英雄伝説・空の軌跡~銀の守護騎士~   作:黒やん

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『人が慌ててると自分は落ち着く』

あの魔の泥酔事件(ジル命名)から1日…

 

俺とクローゼは偶々学園に忘れ物を取りに来て、不 運にも生徒に見つかり半ば無理やり授業に参加させ られたエステルとヨシュアを送るため、そのついで にマノリアの先生達の所に泊まるためにメーヴェ海 道に来ていた

 

「さてと、ここでお別れだね」

 

「はい…この数日間本当にありがとうございまし た 」

 

「あはは、いいって。あたし達も楽しかったし。 それじゃあ…先生とあの子達によろしくね」

 

「覚えてたら言っとく」

 

そうして別れようかという時に

 

「おお、あんた達か!」

 

後ろから孤児院の片付けを手伝ってくれていた人が 慌ててやって来た

 

「オッサンは…確かマノリアの…」

 

「はあ…はあ…そこのあんた達は確か遊撃士だった な!た、大変な事になったんだ!」

 

「大変な事?」

 

「その前に落ち着け。はい深呼吸~」

 

「す~は~す~は~…ふう、 …テレサ先生と子供達 がマノリアの近くで何者かに 襲われた」

 

「あ、あんですって~!?」

 

「あ…」

 

その言葉に全員が驚き、クローゼに至っては膝を着 いて座り込んでしまっている

 

俺はそのクローゼを支えて

 

「落ち着け。…オッサン、詳しい事を教えてくれ ね ぇか?」

 

と、冷静に言えたが、俺も頭の中がかなりぐちゃぐ ちゃになっている

 

自分より慌てている…もとい、頭が真っ白になって いるクローゼを見て、何とか平静を保っているよう なもんだ

 

「あ、ああ。学園祭から帰って来る途中で変な連中 に襲われたみたいでな。子供達にケガは無かったが 先生と遊撃士の姉ちゃんが気絶させられたみたいだ 」

 

「カルナさんが!?」

 

「相当の手練れみたいだね…」

 

「………」

 

エステルとヨシュアは知り合いの遊撃士がやられた ようで驚いている

 

「ギルドに連絡するはずが宿屋の通信機が使えない んで走ってここまで来たんだ!」

 

「サンキュー、オッサン。悪いがここまで来たつ いでにルーアンのギルドにも知らせてくれ。俺達は 遊撃士と一緒にすぐにマノリアに向かう」

 

「ああ、わかった!」

 

そう言ってすぐに走って行った

 

「俺らも早く行くぞ!クローゼ!いつまでそこに 座り込むつもりだ!」

 

「!…うん。ごめん」

 

そうして俺達は一路マノリアに向かった

 

~マノリア村~

 

俺達はマノリアに着くなりすぐに酒場の二階に入っ た

 

「無事か!?」

 

「お姉ちゃん達…」

 

「みんな…」

 

子供達は俺達を見て緊張がほぐれたのか、すぐに飛 びついてきた

 

「わあああん!」

 

「怖かったの~!」

 

「良かった…あんた達は無事みたいね」

 

「すみません、先生達の容態は?」

 

エステル達はすぐに仕事に取りかかっている

 

「安心しなさい。二人共大したケガじゃないわ。た だ目を覚まさないからちょっと心配なんだけど…」

 

「ちょっと失礼します」

 

容態を聞いたヨシュアはすぐに先生達の様子を調べ る

 

すると、

 

「うん、間違いない。睡眠薬をかがされたみたい だ」

 

「す、睡眠薬ぅ!?」

 

エステルが過剰なリアクションをとる

 

「うん、微かに刺激臭がする。副作用がないタイ プだから安心していいと思うけど…」

 

それを聞いた俺はすぐに先生達に近づき

 

「…この匂いは…すんません、今から書く薬草を す りつぶした物を湯で溶かして飲ませてあげて下さ い」

 

そう言ってメモに数種類の薬草を書いてさっきヨシ ュアと話していた人に渡す

 

「この通りにすればいいのね?」

 

「はい」

 

そう答えるとすぐに部屋を出て行く

 

「…ケイジ、君は…」

 

「説明は後だ。クラム、何があった?」

 

俺はクラムに説明してもらおうとするが、クラムは 俯いて答えない

 

「…あたしが説明します… あたし達…遊撃士のお姉 さんと一緒に海道を歩いて いたんですけど…突然覆 面をかぶった変な人達が現 れて…遊撃士のお姉さん が追い払おうとしたけど… 覆面の人達にすぐに囲ま れて…先生もあたし達を守 ってあいつらに向かって 行って…それで…」

 

そこまで話すと、マリィが泣きそうになる

 

エステルがそれを慰めていると

 

