こんにちは、石持克緒です。
この作品を書いて気づいたことは、「ミードの口調ってほぼレヴィじゃね?」ということと、「口汚いセリフの方がすんなり思いつく」ということです。
……自分の性格が滲み出てる気がします。
二話目です。
数時間後、イスラポルトからハトバへ。
砂漠の中でありながら湖に面したこの町は、《アシッド・キャニオン》でも数少ない港町である。大きな町ではないが連絡船が通り、同じく港町であるデルタ・リオとイスラポルトを海路(海ではないのだが)で結んでいる。故に陸路で訪れる者はそう多くないのだが、連絡船か自前の船でやってくる者がいて、規模のわりに人の出入りは激しい。
西に行けばアリ型のモンスターが巣食う森があり、北西に向かえばアズサの町がある。その拠点として利用する者が多く、そうしたハンター達が落とす金で、この町は栄えていた。
ミードとメスカルは、ハトバの酒場で食事をしていた。日が落ちて、一日の活動を終えた人間達が集い、各々騒ぎながら酒を飲んでいる。だからミードが怒声を上げようと、周囲の客は全く反応しなかった。
「あんっのクソヤローがよぉっ!! マジブっ殺してやるからなFack!」
「まあまあ落ち着きなさいよ。 カシャッサ、アリのタマゴ焼き追加」
「あいよ」
メスカルはミードの背中をさすりながらなだめる。カウンターの向こう、カシャッサと呼ばれたバーテン姿の女は、慣れた手つきでコンロに火を点けた。
「だってよー!あいつ……っクソ! あー腹立つ!!」
「どうしたんだ、こいつは」
「イスラポルトのハンターオフィスと一悶着、っていうか、折り合いが悪くてね。口喧嘩したのよ」
「よく口喧嘩ですんだな。ミードの気性じゃ、オフィス相手でも殺し合いそうなんだが」
「実際、銃も抜いたわよ。相手も武器出したし。 クリークも見た目にそぐわず、血の気が多くていけないわ」
「クリーク?」
カシャッサは半熟に焼いたタマゴ焼きを皿に盛り、「ほれ」とミードの前に置く。
「イスラポルトのクリークか。あいつ確かに愛想悪いよな」
「だよなあ! つかカシャッサ、あいつ知ってんの?」
「流れの賞金稼ぎやってた頃に、何回か顔合わせたぐらい。でも、当時からクリーク絡みの揉めごとはあった」
「やっぱり! やっぱあいつはダメだ。オフィスは今すぐクリークをクビにするべきだな」
「はいはい。さ、追加のタマゴ焼きよ。冷めないうちに食べちゃいなさいな」
「いただきます! ――メスカル。あたしも酒飲みたいんだけど」
「駄目よ」
メスカルはグラスに注がれた酒を一口飲んで言った。
「あなたは禁酒中。一滴たりとも口にしちゃ駄目」
「なんだよー。メスカルは飲んでるじゃんかよー」
「私はあなたほど酒乱じゃないから。それに、あなたみたいにほとんどの町の酒場で出禁はくらってないから」
ぐ、とミードは言葉に詰まる。
「ここだってマスターの温情で、酒は飲まないって約束で出入りできてるのよ? 大人しくミルクで我慢しなさい」
「へーいへい。わかりましたよ……そういや、マスターいなくね? 死んだ?」
「死んでるわけないだろ……メルトタウンまで出張してる。新作メニューの研究に行くんだと」
「無茶するわね。連絡船はイスラポルトまでだし、ダーク・カナルから先はずっと陸路よ。モンスターもそこそこのがいるし、メニュー一つに命懸けすぎじゃない」
「いや、丁度メルトタウン出身だって言う客が来てな。飲み代をタダにする代わりに、そいつの
「なるほど。そりゃラッキーだな」
「ああ、本当に運がいい。マスターは」
そう言ってカシャッサは別の客の下へ向かう。注文を聞きにいった様だ。
「旨いメシにゃ人知れない苦労があるってか。 ……アリのタマゴ焼きもそうだよな。巨大アリの巣まで卵取りに行ってんだろ?」
