こんにちは、石持克緒です。
「BLACK LAGOON」を読みながら「METAL MAX2R」をプレイしつつ、この小説を書いてます。ルマジュールさんが最近のお気に入りです。
そういえば、前話から閲覧数が50件程増えました。閲覧ありがとうございます。
五話目です。
上蓋がある。ハシゴに手足をかけながらなので難しいかと思ったが、簡単に外すことができた。
「よっと……おっ、たっけーなー。やっぱり」
船首に出る。白鳥の船首とは、つまり頭部にあたる部分で、町で最も高度がある場所である。
そしてその先端、オレンジ色の嘴の上が、決闘の舞台だ。
空の白みが強くなってきた。灰色がかった風景が、色味を取り戻していく。
湖は群青に、森は翠緑に、砂漠は乳白色に。そして町並みは錆色に。日が昇るにつれて明るさを足していき、落ちるにともない薄めていく。
ミードは景色を長めながら、蒸し暑い風を受ける。
「最期に見る景色は決まったか?」
嘴の先端、そこにプルケはいた。昨夜と変わらずサラトガスーツの上に煤けたマントを羽織っており、頭にはエジプシャンをかぶっている。
「んなもんはここに来る前から、とっくのとうに決まってる」
「ほう。なにかは知らんが、それは叶わないようだな」
「あたしがここで死ぬからか?」
「そうだ。 メスカルとか言ったな。死に目に会いたいのはあの女か?」
「いや、死に際にはイケメンの泣きっ面を添えるつもりさ。メスカルは毎日見てるから、今更どうとも思わん」
「いつも隣にいるから感慨もない、か。なら、今見てるその景色でも問題ないだろう。人ではないが、顔が見いいだけで見ず知らずの男と、そう価値は変わるまい」
風光の中に寂れた人工物が浮かぶ景色は壮観ではあるが、それは高所から眺めているからそう感じるだけで、地を這うように生活している現代人からすれば、感慨もなにもない。精々《見晴らしがいい》程度にしか感じない。
ハトバから北西に行けばアズサの町、北のトンネルを抜ければバザースカ、西の森には巨大アリが巣食う洞窟、遠く南西へ向かえばイヌの村。iゴーグルに頼らない天然の地図が見られるだけだ。景観に気を取られる程、今の人々に余裕はない。
だから、全てのものは等価で低価だ。
なんでも代わりは効くし、値打ちはない。
「今の世の中の死生観、死亡と生存の境い目は、恐らく正常ではない。少なくとも大破壊以前のヌルい感覚であれば、口にすることもできない考え方だろう。だが、今はそれが正常で常識だ」
「それがどーした」
「故に重要になるのは、どんな事柄に価値の重きを置くかだ。なにを大事にし、どれを心の支えにするか。生き長らえるには、そういったものが重要だ」
「…………」
「お前にはそれがあるか? ないなら、些細な願いも叶わず、ここで死ぬだけだ」
「…………」
思えば、昨夜メスカルにも同じようなことを言われた気がする。
ミードの目的は強くなること、目標は最強になることだ。強くなることで生き残り、生き残って天寿を全うするのが、ミードの人生設計である。
主軸に据えるのは破壊、滅殺に伴う悦楽や快感。享楽的に生を全うする。それでいいし、むしろそれだけでいい。
母親のようにはならない。恩義は感じているが、あんな惨めで情けない生活には戻りたくはない。
しかしメスカルは、それだけでは不足だと言う。必要なのは主義であり信条。くしくも、プルケはメスカルと同じことを語る。
有ろうと無かろうと、結果はなにも変わらないというのに。
「――じゃあ、あんたの重きを置く価値あるものは、あのバギーってことか?」
プルケの言を借りるなら、そういうことになる。
プルケはアラミアに並々ならぬ執着を燃やしている。理由は不明だが、強引な手段に出て手中に収めようとするぐらいには、あのクルマを重要視しているのは間違いがない。
代わりの効かない価値のあるもの。それがプルケにとっては、他人が駆る漆黒のバギー。
「……お前らには、あのバギーの値打ちが分かってない。あれがどういうモノか、ちゃんと分かってんのか?」
「そっちが素か。熱くなんなよ、みっともねー。 知るわきゃねーだろ、こちとら売られた喧嘩を買っただけのカワイソーな被害者なんだぜ? あたし達にとっちゃバギーはバギー、愛着以上のもんは持ってねーよ」
