英雄伝説・空の軌跡~銀の守護騎士~   作:黒やん

39 / 161
『巻き添え?いえ、囮です』

~アルタイル市・とあるレストラン~

 

「ふぅ~…まぁまぁだったな」

 

「…着いてきた私も悪いんですけど…どうしてわざ わざアルタイル市まで来たんですか?」

 

「仕方ねぇだろ?東方人街の屋台全部閉まってたん だから」

 

あの後、屋台が並んでいる場所に行ったのだが、一 つとして開いてなかった。リーシャ曰わく、『みん な誘拐を警戒していて、夜に店を開けなくなった』 とのこと

 

「それに『置いて行かないで~』って半泣きになり ながら追いかけて来たのはどこの誰だっけなぁ~? 」

 

「ッ~///忘れて下さい!!」

 

ハッハッハ、何を言ってるんだこのチャイナは。そ んなもん脳内永久保存でイジリ続けるに決まってる じゃないか!」

 

「うぅ…ケイジさんイジワルです…」

 

あれ?声に出てたか?

 

「まぁいいや。…すみません、店長さん呼んでもら えます?」

 

「え?あ、はい」

 

落ち込んだリーシャは放っておいて、近くにいた店 員に店長を呼んでもらう

 

そして一分も経たない内に店長が来た

 

「何かございましたでしょうか?」

 

「いえ…『我らが主の贈り物』を頂こうと思いまし て…」

 

俺がそう言った瞬間、店長の笑みが嫌なものに変わ る

 

「わかりました…こちらへ」

 

そして俺はリーシャを俵担ぎして店長に着いて行っ た

 

――――――

 

「では注文がお決まりになりましたらお呼び下さい 」

 

連れて来られたのは地下にある個室。しかも窓があ り、その窓から下の闘技場のような場所を見れるよ うになっている

 

とりあえずまだ落ち込んで逝っちゃってるリーシャ を座らせ、この部屋自体に幻術をかける

 

「ん~…監視用の盗聴器が…あれ?ない? …無防備にもほどがあるだろ。色々やりやすいから いいけど」

 

ただ、扉の外に見張り役がいるので、そいつにだけ 幻術をかけておいた

 

…さて、とりあえず

 

「いい加減に戻って来い!」

 

「ふにゃっ!?」

 

軽く頭をはたいてリーシャを現世に戻って来させる

 

…つーか『ふにゃっ』って…猫かコイツは

 

いや、何となく犬っぽいな。半泣きになりながら追 いかけてくるあたり

 

「いきなり何するんですか!?」

 

「いや、俵担ぎされても気づかないお前が悪い。ど こまでトンでたんだよ」

 

「俵担ぎ…?ってここどこですか!?」

 

「今気付いたのかよ!?」

 

コイツ本当に“銀”の後継者か!?天然にもほどがあ るだろ!

 

「つーかあんまり騒ぐなよ…幻術で抑えるのも限度 があるんだから…」

 

「幻術…ってまさか!?」

 

…勘がいいのか、ただ単に天然なだけなのか…

 

「そのまさかだ。ここが…『グラトニアス教団』。 その本拠地にして事件の大元だ」

 

唖然とするリーシャ

 

「何でそんな場所に私を巻き込んだんですかー!? 」

 

「いや~…いわゆる成り行きってヤツ?」

 

「そんなわけあるかー!!」

 

ヤバい。リーシャが壊れた

 

オッサンの嘘つき。これで大体の事はごまかせるっ て言ってたじゃねぇか!

 

「どうするんですか!?どうしてくれるんですか! ?」

 

「あぁ~!もう、面倒くせェェェ!!」

 

~しばらくお待ち下さい~

 

「…うぅ…何かこんなのばっかり…」

 

「何か言ったか?」

 

「ゴメンナサイ!!」

 

例によってOHANASHIしてリーシャを落ち着かせる

 

…ま、とりあえず

 

「すみませ~ん」

 

ガチャ

 

「はい。ご注文でしょうか?」

 

いかにもマフィアですって感じのいかついオッサン が入ってくる。アンタ明らかに店員じゃねぇだろ… いや、見た目で判断しちゃいけないんだけれども

 

「“普通の”赤ワインを二本。料理はまた注文します 」

 

「かしこまりました」

 

そしてさっさと出て行く店員(?)

 

「…どうして“普通の”って強調したんですか?」

 

「お前も知ってんだろ?ここがどういう場所か」

 

頷く

 

「じゃあわかれよ…」

 

「?」

 

コテンと首を傾げるリーシャ

 

…あ、コイツ本当にわかってねぇや

 

「はぁ…お前本当にバカだな」

 

「何で私罵倒されてるんですか!?」

 

「お前人の血飲みたいのか?」

 

「!?」

 

「ここは『グラトニアス教団』の本拠地だぞ?……… 」

 

「ケイジさん?」

 

「失礼します。普通の赤ワインをお持ちしました」

 

「ご苦労」

 

「では、ごゆっくり」

 

さっさと同じでさっさと出て行く店員(?)

