英雄伝説・空の軌跡~銀の守護騎士~   作:黒やん

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『おいでませ影の国』

「………」

 

ヨシュアとクローゼが封印石を淡く光る石碑の前に 翳すと、封印石がひとりでに浮かぶ

 

そして、それは徐々に人の形になり、そのままゆっ くりと地面に降りた

 

「もう……何なのよ今のは……」

 

「……目が痛ェ……」

 

「エステル……」

 

「!ヨシュア、大丈夫!?」

 

「……は?エステル?」

 

エステルはヨシュアの声で慌てて体立ち上がるが、 ケイジの方は思いもよらない名前にポカンとしてい る

 

しかし、一瞬後に二人して正気を取り戻すと……

 

「「…………ここどこ?というか何この状況?」」

 

物凄いシンクロ率である

 

「あはは……まぁ、君達が戸惑うのも無理はないよ 」

 

「……俺達とて説明された今でも半信半疑なのだか らな」

 

「いや、半信半疑って言われても………………!」

 

ケイジはヨシュアの後ろにクローゼを見つけて、少 し固まる

 

そしてクローゼは俯いたままゆっくりとケイジに近 づいて…

 

そのままケイジの胸に顔をうずめた。

 

無論、両腕はケイジをホールドした状態で

 

「ク、クローゼ?」

 

「良かった………本当に良かった…!!」

 

「ちょ、オイ!」

 

そのまま泣き始めたクローゼにテンパるケイジ

 

「ケビン……あの二人」

 

「いや……リースが思っとるような関係やない……ま だな。どっちか言うたら殿下の片思い状態や……」

 

「そう……………ケビン?」

 

「大丈夫や……ちょっと避けとこか。邪魔したらア カン雰囲気やし……」

 

「………うん」

 

そして、ケビンはリースに支えられながら書架の方 へと向かう

 

「どうしてクローゼさんはあんなになってるんです か?」

 

「リーシャ…何か雰囲気怖いわよ? いや、ね?どうもケイジがあの後全く連絡してなか ったみたいなの。だからクローゼはケイジが死んだ と思ってたみたい。あの後暫く魂が抜けたみたいに なってたらしいし…」

 

「祝賀会を開かなくちゃならなかった時も出てこれ るような精神状態じゃなかったらしいしね……とい うか僕や他の皆も騎士団関係者以外はケイジが生き てる事、初めて聞いたしね」

 

「いや、エステル。ヨシュア。実際はそんなもんじ ゃなかったぞ?一時期は本気で王太女の位を下ろす って案が出たくらいだ。 ……シオンやカシウスさんの助けがなかったらどう なってたことか……」

 

「リクは何かしなかったの?」

 

「………あいにく、俺には政治方面の才能がなかった らしくてな。未だに親衛隊の書類をユリアさんの助 けを借りて捌くので精一杯だ…」

 

「「ああ……ドンマイ…」」

 

「哀れみの目はやめてほしいんだが…」

 

「それにしてもリク君、性格変わったよね~~」

 

「まぁ……今からしてみると確かに酷かった自覚は あるな……」

 

「今はカッコいい感じだけど、昔は何か気持ち悪か ったしね!」

 

「……………ぐふっ」

 

『(バッサリだ~~~~!!)』

 

「?リク君どうしたの?」

 

「無自覚でリクくんのメンタルを折るとは…………ア ネラスくん、恐ろしい娘!!」

 

「何を訳のわからん事を言っているのだ阿呆」

 

「あ、待ってミュラー!!そのまま引っ張ると僕の キュートな首がぐぇっ!?」

 

『皆~、もうケビン達行っちゃったよ~?』

 

『狐が喋った!?』

 

そうして、ケビン達に従う形で他のメンバーも全員 (約一名は生死の境をさ迷いながら)書架へと移動 するのだった

 

ーーーーーーーーーーー

 

「…………グス………ヒック…」

 

「………………」

 

え?待て待て待て

 

え?放置?この状況で?マジで?

 

「……………(レーヴェ!助けて!Help!)」

 

「……………(この際だ。いっそ姫を受け入れてやっ たらどうだ?)」グッ

 

助けてっつってんのにかなり検討外れの答えを返す レーヴェ。

 

誰か~!あの澄ました顔したバカの親指折ってくれ ェェェェ!!300ミラあげるから!

 

「(据え膳食わぬは男の恥、女をリードするのも男 の甲斐性)」

 

「(いや知らんけど!?)」

 

「(…………ってカリンが言ってたような言ってなか ったような)」

 

「(せめてそこはっきりさせろや !!つーか本当 にアバウト!理由がアバウト!というかお前そんな キャラだっけ!?)」

 

「(………………じゃあな)」

 

「(待て待て待て待て待て!!見捨てないで!割り とガチめなお願い!)」

 

「(大丈夫だ。2~3時間したら戻ってくる)」

 

「(どういう意味の大丈夫だァァァァァ!!ってレ ーヴェ!?レ~ヴェ~~!!)」

 

行っちまったよ。あのカリコン(カリンコンプレッ クスの略)

 

「………グス………グス………」

 

……どないせぇっちゅうねん

 

「あ~…とりあえず泣き止めって…お前に泣かれる と調子狂うんだよ…」

 

「……………グス…」

 

「…ったく…」

 

「………あ……」

 

泣き止む気配の無いクローゼの頭を撫でる

 

……昔、割りと泣き虫だったクローゼを泣き止ませ る為に使ってた方法だけあって、少しは効果があっ たらしく、本当に少しだがクローゼのグズりが治ま った

 

「……さて、そろそろ離してくれると助k「嫌!」… オイ」

 

「離してくれ」の辺りから俺に回されてる腕に入る 力がより一層強くなった

 

「……いや、俺も事情説明聞いて無いし「嫌!」い や、だから事情説明「嫌!」だから事情「いや」せ めて説明「いや……」わかった!!わかったから泣 くなって!!」

 

次第にクローゼが泣きそうになるので、仕方なく説 明は後でレーヴェかケビンに聞くことにする

 

「……ただ、本当に離してくれると助かるんですが… 」

 

さっきから胸元が冷たいんで……

 

「………いや……だって…離したらまたどこかに逃げち ゃうもん……私の手の届かない場所に行っちゃうも ん……そんなの……いやだもん……!」

 

………何この可愛い生き物。お持ち帰りしてもよかと ですか?

 

………………………………………ハッ!?俺は一体何を!?

 

というか完全に駄々っ子モードだな。学園に入って からは一回もなかったのに……

 

こうなったクローゼには何を言っても聞かない。と いうか思考が完全に幼児化するので何するかわから ない

 

そんな訳で、暫くされるがままになっていた俺なの であった


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