「…あいつら…先生からあの封筒を奪ったんだ… オ イラ…取り返そうとしたんだけど…思いっきり突 き 飛ばされて… ケイジ兄ちゃん、

 

オイラ…守れ なかったよ…」

 

クラムまで泣き始める

 

「…そんな事はない。お前は守ろうとしたんだろ ? 今はそれだけでも大したもんだ。それに…誰もケ ガ してないだろ?先生はそれだけでも喜んでくれる さ」

 

「…でも…オイラ…」

 

気がつけば子供達全員が泣いていた

 

「許せない…!どこのどいつの仕業よ!」

 

ついに我慢の限界が来たのかエステルが叫ぶ

 

「…はっきりしているのは…犯人が手練れだと言 う 事です。遊撃士の方が為す術もなく気絶させられ た訳ですから…」

 

本来の冷静さを取り戻したクローゼが事件の分析を する

 

「そしてもう一つ…計画的な犯行だと言う事です 。 狙いは勿論先生の持っていた寄付金…」

 

「放火の件も十中八九そいつらが犯人だろうな」

 

「うん、その可能性が高そうだね」

 

「クローゼ…」

 

心配そうにエステルが言うが

 

「ようやく落ち着いたか。アホ」

 

「うん…いつまでも落ち込んでいても仕方ないよ ね 。今はともかく、一刻も早く犯人を捕まえないと … !」

 

「…そいつは同感だな」

 

ルーアンで見た赤毛…アガットがいきなり入って来 た

 

「あーっ!」

 

「アガットさん…」

 

「話は聞いたぜ。ずいぶんと厄介な事になってる みたいじゃねぇか」

 

「ひ、他人事みたいに言わないでよ!カルナさん だってやられちゃってるんだから!」

 

「わかってる…きゃんきゃん騒ぐな。確かにカル ナ は一流だ。相当ヤバい連中らしいな。大ざっぱで いいから今までの事情を教えて貰おうか」

 

「はい…」

 

物凄いくってかかるエステルを華麗に流すアガット

 

…なんかコイツとは気が合う気がする

 

その後ヨシュアがアガットに一連の事情を説明する と…

 

「ふん、成る程な。妙な事になってきやがったぜ 」

 

「妙ってなにがよ?」

 

「ああ、実はな…《レイヴン》の連中が倉庫から 姿 をくらませやがった」

 

「それってやっぱり連中が先生を襲ったんじゃ! ?」

 

エステルが騒ぐが

 

「アホ。あんな奴らに現役の遊撃士が負ける訳な いだろうが」

 

「それもそうよね…連中、口ばっかりで碌に鍛え て 無かったし」

 

「しばらく睨みをきかせて大人しくなったと思っ たが…今日になっていきなり姿をくらませやがって …そこに今日の事件と来たもんだ」

 

手のひらに拳をうちつけるアガット

 

「何か関係はありそうですね」

 

「ああ、だが今はそれを詮索している暇は無い。 新米共、さっさと行くぞ」

 

「何よいきなり。一体どこに行くの?」

 

そうエステルが言うと、アガットは呆れたように

 

「わかんねえ奴だな。犯行現場の海道に決まって るだろ。できるだけ手がかりを掴んで犯人の行方を 突き止めるんだ!」

 

「あ、成る程」

 

「分かりました。お供します」

 

エステル達が出て行くのに、俺達は子供達をあやし てから着いて行った

 

外に出ると、エステル達が辺りの暗さに面食らって いた

 

「はあ…計画もなしに行動するからだ」

 

「む。なら何かいい案でもあるの?」

 

「…ジーク!」

 

俺がジークを呼ぶ返事を返してジークがクローゼの 腕に止まった

 

「な、なんだコイツは」

 

「クローゼのお友達でシロハヤブサのジークよ」

 

「はあ…お友達ねぇ」

 

半信半疑のアガット。…まあ、普通はその反応だろ うな

 

「先生達を襲った犯人の行方…わかるか?」

 

「ピューイ!ピュイ、ピュイ!」

 

「…クローゼ、通訳頼む」

 

「判る。案内してあげる、だって」

 

「はは、面白いジョークだぜ!」

 

笑い飛ばすアガットだが

 

「やった!流石ジーク!」

 

「うん、お手柄だね」

 

「ピューイ♪」

 

「ちょ、ちょっと待て!お前らそんなヨタ話を信 じてるんじゃねぇだろうな!?」

 

普通にこの状況を受け入れているエステル達を見て 慌てだした

 

「…信じられないなら一人で海道を探せばいい。

 

ーか信じねぇんなら着いてくんな」

 

「行くわよみんな!」

 

全員がジークに着いて行き、その場に取り残された アガット

 

「…(ポカーン) …えーと…こ、

 

やがれ!」

 

結局後を追うアガットであった


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