聖闘士星矢~クリスタルエレジー~Final Edition 作:水晶◆
ネタバレを含みます。
かっとなってやった。
新天界歴〇〇〇〇〇年〇〇月〇〇日
数百年か、数千年か。
いや、それとも数時間程か。
神たる身にとっては、流れゆく時にさほどの意味もない。
決して寝過ごしたわけでも、寝すぎたわけでも、寝起きで頭が呆けているわけでもない。
なんにせよ、体感としては久方ぶりに目覚めてみれば、天界の一部が何やら騒がしい。
喧騒が感じ取れるのだ。
身だしなみを整えて、寝所を出る。
眠りにつく前よりも眉が太くなっているような、全体的に厳つくなっているような気がしたが、まあ気のせいだろう。
……荒木テイストから男塾テイストになったような。
いかんな、まだ頭がハッキリとしていないのか。
自分の思考の意味が分からない。
太陽神神殿の我のために設けられた座に就く。
座に就いたはよいが、特に急いでする様なことはない。
確か、
おそらくは高貴な者に対して使う言葉なのだろう。意味は分からんがクロノスが我のことをそう言っていた。
「お待ちしておりました、アポロン様」
人語を解す馬面が私の名を呼んだ。
馬面ではない、馬だ。どこからどうみても馬だ。全身装甲を纏った三匹の馬だ。
さて、人語を解す馬に知り合いなどいないのだが。
「あの、私です。
誰であったか、と悩んでいれば馬が人の姿となった。
思わず声が出そうになったが、そこは太陽神。
この程度のことで揺らぎはせん。
いや、決して、人の姿に変態(誤字にあらず)したことに驚いて名乗りを聞いていなかったなんて事実はない。
ところで、全然関係ないのだが、もう一度名乗って貰えないだろうか?
いや、それはそれで失礼な事であるな。
ここは思い出すのが筋というものであろう。太陽神として。
天闘士といえば……。
ああ、ああ。
天闘士ね。
知ってる、知ってるから。
太陽神分かっているから。
イカロスとテセウスとオデュッセウスであろう?
主人公っぽいのとクール系と、目つきが悪いの。
しかし、何だな。
お前たちイメチェンしたのか?
身に纏う鎧もまるで聖闘士の黄金聖衣のようにゴツゴツとしている。
もっと体にフィットした軽装だったような気がするのだが。
それに、イカロスはともかく、二人は、その、何だ?
随分と、その、小物臭く……なった、ような?
いや、これは……。
……別人、だな。
ふむ。
ヤバい、な。
全く思い出せん。
まさか、神たる身が、この年齢で――ボケが始まったのか!?
いかんな、ボケ防止対策には何があった?
あれか、北欧の黄金の林檎を取り寄せるか?
そうとなれば、ヘルメス辺りに頼んで……。
――なお、この間僅か1秒!(ナレーション 大○透)
いや、まずは、目の前の彼らの話を聞くのが先だな。
太陽神は優先順位をはき違えないモノ。
対策は既に練られている。
「ふむ、天闘士たちよ、何があった? 申せ」
困った時の代名詞よ。
新天界歴〇〇〇〇〇年〇〇月〇△日
らしい、だ。
何をやらかしたのかはまだ分からん。
というのも、もう一人の
あの厳格な委員長気質のアルテミスが私に報告を挙げない時点で、つまり、私の耳に入ればマズいようなことをアテナがやらかした証明となっている。
この時点でもう嫌な予感しかしない。
あれでアルテミスはアテナに対してかなり甘い。ツンデレ、いやクーデレというやつか?よく分からんが。
クロノス曰く、未来における特定の人物像を示す概念の一つらしい。現在、過去、未来と、時を司るアイツの語る事には未だに理解出来ぬことが多い。
まあ、よい。
裏でコソコソされるのは気に喰わんが、何でもかんでも干渉しようとするのは良くないからな。
過保護過ぎてはせっかくの成長の機会を奪う事になる。
決して「お兄様うざいです」等と言われたくないから、なんてことはない。
悠久の時を過ごす神々にとって年齢などにさしたる意味は無いが、あの年頃の娘(?)は気難しいらしい、からな。
これでも私は気遣いの出来る男なのだ。
何があったのか気にはなるが、
それに、いよいよとなれば、私が出ればよいだけのこと。
となれば、何が起きても対応できるようにアルテミス神殿に向かってはおくべきか。
新天界歴〇〇〇〇〇年〇〇月〇◆日
馬に変態した天闘士のひく天駆ける馬車に乗ってアルテミス神殿へ。
謁見の間には異様な雰囲気がある。アルテミスとアテナの間で一悶着あったのであろうか?
