英雄伝説・空の軌跡~銀の守護騎士~   作:黒やん

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『成長の証』

「ケイジはリニス……杖の方をお願い。私はアルフを倒す。三人は機械兵器を!」

 

 

フェイトが指示を飛ばし、ケビン、リース、リクは三体の後ろからも続々と出現する機械兵器の方へ向かう

 

 

しかし、ケイジはその場で目を閉じて立ったままだった

 

 

「……それでいいのか?」

 

 

「……うん。そう分けた方が相性もいいから」

 

 

「そういう意味じゃねぇよ。……何かあるんだろ?あの猫耳と」

 

 

「………」

 

 

図星だった。フェイトはリニスと話したかったのだ。これまでの事、友達がたくさん出来た事、好きな人が出来た事……姉のような存在だったリニスに話したいことはたくさんあった

 

 

「……行ってこい」

 

 

「でも……」

 

 

「行かなかったら後悔すんのはお前だぞ?」

 

 

そう言われたフェイトは少し悩み、すぐに顔をあげた

 

 

「そうだよね。ありがとうケイジ……行ってきます」

 

 

「おう」

 

 

フェイトが魔力弾の弾幕を避けながらリニスの方へ向かうのを見届けると、ケイジはすぐ側まで来ていたアルフの方へ向き直る

 

 

「待たせて悪かったな」

 

 

「いや、構わないよ。それより……アンタがフェイトの言ってたケイジかい?」

 

 

「そっちにケイジって名前の奴がいなけりゃ俺だろうな」

 

 

「へぇ……ちょうどいいや。アンタがフェイトに相応しいかどうか……アタシが見極めてやるよぉっ!!」

 

 

「血気盛んだなぁオイ。……んじゃあ、狼退治と行きますかぁっ!!」

 

 

籠手と刀がぶつかり合う。だがその瞬間に刀は弾かれたように籠手を弾き、衝突の勢いをそのまま小太刀……蒼燕に乗せてカウンター気味に振るう

 

 

普通ならそこで決着が付くような強制カウンターの一撃。だがアルフは凄まじい反応で蒼燕を紙一重でかわした

 

 

「危なっ!?アンタそれ質量兵器じゃないのかい!?」

 

 

「なんだそれ?」

 

 

「……一応聞くけど、それアタシに当たったら?」

 

 

「そりゃ斬れるだろ。刀なんだから」

 

 

「逮捕だタイホー!」

 

 

「何で!?」

 

 

こっちは何故か和気藹々としていた

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「……リニス」

 

 

「貴女が来ましたか……戦術的には不合格ですよ?」

 

 

フェイトを前にしたリニスは、杖を構えながらも優しい声音で話す

 

 

「うん。わかってる……でも、リニスとどうしても話したかったから」

 

 

そう言ってフェイトが構えを解くと、つられてリニスも構えを解いた

 

 

「話したかった?」

 

 

「うん……リニス。私、友達が出来たよ」

 

 

「そうですか……月並みですが、大事にしないといけませんよ?」

 

 

「うん。それでね……執務官になった」

 

 

「……管理局ですか。個人的にはあまりいい印象はありませんが……おめでとうフェイト。頑張りましたね」

 

 

「ありがとう……それでね、エリオとキャロって子達の保護責任者になったんだ。それに私もリンディさんって人の養子になってね。今はフェイト・T・ハラオウンって名前なんだ」

 

 

「そうですか……家族はよくしてくれていますか?」

 

 

「うん。とっても」

 

 

「なら私からは何も言いません。貴女が幸せなら、ね」

 

 

「ありがとう。それでね……それで…………あはは、いっぱい言いたいことはあるのに何から話したらいいかわかんないや」

 

 

フェイトは苦笑いし、リニスはそれに暖かい微笑みを浮かべる

 

 

主の娘と使い魔という差はあれど、そこには確かに家族の繋がりというものがあった

 

 

「そうですか……なら、構えなさい。フェイト」

 

 

「うん。『剣を交えれば相手の事は大方わかる』……リニスが教えてくれた事だもんね」

 

 

そう言って二人はそれぞれ杖と鎌を構える

 

 

そして……

 

 

「「フォトンランサー……ファイア!!」」

 

 

どちらからともなく、魔力弾を放つ

 

 

ほぼ同時に放った魔力弾の数は42と全くの同数。しかし操作は僅かにリニスの方が上なのか、リニスは的確にフェイトのフォトンランサーを撃ち抜いて相殺していく

 

 

「強くなりましたね……収束率、魔力運用、操作能力……全てあの頃とは比べ物になりませんね」

 

 

「私だって成長してるからね……っ!」

 

 

《Britz Action 》

 

 

リニスが魔力弾を相殺している隙に、フェイトはリニスにどんどんと近付いていく

 

 

そして、リニスが魔力弾を相殺しながらフェイトに攻撃するのにほんの一瞬隙が出来る

 

