英雄伝説・空の軌跡~銀の守護騎士~   作:黒やん

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『修羅』

「せいっ!!」

 

ケイジの剣がロランスを捉える

 

「フフ…何処を見ている」

 

「チッ…分け身か!?」

 

慌てて後ろを向くケイジ。だが…

 

「遅い!……何!?」

 

その隙に

 

・ 上からロランスが奇襲を仕掛けるが、ケイ ジの姿が陽炎のように消えていき、少し距離を置い た場所にケイジが現れる

 

「甘いのはお前もだったな」

 

「…そういえばお前も『そう』だったな」

 

「………」

 

――――――

 

「す、すごい……」

 

「とてもじゃないけど手を出せないわね…」

 

一方エステル達は、この二人の戦闘に入り込めない でいた

 

「…それだけじゃないわね。悔しいけど、本当に格 が違うわ」

 

「え?シェラ姉どういうこと?」

 

「あの二人、それぞれ陛下と私達を守りながら戦っ てるわ」

 

「えぇっ!?ウソでしょ!?」

 

自分の姉貴分が言った信じられないことに、つい否 定の言葉が口に出る

 

「間違いないわ。だってさっきから二人の位置が変 わってないもの。私達を気にしなければさっき距離 を取った時に奇襲をかけれたはずだしね」

 

ま、先生なら割って入れるでしょうけど、と付け足 してシェラザードは黙った

 

「………」

 

クローゼはただただケイジを見つめていた

 

自分が隣に立つ為の、その場所がどれほど高く、険 しいものかを確かめるように…

 

――――――

 

「燃え盛る業火であろうと、砕き散らすのみ……! 」

 

ロランスが剣を掲げると、雷のようなものが剣に纏 われる

 

「彼岸に佇む死の華よ…罪人の前に咲き乱れよ…! 」

 

同時に、ケイジが刀を鞘に収め、尋常ではない闘気 を刀に集中して纏わせる

 

「はぁぁぁぁ…!」

 

「黄泉路へ誘え!」

 

「「滅!!」

 

ロランスの炎を纏った一撃とケイジの神速の一閃が ぶつかり合い、凄まじい衝撃波がうまれる

 

「くぅ…!」

 

「ぐっ…!」

 

ちなみにこの二人、周囲に細心注意を払っているた め、エステル達やアリシアへの影響はほぼない(そ れでも多少は衝撃波が漏れる)

 

「……ふん、時間か」 しばらく睨み合っていたが、突然ロランスが構えを 解いた

 

「?どういうことだ?」

 

「簡単なこと。時間稼ぎの必要が無くなっただけだ 」

 

「!」

 

その言葉を聞いたケイジはついバルコニーから飛び 降りそうになるが、アリシアが人質に取られている ことを思い出し、ロランスを睨む

 

「フ…安心しろ。勿論女王は解放する。流石に直接 手を下すような愚かな真似はしないさ」

 

「…貴方は、一体…その瞳…なんて深い色をしている のかしら… まだ若いのに…たいそう苦労してきたようですね」

 

「………」

 

アリシアがロランスにそう言うと、ロランスは静か に目を閉じる

 

「…女王よ。貴女に俺を哀れむ資格などない

 

…《ハーメル》の名を知っている貴女には…」

 

「!?」

 

《ハーメル》。その名を聞くだけなのに、アリシア は一転して驚愕の表情になる

 

「レ…ロランス。お前は…」

 

「言っただろう。手を下すような愚かな真似はしな いと。…そんな真似をすれば、俺も奴らと同類にな るからな…」

 

吐き捨てるように呟くロランス

 

「…俺はもう行く。大佐を止めたいのならば地下に 急いだ方がいいだろう」

 

「ああ…お前ら、先に行け」

 

「え?……うん!!」

 

「お祖母さま、失礼します!!」

 

そう言ってエステル達はテラスを出て行く

 

「さて…《ハーメル》の真相だったか?お前の目的 は」

 

「ああ…だがどうやら無駄足だったようだがな」

 

本当に無念そうに言うロランス。この件に拘る執念 のようなものが感じられる

 

「……知らないのだろう?あの戦いの原因がハーメ ルにあったという事と、ハーメルが無くなったとい う事実以外は」

 

「……はい」

 

「…むしろ、こっちが聞きたいくらいだ。何故ハー メルが無くなったのか。ハーメルに何があったのか 。何故帝国が突然手を引いたのか」

 

「………」

 

再び目を瞑って黙るロランス

 

「悪いが…俺から話す事は無い」

 

「………」

 

「だが…お前が、お前達が《犯人》に至った時。そ の時は…《犯人》の情報と引き換えに全てを話すと 約束しよう」

 

「…ああ」

 

「フ…そろそろ俺は行く。今回の真相、大佐が地下 へと向かった意味…お前ならばすでにたどり着いて いるのだろう?」

 

「フン…それは流石に舐めすぎだろ」

 

「フ…愚問だったな。あの《剣聖》の娘…エステル と言ったか?彼女達を導いてやるといい」

 

ロランスはそう言うと、テラスから飛び降りて行っ た

 

「さて…ご無事ですか?陛下」

 

「え、ええ。乱暴はされていません。平気ですよ」

 

「それは良かった。後、これを…」

 

「陛下!!ご無事ですか!?」

 

そしてケイジがアリシアに何かを渡した瞬間、ユリ アがテラスに飛び込んで来た

 

「ちょうどいい。ユリ姉、陛下頼んだ!」

 

「え!?ケイジ!?」

 

ケイジは、ユリアの言葉には一切耳を貸さずにテラ スを飛び降りて行った

 

――――――

 

「(事前にクローゼには宝物庫の事と鍵は渡した。 後は…俺の仕事だ)」

 

物語の第一幕は、終焉へと向かっていく

 

 


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