「その割には金を積んでも動く気はないみてえだが」
「感情を金で買おうってハラが気に食わねーんだよ。少なくともあたしはそういう野郎は嫌いでね、いくら積まれようが売る気はねーよ。メスカルは知らねーけど」
メスカルは拝金主義のきらいがある。この時世にハンター稼業などやっていれば、もれなくそうなるものだが、特にメスカルは、金儲けや損得勘定には、シビアでクレバーな一面を持っていた。
20万Gで売らなかったのは、アラミアにかけた改造費を思うと、20万Gではペイできないと考えたのだろう。クルマを使い戦闘をこなすには、クルマ自体の強化が不可欠だ。ましてや高額の賞金がかかった危険な相手――例えば史上最大級の賞金首である軍艦サウルスや、グラップラー四天王最強の男と恐れられたテッド・ブロイラーのような――と対峙する場合、シャシーもエンジンも大砲もノーマルのままでは、返り討ちにあうのは必定だ。
そういった強敵と戦うには、クルマの改造は欠かせない。しかし兵器の改造は、モンスターだらけの世の中であっても高額だ。苦労して稼いだ儲けが軽く吹き飛ぶ。
「つーかよ、じゃああんたはあのバギーの価値が分かってることになるけど、その根拠はなんだ? あたし達はまだ、あんたがあのバギーに拘る理由を聞いてねーぞ」
今回の悶着で、一番の疑問点。
そもそも、何故プルケはアラミアを欲するのか。プルケはソルジャーだ。クルマでの撃ち合いより、銃や剣でど突き合う方が得意なスタイルである。クルマに乗ることは少ないだろうし、乗るなら
それも望んでいるのは他人の所有物である。普通に考えて譲ってくれる道理はないし、必要に迫られたのであればレンタルタンクがある。契約条件は中々厄介だが、便利は便利だ。決して多くはないものの、借りに行くソルジャーは珍しくない。
どうしても自前がいいのであれば、野ざらしになっているクルマを手に入れればいい。数は少ないだろうし手掛かりはほぼないけれど、砂漠に埋没していた装甲車や、旧時代の施設に放置されていた戦車の話は、たまに耳にする。また、ノボトケ周辺には野バスもいるし、方法さえ知っていれば鹵獲は難しくない。
戦車の製造を生業にする学者がいるという噂もある。その学者を探し出して造ってもらうのも、一つの手段ではあるだろう。
しかし、それらの方策を退けて取った手段が、他人のクルマを合法的に奪い取ることだ。つまり、単にクルマを必要としているのではなく、アラミアそのものに、なにかしらの拘りや因縁、執着を覚えていることになる。
そして、プルケはその理由を明かしていない。
「……聞いたところで無駄だ。お前らには理解できねえ」
「おいおい、話もしねーで理解もクソもねーだろーがよ」
「無駄なものは無駄だ。お前らはあのバギーのルーツを知らねえ。知らねえ奴らに理解は求めてねえよ」
説明するつもりはないようだった。当然だ、つもりがあったら決闘などけしかけてはいない。
「それに……」
「それに?」
「時間だ」
プルケは横目で湖を見た。水平線から、強い日差しが上ってきていた。
勝負の時。
「……Shit. まあ、仕方ねーか。代わりに愉快な死に様が拝めるから、これ以上は聞かねーでおいてやるよ」
「同感だ。そして俺はバギーという特典がつく」
「オマケが欲しけりゃ、自販機でエロ本でも買ってろよ。 ああ、くたばる前にマス掻いてくか?最期の
「……昨夜は、小生意気でうるさいガキだと思っていた」
「あん?」
「今は下品で身の程知らずな小娘だ」
「……はっ、そーかよ」
事実ではあったので、正直、返す言葉がなかった。
それに末期の侮辱だ。殺してウサを晴らせばいい。
「定刻じゃ!決闘を開始する!」
しわがれてるが、大きい声が響いた。長老の声だ。
それを受けてか、多くの歓声が上がった。見渡すと地上階には多くの観客がいて、スワンの外側、つまりハトバの防波堤にも、取り囲むように人々が集まっている。
二人に緊張の色はない。
二人して賞金稼ぎで、早撃ちの名手で、人殺しだ。緊張も焦燥も恐怖もない。肝要なのは覚悟と度胸、そして自慢の武器。必要最低限、それだけでいい。
強さに理由は必要か?
