英雄伝説・空の軌跡~銀の守護騎士~   作:黒やん

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『生徒会』

「…ふむ。これで入学手続きは全て終了だね。…改 めて、ジェニス王立学園へようこそ。クローゼ君、 ケイジ君。」

 

「あ、こちらこそ。お世話になります。」

 

「………」

 

…ん?珍しいな。クローゼが挨拶されて何の反応も しないとは

 

「…クローゼ君、君はキチンと学園が課した編入試 験を合格した。もっと堂々と胸を張ってもいいので はないかな?」

 

「コリンズ学園長…」

 

…ま~たこの阿呆は馬鹿な事考えてやがったか

 

「…クローゼ」

 

「何?ケイジ…っていひゃいいひゃい!ふぁなふ ぃて~(痛い痛い!離して~!)」

 

俺はネガティブ思考をまた展開するクローゼの頬を 両側から引っ張る

 

お~よく伸びるな~

 

「どうせまたお前『自分が王家の人間だから~』 とか何とか考えたんだろ?」

 

「ふぁっふぇ…(だって…)」

 

何か言おうとしたクローゼの頬をさらに引っ張る。

 

…クローゼは手をばたつかせて逃れようとするが逃 がすわけねぇだろ(笑)

 

「ま~だそんな事を言うかその口は~?」

 

「いひゃいいひゃい!ふぉんふぉひいひゃい!ふ ぉめんなふぁい!ふぁふぁふぃふぁふぁふふぁっふ ぁふぇふ~! (痛い痛い!ホントに痛い!ごめん なさい!私が悪 かったです~!)」

 

ほぼハ行で構成された言葉を解読してクローゼの頬 から手を離す

 

俺から解放された瞬間、クローゼは俺から距離を取 って睨んでくる

 

…そんな涙目で睨まれても全く怖くないな

 

「うう~(泣)」

 

「…そもそもあのアリシアさんが贔屓なんかする 学 校に通わせる訳ないだろうが。」

 

「それは…そうだけど…」

 

正直、あの人以上に公平、平等、公正、誠実な人を 見た事がない

 

あの人が贔屓を認めるとか…天地がひっくり返って も無い

 

「ちょっとは自分に自信持てよ。自信過剰になる のはダメだが、お前は自信持たなさ過ぎだ。

 

一週間一生懸命勉強したんだろ?その成果が 出た って事でいいじゃねぇか」

 

「ケイジ…」

 

「その通りだよ、クローゼ君。私は女神(エイドス)に誓って 贔屓なんかはしていない。君はクローゼ・リンツと して正規に試験を合格したんだ。もっと自信を持ち なさい」

 

「…だそうだ。これでもまだ不満か?」

 

…これで不満だったら“お仕置き”喰らわしてやる

 

「(ビクッ!?) う、ううん。ありがとう、ケイジ。……学園長、これからよろしくお願いします」

 

ようやく納得したのか、学園長に頭を下げるクロー ゼ。

 

うんうん、人間素直が一番だな

 

「さて、それじゃあこれから君達は寮生活になる わけだが…」

 

あ、説明ですか。切り替え早いッスね

 

「君達の荷物は既に寮の前で待っている君達のル ームメイトになる人に預けてある。 寮生活は基本 的には自由だが、細かい事は彼らに聞 いてくれ」

 

「了解です」

 

「はい」

 

「それと、明日は朝にクラスメートたちに顔合わ せしたらその後はジル君とハンス君…君達のルーム メイトに学園を案内してもらいなさい」

 

「あ…ありがとうございます。」

 

「私からの説明は以上だ。君達の学園生活が実り のあるものになるように祈っているよ …ああ、女子 寮は正面玄関から真っ直ぐ中庭を抜け て右、男子 寮は左だ」

 

その後俺とクローゼは学園長にお礼を言って寮に向 かった

 

「…にしてもあの少年、本当に15か?教師として 雇 っても問題ない位の精神年齢だね…」

 

ケイジ・ルーンヴァルト、実質的年齢、30代の男

 

中庭を抜けた所でクローゼと別れて寮に向かう

 

何か残念そうな顔をしていたクローゼはスルーした

 

中庭を抜けた辺りから既に寮は見えていたので、時 間はそんなにかかっていない

 

「…おっ、アンタが新入生か?」

 

薄紫の神に少しそばかす?が散った顔の少年が寮の 前に立っていて、俺の姿を見つけるとすぐに近寄っ てきた

 

「ああ。ケイジ・ルーンヴァルトだ。これからよ ろしくな」

 

「おう!俺はハンス。歓迎するぜ! いや~今まで 一人部屋だったから寂しかったんだよ な~」

 

…うん、ノリはよさそうだな

 

「じゃ、とりあえず部屋に案内するよ。疲れてる だろ?」

 

まあそりゃあ。定期便の中でずっとクローゼのネガ ティブ思考を聞かされてたからな。

 

って言ったら一瞬で

 

「お仕置きされたいか?」

 

 

 

まあ

 

黙ったけど

 

その頃クローゼは…

 

「!?(ブルブル)」

 

「?どうしたのクローゼさん?」

 

「け…ケイジが…」

 

「ケイジ?」

 

「い、嫌!“お仕置き”はいやああぁぁ!」

 

「ちょ!?クローゼさん!?クローゼさぁぁぁん !?」

 