 

「っ!そこ……!!」

 

 

《Jet Zamber 》

 

 

そこをフェイトは見逃さない。推進力の高い魔法で一気に距離を詰めようとする

 

 

……が、リニスもそうそう甘くない

 

 

「弾幕で目眩まし……そして接近。私の武器が杖という事も考えての良い手ですが……少し教科書通りすぎ、ですね」

 

 

リニスが杖をフェイトの方へ向けると、フェイトは12個の光の輪に身体を拘束される

 

 

「バインド!?早いし……多すぎる!」

 

 

追加拘束(アドバインド)……設置式のバインドを重ねていただけですよ

……フォトンランサー・ディメンションシフト」

 

 

リニスがそう言うと、スフィアが多量に出現し、フェイトの周り360度を囲んでいく。それはまるで光の檻のようであった

 

 

「撃ち滅ぼせ……ファイア!!」

 

 

リニスが杖を降り下ろすと同時に、秒間1064発の魔力弾が四方からフェイトを襲う

 

 

それは一分ほど続くと、大量の煙を残してスフィアが消えていく

 

 

リニスは油断なく煙を見つめていたが、煙が晴れると同時に目を見開いた

 

 

「そんな……まさか……」

 

 

「ーーふぅ、オーブメント貰っといて良かったぁ……」

 

 

そこには、無傷のフェイトがいた

 

 

「一体……何をしたんですか……?」

 

 

導力魔法(オーバルアーツ)。こっちの魔法って言えばいいのかな?それの『Aークレスト』と『オーバルダウン』っていうのを使ったんだ。初めは『A ークレスト』を掛けただけだったんだけど、時間があったから『オーバルダウン』も使ってみたんだ。これ……言うなれば指向性のあるAMF ……いや、MRF(魔力拒絶領域)を作り出すみたいだね」

 

 

フェイトの危機を救ったのは、出発直前にティータがフェイト専用に完成させたオーブメントだった。

 

 

「まぁ、操作を間違って一瞬私の飛行魔法まで消えちゃったけど」

 

 

「くっ……なら、今度はそれを使う暇が無いくらい早く撃てばいいだけです!!」

 

 

リニスは悔しそうな顔で杖を握り直す

 

 

「うん、そうだね………でも、次は無いんだよ」

 

 

《Sonic Move 》

 

 

「っ!?」

 

 

リニスに詠唱をさせまいとフェイトは高速で近付き、剣に変形させたバルディッシュを振るう。リニスは詠唱を中断してそれを受け止めた

 

 

「ここに来て学んだ事は二つある……一つは、達人相手だと同じ手はまず通じないこと」

 

 

ケイジやレーヴェ、リシャール、ミュラー、ユリア、ジン。更にはエステルやヨシュア、シェラザードにアガット、アネラス、リク……その全員が同じ手にはすぐに対応してきた。

 

 

フェイトは鍔迫り合いのまま魔力を二人の間で炸裂させ、自分に有利な距離を作る

 

 

「二つ……常に上に行こうとしないと、すぐに皆に置いて行かれること!!」

 

 

ここにいる全員が常に強くなろうと努力している

 

それは今拠点にいるクローゼやリーシャだって同じ。今は戦闘面ではフェイトがリードしているが、気を抜けばすぐに追い抜かれるのは目に見えている

 

 

負けるわけにはいかない。実力でも……恋愛でも

 

 

「私は先に進む……だから、まずは昔は越えられなかったリニスを越える!!」

 

 

バルディッシュの先端に雷に変換された魔力が収束していく

 

 

「……フフフ、そうですね。ならば……越えて見せなさい!!」

 

 

リニスの杖の先にも同じように雷を帯びた魔力が集まっていく

 

 

そして、先に魔力の収束を終えたのは……リニスだった

 

 

「フェイト……貴女に贈るこの一撃。受け止めて……乗り越えなさい!!」

 

 

そして、魔力が籠った杖をフェイトに向けて思いっきり降り下ろす

 

 

「プラズマ……セイバー!!」

 

 

剣の形に収束された雷光がフェイトに迫る

 

 

だが……

 

 

「……サンダーシクリオン!!」

 

 

その剣は、フェイトが発動させた風属性最上位アーツによって相殺された

 

 

……本来ならばフェイトのクオーツの配置では使えないアーツ。それを可能にしたのは……フェイト自身の稀少技能(レアスキル)である魔力変換資質『電気』だった

 

 

「プラズマザンバーブレイカー……リニスが理論を作って私に教えてくれた収束砲撃魔法。でも……それじゃあダメだから。私がリニスを越えないと……意味がないから」

 

 

プラズマセイバーとサンダーシクリオンが相殺されたことで、雷を帯びた魔力や導力が空気中にばらまかれている

 

 

その魔力は全てバルディッシュへと集められていた

 

 

「そう、私自身がリニスを越えないと意味がない。だけど……」

 

 