「そうね。でも、アダム・アントがいなくなっても、アリンコ共が活動をやめないのよね……それに、妙なヘビが住み着くようになったみたいだし、危険な場所には変わりないわ」
「ヘビ?」
「ヘビ。そういう意味でも、マスターは幸運だったわね」
「はあ……ああ、そういうこと」
ミードはカシャッサを見やる。カシャッサは片手で荒々しくシェイカーを振っていた。
「都合のいい手駒か」
「本人は否定するでしょうけど。――もう食べたの?」
「もう一個食べたい。いいだろ? 今日は稼いだわけだし」
「別にいいけど、本当に好きね。気付いてないかもしれないけど、それ、結構なゲテモノ料理よ?」
「今更じゃね? それに……」
ミードは目線を下げる。メスカルの手元にはマルデワインが注がれたグラスに、ふんわりと柔らかそうなオムレツがあった。
「なにかしら?」
「なにも。ああ、なにもないさ。 ――ゲテモノかどうかなんて気にする必要ないだろ。生きてるものならアメーバでも食べる世の中だぞ。そのうち鉄屑だって食えるようになるな」
「一気に食料問題が解決するわけね。早くそうなって欲しいわ、切実に」
メスカルはグラスをあおり、空にする。
丁度その時、メスカルの左隣に座る男がいた。
「ようメスカル。景気はどうだ?」
「好調よ、ラム。こうしてご飯が食べられるぐらいには。あなたは?」
ラム、と呼ばれた男は、見かけは三十代半ばの、実にハンターらしい格好だった。ボロボロなゴーグルキャップに迷彩服、汚れたアーミーブーツと革の手袋、腰にアイボリーの握りのピストルが差してある。
軽薄そうな顔付きであったが、疲れたような表情で言った。
「さっぱりな上に、コアントローの奴がポカしやがってな。車内で消火器ぶちまけやがって、今日は一日中掃除してた。計器が壊れなかったのだけが救いだな」
「そりゃ災難ね。で、器物損壊犯は今どこに?」
「メシ抜き宿無しの刑に服してる。今頃、連絡船乗り場で黄昏てんじゃねえかな」
がはは、と豪快に笑う。一方、メスカルの表情は硬く、くすりとも笑っていなかった。
「なあ、メシ食ったら二人で飲まねえか。宿屋で部屋取ってあんだけどよ、コアントロー追い出したから、部屋が広くてしょうがねえんだ」
「生憎だけど、今日は男はいらない気分なのよね。お酌が欲しけりゃ、おつまみレディにでもしてもらいなさい」
「あのカワい娘ちゃんと飲むのも悪くねえが、俺の好みはプリティよりもビューティなんだ。 なあいいだろメスカル、たまにゃあクルマの代わりに男に乗ってみようぜ」
「つまんねー文句でコマそうとすんじゃねーよ。便所にぶちまけられたクソぐらいクセーぞ、オッサン」
割り込んだのはミードだった。ラムは強烈な言葉で水を差した相手を、不機嫌そうに睨みつけた。
「邪魔すんじゃねえよお嬢ちゃん。張り倒されたくなきゃ黙ってろ」
「黙ってろはこっちのセリフだぜ便器野郎。毎日清潔にしとかねーから口から腐敗臭が臭ってんだよ。そんな口から漏らした言葉で落ちる女なんかハエぐらいのもんだって気付け低脳」
口汚い雑言。堪忍袋の緒が切れる寸前、ベテランのハンターとしての矜持がゆえか、腰のピストルには手を伸ばさない。
「おい小娘、てめえの口の悪さは売女の母親からの遺伝か? 大人の男にゃ素直に言うこと聞いとけって教わんなかったみてえだな」
「売女ってとこは当たってるが、あたしのおかんは口が利けなくてよ。口の利き方についちゃ、オッサンみてーなクソカス共の教育の賜物だぜ」
で、とミードは続ける。
「その発言は《女は黙って股開いてろ》っつー、この店の女全員に対する宣戦布告ってわけか? 見かけより度胸はあんだな」
ピシン、と空気が張った。相変わらずがやがやと騒がしいが、店内は決して広くはない。争いの雰囲気はすぐに伝わるし、火種になりそうな発言はどれだけうるさくとも聞こえてくる。特に《老若男女が力を振るうのを咎められない》ような今の世の中で、女性蔑視と捉えられかねない言葉は、稲妻よりも速く駆け巡るものだ。