何故かケイジの思考を悪い方向にキャッチして軽く 錯乱していたそうな…

 

「ここだ。さあ入った入った!」

 

「ん。お邪魔しまんにゃわぁ~」

 

某貧乳貧乏神のセリフで部屋に入る

 

「…おお!?なかなか広い!」

 

「だろ?本来は三人部屋らしいからな」

 

俺は早速荷を解き始めるその途中

 

「ルーンヴァルト」

 

「ケイジでいいぞ?俺もハンス(笑)って呼ぶか ら」

 

「(笑)ってなんだ!?俺のなにがおかしいんだ よ!」

 

「存在」

 

「即答!?つーか初対面でここまで他人を弄り出 す奴初めてだよ!?」

 

「いや~何かハンスから“弄ってくれ”的なものが …

 

「出てねぇよ!?」

 

予想通り。コイツは弄られ役だ。

 

「まあ、冗談はさて置き…」

 

「真顔で冗談言うなよな…」

 

ハッハッハ、これくらいで疲れてたら俺のルームメ イトは務まらんぞ?

 

「これからよろしくな?ハンス。」

 

「…ああ、こちらこそよろしく頼むよ」

 

まあ、何だかんだで楽しくなりそうだ…

 

翌日、クローゼと一緒にクラスに顔を出して、ハン スとクローゼのルームメイトのジルに学園を案内し てもらった

 

…クローゼがやけに他人行儀だったのが気になった が…まあ、そのうち治るだろう

 

~1ヶ月後~

 

「zzz…」

 

「ケイジ、起きて…」

 

「zzz…」

 

「ケイジ~…」

 

「zz…ん~…後五年…」

 

「待てるかっ!!」

 

「ごっ!?」

 

いった~!めちゃくちゃ痛っ!?

 

せっかく気持ちよく寝てたのに…ん?

 

「あれ?会長どこいった?」

 

「わからない。ジル達も必死に探してるんだけど …

 

さっきまで隣でくつろいでいたんだがな

 

流石サボリ魔。逃げ足はもはやルパン並みだな

 

それはともかく、ここ1ヶ月でクローゼは固さが取 れた

 

…ちょっとだけ。

 

まだジルやハンス、生徒会の人達以外にはちょっと 固い

 

でもまだマシになったんだぜ?始めの二週間なんか 同級生と別れる時に「それではこれで失礼いたしま す」だぞ?

 

…しかもその時に「どこの召使いだよ。バカだろ」 って言ったらダイヤモンドダスト喰らいそうになっ た

 

このままじゃマズいって事であえてクローゼと距離 を置いてみたらこれが成功したようで、ジルとハン スは呼び捨てに出来る位仲良くなり、生徒会の人達 とも関わりを持ったみたいだ

 

ついでに、結構昔にクローゼ共々お世話になった孤 児院の院長先生、テレサさんとも再開。

 

残念ながらご主人は亡くなってしまったらしいが… テレサ先生に会えただけでも嬉しかった

 

…クローゼなんか泣きついてたからな

 

…そのネタでからかったら顔真っ赤にしてアクアブ リード連発された…いや~流石にあれは死ぬかと思 ったね、うん

 

その後、なんやかんやあって俺とクローゼは生徒会 にこそ入ってないものの、生徒会の手伝いをしてい る

 

…この生徒会、最重要にして最優先任務が

 

生 徒 会 長 の 捜 索

 

である

 

……今「それだけ?」とか思った奴、前に出ろ。今なら半泣かせで許してやる

 

現生徒会長…レクター・アランドール

 

生徒会長なのに、制服改造、授業のサボり、ギャン ブル、etc…

 

コイツ本当に生徒会長か?という生徒会長だ

 

特徴としてサボリ魔。しかも逃げ足はルパン並み。 さらに無駄に頭いいから裏掻きまくって捕まらない

 

…個人的にはノリがいい人、くらいに思ってる。後 サボり仲間とも。

 

…とりあえずクローゼが俺をわざわざ起こしてくる 用事って言ったら一つしかない

 

「…で?何か用事か?」

 

「うん。会長を捕まるのを…」

 

「だが断る」

 

「ええ!?いいじゃない!」

 

「やだよだりーよ面倒くせぇよ。いつも通りジー クに探してもらえ」

 

因みにジークって言うのはシロハヤブサで、軍の通 信ができない場所への連絡係だ。

 

飛空艇が使えなくなった時、ジークより速い連絡手 段は無い、と言われるくらいチートなハヤブサであ る

 

「もうお願いしたよ。でも建物の中に逃げ込んだ みたいで…」

 

「…はあ…」

 

あの人もまた面倒くさい事を…

 

…確かこの前が旧校舎、その前が中庭の木の上…そ う来れば今回は…

 

「…体育館。」

 

「え?」

 

「多分体育館だ。横の階段上がったとこら辺で本 でも読んでんじゃねぇか?」

 

「…行ってみる!」

 

「行ってら~」

 

さて、もう一眠りするか

 

余談だが、俺とクローゼが会長を探すのに参加した 事で会長の捕獲率が2割から6割に跳ね上がったら しい。

 

特に俺が手伝った場合の捕獲率は9割だとか。

 

まあめったに手伝わねーし、むしろ一緒になってク ローゼから逃げてる方が多いんだがな。

 

…つーか場所完全に読み当ててんのに逃げ切るとは …本格的にルパンⅣ世目指せんじゃねーか?


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