英雄伝説・空の軌跡~銀の守護騎士~   作:黒やん

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『白き翼』

~エルベ離宮・紋章の間~

 

あれからなんだかんだで一晩がたって、俺達は改め てこれからについて話し合うことになった

 

まぁ…やることは一つな訳だが

 

「これより、グランセル城解放と女王陛下の救出作 戦を説明する」

 

…と言う訳だ。作戦会議自体は長いから割愛。

 

かいつまんで説明すると…

 

①ヨシュア、オリビエ、ジンさんの3人が地下水路 から城内に侵入、城門を開放

 

②その騒ぎに乗じてエステル、シェラさん、クロー ゼ、俺の4人が飛空挺(離宮の解放の時に盗った) で城に侵入、アリシアさんを救出

 

③ユリ姉とティア含む親衛隊で陽動、撹乱

 

…本来なら俺も③のグループなんだが、ユリ姉が頑 として譲らなかった

 

「ぐぅ…何故私は飛空挺の操作など殿下にお教えし てしまったのだ…!」

 

「まだ言ってんのかユリ姉…」

 

「当たり前だ!みすみす殿下に危険を負わせるなど …」

 

「何の為に俺がクローゼにつくんだよ…ちょっとは 信用しろっての」

 

「…そうだな。ケイジ、くれぐれも殿下を頼む」

 

「親衛隊大隊長に向かって何言ってんだか…」

 

そんなに信用ないんかな。俺…

 

「(ケイジは信頼してはいるが…いつふざけだすか わからんからな…)」

 

――――――

 

~エルベ離宮・前庭~

 

「ヨシュア、気をつけてよね。くれぐれも無理しち ゃダメなんだから」

 

「うん、気をつけるよ。君の方も自分の力を過信し ないようにね?」

 

「うん、わかってる。例の約束だってあるもんね。 お互い、元気な姿でグランセル城で会いましょ!」

 

「うん…必ず」

 

作戦開始直前なんだが…空気がピンクだ。今なら軽 く一袋くらい砂糖が吐ける気がする

 

「ヨシュア、地下水路の魔物は割と強いからな。気 をつけろよ?」

 

「うん、わかってるよ。君もあまりふざけすぎない ようにね?」

 

「流石にこの状況でふざける勇気はねぇって…」

 

「よく言うよ…昨日もふざけてたくせに…」

 

この野郎…痛い所をザクザクと…←自業自得

 

「ま、エステルのことは心配しなさんな。あんたと 今まで旅して色々成長したみたいだからね。遊撃士 としてだけでなく女としても、みたいだけど」

 

そう言って半笑いでエステルを見るシェラさん

 

「シェ、シェラ姉…」

 

「???………どういう事?ケイジ?」

 

「爆発してもげろ♪」

 

「何で!?」

 

「ヨシュアはまだ知らなくていいの!」

 

照れ隠しでヨシュアを軽く押すエステル

 

「(ねぇねぇお姫様にケイジ。やっぱりあの子達旅 先で何かあったのかしら?)」

 

「(さぁ?まぁ、ヨシュアはともかく、エステルは わかりやすいな)」

 

「(お二人共いい顔をされてますしね…ちょっぴり 羨ましいかな…)」

 

クローゼが俺の顔をチラチラ見てくる…何かついて るのか?

 

「(……お姫様も大変みたいね)」

 

「(…わかってくれます?)」

 

女二人で何故か意気投合していて、結局最後まで言 っている意味がわからなかった

 

「やれやれ…この非常事態に頼もしいガキ共だぜ」

 

「全くだな…さて、俺達はそろそろいくぞ」

 

「また逢おう、子猫ちゃん達」

 

「女神の加護を!」

 

そう言って離宮を後にする男三人衆……はっきり言 おう。すんげぇ肩身が狭いです

 

「…記者のオッサン」

 

「お前もか…」

 

「大佐もですか…」

 

「実は俺も…」

 

良かった。どうやら味方は残されていたようだ。残 ったのがオリビエじゃなくて本当に良かった

 

「…では私達も行こう」

 

「了解しました。…ケイジ、殿下のこと、よろしく 頼んだわよ?」

 