空気が変わったのを感じて、ラムは自分の失言を悟る。ラム自身は侮蔑を意識していなかったが、言葉の揚げ足を取られて利用されてしまった。
思っていたよりも、この小娘は
「そんなわけあるか。言葉尻を捉えて店の奴らを味方につけようったって、そうはいかねえぞ。それともてめえ一人じゃ敵わねえから、回りに援護してもらおうってハラだったか? 小娘らしいチャチな作戦だな」
「チャチな作戦に青筋立ててんのはどこのどいつだよ。 名前も知らねー人間の加勢なんざアテにしてねーよ。オッサンこそコアントローとかいうグズがいなきゃ、ブルっちまって抜けねーんじゃねーの? 手も、銃も、竿もさ」
前言撤回、一気に我慢が限界を迎えた。
ラムは素早く立ち上がり、右腰のピストルに手を伸ばす。大口径の骨董品だが、幾多の戦闘を共にし、幾度となく窮地を救ってくれた拳銃だ。あの憎めないがどうしようもないバカよりも、ずっと相棒らしい相棒である。
一刻も早くこのガキを黙らせてやる。
象牙の銃把に指がかかった瞬間だった。
「Bang.」
ミードは既に抜いていた。
大口径の究極イーグル。
白銀の銃口が、ラムに向いていた。
「て、めえ……」
「ほら、抜けなかった。遅えなー、もしかしてあっちも遅えのか? 遅漏なだけじゃ女はイカせられねーぜ?」
下品な軽口。しかし、先程の様にそれに反論することはできない。
照明で銃身が滑らかに輝く。
「ミード、からかうのも大概にしなさい」
二人に挟まれていたメスカルが、苦笑しながらたしなめる。ラムはその名前に聞き覚えがあった。
「……ミード? 《
「ああ。 エルニニョの狂犬、Holl Make Meadとは、あたしのことさ」
ラムは小さく舌打ちをした。《掘削作業》といえば、早撃ちが得意な銃器使いであると同時に、腕利きの殺し屋でもあるハンターだ。
ヒヌケ同盟襲撃を始め、ドク・カルヴァドス、バッファロー・ジンの殺害、リモンチェッロファミリーとアマレットグループの抗争にも関わっていたとされている。
しかし《掘削作業》は神出鬼没で、噂のわりにハンターオフィスからも賞金がかからなかった為、その実体が分かっていなかった。そういう無法者は決して少なくないが、アシッド・キャニオン屈指の早撃ちと噂されていながらも詳細は不明というハンターの存在は、畏怖の念を込めて有名であった。
その正体が十代半ばの少女だったことに、ラムは強い衝撃を受けた。
「マジかよ……こんなガキが」
「おっと言葉に気を付けろよオッサン。間違えてオッサンの土手っ腹にもう一個の大口作っちまうかもだぜ?」
ラムはたじろいだ。
双方の実力差が開きすぎている。
ラムは立ち上がって銃を抜いた。つまり全身を躍動させて抜こうとしたが、対してミードは座ったまま抜いた。上半身だけ――最低でも腕力だけで、その細腕一本で、ラムの速度を大きく上回ったのである。
へらへらと笑ってはいるが、射線は全くブレていない。既にミードの左手の人差し指は、引き鉄にかかっている。今現在の生殺与奪の権利は、ミードが握っていた。
下手に行動すると、この小娘は確実に撃つだろう。
撃ち殺して高笑いをあげる、これはそういう女だ。
「取り込み中のとこ悪いけど、店内じゃ揉め事は禁止だ」
カシャッサが口を出す。金属製のバットを肩に担ぎ、カウンターから仁王立ちで、呆れながら睨む。
「特にミード。お前、引き鉄引いたら完全に出禁にするから。その上でボコられたくなきゃ、今すぐ銃を下ろして仕舞え」
「……いいのか? このオッサン、あんたの嫌いな《女を軽んじる発言》をしたんだぜ?」
「お前がそれっぽい言葉を引き出したのは知ってる。ラムが否定しようが、こいつがそういう奴だってことも、とっくに知ってる。だが、それとこれとは関係ない。 いいかミード、警告だ。ラムをぶち抜いたらお前を殺す」