「ええ。仲間……それは貴女の力で、一生の宝物です。それを借りるのは悪い事ではありません。絆も貴女の力の一部なのですから……」

 

 

リニスはただフェイトを見つめている。見つめながら……微笑んでいた

 

 

これが私の自慢の教え子だと。これが私の愛する妹分の片割れだと

 

 

「うん……なのはのスターライトブレイカー、ケイジのカウンターの相手の力を完全に利用する技、ティータに貰ったオーブメント、クローゼに教わったアーツ……その全部を一つにした、私だけの、私が出せる二番目に強い魔法」

 

 

ケイジの力を完全に利用するカウンターから思い付き、何故か使えたサンダーシクリオンを吸収させることで使えるようになった戦技(クラフト)

 

 

しかし、今はそれ以上に大気中に雷の力が充ち溢れているのだ。それを全て収束するのだから、下手をすれば“あの技”以上の威力だろう

 

 

何故最強の技を使わないのか?そんなものは決まっている。最強は最強に叩き込む。ただ、それだけ

 

 

そして叩き込む相手は……リニスではない

 

 

「フフフ……そうですね。最高の技はあのわからず屋に叩き込んであげなさい」

 

 

「わかってる……ねぇ、リニス」

 

 

「はい?」

 

 

「私ね……好きな人が出来たんだ」

 

 

その言葉に一瞬ポカンとするリニスだったが、すぐに暖かい笑みを浮かべた

 

 

「フフフ……そうですか……あのフェイトに好きな人が……そうですか……フフフ……」

 

 

「わ、笑わないでよ…」

 

 

「いえいえ、結構真面目に心配していたんですよ?親子揃って変な所で堅物ですし」

 

 

「もう……」

 

 

「あの事はもう?」

 

 

「うん。さらっと流されて受け入れられちゃった。バカって言われたよ」

 

 

「そうですか……どんな人なんですか?」

 

 

「頭いいのにどっか抜けててね?鈍感で、サボリ魔で、バカで、甲斐性なしで、後先考えてなくて、トラブルメーカーで、物凄く自由人で……」

 

 

それを聞いたリニスの頭にはどうしようもないダメ人間しか浮かばなかった

 

 

「……それでも、誰かのために本気になれる人。『フェイト・テスタロッサ・ハラオウン』っていう私自身を見てくれる人。不器用だけど……とっても優しい人」

 

 

「……そうですか」

 

 

しかし、フェイトが幸せそうな顔でその人の事を話すのだ。ならば、リニスが何か口を挟む必要などない

 

 

幸せの形は千差万別なのだから

 

 

「……そろそろ、終わりにしましょうか。向こうもそろそろ終わりのようですしね」

 

 

「うん……集え雷光……天をも呑み込み、全てを撃ち抜け救済の光……!!」

 

 

「さぁ……来なさい!フェイト!!」

 

 

「行くよリニス……これが私の、成長した成果の結晶!!

ヴォルテックセイバー……ブレイカァァァァァァァ!!!」

 

 

天雷を纏った光の一撃がリニスを呑み込む

 

 

自身が消えていく感覚の中で、リニスが最後に感じたものは……

 

 

「ありがとう……リニス、大好きだよ」

 

 

そんな、フェイトの声だった

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「……………」

 

 

砲撃の余韻で雷がまだ周りに残っている中、フェイトは静かに立ち尽くしていた

 

 

本物ではないとはいえ、もう二度と会えないと思っていた姉のような存在と本気で闘い……そして勝った

 

 

しかし、それによってフェイトが得たものは、模擬戦で勝利した時のような満足感ではなく、どこか空虚な感覚だった

 

 

今のフェイトをなのはやはやてが見ればさぞ驚いた事だろう。あの戦闘狂(バトルマニア)のフェイトが闘いに勝ったのに今にも泣きそうな表情をしているのだから

 

 

 

 

 

 

 

ーーザッ……

 

 

背後から足音がする。誰かが近付いて来ている

 

 

フェイトは近付いて来た人物の方を向き……そのままその人物……ケイジに抱き付いた

 

 

「……終わったみたいだな」

 

 

「……うん」

 

 

決着(ケリ)はつけられたのか?」

 

 

「……うん」

 

 

「そうか」

 

 

ケイジはそれ以上何も言わず、そっとフェイトの頭を撫でる

 

 

その感触がどうしようもなく優しくて、暖かくて……

 

 

「……………っ!」

 

 

フェイトはケイジの胸に顔をうずめたまま、静かに涙を流した














ヴォルテックセイバーブレイカー


クラフト・直線 CP130

気絶or封技100%


発動方法……サンダーシクリオンの準備中にSクラフト発動画面で□ボタン。するとサンダーシクリオンの発動時に自動的にサンダーシクリオンがヴォルテックセイバーブレイカーになる(Sクラフトと同じようにアニメーションあり)


こんな感じで妄想してみた

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