英雄伝説・空の軌跡~銀の守護騎士~   作:黒やん

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『可愛いは正義!!』by ティア

カツッ…

 

カツッ…

 

「………」

 

「ガアァァァアア!!」

 

“また”屍人形が俺に襲いかかる

 

「………『空の女神の名において、選別されし七耀此 処に在り――』」

 

そして俺は素早く屍人形の首を刈り取り、聖句を唱 える

 

そして屍人形に封じられていた魂は天に還る

 

『………タス………ケ……………テ……』 『シ………ニタ…………ク………ナ……イ……!』

 

『………ッ!……」

 

その慟哭を、恨みを、最期の叫びを残して

 

――――――

 

「何!?侵入者だと!?」

 

「………」(コクリ)

 

男は、屍人形と一切言葉を交わすことなく会話を成 立させる

 

その様は異常と言う他に無かった

 

「ふむ…ならば早く仕留めよ!そのような異端者は 即刻贄にしてくれるわ!」

 

「………?」

 

「む?人形はいくら使っても構わん。これからいく らでも造り出せるからな」

 

そう言って男は屍人形を部屋から追い出す

 

「フハハ…誰だか知らんがまた都合よく良い人形が 手に入りそうだ……そうだ、私が主なのだ…女神では ない、この『血の継承(サクセシオン ・ヴァンパイア) 』を持つ私こそが… !」

 

男は、持っていた短剣を愛おしそうに撫でた

 

――――――

 

ドガァ!

 

リーシャが逃げて行った廊下の反対側の最奥。そこ にあった途中の扉の数倍豪華な扉を蹴り飛ばす

 

「ふむ…いきなり(しゅ)の部屋の扉を蹴り飛ばすとは… いささか礼儀知らずなのではないかね?」

 

「………」

 

俺は男に言葉を返さずただ男をじっと見据えた

 

「ふむ…私の問いに答えぬとは…さては君が侵入者 か」

 

わかってんだろ?扉だって蹴り飛ばしたんだ

 

「……名は?」

 

「…む?」

 

「名乗れと言ったんだ」

 

「フフ…やはり君は礼儀知らずだね。人に名を聞く 時はまず自分からと言うではないか」

 

「…“氷華白刃”」

 

あえて名前でなく渾名で答える

 

「…ふむ?それは渾名か何かかな? …まぁいい。私はクライフ・ロス・ルイクローム。 しがない元帝国貴族にして、我らが主の代弁者だ」

 

コイツ…星杯騎士団の事を知らない…?

 

まぁ知ってようが知らなかろうが…関係ないが

 

「…ケイジ・ルーンヴァルト。七耀教会の巡回神父 で、ただのしがない星杯騎士だ」

 

「七耀教会!?…フフ、ここにもあのエイドスに誑 かされた哀れな仔羊がまた一人…」

 

一瞬慌てるクライフだが、すぐに冷静なフリに戻す

 

「それで?教会が偽りの女神の名の下に私を粛清し ようと?」

 

「…別に女神の名の下に来た訳じゃない。そもそも 俺は女神なんざ信じてない」

 

“聖痕”なんかの為に人を殺す事を正当化するような 神なんざ…

 

「ほう!ならば…」

 

「だがな…お前は個人的に許せねぇんだよ…!」

 

御し易いと思ったのか、クライフが満面の笑みをこ ぼすが、次の俺の言葉にすぐに表情を堅くする

 

「簡単に屍人形を造って…しかもそれを使って見せ 物にしやがって…人を何だと思っている!!」

 

「ふむ…君はまだ理解していないようだね。彼女達 は我らが主への捧げ物さ」

 

「………」

 

「我ら人は他を虐げる事で成長、発展してきた…今 や人以外の生物が大きな顔で世に跋扈することはな い。なれば次の標的は何処へ向かう?人間だ。次に 人が人を虐げるのだよ! …だったら、人同士の無益な殺生を行うより、真の 神たる我らが主への生け贄とした方がより有益だと 思わないかね?」

 

「だったらアンタがまず生け贄になったらどうだ? 」

 

