英雄伝説・空の軌跡~銀の守護騎士~   作:黒やん

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『シリアスって何だっけ……』

~前回のあらすじ~

 

狐、乱入

 

 

 

 

「…………」

 

「あれ?外しちゃいました?」

 

突然の事すぎて脳の処理が追い付いていないクローゼを見て、何をトチ狂ったのか「やっぱイマイチインパクトがたりないかな~」とか悩み出すウル。安心しろ。ウルの存在自体がインパクトの塊である。

 

「……はっ!? 何でここにいるの!? ケイジと一緒に閉じ込められてたんじゃないの!? というかそれならケイジはどこにいるの!?」

 

「だ~いじょ~ぶさぁ~」

 

「返事になってなぁーーい!!」

 

正気を取り戻したのかはたまたトチ狂ったのかはわからないが、とにかく現実に戻って来たクローゼが思いっきりウルの胸ぐらを掴んで前後にブンブンと振る。その時のウルの返事が気に入らなかったのか更に激しく揺らしているが、それでもウルはヘラヘラと笑っていた。……案の定カオスである。

 

「……え、えっと……クローゼ? そのコスプレ美人さんは誰なの?」

 

唐突に始まった漫才っぽい何かに流石のシャルも苦笑いしながらウルの事をクローゼに尋ねる。大人ver. のウルは何気に騎士団のメンバーの中でもケイジ以上に仲が良いシャルにも御披露目していなかったりするのだ。

 

「なんと!? わっちの事を知らないと申すか!?」

 

「もうしばらく黙っててよ……」

 

「だが断ります!」

 

「……………」

 

「なんだよ~。ちょっとボケ倒しただけじゃないですかよ~」

 

流石のクローゼもこのシリアス(だった)な雰囲気でボケ倒される事に若干の危機感を覚えたのか、(不本意ながら)鍛え上げられたストッパー技術を使ってウルの鎮圧を試みる。……が、少しばかり手遅れである。既に場は完全にウルのペースに乗せられてしまっている。

 

「ん~……ひょっとして、僕の知ってる人なの?」

 

「ひょっとしなくてもそうですね~。ヒントは(わたし)です☆」

 

「(何のヒントにもなっていないような……)」

 

「ん~……」

 

「ほらほら、わからないんですか? こんなキュートで可愛らしいお手伝いさんなんて世界中探しても(わたし)くらいしかいませんよ~?」

 

この狐、自重しない。

クローゼも半ば諦めたのか、こめかみに手を当ててため息を吐いている。シャルに関しては一緒になって楽しんでいた。シャルェ……

 

「ヒント2、狐」

 

「あ、ウルだ!」

 

「なん……だと……? 何故バレたんです!?」

 

「いや、ヒント狐って答えでしょう……?」

 

「ですよね~☆」

 

もう一度言おう。今宵の狐は自重しない。

 

「さて、話は色々逸れましたが……」

 

「「いや、十割ウルのせいだけど」」

 

「さっさとやること終わらせません? いい加減このノリ疲れるんですよね~……」

 

はふぅ、と息を吐くウルにイラッときた二人であったが、そう言えば戦闘中であったことを思い出し、それぞれレイピアと双銃を構える。

 

「……ちょっと色々ありすぎて忘れてたけど……」

 

「そう言えば交戦中だったね……」

 

「全く、二人共うっかりさんですねぇ」

 

ケイジがウルを駄狐と呼ぶ理由が少しばかり理解できた二人であった。

 

まぁ、そんな駄狐は放っておき、二人は少し距離を置いて対峙する。

その中心にはウルがいる。どうやらどちらかに味方するのではなく、審判役を買って出たらしい。何しに来たんだこの狐。

 

「両者共、準備はよろしいですね……?」

 

ウルの呼び掛けに無言で頷く二人。その間にはピリピリとした緊張感がはりつめており、開戦の瞬間を見逃すまいとしているのか、周りは風に揺れる森の音以外には存在しない。

そして、ウルが手を挙げるのと同時に二人は足に力を込め、スタートダッシュを……

 

