聖闘士星矢~クリスタルエレジー~Final Edition   作:水晶◆

27 / 34
オープニングはThe Beautiful Brave。
エンディングは争い死にゆく者たちに祝福を。


第22話 カニカマとアフロが仲間になった

 さて。

 確かに、俺もギガースからの提案を沙織お嬢さんがどう答えるのかに興味はある。

 アフロディーテが言うように、いくら強いからといって序盤からお助けキャラ(ジェイガン)に頼り過ぎると、他のメンツの成長を阻害することになるのも理解出来る。

 成長できる機会――この場合は時間か。限られたリソースをほぼ完成されたユニットに与えるのは無駄だからな。

 なら、せめて銀のやり(アドバイス)ぐらいは渡してやっても、とは思うが……。

 それで調子に乗ってシーダを敵陣に突っ込ませると、耐久の低さもあってやっつけ負けや、弓に対しての特攻で簡単に事故ってしまう。

 実際、沙織お嬢さんは十二宮で早々に黄金の矢が刺さって行動不能になってしまっているからな。まあ、あれはトレミーの腕を褒めるべきか?

 

 そう考えると、やたら突撃癖のある沙織お嬢さんには、アフロディーテが言うように下手に頼りになる仲間はいない方が、行動も慎重になって――。

 

 ――ならんな。

 

 そんな状況になれば、ストッパーがいない分『わたしが何とかしなければ』と、一人突っ走って突撃かましたのが原作だ。

 その事を知る俺がいる以上、わざわざ捕らわれのお姫様になりに行くのを黙って見過ごす理由もないので、その辺はどうにかしようとは思う。

 どうにかしようとは思うのだが、どうにかしてしまって良いのだろうかとも思うんだよなぁ。

 この辺は割り切ったつもりだったんだが。

 ドラ○もんは、常日頃からこのプレッシャーと戦っていたのか……。違うか。

 

 なんにせよ、アフロディーテには悪いが多少の思考誘導は行った方が良いだろう。

 問題は、原作を離れたこの状況では、俺に出来るアドバイスなんてありゃあしないって事か?

 原作では上手くいった選択でも、その原作がもうアテにならないこの状況。

 そもそも誘導しようにも、俺自身が誘導するべき先が見えていないからなぁ。

 

 ……俺が道を示して欲しいわ。

 

 まあ、どう見てもアテナ大好きな圧の強いマユラさんとか、いまいち立ち位置が分からんがアフロディーテもいるから、俺が何をしなくともそうそう酷い事にはならんだろう。

 

 最悪、俺が纏めて全部ぶっ飛ばせば――。

 

 ……あれ、そういえば。

 

 脳筋思考で考えていたが、こいつらって具体的に現在進行形でぶっ飛ばしても文句の言われない――つまり悪事だが、何かしているのか?

 確かに、ギガースは色々とやらかしているが、あれも本をただせば教皇の命令に従っただけとも言えるし、後ろの暗黒連中も一度は死んだ身。

 そしてギガースの主張も、自分たちを騙し続けた教皇とその一派を協力して聖域から排除しましょう、だ。

 

 ワンチャン、マジで改心しているってのも……あり得るのか?

 

 うわぁ、敵対勢力(推定)に対話から入られるって、思った以上にメンドクセェ。

 

 アテナ的にも、『放って置くと拙いから、やらかす前にやっちゃえ』は無いワケで。基本専守防衛だからな。

 原作のデスマスクなら、怪しければやってしまえを平気でやりそうだが、ここのオネエがそれをやるかと聞かれると……。

 

「……ギガース。それは、本当にあなたの心から出た言葉なのですか?」

 

「……それは、どういう意味でしょうかな」

 

 おっと、始まったか。

 さて、この問答、どんな結末を迎えることになるのやら。

 

 

 

 

 

 第22話 厳しさなんて、それこそ教皇やその補佐役なんかが受け持てばいいのよ

 

