英雄伝説・空の軌跡~銀の守護騎士~   作:黒やん

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『王都繚乱』

「まさか王都の地下にこんな遺跡があったなんてな …」

 

今俺は地下遺跡を出せる限りのスピード(縮地なし )で進んでいる

 

…縮地は速いけど、直線限定なんだよ

 

とにかく、早くクローゼ達に追い付かねぇと……! ?

 

何かの気配を感じて横に飛ぶ

 

すると、飛んだ一瞬後にさっきまでいた場所に斧が 突き刺さった

 

「…ふぅ、古代の機械人形(オートマタ)か」

 

正体がわかればどうってことはないな

 

パッと倒してさっさと先に進もうとして、武器っぽ い頭(?)だけを斬る

 

すると…

 

ビー!ビー!ビー!

 

突然警報が鳴り出した

 

「な、何だ!?…ってウソぉ!?」

 

とにかくさっさと離れないとマズいと思って走って 先に進むと、角にさっきの機械人形が十数体待ち構 えていやがった

 

「…今日絶対厄日だろ俺…」

 

いや、ここ二日絶対厄日だよ。二日連続で命の危機 にあうって何なのさ。マジで

 

ビシュ

 

「のわっ!」

 

ってこんな悠長に考えてる場合じゃねぇ!何とか突 破しねぇと…!

 

と、そんな事を考えていた時だった

 

「せやぁぁぁぁ!!」

 

後ろから気合いの声が聞こえたかと思えば、目の前 の機械人形がバラバラになっていた

 

「この手の機械人形は一撃でバラバラにしてしまえ ば警報はでない…今回はお前の戦い方が仇になった な」

 

「はぁ…今まで何処でバカやってたんだよ…この不 良中年が」

 

そこには、《剣聖》カシウス・ブライトがいた

 

「やれやれ、久しぶりに会ったというのに罵倒とは …何処で育て方間違えたかな」

 

こっちは必死にビーム避けながら走ってんのに、何 でそんなに余裕そうなんだよ

 

「オッサンに育てられた覚えすらねぇんだが…まぁ いいや。とにかくさっさとエステル達に合流しねぇ と…」

 

「…何かあるのか?」

 

「いや、確かな事はわからない…でも、なんとなく 嫌な予感がする」

 

「ふむ…一大事だな」

 

「…言っておいてなんだが、そんな簡単に信用して いいのか?ただの勘だぞ?」

 

ちょっとチートな勘だけど

 

「そりゃあ信用するさ。お前が抱えてるモノがモノ だからな」

 

「!!」

 

なんで…

 

「ハハハ、俺はなんだかんだ出張が多くてな。アル テリアにも何度か行ったこともある。その時に星杯 騎士団とも関わりを持ったんだ」

 

「…そこで俺の事を聞いた、ってことか」

 

「正確には守護騎士の事だがな」

 

「………」

 

「ちなみに教えてくれたのはマイナスイオンの娘だ とだけ言っておこう」

 

シャルゥ…!!

 

「…まぁいいや。とりあえずさっさと先に…!」

 

機械人形に追いかけられたままとか本当に勘弁して 欲しい

 

そう思いながら走っていると、明るい広間のような 場所に出た

 

「ここは…?」

 

「暢気に言ってる場合か!とにかくさっさと突っ切 るぞ!」

 

「うむ?お主等は…」

 

「先生!」

 

「旦那!?何でここに!?」

 

「オッサン!?それにあんときのガキ!」

 

「うっせぇ赤毛!大して変わんねぇだろうが!」

 

広間を全力で突っ切っていると、端の方に前にルー アンで会った赤毛の遊撃士を含むエステル達の味方 っぽい人たちがいた

 

「おお、ラッセル博士!お久しぶりですな」

 

「ほっほっほ。お主も変わっておらんようじゃな」

 

「んな和やかに会話してる場合か!いいからさっさ と突っ切るぞ!」

 

感覚的にそろそろ追いつかれる!

 

「ん?それもそうだな。ではジン、アガット。それ にシェラザード。後はよろしく頼んだぞ?」

 

「「「……後?」」」

 

オッサンの言葉に三人が首を傾げる

 

「あ、あの~…何かがすごい速さで迫って来てるん ですけど…」

 

「あ?何かってなんだよ……って」

 

「機械人形!?」

 

「先生!?何を引き連れて来てるんですか!?」

 

「いや~…いわゆる成り行きってヤツ?」

 

「ま、頑張れ?」

 

「何故に疑問系!?」

 

「…行くぞオッサン!」

 

「おお!」

 

「あ、待ちなさい!逃げるな!!」

 

とにかく、俺とカシウスのオッサンでさっさと先に 進んだ

 

…後がすんごい怖いけど

 

――――――

 

「チッ…やべぇぞオッサン!」

 

ようやく最奥の部屋が見えたと思ったら、早速ピン チかよ!

 

エステル達は限界のようで地面に座り込んでいて、 ヨシュアが辛うじて立っているくらい。今はリシャ ール大佐が何とか耐えているが…時間の問題だろう

 

パキィィン

 

リシャール大佐の刀が折れる音がここまで聞こえて くる

 

「た、大佐!?」

 

「く…どうしたら!?」

 

「い、いいから行きたまえ!君達との勝負に敗れた 時…私の命運は…尽きていたのだ!」

 

後少し…!