「互いに背を合わせ、三歩歩く! 三歩目で同時に振り返り、銃を抜いて攻撃する! これで生き残っていた者を勝者とする!」
古くから伝わる銃による決闘の作法、その一つ。
数多の銃使い達が、この決闘法により、勝敗と優劣を示してきた。
特に二人は早撃ちを得意とする。射撃の正確性と反応速度を競うには、うってつけのルールである。
二人は嘴の中央に立ち、お互いに背を向ける。
背丈は頭一つ分、ミードの方が低い。体格ではプルケが圧倒的に勝っていた。
「そういえば」
「あん?」
「銃を一挺、増やしたようだな」
ミードは左腿の銃に意識を向ける。今回のミードの武装は、左腿と右腰の拳銃が二挺だけだ。
「その銃がお前の秘密兵器というわけだ」
「どーかな、もしかしたらオモチャかもしんねーぜ? 鉛玉じゃなくて銀玉吐き出すヤツ。他は、そうだな、水鉄砲とか。ああ、ハンドガン型ライターなんてのもあったな。そういうのかも」
「……答える気はない、か」
「当然。正解はくらうまでのお楽しみだっつーの」
湖面から太陽が昇る。空が穏やかに燃える。
温い日が入った宙空に、激しく殺意が沸き立った。
「準備はよいな!」
長老の言葉に、騒がしかった下階が一気に静かになる。
《雷鳴》と《
「――――一!」
カウントが始まる。
二人は一歩を踏み出す。死出の歩みだ。今から数秒後には、二人のうちどちらか――もしかしたら二人ともに、この世から滅殺している。
「――――二!」
仕込みはした。だが、それがしっかりと機能しているかは賭けだ。上手くいかなければ、恐らくミードは死ぬ。
死に恐怖は感じない。棺桶で寝起きをするが如き稼業をしていて今更だし、そもそも感じろという方が無茶だ。病気だろうが事故だろうが殺人だろうが、そこかしこで死体が量産されている日常を生きている。現代人にとって《死》という概念は、あまりにも身近にあり、当たり前のように生活に馴染んでしまっているのだから。
《死》そのものに恐れはない。だから恐怖するのは《死》にいたる道程、途中の過程、忍び這いずり寄る経過だ。無感に対して不感になるなど、恐れるには値しない。
ましてやこの少女は――ミードは狂っている。
狂人は、恐怖を享楽に変える。
「――――三」
二人は同時に動いた。
右脚を軸にバックターン、併せて左腿の拳銃を抜いた。左半身に振り向いての横撃ち。速く構えて速く撃つ、スピード偏重の撃ち方。
通常、こんな撃ち方は照準が合わず、正確性を損ねる。どれだけ速く抜こうが、当たらなければ意味はない。とにかく素早く発砲することを目的とした、早撃ち向きだがほとんど使われない撃ち方だ。
しかしミードは、重い究極イーグルを自在に操る少女である。無理な姿勢であっても、正確に命中させる。これぐらいの無茶、デメリットにはなりえない。
では、プルケはどうだ。
プルケも同様に銃を抜いていた。大振りで重厚なワンハンドガリル。
それがニ挺。
翻したマントの下、右腰と左腰から抜かれた二つの銃口。
プルケは最速の手腕をいかんなく発揮し、同じく二挺拳銃でミードを仕留める算段だった。
「――――」
プルケの作戦はこうだろう。
