聖闘士星矢~クリスタルエレジー~Final Edition 作:水晶◆
射手座の黄金聖衣を求め、次々と襲い来る強敵たち。
苦戦を強いられながらも、星矢たちは一輝、ドクラテス、ガイストたちを打ち破る。
しかし、その戦いの中で星矢たちとの絆を取り戻した一輝を失い、黄金聖衣も頭部を除いて奪われてしまった。
一向に姿を見せぬ黒幕への焦りを募らせる中で、沙織は中断した
星矢や紫龍の勧めを受けた沙織は、瞬を連れて黄金聖衣のマスクと共に一時その身を隠す事となった。
残された星矢たちは悪の手掛かりを求め、各々の師匠の下へと向かった。
紫龍は老師の待つ中国五老峰へ。
氷河は東シベリアの地へ。
ギリシアの聖域へと向かった星矢は、そこで復讐に燃えるシャイナと出会い苦戦を強いられる。
追い詰められた星矢であったが、師である魔鈴の機転によって救われ、氷河に危機が迫っていることを知らされる。
東シベリアの水晶聖闘士に氷河抹殺の指令が下されていたのだ。
故郷に戻った氷河を出迎えたのは、誰もいない荒れ果てた村であった。
そこに、氷のピラミッドの建設現場から命からがら逃げだしたヤコフが現れ、村の住民が攫われ強制労働をさせられている事、それを指揮しているのが氷河の師である水晶聖闘士であると伝える。
氷河が日本へと旅立ち、しばらくして水晶聖闘士も聖域へと向かったが、戻ってきた彼はまるで別人のように変わり果てていたのだと。
真実を確かめるために氷のピラミッドへと向かう氷河。
星矢と合流した氷河の目に、氷の檻に捕らわれた村人たち、そして武装した男たちを従えた、邪悪の手先と化した水晶聖闘士の姿が映る。
自らの師と戦う決意を固めた氷河。
圧倒的な力の差に追い詰められるが、動きを止めた水晶聖闘士の隙をつき、ダイヤモンドダストを炸裂させて水晶聖闘士を倒すのであった。
第3話 後方師匠面からの生存戦略
村の人たちを閉じ込めていた氷の檻が、ガラスの割れるような音を立てて砕け散る。
風に吹かれてキラキラと舞い散る氷の欠片と、村人たちの喜びの声が聞こえる。
彼らの笑顔と、こちらに向けられる感謝の言葉に、星矢は氷河たちの戦いが決着した事を理解した。
「さあ、みんな、もう大丈夫だ。村へ帰ろう!」
見れば、何でもない風を装って氷河が声を上げている。
誰が、何の目的でこんな物を作らせようとしたのかは分からずじまいだったが、確かにいつまでも居たい場所でもない。
「まったく、氷河のやつ。自分もダメージが残っているだろうに、無茶しやがって……」
幸いにして、自分には大したダメージも疲労もない。
ならば、村人たちの避難をオレも手伝うかと、周りを見渡した星矢の目に――老人と語り合っている氷河へと、冷たい輝きを放つ銃口を向ける男の姿が映った。
「彼は……水晶聖闘士は儂らを護ろうとしたのではないのか、と。そう、思いたいだけなのかもしれん。しかし、今となっては、な……」
「……おじいさん。オレも、そうであって欲しいとは思います。先生の様子は明らかに普通じゃなかった。ヤコフも先生が聖域から戻ってきてからおかしくなったと言っていました。
何か、心当たりはありませんか?」
村のまとめ役でもあった老人と水晶聖闘士との関わりは十数年来のもの。その中には氷河の知らない思い出も多々あるのだろう。
どこか沈んだ様子で氷河へと語りかけるその姿からは普段の力強さは感じられず、あるいは、何故という思いは氷河よりも強いのかもしれない。