 

「…今、気配読んでたんですか?」

 

「ああ…ん?お前が読めなかったのは当たり前だぞ ?」

 

何かまたリーシャが暗くなり始めていたのでフォロ ーする

 

「え?」

 

「幻術をこの部屋全体にかけてるからな。基本的に 俺以外の奴が気配を察知するのは無理だ」

 

総長とかオッサン以外は…あの人達絶対人外だって

 

「そうなんですか?」

 

「そうだ…お前は“銀”にこだわりすぎなんだよ。ほ ら、飲めって」

 

「いえ…私お酒は…」

 

「弱いのか?」

 

「いえ、初めてなので…」

 

そりゃ良いこと聞いたな

 

「………」(ニヤァ)

 

「ケ、ケイジさん…?何か怖いですよ…?」

 

「いやぁ、別に何もないけど?」

 

さて…これが終わったらどうやってイジロウカ…

 

――――――

 

『お待たせ致しました。本日のメインイベントです !』

 

そんなアナウンスが聞こえると、途端に会場が歓声 で溢れかえる

 

「ひうっ!?何ですか!?」

 

「さぁ?…ただ、ろくでもない事なのは確かだな」

 

闘技場にリーシャと同じか更に幼い女の子が13人 入って来る

 

…これで誘拐事件の犯人はコイツらだと確定した。 そしてこの胸くそわるいイベントが二週間単位で開 催されていることも

 

「…リーシャ、とりあえず準備しておけ。何か出て きたらすぐ行くぞ」

 

「え?はい。」

 

そしてしばらく待っていると、闘技場の反対側から 妙な雰囲気を纏った女の子が三人出てきた

 

「行くぞリーシャ!」

 

「はい!」

 

窓を叩き割って闘技場に踊り出ると同時に、妙な雰 囲気の女の子達を吹き飛ばす

 

「リーシャ!あの変な雰囲気の奴ら足止めしろ!」

 

「はい!」

 

そして13人全員に認識阻害の幻術と眠りの幻術を かける

 

そして俺達がいた部屋にストーム(弱)で運び、部 屋そのものに認識阻害をかけてからリーシャのとこ ろに戻る

 

「無事かリーシャ!」

 

「大丈夫です!ですけど…」

 

「何だ?」

 

「この人達…斬ったそばから回復してるんです!」

 

「え~…それなんて無理ゲー?」

 

「ボケてる場合ですかー!!」

 

だって死なないとかチートじゃん。なんか特殊な装 備が無いと倒せません的なアレじゃん

 

まぁ装備あるんだけども

 

「わかったわかった…もうちょい粘れ。元に戻すか ら」

 

「え!?できるんですか!?」

 

「何回も言うけど、俺神父だからな?」

 

「…あ」

 

いかにも今思い出しましたみたいな反応だなオイ

 

「…いっそこのまま見捨ててやろうか」

 

「お願いだから助けて下さい!!(泣)」

 

「…チッ。仕方ない。この憂さ晴らしは後ですると して…」

 

「止めて!?」

 

知らんがな

 

「…動きを止めろ。とにかく、そこからだ」

 

「………縛!!」

 

リーシャがどこから出したのかは知らないが鎖付き の鉤爪で三人を拘束して、一カ所に集める

 

「…『我が深淵にて煌めく白銀の刻印よ。光となり て昏き障気を払い、哀れなる迷い子に救いの道を指 し示さん――!』」

 

拘束された三人が光に包まれる

 

「教会の聖句…」

 

「気ぃ抜くな!まだ助かったと決まってる訳じゃな い!」

 

リーシャがハッとして拘束を強めなおす

 

そして光が収まっていく

 

「………」

 

「………」

 

三人はピクリとも動かない

 

「成功…ですか?」

 

「…いや、『意味が無かった』」

 

そう。文字通り意味が無かった。コイツらは…

 

「『空の女神の名において、選別されし七曜ここに あり』」

 

「ケイジさん!?意味が無かったんじゃ…」

 

…そういう事じゃねぇ…そういう事じゃねぇんだよ… !

 

「『空の金耀、時の黒耀、識の銀耀…彼の三克を持 ちて其が姿を示したまえ――!』」

 

さっきとはまた違う光が三人をのみ込む

 

そして、その光が止んだ時、三人はその場に崩れ落 ちていた

 

「………」

 

「ケイジさん…これは一体…」

 

「………あ、言い忘れてたけど」

 

「はい?」

 

「さっさと逃げろよ?…アレに捕まりたくなかった ら」

 

「ふぇ?…ひゃわぁぁぁ!?」

 

ここの廊下はどうも直線らしく、まだかなり向こう だが物凄い数のマフィアがこっちに向かっている

 

「ちょっと!?ケイジさんなんとかして下さいよ! ?」

 

「何とかしてるよ?…俺だけは」

 

「どうやって!?」

 

「言ったろ?認識阻害かけてるって」

 

「私にもかけて下さいよ!?」

 

「無理。限界。俺含めて14人にかけるとか俺よく 頑張ったよ」

 

わざとらしく息を切らせる

 

「全然余裕じゃないですか!?」

 

「ま、あれだ。俺がただ単に巻き添えでお前を連れ てくると思ったか?」

 

「え?」

 

そして俺はリーシャの肩に手を置いて、(自分なり に)イイ笑顔でサムズアップ

 

「頑張って逃げろよ生け贄…もとい囮♪」

 

「いやぁぁぁぁぁ!!」

 

「居たぞ!あっちだ!」

 

「ほらほら。さっさと逃げろよ~。捕まったら喰わ れるぞ~(冗談抜きで)」

 

「ケ…ケイジさんの鬼畜ぅぅぅぅぅ!!」

 

ハッハッハ。最高の褒め言葉だ(泣)

 

「あそこの女だ!」 「クソが!捕らえて生け贄にしてくれるわ!」

 

「何かこんなのばっかりぃぃぃぃぃ!!」

 

そんな叫びを残してリーシャは全力で逃げて行った

 

…さて

 

「魔道具使って屍人形(グール)を造るとはな…」

 

そう。さっきの三人は屍人形…つまりは、もうとっ くに死んでいた

 

そして俺は三人を簡易版だが葬った後、歩き始める

 

「…誰が魔道具を持ったか知らねぇが…俺を本気で 怒らせた事を後悔させてやらぁ…」

 

この腐りきった教団の、主の所へと…


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。