ミードは横目でカシャッサを見やる。カシャッサの顔付きが、凶悪なものに変わり、太い腕が隆起する。
カシャッサは今でこそ雇われバーテンダーだが、以前は流れの賞金稼ぎで、百戦錬磨のレスラーだった女だ。女だてらにモンスターを殴り殺し続け、オフィスのハンティングスコアのトップ争いをしていたこともある。
そんな手練と殺り合うのはどうか。いや、カシャッサを殺せる自信はあるのだが、相手は近接戦闘のエキスパートだ。屋内での戦いには慣れているし、戦闘後、五体満足でいられる可能性は高くない。
そこをラムに突かれたら致命的だ。ここまで散々コケにしてきたのだ、追い討ちをかけるぐらい当然する。最悪、スナッフポルノもドン引きな、死ぬよりエグい犯され方をされかねない。
「…………」
もう面倒くさいから、全員殺してしまおうか。
それはそれで愉快で爽快な解決策だと、ミードは思う。
メスカルを見る。我関せずとばかりに、オムレツを食べている。
「……わーったよ、開通式は取り止めてやる」
「そりゃ上出来だ」
ミードがスピンさせて銃をホルスターに仕舞うのを見て、カシャッサはそれからバットを肩から下ろす。
フッ、と店内の緊張が解かれた。騒がしいのは変わりないが、空気が穏やかさを取り戻していく。
「ミード」
メスカルが微笑んで言う。
「それでいいのよ」
「グッドイブニング、エブリワン!! 今日も元気に飲みまっしょい!」
豪快に扉が開かれて発された能天気なセリフに、店内は水を打った様に静かになった。
「……あれ? どーしたの皆。マスター死んだ? お通夜?」
無駄に明るいテンションでやって来たのは、灰色のロングヘアをアップにした女だ。デニムのツナギを腰まで穿き、袖は腹の前で結んでいる。豊かに膨らんだチューブトップ、その谷間にサングラスを引っ掛けるという挑発的に目立つ格好だが、何より目立つのは右上腕に大きく施された刺青であった。
しかし、この女がどういう人間か知っている奴らが大多数な店内では、そんなものは今更気にもならない。
「……もう一分来るのが早けりゃ、完璧だったな」
「確かに」
ミードの言葉に、ラムが同意する。何事もなかったかの様に。
他の客は《なんだこいつか》《じゃあどうでもいいや》とばかりに女を無視し、店内は騒がしさを取り戻していった。女は何が何だかわからないと首を傾げながら、ミードの右隣の席に座った。
「どーしたの一体。何かあったの?」
「何かが終わった直後だったのよ。気にしなくていいわ、メドヴーハ」
メスカルが答える。メドヴーハと呼ばれた女は、そっかと気を取り直して注文した。
「お姉さん、ロケットピンガとモジョバターちょーだい」
「すまないがモジョイモはウチじゃ扱ってないからできない。持ち込んできてるなら、それで作るが」
「えー……そっか、ならしょーがない。くらげスティックでいいわ」
「あいよ」
カシャッサがシェイカーに酒を注ぐ間、メドヴーハが話しかける。
「久しぶりメスカル。バギーの調子はどう?」
「上々よ。カミカゼキングが今日も元気に走り去るみたいに」
「そりゃよかった」
言ってメドヴーハは差し出されたグラスをちびちび飲んで、棒状の乾物を齧る。
「……! あら〜、いー感じのお兄さんがいるじゃない」
素早く嚥下してラムの隣に移るメドヴーハ。
強く舌打ちして、ミードは言った。
「おい、あたしに挨拶が無いんじゃねーのか?」
「あらミード居たの。その様子じゃ、まだ着工されてないみたいね。かわいそー」
「ぶっ殺されてーのか
「さすがのあたしも脳姦は勘弁だわ。 悪いわね、かわいい子はからかいたくなるのよ。いつでもどこでも」
で、とメドヴーハはラムに詰め寄る。
「お兄さん、今夜時間あるかしら。よかったら一緒に飲まない? オールナイトでもオーケーよ」
