~四年前~
~グランセル空港~
「(ここがリベール…)」
僕…シオン・アークライトは新兵試験を受けるため にここまで来た
理由は簡単。これから故郷《クロスベル》を襲うであろう災厄を僕 には黙って見ていることができないから。そのため に少しでも強くならないといけないと思ったから
………まぁ、親や幼馴染みには思いっきり反対された けど。
え?何で未来の事がわかるのかって?実は僕、転生 者ってやつなんです
何でも僕の人生があまりにも平凡すぎて面白くない から、思いっきり人生を楽しんだらどうだ?って神 様らしき人に言われて…
「おっと……時間が無いや。急がないと…!」
試験の時間が迫っているのを思い出して、僕は急い で集合場所のエルベ離宮へ向かおうとした ……その 時
ドンッ
「あ、ご、ごめんなさい!」
余所見しながら歩いていたのが悪かったのか、同年 代くらいの男の子にぶつかった
「いや、こっちも余所見してた……大丈夫か?」
「あ、うん。僕は大丈夫」
お互いに顔を合わせると、男の子は僕の腰の剣を見 て
「新兵試験受けに来たのか?」
「あ、うん。……でも何で?」
「いや、街中で剣持ってんのは普通はそうか遊撃士 、はたまた犯罪者だろ」
それもそうか
「というか急いだ方がいいんじゃないか?もう時間 ギリギリだぞ?」
「え?………うわっ!?」
時計を見ると、本当にギリギリだった
そして、僕はもう一度男の子に謝って、エルベ離宮 へ急いだ
「余所見してたとは言え、俺にぶつかるか…………い つも通りサボろうと思ってたけど……気が変わった 」
そう言って男の子はニヤリと面白そうに笑った
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試験の受付には何とか間に合った
「それではこれより、新兵採用試験を始める!」
ようやく始まるみたいだ。
それにしても……軍隊に採用試験があるなんて珍し いよなぁ
聞いた話だとリベール女王様の御意志で必要以上の 戦力は持たないようにしているらしいけど…
「それでは、モルガン将軍からの挨拶を承る!」
いらない事を考えていたらどうやら話が進んでいた らしい
その後、威厳のある老人…モルガン将軍の話を聞い てから試験が始まった
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「…次!350番から359番!入れ!」
『はい!』
一つ目の試験は面接。一番最初にやるのは珍しいけ ど…やっぱりリベールらしく、人格を尊重するらし い
この面接は、特に何も無く終わった
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「あ~…アイツは爺さんの方に行ったか…」
「アイツ?」
「ああ、言って無かったか?街で面白そうな奴を見 つけたって」
「だから珍しく自分から戻って来たのね……… 非常食買い込んで損した(ボソッ)」
「お前俺を何だと思ってんの!?」
「サボり魔」
「…………否定…………できん……!」
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次の試験は実技らしいんだけど
「え~~~~~あー、マイクテスマイクテス…」
何故かさっきぶつかった人が試験官の位置にいるん だけど…
「テステステステステステステステステステステス テステスうえっ……ゲホッ…噎せた…!」
何やってんのさ……
「えー、はい、じゃあこれから皆さんには殺し合い をしてもらいます」
何言ってんのさ……
スパーン
「あたっ」
男の子の横に静かに立っていた栗色の髪の見るから にクールビューティーな女の子がハリセンで男の子 の頭を思いっきりしばく
「いってぇな!何すんだティア!」
「久しぶりにスムーズに試験が進むと思ったら…… たまには真面目にやりなさい」
「いいじゃねぇか!減るもんじゃあるまいし!」
「時間が減るでしょ時間が…」
あの……二人共、マイク入ったままだから丸聞こえ なんですが………
あ、モルガン将軍の拳骨が落ちた
「いってぇ~~~~~~!!!」
「~~~~!何で私まで…!!」
「全く、このアホ共めが……皆、先に説明した通り だ。二人一組となって模擬試合をする。ワシが呼ん だ番号の者は前に出ろ!」
そして、モルガン将軍の手腕によって、試験は『普 通』に進んで行った
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ーーシオン・アークライト…エルベ離宮〇〇〇室ま で
試験終了から一日。結果の張りだしを見た僕が見た のは、合格でも失格でもなくそんな訳のわからない ことだった
まぁ、その通知通りにエルベ離宮に行く僕も僕かも 知れないけど…
コンコン
「入れ」
「失礼します」
部屋に入ると、あの時の男の子とモルガン将軍がい た
「あの~…僕何かしましたか?」
「いや、そう言う理由で呼んだのではない」
「あ~…爺さん、だからしゃべり方がキツイんだっ て。シオンがガチガチじゃねぇか」
「む……」
自覚があったのか『しまった』という顔をするモル ガン将軍
というか今あの男の子…モルガン将軍の事爺さんと か呼んでなかった!?
「…………君は一体…」
「ん?ああ、そういや名前言って無かったっけ。ケ イジ・ルーンヴァルトだ。よろしく!そして親衛隊 にようこそ!」
「…………………………………え?」
あまりの出来事の連続に僕の頭の情報処理能力がス トップした
……………え?ケイジ・ルーンヴァルト?リベール?
それにあの人何て言った?親衛隊?誰が?僕が?
「?爺さん、なんかフリーズしたぞコイツ」
「はぁ……全部一気に言い過ぎだ馬鹿者」
「え?」
「きゅう……………」パタッ
「え!?何で倒れんの!?おいシオン!………シオー ーーン!?」
これが、僕、シオン・アークライトと“白烏”ケイジ ・ルーンヴァルトとの出会いだった
~一ヶ月後~
「ハッハッハッハッハ!!全力で逃げるか防ぐか避 けるかしねぇと死んじまうぞォォ!!」
『ギャアアアァアァァァァァァァ!!』
『隊長ォォォォォォォ!?今度は一体何がァァァァ ァ!?』
『クローゼの野郎ォォォォォォォ!!…あ、野郎じ ゃねぇや。俺のたい焼き勝手に全部食いやがってぇ ぇぇぇぇ!!」
『姫様ァァァ!?ティアがいない時に限って何やっ てくれてんですかァァァ!?』
……同時に、僕と親衛隊の皆の苦難の日々の始まり でもあった
………………この後、姫様の手作りのたい焼き20コで 機嫌を直したケイジを切り殺したくなった僕達は悪 くないと思います
そして、ケイジの訓練(何故か僕だけ個人修練もあ った)を乗りきっていたら、いつしか僕にも『白烏 の雛』という二つ名がついていた