 

「そ、そんな…」

 

「だから…気にする事はない。最期に君達を助けら れれば、後悔だけは…せずにすむ」

 

「やれやれ…諦めなければ必ずや勝機は見える。そ う教えたことを忘れたか?」

 

「!」

 

「というかこんだけ騒ぎ起こしといて何の罰も無し に逝くのは無責任過ぎるだろ」

 

「せいッ!」 「はぁッ!」

 

俺が左の青い腕を斬り、オッサンがリシャール大佐 を捕らえていた赤い腕を叩き落とす

 

「え…」 「あ…」

 

予想外だったのか呆けるクローゼとエステル

 

「何ぼさっとしてんだ!!さっさとやるぞ!!」

 

「あ…うん!」

 

「今だ!止めを刺せ!!」

 

オリビエが銃を乱射し、クローゼがアーツを連発し 、ヨシュアとエステルが連携攻撃を叩きこむ

 

すると、とうとうトロイメライが爆発して体が真っ 二つになった

 

…終わった、か

 

「か、勝ったぁ~…」

 

「みんな、ご苦労だったな」

 

「と、と、と……父さん!?」

 

…向こうはなんか親娘水入らずっぽいしとりあえず はスルーしとくか

 

「…ケイジ」

 

「クローゼ…無事か?」

 

クローゼは戦いが終わって安心したのか座り込んで いる

 

「終わったんだよね?…全部…」

 

「…いや、まだだ」

 

「…え?」

 

「ケジメがまだ…ついていない」

 

そして俺がリシャール大佐の方を向くと…

 

――――――

 

「モルガン将軍には厳重な監視をつけていた…シー ドは家族を人質に取って逆らえないようにしていた …どちらも、貴方の手によって自由の身になった訳 ですか…」

 

「俺の手だけじゃないが…まぁそんなところだ。だ がなリシャール、俺がしたのはその程度のことさ。 別に俺がいなくたって彼らは自分で何とかしたはず だ」

 

「いや…やっぱり貴方は英雄ですよ。貴方が軍を去 ってから私は…不安で仕方なかった…今度侵略を受 けてしまったら勝てるとは思えなかったから…」

 

「…何故そこまで俺に拘る?英雄というのならそこ にいるケイジだってそうだろう」

 

「ルーンヴァルトは…まだ少年です。いくら英雄と は言っても…貴方のような安心感が持てなかった… だからこそ私は軍拡を主張したのに…受け入れられ なかった。あんな不戦条約だけを信用して…」

 

「………」

 

「だから…頼れる存在を他に探した。貴方さえ軍に 残ってくれたら、私もこんな事をしなかったものを …」

 

「………」

 

カシウスのオッサンが静かにリシャール大佐に近づ いて…

 

バキッ

 

殴った

 

「ぐっ…」

 

「甘ったれるなリシャール!貴様の間違いはいつま でも俺という幻想から解き放たれなかったことだ! それほどの才覚を持ちながら何故自分の足で立たな かった!何故シードやユリアのように自らを磨こう と考えなかった!俺は…お前とケイジがいたから安 心して軍を止める事が出来たのだぞ!?」

 

「た、大佐…」

 

「俺は…そんなに大層な男じゃない。十年前も、軍 の全員が助けてくれたから勝つことができた…そし て、大切なものを守れずに逃げてしまった男にすぎ ん」

 

……逃げ、か

 

…俺も…そろそろ向き合う時…なのかな…

 

「だがな…もう二度と逃げるつもりはない。だから リシャール、お前もこれ以上逃げるのはよせ。罪を 償いながら自分には何が足りなかったのかを考える がいい」

 

そう言って、カシウスのオッサンはエステル達とゆ っくりとその場を出て行った

 

「………私、は…」

 

「オッサンの言う通りだろ」

 

「ルーンヴァルト…」

 

「オッサンが英雄なんて言われているのも、俺が《 白烏》なんて呼ばれてるのも…ただ単に成功した作 戦の中心にいただけなんだ。いくら強くても、いく ら頭が良くても…一人でやれることなんて限られて るんだよ…」

 

「………」

 

「ま、アンタはまだやり直せるさ。また光の道に戻 って来れたんだから」

 

俺の歩めない道を、また歩いていけるのだから…

 

そして俺は何故かまだ座り込んでいるクローゼのと ころに戻った

 

「って何でまだ座り込んでんだお前?」

 

「アハハ…全部終わったって思ったら気が抜けちゃ って…」

 

「だったら立てって。帰るぞ」

 

「その…腰、抜けちゃった…///」

 

…………ハァ

 

「…ったく…無茶して最後まで着いて行くから…」

 

「だって…」

 

「はいはい、わかってるわかってる。ほら、さっさ としがみつけ」

 

「……うん///」

 

そうしてクローゼを背中におぶり、部屋を出る。

 

その時入れ違いに王国軍がリシャールを逮捕。その まま護送し、この一件は無事解決した

 

――こうして、情報部によるクーデター計画は幕を 閉じた


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