プルケは、ミードが二挺用意してくることを看破していたのだ。ハンドスピードで劣るミードが差を埋めるには、手数を増やすしかない。先に命中すればプルケの勝ちだが、仮に外したり、避けられたりした場合、次弾の装填に時間がかからない二挺拳銃の方が有利になるからだ。
ガリルもイーグルも
今回の対決では、まず間違いなく先手を取れるプルケの一発さえどうにかできれば、この差が如実に活きてくる。
プルケが外し、ミードも防がれた状況なら、次弾の発射が速い方が勝つ。このタイミングを確実に捉える目的で、ミードは二挺拳銃を選択したのだろう。
この読みの上で、プルケが取った対策は、単純に自分も二挺持つことだった。
手数で負けるのなら、こちらも手数を補えばよい。しかも自分には、これまでひた隠しにしていた、
「――――」
たが、それでも彼女は笑う。
悪逆を体現した、爛々とした瞳で、狂人は笑っている。
ダ・ダァン!!
銃声が二発。
勝敗は――
――着かなかった。
「……バカな!?」
ほぼ同時に発射された弾丸。プルケの狙いは、ミードの脳天と心臓だった。命中すれば即死が見込める、人間の急所だ。予想通りに先制し、その二点に狙いを定め、引き鉄を引いた。だからミードは、倒れ伏していなければおかしい。
間違いなく死ぬはずだったのだ。
「……取り乱すなよ、情けねーな」
ミードが発射後の銃口に、ふっと息を吹きつける。
被弾はおろか、かすり傷すらも負っていないようだった。
「しっかし、あんたも結構コスいな。早撃ち対決でニ挺同時に打つたあ、反則じゃなくてもイメージ悪いぜ? ま、あたしには全くもって通用しなかった訳だが」
「なぜだ!? クソっ! お前、なにをした!?」
「なにしたかなんて、自分から言うわきゃねーだろ。知りたきゃ地獄で母親に教えてもらえよ、膝枕で乳吸いながらな」
言って、ミードは拳銃をスピンさせる。小振りで薄鈍色、自動式らしい銃身。プルケはその拳銃を見たことがなかった。
「……その銃か!? その銃で!!」
「この銃が、なんだ?」
「とぼけるなガキィッ!! お前、今、
声を荒げるプルケ。対してミードは、スピンを止めず、笑いも止めない。
「そしてその銃! マシンピストルの類だな!?」
「御名答。つっても、コイツがそれに分類されるのかは、あたしにゃ分かんねーけどな」
ミードは言った。
「《デスペローダー》。あたしはコイツをそう名付けた。かの賞金首《デスペロイド》から剥ぎ取ったモンでな、two round burstが可能なのさ」
マシンピストル。
拳銃程度のサイズでありながら、全自動射撃ができる火器である。
旧時代の一時期に流行った銃のタイプで、拳銃サイズにしては瞬間的な火力に優れている。反面、凄まじい反動により照準が合わず、その上すぐに弾切れを起こしてしまうので、本来は塹壕戦で使用されていたが、次第に短機関銃に取って代わられてしまう。
その欠点を補う為に生まれたのがバースト機能である。一度、引き鉄を引くごとにニ、三発の弾丸が発射されるというもので、全自動射撃よりも火力で劣るものの、照準は安定し、弾丸の消費を抑制する。
しかし、あくまでも連射性と安定性を両立しようとした結果、誕生した機構だ。決して早撃ちに適している訳ではないし、プルケがニ挺持っていることを予想していたとしても、対抗策になる訳ではない。
けれども、それは現実に起こった。