 

 

 

 

 深夜。グラード財団療養所。

 ギガースたちの襲撃を受けた城戸本邸から比較的近くに設けられた医療施設である。

 故城戸光政が、銀河戦争を行うにあたって深く傷付き倒れるであろう聖闘士たちのために準備させた施設の一つであり、世界でもトップクラスの設備と医師団を備えた場所だ。

 

 その一室、第3集中治療室(ICU)と書かれた部屋の前に、沙織と辰巳、そして私服に着替えた瞬とゲオルク、メイド服に着替えた美衣の姿があった。

 そして、室内には多くの医師たちと、様々な機器に繋がれ眠りについた患者――聖闘士と聖闘少女たちの姿がある。

 患者とは星矢とミスティ、翔子とシャオリンだ。

 

 沙織は窓ガラスに手を当てながら室内の様子をじっと見続け、美衣と辰巳はそんな沙織の側に立ちながら、ゲオルクに対して警戒した様子を隠そうともしていない。

 ゲオルクは辰巳の様子を気にするでもなく、腕を組み壁にもたれ掛かりながら沙織と同じように窓から室内の様子を窺っていた。

 

 瞬は、美衣と辰巳の様子に(……敵対した相手とはいえ、仕方がないか)と、周囲に気付かれない程度に息を吐く。

 寡黙な性格のためか、ユアンと異なりゲオルクは多くを語ろうとしない。人となりも分からず、顔を合わせた経緯もあれば、美衣と辰巳の警戒も分かる。

 沙織が同行を認めたからこそ、二人は何も言わないだけだ。

 しかし、瞬自身はゲオルクに対して思うところはない。むしろ、一度対峙したことで、彼の聖闘士としての在り方は尊敬にすら値すると考えている。

 

 城戸光政によって集められた自分たちは、聖闘士になることを強制されて各地へと送り出された。

 聖闘士になったのは生きるためだ。生きてその先にある望みを、未来を掴みたかったからだ。

 幼く何の力も無い孤児であった自分たちには、聖闘士になるしか生きる道が無かったからだ。

 

 しかし、ゲオルクは違う。

 彼は、いや、恐らくは聖闘士となるべく送り出された自分たち以外の聖闘士の多くは、この地上の平和を、あるいは守るべき者のために、自らの意思によって聖闘士となったのだ。

 

(ぼくの目的は生きて兄さんと再会すること。悲しいすれ違いはあったけど、それはもう果たされた。ぼくは生きて兄さんと再び出会えた)

 

 ちらりと、沙織の様子を窺う。

 

 幼き頃の子供故の傲慢な姿、グラード財団代表としての凛とした美しい女性としての姿、アテナとしての気高い姿を思い出す。

 そして、今もこうして毅然とした態度を取ってはいるが、その瞳を僅かながらも不安に揺らめかせている姿を見て瞬は考える。

 

(これから沙織お嬢さんを取り巻く環境は大きく変わる。善きにしろ、悪しきにしろ。皆が、女神(アテナ)としての沙織お嬢さんを求めるのだろう)

 

 たとえ神であったとしても、人として生まれ人として生きた時間がある以上、それはとても悲しい事だと思う。

 

(……自分の感情を押し殺す。立場か、役割か。もう沙織お嬢さんは、昔のように喜怒哀楽の表情を見せることは出来ないんだな)

 

 神を相手に何を、と言われるかもしれない。神の心を人が慮るのか、と。

 しかし、瞬は沙織が人として生まれたことに意味があると。なぜか確信に近い思いを抱いていた。

 そして、だからこそ、一人の少女である城戸沙織という存在を消してはならないのだとも。

 

(だとすれば、きっとこの先、城戸沙織として見る事の出来る、寄り添える誰かが必要になるはずだ)

 

