英雄伝説・空の軌跡~銀の守護騎士~   作:黒やん

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『鉄壁の要塞』

「レイストン要塞……ま、『鉄壁の要塞』とか言われても仕方ないわな」

 

「ああ。リベール建国以降ただ一度として敵軍の手に落ちたことのない場所だ。……身内である私が占拠したのは除いて、だが」

 

「あーもー! 大佐、ネガティブ禁止! 今は仲間なんだから気にしない!」

 

「だから大佐じゃないと何度言えば……」

 

「むしろ大佐は俺だよアホ。だからアホの子なんだよお前は」

 

「あんですって~!?」

 

周遊道の紅色の石碑にリシャールが触れると、そこはかつてリシャールとケイジ、そしてエステル達が水面下の攻防を繰り広げたレイストン要塞だった。

その場所を見て感慨深くなったのか、どこか悔いるようにリシャールが呟く。が、エステルとケイジの掛け合いによってそのしんみりした空気は吹き飛ばされるのであった。同行しているケビンとヨシュアは苦笑いである。

 

ここに来るまで、若干今までの不満が爆発しているクローゼやフェイトと一悶着あったのだが、今は置いておこう。案の定ワガママが爆発しかけたとだけ言っておく。ちなみに、この場所と繋がりのあるユリア、リクが居ないのは上記の二人を押さえるためである。シオン? 方石の定員オーバーで現在は徒歩で帰還中だ。

ついでに言うと、ウルもケイジの中に引っ込んで出てくる様子がない。どうやらリーブとの戦闘での負担を一身に背負ったらしく、しばらくは戦線復帰が見込めないだろう。

 

「……しかし、やはり不気味だな」

 

「リシャールさんもですか? 僕もです。ケイジも気づいてるよね?」

 

「まぁ、ここまであからさまだとな」

 

レイストン要塞の中庭を歩きながらそんな事を話すケビン以外の男性陣。その会話にケビンは無言で頷くが、エステルは頭に疑問符を浮かべる。

 

「え? そうかな。前に行った時とあんまり変わらないと思うんだけど……」

 

「それがもうおかしいんだよ」

 

「え?」

 

ケイジの返しを聞いて更に疑問符を浮かべるエステルに、ヨシュアは苦笑いしながら言葉をかける。

 

「エステル、今までこういう場所には何がいたっけ?」

 

「え? 軍の人ならいっぱいいたけど……」

 

「違うよ。この世界でって意味」

 

「それはもちろん魔物……そうか! 魔物が全くいないんだ!」

 

「正解」

 

良くできましたとばかりに微笑むヨシュアを見て、顔を赤くして逸らすエステル。そのラブコメな雰囲気をみたケイジは密かにぺっと唾を吐いた。

 

「リア充爆発しろ」

 

「正直その台詞ケイジだけには言う資格ないと思うんやけどなぁ」

 

「ケビン、サッカーをしよう。俺がキッカーでお前がボールだ。ボールは友達! 怖くないよ!」

 

「そんな歪みきった友達関係いらんわ! ごめんなさい冗談です」

 

「まぁまぁ……二人とも落ち着きたまえ」

 

サッカーをしようと言っているのに何故か拳を握るケイジと平謝りのケビンをリシャールが仲裁する。ケイジ達の方も半分遊び心でやっていたのかすぐに元に戻った。

 

「……しっかし、何もおらんとはなぁ。こういう場合って大体……」

 

「罠か、要らない気を回さなくても勝てるような奴を置いている時……ってやっぱり来たよ……」

 

噂をすればなんとやら。ケイジ達の前にもはや見慣れた魔方陣が現れる。そこから出てくるのは白髪の老将と20代中盤であろう若い男性……モルガン将軍とシード中佐だった。

 

「やっぱアンタかジジィ……」

 

「ふん、まだジジィと呼ばれる程に老いてはおらんわ! ……久し振りだな、リシャールよ」

 

「……はい、ご無沙汰しております、将軍」

 

いかにもめんどくさいと言わんばかりにため息を吐くケイジに青筋を立てながら、その隣で姿勢を正すリシャールを一瞥する。更にその近くではシードとエステル達が再開の挨拶を交わしていたが、この三人には特に気にすることではなかった。

 

「しかし……相変わらず厄介事に巻き込まれておるな。貴様はそういうものを引き寄せる体質でも持っておるのか?」

 

「そんな体質あったら全力で切り刻んでやるわ。どっちかと言えば俺の周りが勝手に厄介事に巻き込まれてやがんだよ」

 

「結局、巻き込まれておるではないか」

 

「……そんな、馬鹿な……!」

 

「自覚はなかったのか……」

 

思わぬ結果であったのか、ケイジは劇画チックな顔で驚く。

 

「……さて、冗談はさておき。どうやら一皮剥けたようだな?」

 

「……まぁな。そうしないと許してもらえなさそうな奴がいたもんでね」

 

だが、そんなギャグテイストな会話も一区切りつき、モルガン将軍はほんの少し顔の険を緩めると、ケイジにそんな言葉をかける。ケイジはそんなモルガン将軍に対して恥ずかしそうに頬を掻いた。

 

「ふ、素直な貴様というのはなかなかに面白いものだな」

 

「うっせ」

 

「ふむ、時間があればカシウスの子たちにも声を掛けたいところであったが……どうやら時間のようだな」

 

「「!?」」

 

そうモルガン将軍が呟いた瞬間、モルガン将軍とシード中佐の周囲に二人のものよりは小さな魔方陣が複数現れる。その時の二人の位置はちょうどケイジ達を挟んでいるような形であり、魔方陣はケイジ達を囲むように現れている。

その中からは、王国軍の兵士が現れた。

 

「この配置は……!」

 

「どうやら、綺麗にはめられたみたいやな……」

 

「ま、油断してた俺らも悪いがな」

 

咄嗟に五人で円を作るように背中合わせの状態を作る。この辺りは流石の連携と言えるが、何分非常に状況が悪い。何せ囲まれており、更には数でも負けているのだ。

 

「ふ、貴様らには酷だが、この程度の不利ははね除けてもらわねば困る」

 

「『至高にして最強』……あの方に挑むには、それくらいの力を見せてもらわないとね」

 

『至高にして最強』。リベール国内、しかも軍部の上層においてそれが指すのはただ一人。

 

「さぁ、リシャール、ケイジ、そして英雄の雛達よ」

 

「私達からの言葉はただ一つだ」

 

「儂を」

「私を」

 

「「越えていけ!!」」

 

「……さて、覚悟はいいか? 確かにあの人に挑むのに、この程度でくたばってりゃ話にならねぇ。

堂々と正面からぶっ潰して堂々と先に進んでやろうぜ!!」

 

『『応!!』』

 

シード中佐の号令と共に、兵士達が襲い掛かる。モルガン将軍を筆頭に、親衛隊達が雪崩れ込んでくる。

《剣聖》への挑戦権を得るため、ケイジ達は己の武器を今一度強く握りしめた。














結構今更ですが、アンケートは20日を〆切とさせてもらいます。

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