察するに、アルテミスがアテナに人間をこの神域に連れてきたことを叱責している、といったところか?
ふむ。
ならば、ここはひとつ、頼れる偉大な兄としての威厳を見せるために二人の諍いを仲裁してやるか。
あの人間たちも、まあ、アテナが連れてきたのなら我が何を言う事もあるまい。
人間に対しては、時には寛容さを見せてやるのも神としてまた必要なことよ。
イカン。
アカン。
あきまへんで!?
なにやってんのマイシスターズ!?
一人の人間のために過去改変!?
その結果、天地崩壊寸前!?
神としてソレを天秤にかけちゃいかんだろう!?
アテナもアテナだ!
なんでそう変な方向にばかり思い切りがいいのよ!?
いや、やるときはやる娘だとは知っていたが、知ってはいたが!!
で、だ。
問題はこのマイシスターズと人間――聖闘士ども、に対しての裁きだ。
アルテミスの下した裁きは、人間に対しての裁きと考えれば妥当であろう。
しかし、神が起こした罪として考えれば――。
ハーデスやポセイドン、タナトスやヒュプノスらを討ち果たしたことについては我としては正直どうでも良い。
戦いなのだ。それもハーデスたちから仕掛けた戦いだ。
アテナはそれを迎え撃っただけのこと。勝者があれば敗者があるのは道理。
勝者がアテナであった、それだけの事に過ぎぬ。
問題は、やはり天地崩壊寸前であったこと。というよりも、それを引き起こす切っ掛けとなったこと。
その原因がアテナの人間への深い感情によるものである事だ。
人が神に、神に懸想するなんて神話の時代では珍しくもないこと。
兄として、それがアテナで起きたことにもにょるモノは確かにあるが、頭ごなしに否定するほど我は狭量ではないぞ!?
クソ親父殿のやらかしを見ろ、あれに比べればむしろ好感すら覚えるわ!
立場上大っぴらには言えんが!
――あれ、だから相談されなかったの我?
いや、今はそれはどうでもいい。
重要な事じゃあない。
太陽神は過去を振り返らない。
アルテミスも言えよ! 言いなさいよ!!
報告、連絡、相談!
言われなきゃ分からないでしょうが!!
突き放すなら突き放しなさいよ!
どう聞いてもクロノスのところに誘導しとるやん?
アテナに対して裁きを口にしていたが、お前もかなりアウト寄りだ。
正直、お前も裁きの対象になるのだぞ?
他神の目もある。
なあなあでは済まされぬのだ。
対応を間違えれば、これを機に、十二神の座を狙う者が必ず出る。
天界に騒乱を巻き起こすわけにはいかんのだ。
クソ親父殿のやらかしの後始末に奔走する日々はもう御免なのだ!!
こうなれば、アレだな。
最初に過大なまでの要求を示し、「いや、太陽神様、それはやり過ぎです」という空気を作るのだ。
そうして、「そうまで言うのならば仕方あるまい」と、罰を軽減する。アンカリング効果というヤツだ。
となれば、どの程度まで要求を見せるかだが。
え、ちょっと待って。
太陽神ドン引き。
いや、あの、え~~~~っ!?
そりゃあ、神にそこまでの覚悟を見せられたら誰も文句は言えないですけど!?
誰がそこまでしろと言った! 言え!
我か!?
何、太陽神の圧が強過ぎた!?
「お兄さま」
「……お兄さま」
ええい、どいつもこいつもそんな怯えたような、警戒に満ちた目で、縋るような目で我を見るでない!
まるで、我が鬼か悪魔の様ではないか。我太陽神ぞ?
何でそうなる?
何でこうなる!?
とりあえずクロノスはシバく! 徹底的にだ!!
続かない……!