 ふと、瞬の脳裏に邪武の姿が浮かんだが、彼は沙織に対しての憧憬というべきか、崇拝が過ぎるというか、横に並び立つ存在になろうとは考えもしないだろうと苦笑する。

 邪武は極端な例だが、多かれ少なかれ、あの時集められた皆は、城戸沙織という少女に対して羨望と憎悪、そして憧憬の想いを抱いていたのだ。

 

(違ったのは、側に兄さんがいてくれたぼくと、兄さん、氷河と紫龍。そして――)

 

 瞬の視線が室内で眠る星矢に向けられた。

 

(――星矢だ。相手が誰であろうと突っかかっていたからね。聖闘士となって日本に戻った時も、あの頃のように突っかかっていたと邪武が言っていたな)

 

 何の因果か、城戸光政や沙織に対して従順とは言えなかった者たちが、城戸沙織をアテナと知らぬままに、彼女の下に集まって戦っていた。

 

(あまり使いたい言葉じゃないけど、運命というものが本当にあるのならば……)

 

 それとも、ひょっとして、城戸光政はそこまで思い描いてぼくたちを集めたのだろうか。

 

(――いや、止そう。今は目の前の事に集中しないと)

 

 困った時にはいつでも手を差し伸べてくれた兄、一輝は今この場にはいない。

 数日前にふらりとどこかへ出かけてから、音信不通となっていた。

 心配ではあるが、兄ならば何があっても大丈夫だろうという信頼もある。

 

(兄さん。ぼくは、ぼくの出来る事をするよ)

 

 さしあたっては、ユアンやゲオルクに対しての二人のわだかまりを解消させるところからだろうか。

 

 

 

 沙織たちが見守る中、医師たちの動きが慌ただしさを増した。

 室内にいる白衣を着た医師たちとは異なり、ネイビー色の半袖でVネックの医療用白衣(スクラブ)を着た男性が入室したためだ。

 銀色の髪と青い瞳の男性――今は祭壇星座(アルター)と名乗っている水晶聖闘士は、医師たちを下がらせると目を瞑り己の小宇宙を静かに高め始める。

 しんと、周りの空気が澄んだように感じたのは沙織たちだけではない。

 小宇宙に目覚めてはいない医師たちも、何かしらの不可視の力が周囲を満たし始めていることを感じていた。

 水晶の癒しの力、生命の光によるヒーリングだ。

 その効果については、既に第2集中治療室で白銀聖闘士のバベルとモーゼス、そしてアステリオンに対して行い実証されている。

 故に、現代医学の徒である医師たちも、この水晶聖闘士の行動には何も言わない。

 ただし、科学的に究明しようという思いはあるのだろう。幾人かの医師たちは、持ち込まれた多様な機器を操りながらデータ取りに集中している。

 

 その光景に「……ほう」とゲオルクが感心したように呟き、美衣が「これは……」と驚愕を露わにする。

 美衣からすれば、小宇宙とは己の闘志を燃やして高める、言わば動的なもの。

 しかし、目の前で水晶聖闘士が行っているのは、水面に落とされた一滴が生み出す波紋のように、静かに広がる静的なもの。

 小宇宙を燃え上がらせるために強い闘志を必要とする自分には出来ない芸当だと、目の前の光景を食い入るように見つめていた。

 精神的動揺があったとはいえ、カティアに一蹴され守るべき沙織(アテナ)を危険にさらし、そして沙織と共に戦いの場から遠ざけたはずの翔子によって窮地を救われる。

 情けないという思いはあるが、それにもまして強い感情があった。

 

 ――強くなりたい。

 

 少しでも、何かの切っ掛けになるならば、と。

 美衣の前に組まれた手がぐっと握られたことを、ゲオルクだけが気付いていた。

 

 

 

 水晶聖闘士がベッドに横並びになっている星矢たちに向けて両手をかざす。

 室内が、可視化された七色に輝く光――小宇宙によって染められた。

 この光景を初めて見た幾人かの医師の口から驚嘆の呟きが漏れる。それに構わず、水晶聖闘士はその手を星矢へ、そしてミスティへと向けながら彼らの様子を観察していた。

 時折り医師たちと何事か言葉を交わし、そしてその手を翔子へと向けて――僅かに顔をしかめた。

 

