修めた一門が使う代表的な技だが、目覚まし代わりに放つような技ではない。

 

「フンッ、小癪な――」

 

 とは言え、そこは仮にも師匠である。

 実力差からしてまともに喰らうはずもなく、その気になれば熨斗を付けて弾き返す事すら可能。

 実際、原作でも水晶聖闘士は氷河を終始圧倒していた。

 そんな彼が敗北したのは、教皇の施した洗脳に抗い、無防備となったところに氷河の渾身の一撃を受けたため。

 

「――がッ!?」

 

 そう、今の俺のように。

 

 まともにダイヤモンドダストを食らい、吹き飛ばされた水晶聖闘士の身体が十字陵もどき――氷のピラミッドまで吹き飛ばされて叩き付けられた。

 

 

 

「が、ハッ!?」

 

 のたうち回りたくなる程に――痛い!

 トラックに撥ねられるってこんな感じか!?

 この痛みから察するに、さすがに水晶聖闘士もダメージを受けたようだ。

 受け身なり何なりしなければ、そらそうだ

 

「……だが、おかげで、多少は“俺で”動ける」

 

 ん? あ、い、う、え、お……お?

 

 思った通りに言葉が発せられた?

 

 腕――動く。

 指――動く。

 手も足も、違和感なく動く、動かせる!

 これは、一体どういうことだ?

 

 そもそも、氷河を目の前にしておかしくなったのだから、魔拳の影響と考えるのが筋が通る。

 で、魔拳を受けたのはあくまでも水晶聖闘士なわけで俺じゃない。だから俺には魔拳の影響はない。

 そんな俺がメインだったからそれまでは普通だった?

 

 ということは、だ。

 洗脳の――魔拳の影響が切れたのか?

 何で?

 さっきの衝撃で外の人が気絶した?

 辺り所が悪かった? 

 いや、衝撃程度で解けるなら誰も苦労はしていない。

 でも、後半は結構自力で解けてるしなぁ。

 俺という中の人がいたから?

 そうと言われればそのような気もする。実際、ちょこちょこ干渉は出来ていたわけで。

 

 ……前提条件が間違っている?

 教皇のアレは幻朧魔皇拳ではなかった?

 ああ、何のシリーズだったか忘れたけど、完成に近づいた、とか言ってたような?

 

 まあ、いい。考察は後からだ。

 少なくとも現状に不都合はない。

 一先ず魔拳の影響は無くなったと考えよう。

 

 

 

 氷の瓦礫に埋もれながら氷河を見た。

 

 消耗が激しいのか肩で息をしている。こちらの様子をうかがっているようだが、あの様子では追撃はないだろう。

 星矢の方は、無事にヒャッハー共を叩きのめしたか。氷の檻に捕らわれる形となった人たちを助けようとしているが……。

 

「くそっ、なんて固いんだ。オレのパンチでも壊せないなんて。こうなったら、少々荒っぽくなるが流星拳で――」

 

 やめろ馬鹿!?

 あの氷壁は即興なんだ。さすがに聖闘士の必殺技を防げるほどの強度で構築してはいない。

 砕いた余波で、中の人たちもただでは済まない。酷いことになる!

 

 ……そうだ!

 外敵がいなくなったのならば、もうあの氷壁は必要ない。

 さっさと解除して――この状況を利用しよう。

 

 何せ、水晶聖闘士の死亡フラグは洗脳状態で氷河と戦った事。

 不可抗力で一戦交えてしまったが、ここで『俺は正気に戻った』と言って、このピラミッドを破壊すればいかにもそれっぽい!

 去り際に――強くなったな氷河、とでも言えば、完璧なフェードアウトも可能。

 後の事は星矢たちに任せればいい。

 

 ……。

 …………。

 ………………もにょる。

 

 何か、こう、もやっとする。

 

 これは、水晶聖闘士の感性か?

 

 聖闘士としての義務や使命を果たせと?

 

 いや、別に俺がやらんでも原作では――

 

 

 

 ――原作では?

 

 待て。

 ちょっと待て。

 

 どこまで――進む?

 どこで――終わる?

 

 まさか、Ωまで行くのか?

 

 星矢が言った言葉を思い出せ。

 

『魔鈴さんの言っていた通りだ、あの男は邪悪の手先となっているんだ』

 

 アニメでの魔鈴はそんなことは一言も言ってない。

 ここにいた敵はヒャッハー共だけで、ギガース参謀長の取り巻きなんかいなかった。

 描写されていないだけと思っていたが……。逆に言えば、描写されてない場所で何が起こるかなんて分かりはしないってことだ。

 

 水晶聖闘士はここで死ぬ。

 それで水晶聖闘士の物語は終わりだ。

 

 でも、俺は死にたくない。

 死にたくないから生きる。

 

 生きるために戦う?

 

 俺の道は描写されていないのだから、当然その先に何が起こるかなんて分かりはしない。

 

 しかも、ここはアニメ版基準の世界。

 アニメ版は、原作漫画に比べてモブが死ぬ。

 一般人が死ぬ。

 街一つ、国一つ簡単に滅ぼされる表現がある。

 仮に、劇場版まで加わったら?

 

 ヤバい。

 特に劇場版はヤバい。

 一般人への被害もそうだが、最強の黄金聖闘士が噛ませ役にされかねない世界な時点でもうヤバい。

 アニメ版からの派生だから、この世界に関係する可能性は非常に高い。

 

 敵の強さを強調するのにメインキャラの師匠役って、噛ませ役にぴったり過ぎないか?

 

 イカン。

 このままフェードアウトは悪手な気がする。

 俺の力がどこまで通じるか分からんが、むしろ、先が見えている星矢たちと共に行動した方が良いまである。

 

 いっそアテナの護衛役になるとか――駄目だ。それこそ噛ませ役コースだ。

 アイオリアやらソレントやら、ヤベーのに襲われて「気を付けろ氷河」とか言い残して倒される未来しか見えん。

 

 なんてこった。

 原作知識で俺ツエーなんて調子に乗ってた俺の馬鹿。

 

 原作知識がアダになって、逆に身動きが取れなくなってるじゃねーか!!

 

 

 

 to be continued……?

6話からのルートをアンケートしてみようかと思います。

  • TVアニメ版ルート(熱血漢祭り)
  • セインティアルート(俺つえー)
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