「……分からん。儂も彼が聖域へ行くとしか聞いておらなんだからな。ああ、そう言えば――こうも言っておったな」
「先生は、何と?」
「新教皇に真意を問う、と」
―――
―――――…
「――ッ、氷河!!」
星矢の叫びを、しかし、老人と話し込んでいる氷河は気付いていない。
聖闘士に銃は通用しないが、無防備な状態で生身の部分を狙われればその限りではないのだ。
射線に入り氷河の盾となるのか、ここから男を攻撃するべきか、それとも――
思考は一瞬。
鍛えられた星矢の動体視力が、男の指が引き金を引く瞬間を捉えてしまう。
間に合えと、飛び出した星矢の耳に銃声が鳴り響いた。
――――――――
―――――
――…
「……あ、あぁ……」
硝煙を燻ぶらせる銃口に視線を向けて、男の口からは言葉にならない声が漏れ出ていた。
何故、どうして、と。
氷河を狙っていたはずの銃口はあらぬ方向を向き、放たれた弾丸は空を切った。
再び銃口を向けようとするが、まるで石になってしまったかのように腕が、足が、身体が動かない。
唯一動く視線が捉えたのは、銃身を掴み自分に向き合うように立った水晶聖闘士の姿。
目と目が合った。
その瞳に映るのは、氷の彫像と化した男の姿。
それが、自分の姿を映したものであると認識するよりも早く、男の意識は弾け飛んでいた。
―――
―――――…
一瞬の出来事であった。
星矢の声に自身の危機を悟った氷河であったが、隣に立つ老人の存在がその行動を遅らせる。
響き渡る銃声。
致命ともいえるその隙は、しかし、氷河に来るべき衝撃を与えることは無かった。
銃身を掴み、男の身体ごと凍結させた水晶聖闘士が、氷河に背を向けたまま静かに告げる。
「……勝って兜の緒を締めろ、とはよく言ったものだ。ここが敵地であることを忘れたのか、氷河よ」
「せ、先生!?」
「ク、水晶聖闘士!? そんな、アイツは氷河のダイヤモンドダストをまともに受けて倒れたはず!! おじいさん、アンタは他のみんなを連れて早くここから逃げろ!」
「――あ、ああ。分かった。氷河、アンタも、村で待っているぞ!」
氷河を庇うように身構える星矢の頬を一筋の汗が伝う。
一見すると、水晶聖闘士が氷河を助けたように見えるが、聖闘士となるべく修行を重ね、身に着けた感覚が警鐘を鳴らしていた。
戦いはまだ終わってはいない、と。
「ペガサスか、その答えは今お前が言った通りよ。確かに私は氷河のダイヤモンドダストをまともに受けた。しかし、私はこうしてお前たちの前に立っている」
破れたマントを放り捨て、水晶聖闘士が振り返る。
その身には、纏った聖衣には、傷一つ付いてはいない。
「オレと先生との間には――それだけの差があると?」
「見事なダイヤモンドダストではあったが、敵である私の目を覚まさせるなどと――そんな甘い考えが、覚悟が。氷河よ、お前の死を招くのだ」
「だったら、これならどうだ! オレは氷河と違ってアンタに掛ける情けなんか有りはしない!! 食らえ、ペガサス流星拳!」
強敵たちとの戦いで研ぎ澄まされてきた必殺の拳。
星矢の繰り出した無数の拳が水晶聖闘士を襲う。
「流星拳、それがお前を聖闘士にした拳技か。成る程、一秒間に百数発は放たれている。
「ば、馬鹿な!?」
星矢の表情が驚愕に歪む。
水晶聖闘士はその場から一歩も動いてはいない。
その拳の全てが、躱され、逸らされ、受けられ、弾かれていたのだ。
「だが――軽い。おそらく、この技を会得するにあたっての仮想敵は、お前の一撃では倒れぬタフネスの持ち主であったのではないか? 一撃で倒れぬからこそ連撃を、とな」
