英雄伝説・空の軌跡~銀の守護騎士~   作:黒やん

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『終焉』

「……………!」

 

「どうした?『氷華白刃』ともあろうものが情けな いぞ?」

 

ジュリオが剣を振るう

 

ただその場で剣を振っている…ただそれだけ。それ だけなのだが、俺のすぐ近くの空間が歪み、刀身が 突然出現し、俺に襲いかかる

 

「フハハハハ……!完全に以前とは立場が逆転して いるではないか!これぞ我が力!!世を統べる“空” の力よ!!」

 

…………好き勝手抜かしやがって

 

そう心のなかで悪態を吐いてみるが、以前として状 況は悪い

 

俺は奴の手の内を知らないが、奴は元守護騎士。俺 の手は知り尽くしていると思った方がいい

 

……ったく、不利にも程があるだろ

 

そして例によって譜術も打ち止めだ。どうせ無効化 されるのはわかっているしな

 

「…………!」

 

「おっと。惜しいではないか。後一歩踏み込まれて いたらわからなかったな」

 

「言ってろ」

 

隙を見て縮地で一気に近付き斬りつけるものの、先 程から全く当たらない。

 

………まただ。何だこの違和感…

 

今まで繰り返して来た抜刀術なのに、さっきから全 て(・・)後数センチの所でかわされている

 

………目測を誤った…?いや、白龍の長さや距離感は 身体に刻み込んでいる。だとすれば奴が何をしてい るかだが………

 

奴の攻撃は『聖痕の欠片(スティグマピース)』によるものと考えていい だろう。…さっきからの攻撃は恐らく『空間の収縮 』

 

突然刀身が出現するのは空間が縮められたことで作 用した屈折現象…それなら説明が着く

 

…!収縮か………なら試してみるか…

 

ーー『天照』!!

 

「!!」

 

ジュリオがピクリと反応したかとおもえば、 その手前の空間を黒炎が焼き尽くす

 

「フ……ハハハ!!頼みの綱のその瞳も通じぬよう だな!」

 

「…ふぅ……」

 

ジュリオが何か言っていたが、気にせず写輪眼を解 いてジュリオを見据える

 

「……?」

 

ジュリオは何故俺が写輪眼を解いたのかわからない ようで唖然としていた

 

「ようやく理解したぞ。お前の『空間の大きさ、距 離を操る能力』」

 

「!!」

 

どうやら当たりらしく、顔を歪めるジュリオ

 

しかし、すぐに余裕を取り戻す

 

「フン、確かに貴様の言う通り我の能力は『空間を 任意に操作する力』だ。だが、それを聞いた所で貴 様に何ができる?」

 

「…………」カリッ

 

俺はジュリオの言葉には返さず、指を噛んで血を垂 らす

 

ーー式神召喚

 

ジャパングで得た技術の一つ、式神召喚。

 

契約した動物なりなんなりを任意のタイミングで呼 び出す技

 

………まぁぶっちゃけアイツがうるさいからどうにか したかっただけなんだが

 

そして煙が晴れ、そこから出てきたのは………

 

『……あれ?ここどこ?と言うか何このしりあすり ぃな雰囲気?』

 

九本の尻尾を携えた子狐だった

 

「無理矢理横文字使おうとすんな。発音明らかにお かしいだろうが」

 

『あ!ケイジ!』

 

俺を見るなり頭の上に乗ってくる狐…………聞いちゃ いねぇ

 

「………そのような子狐モドキを喚び出して一体どう するつもりだ?」

 

物凄い白けた目でこっちを見るジュリオ………止めて くれ。今割りと後悔してる所だから

 

『モドキ言うなー!!これでも九尾なんだぞー!霊 格高いんだぞー!』

 

もう皆さんお気付きの方も思います

 

そうです。シリアスブレイカーで有名なウルです。 この狐。

 

「はいはい、もうさっさとやるぞ」

 

『久しぶりに出たのに淡白な!?』

 

「ウル」

 

『…………ぶ~~~~…』

 

渋々ながら俺の言う事を聞くウル

 

そして俺の頭の上にいたウルが消え、俺の姿が銀髪 の狐耳に九尾の尾が付いたものに変化する

 

…………はい、どう見てもあの頃のリクを越える厨二 ですねコノヤロー(超投げやり)

 

…だからやりたくなかったんだ。だからテンション 低かったんだよ。何か文句あるか

 

『でもこれで若変水《をちみず》飲み放題じゃん!やったね!』

 

「何故に自分から恥をかきにいかなきゃならないん だ。と言うか心を読むなって何回言ったらわかるん だ」

 

『わからない!と言うかわかる気がない!』

 

「ふざけんな腐れ狐」

 

「………もうよいか?」

 

あ、ジュリオの存在忘れてた

 

「全く……少しは楽しめるかと思って待ってやった が…期待外れもいいところであったな…」

 

はぁ……わかってねぇな

 

『「試してみるか?」』

 

「………は…?」

 

一瞬でジュリオの後ろに回り込み、肩を叩く

 

…俺が敵の目の前でのんびりウルと話していた理由 …

 

それは、ジュリオが警戒に値するような敵ではなく なったから

 

……別に油断してる訳でも驕っている訳でもない。 ただ純然たる事実としてその結論があるだけ

 

「俺がこの数ヵ月、ただ単に姿を隠していただけだ と思ったか?」

 

「貴様…!」

 

ジュリオは空間延長で俺と距離を取る。

 

…が、それこそ俺が望むところだ

 

小太刀を引き抜き、その場で一閃する

 

すると、ただ振り抜いただけのはずの小太刀が砕け 散った

 

天一式(あめのいちしき)…『空断(からたち)』」

 

「………何を」

 

そこまで言ったジュリオから、突然血が噴き出す

 

ジュリオが自分の身体を見ると、先程ケイジが振り 抜いた軌跡と同じく真一文字の刀傷が身に刻まれて いた

 

「………刀身が触れている空気を、刃が斬ったと世界 に認識させ、それを延長させることで間合いを無限 に伸ばす」

 

『まぁ、まだ白龍だとコントロールできないし、普 通の小太刀じゃ砕け散っちゃうから未完成なんだけ どね』

 

余計なことを言うんじゃない

 

「やはり…………貴様は…………!」

 

ジュリオは、何かをいいかけたまま、後ろのステン ドグラスと共に、崩れ落ちる

 

そこから顔を出したのは月ではなく、燦然と輝く朝 日だった

 

~典礼省・とある会議室~

 

「!…………終わったか」

 

机の上に座り、煙草を燻らせていた女性ーーーアイ ン・セルナートが封聖省の方を見てそう呟く

 

ゆったりと話す彼女ではあったが、その周りには夥 しい数の屍が倒れていた

 

「………お前の息子はどうやらもう心配無いようだぞ 。だから安心して眠るといい」

 

誰に言うでもなくそう言うと、セルナートは立ち上 がり、煙草を靴裏で踏み潰す

 

「さて………これから忙しくなる…………書類はケビン に押し付けるとするか」

 

そう言って立ち去る彼女の背では、朝日が輝いてい た


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