「わかってるって。偶には俺だって真面目にいくさ 」

 

――――――

 

~エルベ周遊道~

 

「情報部の飛空挺…まさかこんな形で乗ることにな るなんて」

 

「趣味は悪いが、機動性は御墨付きだ。こんな技術 、どこから持ってきたんだか…」

 

「う~ん、そうね…あの《ゴスペル》といい謎が多 いわね…」

 

「《ゴスペル》?」

 

「そう言えば言ってなかったわね。詳しくはわから ないけど、導力停止現象を起こすオーブメントよ」

 

「へぇ…(導力停止現象…アレと何か関係があるの か…?)」

 

そんな風に考え込んでいると

 

「あんた達!そろそろ出発するわよ!」

 

「え?もうそんな時間なの?」

 

「わかった。すぐ行く」

 

――――――

 

「今から城門の開閉装置を操作します!敵が来たら 撃退して下さい!」

 

「おお、任せとけ!《不動》のジンの名にかけて誰 一人として中には入れさせん!」

 

「フッ…今こそ天上の門が開く時…最終楽章の始ま りだ!」

 

――――――

 

「ふむ、正午だ。作戦を開始する!」

 

「行くわよ!王国軍最強部隊と呼ばれる理由を…存 分に見せつけなさい!」

 

『『イエス・マム!!』』

 

――――――

 

~グランセル城・空中庭園~

 

「さて…とにかく最優先事項は陛下の救出よ。慎重 に、そして確実に行くわよ!」

 

『応!!』

 

そして庭園に着陸すると、そこにカノーネ大尉と部 下数名がいた

 

「エ、エステル・ブライトに…クローディア殿下! ?しかも《白烏》まで!?」

 

「カノーネ大尉!またお邪魔するわよ!」

 

「お祖母さまを解放してもらいます!」

 

クローゼ達がそう言うと、顔を真っ赤にして怒りだ した

 

「な、舐めるなァ!小娘ども!」

 

「うっせぇよオバサン…」

 

「お、オバ…!?」

 

「こっちはとうにキレてんだ…

 

ごちゃごちゃ言わずにかかって来いやァ!!」

 

そう(ちょっと細工をして)一括すると、カノーネ 大尉と周りの特務兵が倒れた

 

「へ…?」

 

「達人の覇気は一般人には耐えられない…聞いたこ とはあるけど、まさかこの目で見ることになるとは ね…」

 

正確には覇気じゃないんだが…まぁいいか

 

「これでしばらくは動けないだろ…早く先に進むぞ 」

 

「そうね。早く女王宮に行きましょう!」

 

――――――

 

~女王宮・入り口~

 

「いたぞ!」 「こっちだ!」

 

「わわっ!また来た!」

 

「ふん、しゃらくさい!!」

 

エステル達が武器を構える

 

「邪魔だ…

 

――瞬桜!!」

 

全力の縮地で入り口付近の特務兵ごと全員気絶させ 、元の位置に戻る

 

今はこんなところで時間を食ってる暇はない!ここ まで侵入した以上、最悪アリシアさんが人質になる 可能性だってある!

 

「は、早い…」

 

「流石《白烏》ってところかしら?(仕返しはやめ ておいた方が良さそうね…)」

 

「今は早く進むぞ。最悪の事態にならないうちに… !」

 

そうして女王宮の玄関にたどり着くと…

 

「は、反逆者ども!のこのこと来おったな!私を新 たなる国王と知っての狼藉か!」

 

護衛をつけて長々とくっちゃべるバカがいた

 

「うっせぇキノコ。冗談は髪型だけにしろ」

 

「あんたまだ国王になった訳じゃ無いでしょ?」

 

「な、なぬぅ!?」

 

何驚いてんだこのカスキノコは。アリシアさんは死 んでないし、クローゼは今もリベールにいるし、そ もそもお前戴冠式をした訳でもないのに国王になれ る訳ないだろうが

 

「デュナン公爵閣下ですね?私達は遊撃士協会の者 です。クローディア殿下の依頼で女王陛下の救出に 来ました。大人しくそこを退いていただけると助か るんですけど」

 