ミードが繰るデスペローダー。この組合せが、魔弾の如き奇跡を実現させた。
「――さて、あたしのスゴ技が炸裂したところで。提案といこうじゃねーか」
まだデスペローダーの銃口は、プルケを捉えている。同様にニ挺のワンハンドガリルも、ミードに向けられている。
一見すると両者とも手詰まりの膠着状態。だが、まだミードには右腰の究極イーグルがある。
ここでプルケが発砲しても、ミードは再び撃ち落としてしまうだろう。そしてミードがイーグルを抜き、撃ってしまえば勝負は決まる。
「お互い銃を仕舞う。そんでもう一度、純粋な早撃ち対決といかねーか?」
事態はミードに有利であったが、しかし当の本人が状況のリセットを申し出た。
「……どういうつもりだ。絶好の機会を捨てるたぁ」
「捨てたところで、すぐに次がくるからな。 なーに、あたしは感情を金で買おうってヤツが嫌いだけど、自分より強いヤツも嫌いでね。特に自分の得意分野で上をいった野郎なんざ、存在自体が許せねーってタチなんだよ」
透明な汗が、額から頬へつたう。
「負けたまんまじゃ我慢ならねー。ここらで一丁、ハッキリさせとこーぜ? アシッド・キャニオン最強最速のgunslingerはどちらなのか」
あまりの理由に、プルケは閉口する。今時、そんな幼稚な動機で動ける人間が存在するのか。
とはいえこの提案、プルケとしては望むところである。
状況はプルケに不利だ。だが仕切り直せるならば、今度こそ自分が勝つ。
今回、プルケとミードが競ったのは、デスペローダーが軽量の銃だからだ。通常、自動式は6百gから1Kgぐらいの重さになるが、恐らくデスペローダーは5百g程度か、それを下回る重量だろう。当然、軽い拳銃の方が、速く引き抜ける。
究極イーグルは約2Kgだ。それを振り回すミードの腕力なら、スピード差は顕著に表れる。現にミードの抜きは、プルケのそれに匹敵していた。
だが、プルケには秘中の秘とする
能力を全開にしさえすれば、ミードよりも速く抜ける。信仰に近い確信が、プルケにはあった。
アシッド・キャニオン最速の
「……いいだろう。誘いに乗ってやる。あの世の果てまでぶっ飛びやがれ」
「That's awesome.」
ミードはデスペローダーをスピンさせて仕舞い、プルケはゆっくりとガリルを収める。
お互い、再びスタートラインに立った。先程と違うのは、開始を決める合図はないということだ。
合図は、二人の呼吸が決めるのだ。息と意思のタイミングが合ったその時、勝負が始まる。
一流同士の決闘に、無粋な掛け声など不要である。
どこか遠くで砲撃音と、つんざくような鳴き声がする。
連絡船のものだろうか、長い汽笛が聞こえる。
戦車のキャタピラと排気音が、荒れた大地を駆け抜ける。
強く風が吹き、風圧がひどく鼓膜を揺らす。
湖面の漣が、スワンの町を緩やかに叩く。
二人が動いた。
「――――っ」
「――――ッ」
プルケの右手にワンハンドガリル。
ミードの右手に究極イーグル。
銃の重さはスピードに影響する。ならば軽くて連射が効くデスペローダーが、本来は効果的だろう。
だが、ミードは右腰のイーグルを選んだ。選択の理由は、意地以外の何者でもない。
昨夜の屈辱は同じ銃で晴らす。
絶対にぶっ殺してやる――!!
二つの銃口が向かい合い――
ダァン!!