「流星拳が効かない!? くそっ、まだだ! あの時を思い出せ、小宇宙を高めるんだ、もっと、もっと!!」
「そして、そのためにも、より速く、と速度を求めて磨き続けた。特化させようとするその方向性は必ずしも間違いではないが――」
「燃えろ、オレの小宇宙よ! ペガサス流星けーーーーーーん!!」
「ほう、さらに速度を増したか。だが、やはりその極に至るには――まだ、未熟。今のままでは、圧倒的な防御力を持つ敵を前に通用はせん。このように」
水晶聖闘士が星矢に向けて手をかざす。
生み出された無数の氷の結晶が、まるで花弁が舞うように二人の間に広がると、瞬く間に巨大な氷壁と化して星矢の拳の全てを防ぎ止めてしまった。
「即興ではあるが、フリージングウォールとでも名付けようか」
「そ、そんな……!? 一度ならずニ度までも……」
「雨垂れ石を穿つ、とは言うが……その程度の攻撃を面に広げたところで私には通じん。そして、敵を前に呆けるなど、自ら殺して下さいと言うも同じと知れ!」
「ッ!? しまった!!」
渾身の流星拳を防がれた衝撃により動きを止めた星矢に、氷壁を解除した水晶聖闘士の拳が迫る。
「させるものかッ!! ダイヤモンド――ダストーーーーーーッ!!」
「来たか氷河! その気迫、私を倒す気概を持ったか!! 良かろう、ならばこちらも見せてやろう――ダイヤモンドダスト!」
氷河の高められた小宇宙に応じる様に、白い凍気が嵐と化して水晶聖闘士に迫る。
対する水晶聖闘士は、星矢を蹴りつけることで態勢を変えると、氷河に向き合いダイヤモンドダストを放って見せた。
高められた小宇宙の影響か、水晶聖闘士の放つダイヤモンドダストは青く輝く凍気の嵐と化して氷河に迫る。
白と青の凍気がぶつかり合いに――競り勝ったのは青の凍気。
「うわぁあああああああああ!!」
「氷河ッ!!」
吹き飛ばされ、頭から大地へと叩きつけられそうになった氷河を、氷の大地を滑り込むようにして駆け付けた星矢が受け止めた。
「っく、大丈夫か氷河!?」
「あ、ああ。すまない星矢、助かった。しかし――」
「ああ――強い。これまで出会ったどの敵よりも……。水晶聖闘士、恐るべき相手だ!」
お互いに支え合うようにして立ち上がる星矢と氷河。
その視線の先には、こちらへと悠然とした歩みを崩さぬまま進む水晶聖闘士。
その視線は、一部の油断も隙も無く二人を捉えている。
その眼差しに、ふと氷河は違和感を覚えた。
「……先生?」
鋭い、刺すような眼差しに変わりはないが、この地で出会った時のような闇が感じられない事に。
ほんの一瞬ではあったが、あの時の暖かな光を感じた事に。
たった一撃。それも、ついでとも言えるような蹴りを受けただけ。
それだけで膝に力が入らなくなっていることに、改めて星矢は彼我の戦力差を思い知る。
敗北の二文字が脳裏をよぎるが、まだだ、と闘志を奮い立たせた。
自分には、まだやらねばならないことがある。
帰りを、無事を祈ってくれている人がいる。
オレの小宇宙の炎はまだ消えちゃいない。
まだ、やれることはあるはずだ。
魔鈴さんにも教えられたはずだ。
思考を止めるな、考えろ。
『――その程度の攻撃を面に広げたところで私には通じん』
「――ッ!?」
星矢の脳裏に水晶聖闘士の言葉が浮かぶ。
なぜかは分からないが、その言葉をそのままにしてはいけないと、星矢の直感が訴えていた。
水晶聖闘士は何と言った?