シェラさんがキノコに丁寧に事情を説明する

 

…そんなことしなくてもキノコごときさっさとぶち のめしたら早いのに

 

「く、クローディアだと!?あの小娘、余計なこと をしおって!」

 

「デュナン叔父様…もう終わりにして下さい。あな たはリシャール大佐に利用されていただけなんです 」

 

「な、何だそなたは……」

 

デュナンがクローゼをじっ、と見つめる

 

「………ク、ク、ク、クローディアではないかっ!な んだその髪は!?なんだその恰好は!?」

 

「いや気づけよ!?」

 

「やっと気づいたか…こりゃルーアンで会った時も 気づいてなかった訳だわ」

 

会ったんかい…危なかったな…

 

「よく判らないけど、随分と抜けた人みたいね」

 

「いや、ただ単にバカなだけだ」

 

「王族相手にそんなストレートに言えるのはアンタ だけよ」

 

「あの、黙っていた私が悪いんだと思います…」

 

いや、クローゼは悪くないだろ

 

「よ、よくもこの私をはかってくれたな!」

 

「いや、お前が勝手に騙されただけだから」

 

「これだから女という生き物は信用ならんのだ!」

 

聞けよ

 

「小狡く、狭量で、小さな事ですぐ目くじらをたて て……そんな下らぬ連中に王冠を渡してなるものか !」

 

「「「……………………」」」

 

「あ~あ、俺知ーらねーっと」

 

よく女三人が敵の状況でそんな戯言言えたもんだな

 

…というかエステル達が怖い。クローゼすら笑って るはずなのにプレッシャーが半端ない。絶対般若超 えたってこの三人

 

「か、閣下…今のはマズいのでは…」 「あ、謝った方がいいかと…」

 

ホラ、敵のはずの特務兵までエステル達の味方して るし

 

「ふーん、下らない連中か…」

 

「いやはや見直したわ。このご時世に大した度胸の ある発言ね」

 

「ごめんなさい叔父様。今のはちょっと…弁護でき そうにありません」

 

…する気、無いくせに

 

そして、多分俺以上の速度で動く三人に護衛の特務 兵が速攻でボコボコにされた

 

…絶対にクローゼだけは本気で怒らせないようにし よう

 

「はい、一丁上がりっと!お次は公爵さんの番かし ら?」

 

「よ、寄るな!寄らないでくれぇ…!

 

くっ、こうなったら陛下を盾にするしか…」

 

…今コイツなんつった?

 

「オイキノコ」

 

「き、貴様!黙っていれば私のことをキノコキノコ と!私は国お「んな事はどうでもいい」

 

「テメェ今アリシアさんを盾にとかぬかしやがった な?」

 

「ひ、ひぃっ!?」

 

「あんまり調子に乗んなよ?………殺すぞ」

 

「ひぃぃっ!?…………ブクブクブク…」

 

殺気を飛ばしただけなのに、キノコは気を失った

 

――――――

 

その後なんだかんだでフィリップさんにキノコを預 けて、俺達は先へ進んだ

 

そして――

 

~女王宮・アリシア女王の部屋~

 

「アリシアさん!」 「お祖母さま!」

 

俺とクローゼが真っ先に部屋に踏み込む

 

…が

 

「…誰もいない?」

 

「奥のテラスかもしれないわね。急ぎましょう」

 

そしてテラスへ

 

「お祖母さま!大丈夫ですか?」

 

「助けに来ました。女王様」

 

「クローディアにケイジ…それにエステルさんも… 」

 

テラスには、アリシアさんが無事な姿でいらっしゃ った

 

「漸く来たか…待ちくたびれたぞ」

 

そして奥から、なんか変な仮面を付けた男が現れた

 

「ろ、ロランス少尉!?どうしてこんな所に…」

 

「フフ、私の任務は女王陛下の護衛だ。此処にいて も不思議ではあるまい」

 

「ふ、ふざけないでよね!いくらアンタが腕が立つ っていってもこっちは4人もいるんだから!」

 

「…誰だお前?」

 

「情報部、特務部隊隊長、ロランス・ベルガー少尉 。元猟兵あがりのリシャール大佐にスカウトされた 男よ!」

 