銃弾が放たれた。
「……あの世の果てまでぶっ飛びやがれって?」
勝ったのは――
「残念、あたしには地獄の女神様のキスがついてんだよ」
「……そんな、バカな」
「あたしが
プルケの脳天はドリルで穿たれたように爆ぜ、抉った。
荒々しく掘削された鉱脈から零れた赤と緑の液体は、朝の日差しを照り返し、宝石を思わせる程に輝く。
「俺の――オ、レの……」
塗れたエジプシャンからは、まだ声が発せられていた。
「お、レっの。バ、……ぎィ」
よたよたとバランス悪く、プルケは後ずさる。
嘴の先端で尻餅をつき、強い衝撃で跳ねた。
「アレ。は…… トハ、 しょか、ラっ……俺の――」
落下。
仰向けにずり落ちたプルケの身体は、そのまま防波堤の側、水面に叩きつけられて、沈み。
ドォンッ!!と爆発し、高い高い水柱を上げた。
汚染された水飛沫を浴びながら、ミードは空を見上げる。
興奮のピークは一瞬だ。目標をぶち抜き、息の根を止めた瞬間から、熱は一気に冷めていく。
その感覚、感情の急激な温度差がクセになる。
人殺しは麻薬よりも甘くて苦く、不味くて美味い。
「――――勝者、《掘削作業》ミード!!」
宣告と同時に、喝采と怒号が飛んだ。
ミードはそれを他所に、イーグルをホルスターに収め、額を拭う。
汗びっしょりのグローブ。思わずため息をついた。
「Shit……あっちーんだよクソったれ」
用語&解説
・iゴーグル
人間用のアイテム、というかそういう体のコマンドシステム。装備の確認や車の乗り降り、モンスターデータの一覧など、総合的に行動を選択できる。ゴーグルに様々なデータが表示される設定で、フィールドのマップも確認できる。
・軍艦サウルス
レインバレーに現れる賞金首。賞金は200000G。艦艇に恐竜の頭部と四肢が生えた生き物で、非常にデカい。また、上位種に「母艦サウルス」「軍艦キング」が存在し、それぞれが軍艦サウルスよりデカい。具体的にどれぐらいデカいか知りたい方は、画像検索することをオススメする。
・「テッド・ブロイラー」
通称「テッド様」「ラスボスより強い男」。賞金は250000G。火炎放射器を両腕と喉元に装備した男で、2~3回行動、火炎系即死級攻撃&継続ダメージ、物理系即死級攻撃、ほぼ必中の即死攻撃、ターン終了時のHP自動回復、HP完全回復(3回)、目からビームで迎撃という、他の賞金首とは一線を画す性能を有しており、実質最強の敵キャラ。
「人間狩り」を行う組織「グラップラー」の幹部で、ゲーム中の主人公の育ての親の仇。
・レンタルタンク
クルマを貸し出してくれるサービス。料金は1回の戦闘で手に入れた賞金の半額✕借りている台数。やたら強力な武装のクルマもあり、お得意様になると買い取りも可能だが、戦闘中に少しでもパーツが破損すると、搭乗者を強制的に放り出し、自動で店に帰還してしまう。使い所はよく考えよう。
・自動販売機
アイテムを売っている自動販売機。当たりつき。そこかしこに設置されており、台によって販売しているアイテムが違う。たまに「ヤラしい本」「謎のゴム風船」などが売っているが、常に売り切れで購入できない。
・人間パトリオット
ソルジャーの特技。特定の武器を装備スロットの上部に装備していると、敵の攻撃を低確率で迎撃する。ただし迎撃できる攻撃はDDパイナップルなどの「投げつけられた攻撃」「飛来してくる攻撃」であり、銃撃や斬撃、火炎放射などは迎撃できない。
ハンターであるミードが、なぜソルジャーの特技が使えるのかは、ゲームシステム上の話なので、ここでは割愛。
・デスペロイド
エルニニョ北東部に現れる賞金首。賞金は4500G。通常攻撃が2回攻撃で、装備しているのも2連射武器なので、計4回攻撃になる。さらに2連続攻撃も可能で、この場合は計8回攻撃となり、序盤に登場するわりに手数が酷い面倒な敵。
ドロップアイテムに「デスペローダー」があり、これが上記の「人間パトリオット」に対応している。性能はそのまま2連射武器(ATK 44)。
作中ではミードが討伐に成功し、アイテムを手に入れた設定。
誤字脱字報告、感想等、お待ちしてます。