「勿論オーケーだ。なんなら俺の部屋で飲まねえか? 今日は相棒がいねえから、部屋が広くてしかたねえんだ」
「エクセレント。楽しい夜にしましょ」
メスカルに使った口説き文句をそのまま流用するラム。そうと知らずに快く受けるメドヴーハに、ミードは嘆息する。
「おいメドヴーハ。そいつ、さっき全く同じセリフでメスカルのこと口説いてたぞ」
「てめっ、余計なこと言うな」
「あら~、大丈夫よミード。あたしが男に求めるのは、言葉じゃないの」
「じゃなんだよ」
「これよ、これ」
メドヴーハは、女性にしては大きな手の、付け根から中指の先までを
「なーる。 あんたらしいな」
「主砲は大きければ大きいほどいいのよ。初めての時は痛いかもだけどね。 そーよね。メスカル」
「そんな話に私を巻き込まないでくれないかしら」
「いーじゃない、あたしとメスカルのなかでしょー。 あ、お姉さーん。ロケットピンガのおかわりちょーだい」
立ち上がってカシャッサに手を振る。右腕に大きく施されている黒々とした漢字の刺青が、逆さまではあるがはっきり見えた。
「……《重車超砲主義》、ね。くだらねー」
「キャタピラビレッジでウケそうなデザインよね。ダブルミーニングになってるところがミソだわ」
「どこよそこ?」
「モロ・ポコの西、デスクルスの南。変態級のクルマ好きが集まるどうしようもないところ。 ……でも品揃えはいいのよね。複雑なことに」
出ましょうか、とメスカルは席を立つ。ミードがそれに続いたところで、メドヴーハは思い出したように声を上げた。
「あ、そーだ。忘れてた」
「なんだよ。ゴム風船か?」
「心配すんな。それなら俺がダース単位で持ってる」
「どんだけヤりてーんだよ。引くわ」
「うっせ。 で、忘れ物はなんだって?」
「忘れ物っていうより忘れごとっていうか。 ミード。あんたのこと
「一々余計に一言添えなきゃ気が済まねーのかてめえは。 ――てめ、オッサンニヤニヤすんな。殺すぞ」
「さっき連絡船乗り場で聞いたんだけど」
断ち切る様に、メドヴーハは言った。
「あと一時間でスワンの町が来るんだって」
「マジ?」
「マジ。 好きでしょ?そういうの」
「……You're right. その通りだコンチクショー」
舌打ちをして、背を向ける。メスカルがその後を追う。
「参加するなら連絡してね。あんたに賭けてあげるから」
「そりゃどーも。流れ弾にも期待してろよ」
二人で酒場を出る。
満天の星空の下、涼しい風が髪を揺らす。
「……待ち切れない感じ?」
「ああ、背中のゾクゾクが堪んねー。久し振りに人間ブッ殺せる機会だ、ジャマすんなよなメスカル」
「邪魔なんてしないし、できないわよ。私はあなたに殺されたくはないし、私もあなたを殺したくはない」
「へー。メスカルの44マグナムであたしに敵うってか」
「そりゃそうよ。私にはアラミアちゃんがいるんだから」
「ちょ、クルマ乗るのはずりーだろ」
「狡くない。非常に賢い作戦だわ」
メスカルは懐に手を伸ばし、止める。
ミードはそれに気付かず、手持ち無沙汰にイーグルをスピンさせて遊んでいた。
「私に勝ちたかったら、早く強くなりなさいな」
「《強くなりたければ生き残るべき、生き残りたければなんでもすべき》だろ? わーってんよ」
スピンを止める。
そして銃を空中高く放り投げ、
「I am the world's strongest person.」
ストン、と腰のホルスターに収まった。
用語&解説
・「アシッド・キャニオン」
「METAL MAX2」の舞台となる地域。巨大な湖を中心に土地が広がり、多くの山脈が他の地域を隔てている構造となっている。モデルは諏訪湖と諏訪大社周辺。
・アリの卵焼き、地底オムレツ
