英雄伝説・空の軌跡~銀の守護騎士~   作:黒やん

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闇の扉『咎』

~第六星層・周遊道入り口~

 

俺が三途の川を全力で逆流してから数時間後

 

「…………ん?」

 

「どうしたケビン?」

 

「いや、何か変な扉みたいなん見付けたんやけど」

 

あの後、出てきたフェイトに事情を説明して協力し てもらう事になったんだが……どうもクローゼとウ マが合わないらしい。未だに喧嘩してるしな

 

まぁ、それ以前に俺があの場にいると何されるかわ からん

 

なので、とりあえずケビン、リース、俺、ヨシュア で第六星層に入ったんだが……

 

「何だこれ?」

 

「…………確かに扉っぽいけど」

 

「禍々しい……としか言えませんね」

 

何か黒いし模様が不気味な扉?を見つけた

 

ーーーよくぞ来た。異邦者よ……

 

「「!?」」

 

「……お前はやっぱり扉なんか?」

 

ーーー然り……されどただの扉に有らず。闇に葬ら れし負の記憶なり……

 

『…………』

 

負の記憶…………

 

「お前の条件は?」

 

ーーー我が開くは只一度。加えて入るは只一人………

 

無知なる氷華、我が前に引き連れよ。さすれば扉を 開かん…

 

「!!」

 

「氷華……」

 

「……ケイジしかおらんな」

 

ーー然り。無知なる氷華よ。これより先は咎の記憶

 

「………咎?」

 

ーー覚悟を固めし時、我を開くがよい ……

 

そう言うと、扉は輝きを失った

 

「ケイジ、咎って……」

 

「…………わからない。罪や後悔なら腐るほどあるつ もりだが……」

 

『咎』なんて大層なモン背負った覚えはない

 

「………どうするの?」

 

「無理に今開く必要もないやろ。ともかく先に…」

 

「………いや、悪いが、開かせてもらう」

 

リースとヨシュアは特に反対もなさそうなので、ケ ビンを見る

 

「ケイジが見たいんやったら見ればええ。覚悟とか 言っとったから時間開けた方がいいて思っただけや しな」

 

「……悪いな」

 

そして、俺は黒い扉を開けた

 

ーーここに記憶と、悲しみを与えん

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

むかしむかし、あるところに、とても仲のよい二人 の男女がいました

 

男は、とても頭が良く、また武術にも精通していて 、村の人達にも信頼されていました

 

また、女は鴉の濡れ羽のような綺麗な黒髪で、とて も器量よしの人気者でした

 

……そして、時が経ち、大人になった二人は当然の ように結ばれました

 

二人はとても幸せで楽しい毎日を過ごしていました

 

しかし、そんな時、二人の暮らす村に悪い猟兵団が やって来たのです

 

猟兵団は仕事に失敗した帰りらしく、半ば自棄にな って村人を襲いました

 

村人達も当然反抗し、男を筆頭にして猟兵団に立ち 向かいました

 

しかし、流石に力の差は歴然で、男はとうとう捕ま ってしまいました

 

そして、男に剣が降り下ろされようとした時、奇跡 が起こりました

 

男の背中が突然光り、その光を見た猟兵達がいきな り倒れ始めたのです

 

そして、暫くして、猟兵団は全員気絶して、村に平 和が戻りました

 

………しかし、男と女は村を追い出されてしまいます 。村人達が男の得体の知れない力を恐れたからです

 

そして、人里離れた川のほとりで、二人は暮らし始 めました

 

しかしある日、恰幅のいい綺麗な服を着たお爺さん が来て、男に自分達の国に来るように命令してきた のです

 

男は怒ってお爺さんを力ずくで追い返そうとしまし たが……

 

ーーキレイな嫁さんだな。嫁さんは大事にしないと なぁ

 

そうお爺さんが言うのを聞いて、仕方なく男は女と 一緒にお爺さんの国に行きました

 

そして再び時が経ち、男と女に子供が出来ました。 二人は大層喜び、とても幸せでした

 

………しかし、それからが悲劇の始まりだったのです

 

子供が生まれた翌日、男にとても危険な任務が下り ました

 

しかし、男は難なくその任務をこなし、無事に任務 を終えました

 

ーー帰ったら、今まで苦労かけた分、休暇を取って アイツらと旅行にでも行こう。息子に俺達の国を見 せるのもいいかも知れない

 

そんな事を考えながら、家の扉を開けると

 

女が床に倒れていました

 

男は慌てて女に駆け寄り、抱き起こします

 

……女は、既に冷たくなってしまっていました

 

ーーどうして!!どうしてコイツが!!どうして俺 じゃなくコイツがこんな目にあう!!

 

男は、一晩中女を抱いたまま泣き叫びました。男が 泣いたのは、その時が初めてでした

 

次の日、男は赤ん坊の泣き声で目を覚ましました

 

男は驚き、飛び起きて泣き声のする方へ行ってみる と、なんと無傷の赤ん坊が地下の倉庫の中で毛布に くるまって泣いていました

 

男は、赤ん坊を抱きしめて女に感謝しました。何で この子が生きているのかを理解したからです

 

そして数日後、男は女がどうして死んだかを突き止 めました

 

女は、男が今まで任務で捕まえてきた犯罪者の残党 に、男への復讐として殺されたのです

 

男は、残党を探しだし、その全員をその手で殺しま した

 

そして、男が復讐を終えた時、男は突然怖くなりま した

 

ーーアイツと同じ事がこの子にも起きるかも知れな い

 

それは男には耐えられる事ではありません

 

男はそれから不眠不休で赤ん坊を護りながら必死に 考えました

 

出た結論は、その子を自分から切り離す事でした

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

『ゴメン……ゴメンな………俺がこんな人間だったば っかりに………』

 

『こんな事になるくらいなら……あの時死んどけば よかったのかも知れねぇな……』

 

『ゴメンな……こんなロクデナシが父親で……こんな ロクデナシと繋がりを持っちまったばっかりに……… 』

 

男は想いを隠します。一緒に暮らしたいという想い を

 

男は悲しみを封じます。妻を失った悲しみを

 

『なぁ、お前が大人になって……もし真実を……アイ ツの存在を知ったなら…………』

 

男は………決意をします

 

『せめてアイツの墓参りはしてやってくれ……この ロクデナシで、クズで、最低の父親《バカ》からの最初で最 後のお願いだ」

 

生涯、実の息子に恨まれ続ける事を。

 

妻を死なせ、忘れ形見をも捨てた、その“咎”を抱え 続ける事を

 

『……じゃあな。元気で幸せに生きろよ………!!』

 

その時が、男が人生で最後に泣いた瞬間でした

 

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