この場を打開できるかもしれない可能性。それが喉元まで出かかっている。
「ほう、手も足も出ない現実を目の当たりにしながらも、未だ闘志は衰えずか。魔鈴の指導が良かったのか、それともお前の資質か?」
しかし、星矢が答えを出すよりも早く、水晶聖闘士が二人の目の前に立った。
一足一刀の間合い。
戦う意思はある。しかし、勝利には届かない。
「――星矢、もう、いい」
それでもと、拳を構えようとした星矢を氷河が止めた。
「氷河……一体何を?」
「悔しいが、今のオレたちでは先生には勝てない。だが、先生の戦い方を知るオレなら足止めぐらいはできるさ。星矢、お前は一刻も早くここから逃げるんだ」
「な、何を、何を馬鹿なことを言うんだ氷河!!」
「……私が、大人しくペガサスを逃がすとでも?」
「だからこそ、オレがここで先生を止めると言っています! あなたに教えられた全てをもって!!」
―――
―――――…
フッ。
やっちまっちゃったぜ。
氷河が銃で狙われていたので思わず助けに入ってしまった。
死んだふりしてやり過ごし、落ち着いたところで今後の事を考えようと思っていたのだが。
まあ、この先どうなろうとも、星矢や氷河が強くなるのに越したことはなく。
俺自身も、正直この身体――水晶聖闘士の力を測りかねていたので、ちょうど良いかと練習試合なノリでデュエルスタート。
適当なところで切り上げて、『強くなったな氷河』でお茶を濁す所存。
……したまでは良かったが。
洗脳というデバフから解き放たれた以上、アニメよりも多少は強いぐらいを想定していたのだが――万全の俺、強過ぎない?
自画自賛になってしまうが、正直、序盤で出てくる敵の強さじゃないよこれ。
圧倒的過ぎて、星矢と氷河が比較対象になってない。
自分の強さがいまいち測り切れなかったので、ならばと原作知識を生かしての後方師匠面ムーブをかましながら、二人を強化する方向へとシフトする。
小宇宙を高めるのです。
小宇宙は全てを解決します。
人間、追い詰められると火事場の馬鹿力を発揮するように、聖闘士は小宇宙も高まりを見せるらしい。
聖闘士の優劣は纏っている聖衣の優劣ではなく、どれだけ小宇宙を燃焼させられるかだってムウも言っている。
ちなみに、この
なんとなく、青銅以上白銀未満的なイメージがあるが、実際はもう少し違うのだろうか?
追加で氷河は主にメンタル面の強化を、星矢は早期の彗星拳の取得を目指す。
流星拳はステータスを上げれば銀河烈星拳クラスの強スキルになりそうだが、今の段階では収束して放つ彗星拳の方が強い。
ただ、ハッキリとこうしろ、と言えないのがもどかしい。
何せ、アニメの星矢はスクリュードライバーよろしく自分を高速回転させて突っ込むバージョンを編み出してもいる。あまり変な固定概念は持たせない方がいい。
とか、色々と考えながらやっているうちに、どんどん楽しくなってきた。
いや、凄いわ、この二人。
スポンジが水を吸うが如く、言ったことを吸収して即座にアップデートしてくる。
成長率がおかし過ぎて笑えて来る。表情筋が死んでいるのか表情には出ないけど。さすがクールキャラ。洗脳中の悪人顔は忘れて差し上げろ。
なんて調子の乗ってたのがマズかった。
ノープラン行き当たりばったり考えなしの俺の馬鹿。
「だからこそ、オレがここで先生を止めると言っています! あなたに教えられた全てをもって!!」
覚悟ガンギマリに成長された氷河さんが荒ぶっておられる。
脳内でミロが『貴様(ら)の頑張り過ぎだ』と笑っている。
ああ、水晶聖闘士とカミュに交友があるから、ミロとも交友があったのね。
なるほど、これが原作外情報か。心底どうでもいい情報をありがとう。
さて、これ、どう収拾をつけようか?
to be continued……?
6話からのルートをアンケートしてみようかと思います。
-
TVアニメ版ルート(熱血漢祭り)
-
セインティアルート(俺つえー)