「……やり過ぎとは言わんが、アフロディーテめ」

 

 中の様子が分かるようにとマイクで音声を拾っていたのだが、水晶聖闘士の口から出た言葉に、何かあったのかと沙織の緊張が増す。

 沙織からすれば、翔子は自分を守るために戦い傷付いた響子の大切な妹であり、エリスとの戦いに巻き込まれてしまった一般人という認識がどうしても消えない。

 翔子自身が望み、聖闘少女となってエクレウスの聖衣を継承したのだが、それでも沙織にはいつか翔子を平穏な日常へ、父親のもとへ返さなければという思いがあった。

 

「細かな傷こそ多いが、この程度であれば問題はない。ただ、しばらくは目を覚まさないだろう。催眠毒によるものだが、安心して良い。人体に有害なものではない」

 

 沙織の視線に気付いたのか、水晶聖闘士がちらと視線を向けて続ける。

 

「短期間で中々無茶をしていると聞いた。ならば、この際無理やりにでも休ませる事が出来たのだと、前向きに考えておけば良い」

 

 光が収まり、水晶聖闘士が一歩下がると、この場における責任者であろう初老の医師が彼に近付きいくつか言葉を交わしている。

 患者たちの顔色、脈拍、各種バイタルの数値などを確認した医師たちは、危険域から脱したと判断すると、再び慌ただしく動き出した。

 

 

 

「お嬢様。どうやらこちらも上手く行ったようです」

 

「ええ。あの方には感謝しなければなりませんね」

 

 辰巳の言葉に、沙織が窓から手を離すと、そのまま胸元に当てて「ふう」と息を吐いた。

 白銀聖闘士の襲撃と聖闘少女であるカティアの敵対、聖域での教皇との対面と、暗黒聖闘士と思わしき者たちを従えたギガースとの遭遇。

 銀河戦争が一輝たちによって妨害された時もかなり慌ただしい一日であったが、今日のこれはその比ではない。

 そして、やるべきことはまだ終わってはいない。

 

「辰巳、美衣さん。動ける皆を集めて下さい」

 

「かしこまりました、お嬢様」

 

「沙織様、それでは……」

 

「ええ。皆に真実を伝える時が来たのだと、わたしは思うのです」

 

 

 

 ―――

 ―――――…

 

 雷を伴って降った雨も今は止み、雲が晴れた夜空には月の明かりと無数の星々の輝きが煌めいている。

 

 グラード財団療養所の屋上で、そんな夜空を眺める人影があった。

 薄いピンク色のブラウスに着替えたアフロディーテである。

 

 キィと金属の擦れた音が響き、その音がした方向――屋上階段の扉へと振り返れば、にこやかな笑みを浮かべてこちらへと手を振るデスマスクの姿があった。

 その後ろには、不機嫌そうな表情の水晶聖闘士(アルター)の姿もある。なぜスクラブを着ているのが気になるが。

 

「ひっどい話よね~。人が東京タワー前で待つって言っていたのに、いつまで経っても現れないなんて」

 

「……了承した覚えはない」

 

「それに、人をほっぽっといて何やっているのかと思ったら……。何その恰好? あれなの? スーパードクターK(くーちゃん)なの? 医師免許は無いからブラ○クジャックかしら?」

 

「……気にはなっていたんだが。聖闘士にしては、随分と雑学に詳しいんだな」

 

「……これが通じるアナタも大概じゃない?」

 

「……」

 

 ああ、絡まれているのか。

 悪友の悪い癖だ。気に入った相手にはああして事あるごとに弄り、絡もうとする。

 しかし、クーちゃんだと?

 あの氷のような男がクーちゃん?

 

 ……良いのか、それは?