「それでは……第一回、チキチキサイコロトーク大会を始めます!!」

 

きれなかった。両者共にズシャァァァと頭からずっこけたのだ。非常に痛そうである。

 

「ボケるなァァァァァァァァ!!」

「痛たた……鼻の頭すりむいた……」

 

青筋を立てるクローゼと涙目のシャルに、ウルはまばゆい笑顔で答える。

 

「いやぁ~、(わたし)ボケないと死んじゃう病なんですよね~」

 

「「嘘つけ!!」」

 

「何故バレるし」

 

当たり前である。

 

「まぁそれは置いといて……。(わたし)シリアスな雰囲気嫌いなんですよね~。ほら、アレです。何か見ててむず痒くなるんですよ」

 

「いや、知らないからね!?」

 

「という訳でサイコロトーク行きますよぉっ!」

 

「マイペース過ぎない!?」

 

クローゼとシャルの文句もなんのその。マイペースに満面の笑みで「何が出るかな♪ 何が出るかな♪ たらららんらんたたたたーん♪」とどこぞのお昼過ぎに出没するライオンのようにサイコロを放るウル。もはやクローゼとシャルには見ていることしか出来ない。

そして、しばらく転がるとサイコロが止まる。

 

「……出ましたっ! 4の話! 略して『4』!」

 

「「(4の話!?)」」

 

「え~、皆さんは縁起の悪い数字だと思われるかもしれませんが、(わたし)は結構この4って数字と深い繋がりがあるんですね。(わたし)が4と始めて出会ったのは4歳の時……」

 

「「本当に4の話始めた!?」」

 

もはや二人のツッコミが追い付いていない。というかツッコんだ側からどんどんボケているために処理しきれていない。

 

「ほら、次はシャルの番ですよ~」

 

「ほえ?」

 

ウルに手招きされるシャルだが、本人はクローゼとウルを交互に見ている。恐らくだが何となくサイコロトークが面白そうという興味とクローゼに悪いという良心との間で揺れているのだろう。

しばらくはそれを繰り返していたシャルであったが、小さく頷くと……

 

「もうどうにでもな~れ♪」

 

「シャル!?」

 

シャル、陥落。クローゼが裏切られたと今にも叫びそうな表情でシャルを見るが、シャルがクローゼの方を見ていないのでどうしようもない。

ふとウルの方を見ると、某新世界の神になる! な人が某えるを出し抜いた時のようなドヤ顔を決めていて、それがまた何となくイラッとくる。

 

「……ふっ、勝った。という訳でいきますよシャル~」

 

「バッチこ~い!」

 

そして完全に自分の勝利……勝利? を確信したウルはシャルのサイコロを放り投げようとする。が、シャルがサイコロは自分で投げる! と言い張ってサイコロを奪い取ろうとしてきたため、ちょっと意地になったウルはサイコロを取られまいとなんとか防ぐ。

しばらく取る取らせないの攻防を続けていた二人だが、その内にウルが周りを見たことのない法陣に囲まれていることに気付いた。

 

「あれ? この法陣何です? 見たこと無いですけど……あっ」

 

「ゲット! ……ホントだ。何だろこれ?」

 

周りを見渡していた二人だが、ほぼ同時にあるものを見つける。見付けてしまう。

二人の視線の先には、レイピアを持ってぷるぷると肩を震わせながら、涙目でウル達の方を睨むクローゼがいた。

 

「えと……クローゼ?」

 

「あのー……クローゼ? いや、クローゼさん? クローゼ様?」

 

「…………二人共」

 

「「はいっ!?」」

 

「いい加減に……しなさぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!」

 

「「え? ……ギャアァァァァァァァァァァァァ!!」」

 

森の中に、一人と一匹の悲鳴が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クローゼ&ウルvsシャル

 

クローゼの一人勝ち

 

決まり手……怒りのサンタクスノヴァ

 

敗因……だいだい狐のせい








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