英雄伝説・空の軌跡~銀の守護騎士~   作:黒やん

21 / 161
『バレた!?』

「あのさ…」

 

「どうした?」

 

要塞内に侵入して、通路を歩いていると突然アネラ スが話し掛けてきた

 

「なんで中にいるのに人が一人もいないの!?」

 

そう。誰もいないのだ

 

情報部はおろか一般兵や将校階級の奴さえいない

 

「…確かシード中佐が遊撃士に訓練依頼を出すとか 言ってたような…」

 

「そうなの?というか軍の人って遊撃士を毛嫌いし てるってイメージあるんだけど」

 

「まぁ大半はな。俺とか例のシード中佐とか、有名 どころでいえばユリア中尉、リシャール大佐は遊撃 士肯定派だよ」

 

…軍のトップのモルガンの爺さんが否定的だからあ まり大々的に協力できないだけで

 

「ふーん、そんなものなんだ」

 

「そんなややこしいもんだと思ってたのか?…っと 、アタリか」

 

もはやいくつ扉を開けたのかわからなくなってきた 時、やっと目当ての部屋にたどり着いた

 

「ここなの?特に不審な所は無いと思うけど…?」

 

「そりゃあ自分の部屋をわざわざ怪しく見せる必要 なんざないからな」

 

そんなんするのはよほどの厨二病かただのアホだ

 

「ここはリシャール大佐の私室だ」

 

―――――――

 

「(…帝国の国境付近の…違う、新型飛空挺につい て…違う、クロスベルの近況報告…違う)」

 

アネラスを依頼完了として俺しか知らない抜け穴を 教えて脱出させた後、俺は大佐の私室の資料をひた すら読んでいた

 

…これで情報部とあの組織のつながりが無ければよ し、クーデターの疑いすら無ければなおよし…そん な甘い考えで資料を読んでいたのだが…

 

「(王都の地下の遺跡についての報告…?何だこれ ?)…………………っ!?」

 

…オイオイ、マジかよ。いくら探してもねぇハズだ

 

オマケにこれで情報部の疑いは無くなった…あいつ らは間違いなくリベールをひっくり返す気だ

 

「…とりあえず、王都に戻って…!!」

 

ガキィ

 

「勝手に人の部屋で私物を漁るとは…少しモラルに 欠けてはいないかな?」

 

…チッ、最悪のタイミングだな

 

「…どーも。ご無沙汰してます、リシャール大佐」

 

「久しぶりだね、ルーンヴァルトくん…で?君はこ こで何をしていたのかな?」

 

…話題はそらせないな。かと言って簡単に論破でき る相手でもない

 

…だったら

 

「いえいえ、ちょっと野暮用ですよ…そこ、通して もらいましょうか?」

 

「そんなつれない事を言わずにゆっくりしていきた まえ。…少し不自由はさせてしまうかもしれんが! 」

 

再び俺と大佐の剣が交わる

 

そしてそれは徐々に速度を上げていき、次第に二人 の剣は勿論、腕までが見えない域にまで到達する

 

「…流石は『白烏』と言った所か。まさかその年で 私と同じ域に達するとは…!」

 

「そっくりそのまま返しますよ。…流石『剣聖の後 継者』と呼ばれるだけはありますね

 

ま、今回は俺の勝ちですけどね」

 

瞬間、わざと追い込まれるようにして移動した窓か ら身を投げ出す

 

「なっ!」

 

「伊達に俺も大佐なんて役職に就いてないんですよ 」

 

このまま正面にあった要塞の壁に蹴り登り、飛び降 りて脱出…

 

チュン

 

「………っ!」

 

俺が壁に登った瞬間、狙っていたように導力銃の弾 丸が俺の腹を貫いた

 

大佐の方を見ると、口パクで

 

『なんの対価も無しに情報を渡す訳にはいかないの でね。今回は君の戦闘不参加を対価に頂いておこう 』

 

…図られた…!

 

俺はリシャール大佐のいる部屋の下の階から出てい る銃と煙を見ながら、要塞の外へと落ちて行った


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。