 

「まあ、良い。それで、お前の方はどうだったんだ?」

 

「真っ黒だけど真っ白でもあるわね。まあ、その事は一旦置いて――」

 

 そうこうする内に、二人が自分の近くまでやって来た。

 そして、デスマスクが、こちらへずいと上半身を伸ばして詰め寄って来る

 

「――アフロ。聖域で詰めているハズのアンタが、この時期に、よりにもよってこんな所で何やってんの?」

 

「教皇の命だ。アテナを無事送り届けよ、とな。とは言え、この場にいること自体は事故のようなモノでもある」

 

 そう言ってデスマスクをあしらいながら、相変わらず不機嫌そうな表情の水晶聖闘士を見る。

 

「それを言うならデスよ、お前の方こそ、その男(水晶聖闘士)こんな所(日本)で何をしている? お前は確か邪神の眷属共への対策に動いていたのではなかったのか?」

 

「ええそうよ。現在進行形でね。それと、このオトコは老師お墨付きの祭壇星座(アルター)の聖闘士よ? 水晶聖闘士なんてアタシ知らないわ」

 

 ……良いのか、それで?

 

「それで――」

 

 屁理屈も理屈には違いないが、と考えていると水晶聖闘士(アルター)がこちらへと話し掛けてくる。

 

「それで、城戸沙織の答えは――お前が望むものだったのか?」

 

 そう問われて思い出す。

城戸沙織(アテナ)の言葉を。

 

 

 

 ―――

 ―――――…

 

「確かに、教皇は貴方たちを偽っていたのでしょう。そこにどのような思惑があったのかは分かりません。それでも、今日まで地上を守ってきたのもまた彼らであり――」

 

 ――貴方ではなかったのですか?

 

 その言葉を聞いた瞬間、ギガースの表情から感情の色が抜け落ちた。

 あれ程までに興奮していた事が、まるで嘘であったかのように。

 

「この国で育ったわたしには、聖域にいる人たちがどのような考えを持ち、どのような思いを抱いているのかも分かりません。

 教皇の言葉を信じ、わたしを偽りのアテナと呼ぶ人もいるでしょう。それでも、その人たち全てが話すら聞いてもらえない人たちばかりであるとは思えません。

 説得すれば、わたしを信じてくれる聖闘士もいるかもしれない。犯した過ちに気付き、正しき道へと進もうとする人たちもいるかもしれない」

 

 ――聖衣を纏う聖闘士たちは、地上の平和のために戦う誇り高き戦士なのですから。

 

「ギガース、あなたの言葉は嬉しく思います。しかし、わたしは戦いによって聖域に新たな秩序をもたらそうなどとは考えてはいません。

 私が望むことは、一日も早くあの教皇に会うことなのです。そうすれば、同じ志を持った者たちがこれ以上傷つけ合うことも無く、聖域は――変われます。

 あなたに天啓を与えたという神に伝えて下さい。これは、わたしと聖闘士たちの問題であり――」

 

 ――いかなる手出しも無用である、と。

 

 

 ――――――――

 ―――――

 ――…

 

 アテナの言葉を聞き、ギガースは感服したと言って配下を連れてあの場を去った。

 それが、本意であるのかは分からないが、それを気取らせないだけの役者でもあったわけだ。

 

「ふ~ん、そんなことを言ったのね。それはまた随分と……」

 

「甘い、と?」

 

「いいえ、別に。それで良いんじゃない? 厳しさなんて、それこそ教皇やその補佐役なんかが受け持てばいいのよ。

 ただ、随分と教皇に対して“分かっているように”話しているなって、そこのところが気になっただけよ」

 

 水晶聖闘士に応じるデスマスクの言葉は正しい。

 恐らく、アテナはあの短い邂逅の中で、教皇の――いや、サガの秘めたる何かに気が付いたのだ。

 