とあるイベントをクリアすると、ハトバの町の酒場で食べられるようになる。店主から価格の設定を求められるので、それに15Gと答えると「アリの卵焼き」、30Gと答えると「地底オムレツ」になる。つまり片方だけ選択可能ということだが、本作では両方登場する設定。
・マルデワイン
酒場にある酒の一つ。ワインなのかそれっぽいカクテルなのかは不明。
・「ダーク・カナル」
湖の東部にある水路。この水路を通らないと、アシッド・キャニオンの南部には行けない。
・ドッグシステム(車載転送装置)
簡潔に言うとワープ装置。行ったことのある町や施設に一瞬で移動できる。ようはルーラ。クルマに積める小型のものと、町に据え置かれている大型のものがあり、小型のものは店売り品。
・「アダム・アント」
巨大アリの巣を根城とする賞金首。賞金は6000G。アリ型モンスターの親玉で、鳴き声で手下を呼び寄せたり、味方を操ってしまう誘惑音波を発したりと中々厄介。
討伐後、上記のイベントをこなす為には、再び訪れる必要がある。その場合、なぜかダンジョン内の雑魚敵がグレードアップしているので、油断していると全滅する。
・ハンター
職業の一つ。主にクルマに乗って戦う人達のこと。特技も車に関するものが多い。ミードとメスカル、ラムの職業。
・おつまみレディ
酒場にいるホステスのこと。名前の通りおつまみを売ったり、酒を奢らされたりする。代わりに耳寄りな情報が聞けたり、おつまみをあーんしてくれたりもする。
・象牙細工のピストル
白兵戦専用の武器(ATK180)。敵一体を攻撃できる。
・究極イーグル
白兵戦専用の武器(ATK200)。敵一体を攻撃できる。モデルは有名なデザートイーグル。
・レスラー
職業の一つ。白兵戦に特化した職業で、高い攻撃力とHP、強力なバフ効果の特技が魅力。代わりに装備できる武器の攻撃力が非常に低い。カシャッサの職業。
・ハンティングスコア
「ハンターオフィス」で行われている「チャレンジハント」というランキング企画。達成条件通りに戦闘をこなすと賞金とポイントが入り、ランキング付けされる。ゲーム中に登場するNPCも参加しており、たまに上位に食い込んでいたりする。
・ロケットビンガ、モジョバター、くらげスティック
酒場にある酒とおつまみの一つ。元ネタはロケット・フューエル(カクテル)とビンガ(酒)、じゃがバター。くらげスティックは、恐らくくらげの乾物。
上記の酒やおつまみもそうだが、「METAL MAX」シリーズにはこうした「特に意味はない」道具や設定、システムが多く、製作側の遊び心が垣間見れたりする。
・カミカゼキング
ホロビの森に現れる賞金首。賞金は50000G。前話に登場したスクラヴードゥーを引き連れることが多いので、実質ボス二体を相手取るはめになり、非常に厄介。カミカゼキング自体の回避力も高く、また戦闘から逃走することも多いので、スクラヴードゥーを含め、討伐には専用の対策が必要になる。
リメイク前の「2」にも登場したが、当時の逃走時のナレーションが「カミカゼキングは きょうも げんきに はしりさっていった!」。遭遇後1ターン目に逃走するパターンもあるので状況としては悔しいはずなのだが、なんか微笑ましい気持ちにもなる。
リメイク後の「2R」では無くなってしまったが、代わりに逃走専用のエフェクトが追加された。製作側もお気に入りの敵キャラなのだろう。
・謎のゴム風船
要するに避妊具。なぜか、たまにモンスターの残骸から拾えたりする。使用しても効果はない。むしろあったら困る。
・44マグナム
白兵戦用の武器(ATK88)。敵一体に攻撃できる。モデルは44マグナム弾。銃器ではなく弾丸なのだが、ゲーム中では拳銃の扱い。
またしても解説が長い……申し訳ないです。
誤字脱字報告、感想等、お待ちしてます。
※22/03/20 本文と後書きを修正、追加