「ほう、そこまで調べていたか。流石はS級遊撃士 、カシウス・ブライトの娘だ」

 

「!!!」

 

「外部には知らされてないはずの先生のランクを知 っているなんて…」

 

へ~。エステルってオッサンの娘なのか

 

「フフ、お前の事も知っているぞ。ランクC、シェ ラザード・ハーヴェイ。近々ランクBに昇格らしい な」

 

なるほど、大した情報網だ。でも…

 

「俺が言ってんのはそう言うことじゃねぇ。お前が 王国軍にいるはずがないんだよ」

 

「………」

 

黙りか…

 

「え!?どういうこと!?」

 

「お前らで言うランクと同様に俺達軍人にも階級っ てランクがある。いくら腕が立つとは言っても始め は必ず低い階級だ。ましてや情報部は新設部隊…良 くて軍曹くらいのはずだ。猟兵あがりなら尚更な」

 

猟兵あがりは危険思考の連中が多いから、見極めも 兼ねて低い階級で三年は過ごす。これは昔から変わ りないはずだ

 

「…私が昔からいた、という可能性は考えないのだ な」

 

「お前みたいな奴がいたら真っ先に親衛隊に引き抜 いてるっての」

 

俺が今の30人を引き抜いたのは情報部設立の二年 前だ。その時に全部隊の全軍人を確認したから間違 いない

 

「フフ…流石、と言っておこうか」

 

「あの…お祖母さまを返して下さい。あなたが大佐 に雇われたなら、もう戦う理由はないはずです」

 

クローゼが仮面が雇われていると考えて問いかける が…

 

「この世を動かすのは目に見えている物だけではな い。クオーツ盤だけを見ては歯車の動きが判らぬよ うに…」

 

「え…」

 

「心せよ、クローディア姫。国家というのは巨大で 複雑なオーブメントと同じだ。人々というクオーツ から力を引き出す数多の組織、制度という歯車…そ れを包む国土というフレーム…その有り様を把握で きなければあなたに国王としての資格はない」

 

「!?」

 

「国家論…」

 

「面白い喩えをするものですね…確かにその通りか もしれません」

 

「フ…これは失礼した。陛下には無用の説法でした な」

 

…確かにアリシアさんには無用だな。政治云々に関 してこの人以上の知識人は見たことないし

 

「な、なんかイマイチよく判らないけど…女王様を 解放する気はないってことね!」

 

「ならば…どうする?」

 

「決まってる!力ずくでも返してもらうわ!」

 

「フフ…いいだろう。ならばこちらも本気を出させ てもらおう」

 

そう言って仮面をとる

 

そして出てきたのは…俺には割と馴染み深い顔だっ た

 

「なっ!?」

 

「銀髪…」

 

「いや、アッシュブロンドね。どうやら…北方の生 まれのようね」

 

「北であるのは間違いない…ここからそれほど離れ ていないがな」

 

そう言うことか…コイツが、レーヴェが今回リシャ ールに協力した理由は…

 

「真相の…追求か」

 

「…その通りだ」

 

「お前ら、下がってろ」

 

「な、なんでよ!4人で戦った方が確実に―」

 

「はっきり言ってやろうか?『足手まといだ』」

 

「なっ!?―」

 

「コイツは今までの奴らとは格が違う――」

 

…やるしか、ないか

 

―天地鳴り響き、光闇、相対にして合す

 

聖母ノ祈リが発動し、俺の身体を光が包む

 

…だが、今回はそれだけじゃない

 

「………」

 

「ケイジ…」

 

「あなた…それ、何?」

 

俺の背中には、純白の翼が出現していた

 

(TOSのミトスの天使化の翼の真っ白いverを想像 して下さい)

 

「…俺も、人非ざる存在だという事だ」

 

「……《白烏》の名の由来、ってところかしら」

 

「さて…今はロランスって言ったか?」

 

「フフ…よもやお前がここに来るとはな。陽動に回 っているものだとばかり思っていたが…」

 

「残念だったな。現に俺は此処にいる」

 

「それもそうだな…今は…」

 

「「ただ…斬り合うだけだ!!」

 

 


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