「それに、アテナの言う通り、案外素直に皆が言う事を聞く可能性だって十分あるわ。ソイツみたいにね。ねぇ、アフロ?」

 

「……わたしとしては、デスよ。お前が城戸沙織の事を、当たり前のようにアテナとして話していることに疑問を覚えるのだが?」

 

「アフロ、アンタ本気で言ってる? 言ってるわね。 まったく、これだから聖域に引き籠ってる奴らは……」

 

 おい、何だ、その可哀想なヤツを見るような目は。

 

「もっと世俗の事に興味を持ちなさいってコトよ。

 青銅とはいえ、社会的に秘匿されているはずの聖闘士を集めて銀河戦争なんて催しをやらかして、その賞品がよりにもよって聖域から失われた射手座の黄金聖衣よ?

 レプリカだの何だのと疑う以前の問題でしょうが。これで気付かない方が――って、気付かなかったからこそ今があるのよねぇ」

 

「おかげで助かった部分もある。一概にどうとは言えんが、所詮はたられば、だ。そんなことよりも――」

 

 さらりと告げられた水晶聖闘士の言葉に、弛緩していた空気が引き締められる。

 

「――この地にアテナがいる。その事実を前に、お前たちが今後どう動くのかを、この場ではっきりさせておきたいのだがな」

 

 それは、聞き様によっては宣戦布告とも取れる言葉。城戸沙織(アテナ)を害する気ならば、容赦はしないと言っているのだ。

 聖闘士の最高峰、最強たる黄金聖闘士二人を前にして、何の気負いもなくそう言ってのける水晶聖闘士を、身の程知らずという事は出来ない。

 あの老師が認め、カミュやミロ、加えてデスも認めた男だ。

 そして、このアフロディーテもあの異次元空間(アナザーディメンション)の中で、黄金聖闘士に匹敵する程の強大な小宇宙を感じていた。

 例え、今この場で戦うことになろうとも、負ける気は無い。だが、容易く勝てるとも思わない。

 つまりは、油断のならない相手なのだ。

 

「別に、アタシのやることは変わらないわね。今も昔も、聖闘士としての務めを果たすだけよ。そこに教皇の意思だとか、アテナがどうとかは関係ないわ」

 

 おい、デスよ。お前がそういうヤツなのは知っているが、そうもはっきりと言うか?

 まあ、わたしも人のことを言えたものでもない、か。

 

「アテナは――甘い。もはや、言葉でどうこうできる段階ではないのだ。やはり、アテナはただの感傷的な少女に過ぎないと分かった。

 ならば、このアフロディーテが忠誠を向けるのは、今も変わらず教皇よ」

 

 そう。私の理想を、忠誠を捧げる相手は変わらない。

 この世に戦いがある以上、力こそが正義。力無き正義に、何が守れるものか。

 

 だが――

 

「――そんなアテナの下に、お前の様に力ある者が集まるというのならば、それは確かにアテナの力だ。

 水晶聖闘士よ、アテナに伝えて欲しい。

 数々のご無礼お詫びいたします。しかし、地上を守る聖闘士として、己の信じられぬものに忠誠を誓うことは人々を裏切ることになる。それだけは出来ません、と」

 

 わたしは、あなたのことを神話と聖域の記録の中でしか知りませんでした。

 

「ですから、どうかわたしに見せて下さい。あなたがいかなる神なのかを。そして、これからの戦いの中で、あなたの下に集うその力を」

 

 

 

 その力が、わたしの想像を超えるものであるならば、或いは――。

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――

 意識を取り戻した翔子は、己の力不足を痛感する。

 そんな翔子に追い打ちをかけるように、沙織が告げた言葉はあまりに残酷な事実であった。

 

 次回、聖闘士星矢~Saintiaセインティア翔~

 

「わたしに拳を当てられた子から、一対一の相手をしてやるよ」

 

 ご期待ください。

 

 

 

 to be continued……?




セインティア成分強めの沙織お嬢さんはこんなことを言う。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。