「それは出来ない相談だ。私には主の言葉を皆に伝 えると言う崇高な使命があるのさ!私がいなければ 真の神たる我らが主の言葉がわからない…実に、実 に不幸なことだ!」

 

何かの演劇のような口調で語るクライフ。ああ、わ かった。コイツは…

 

「語るな。クズが」

 

「何だと!?」

 

「自分に酔ったオッサンの世迷い言聞いてもありが たくもなんともねぇんだよ。要は『自分は偉い。自 分しか神の言葉は代弁できない。だから私に従え』 って言いたいんだろ?」

 

「違う!私は真なる神の…」

 

「ふざけんな。お前はその真なる神とやらと自分を 重ねて酔ってるだけだ。…いい加減本音を晒せよ。 なぁ?…魔道具持ちの妄想癖の変態爺」

 

「き、貴様ぁっ!」

 

クライフが激昂し、懐から短剣を取り出す

 

「それが魔道具か」

 

「ああそうだ!後悔するがいい!貴様はこれから主 の贄となることなく死んでいくのだからな!」

 

そんなもんこっちからお断りだっての

 

「来い敬虔なる僕達よ!」

 

クライフが短剣を掲げ、その短剣が光る

 

…だが

 

「な…何故だ!?何故人形共が来ない!?」

 

「ああ、屍人形の事か?あの子達なら全員お前の大 嫌いな女神の下に送ったよ」

 

俺は女神を信じちゃいないが…否定もしない。誰か が死んだとき、残された人が縋るのは…やっぱり女 神なんだろうから

 

「な、何ィ!?」

 

「さて…今更だが、貴様を“外法”に認定する」

 

「く、クソォォォォォォォ!!!」

 

今更クライフが自分を屍人形に変え始めるが…遅い

 

「祈りも懺悔も終えぬまま…」

 

すでにここは俺の…

 

「千の剣を持ってその身を塵と為し…」

 

射程圏内だ

 

「力無き者達の念に魂を喰らい尽くされるがいい! !」

 

瞬間、俺の瞳が紅く輝き、周囲が闇に包まれる

 

「な、何だこれは!?貴様!一体私に何をする気だ !?」

 

叫ぶクライフ。しかしその身は既に十字架に磔にさ れていて動けない

 

「…今から剣を千本、貴様の身に刺し続ける」

 

「や、やめ…」

 

「その後は…貴様に道具にされた者達が好きにする だろうな」

 

俺がそう言うと、クライフの周りに無数の鬼火が漂 い始める

 

「ひ、ひっ!来るな!来るなァァァァ!!」

 

「さぁ…お前の罪を数えろ…!!」

 

――――――

 

「待たんかいワレェェェ!」

 

「嫌ァァァァァァ!!」

 

一方その頃、リーシャは未だに逃げ続けていた

 

まぁ、“銀”の後継者とは言っても素顔は15歳の女の 子である。イカツいオッサンに集団で追いかけられ たらそりゃ逃げるだろう

 

「さっさと止まらんかい!そっちは行き止まりや! 」

 

「ふぇぇぇぇぇん!!」

 

そしてとうとう行き止まりに…

 

「その窓から降りて来なさい」

 

「ふぇ?」

 

そう、リーシャは必死すぎて気付いていなかったが 、地下から一階飛ばして二階まで逃げていた

 

「で、でも…」

 

「早く。捕まったら(冗談抜きで)喰われる」

 

「そうよ!(二つの意味で)喰われるわよ!?」

 

「それは嫌ァァ!!」

 

…流されやすいリーシャであった

 

そしてリーシャは普通に地面に着地し、すぐ隣を見 ると…

 

「あれ?あの時の…」

 

栗色のロングの女の子…ティアがいた

 

「話は後!準備いいわねリース!」

 

「おっけー」

 

そして数秒後、リーシャと同じようにマフィア達が 降りてくる

 

「…はいいーち!はいにぃぃぃ!はいさーん!!」

 

「「「ぎゃあああああ!!」」」

 

ティアが降りて来た男達を次々とホームランにして いく

 

…しかも、的確に股間の部分を

 

「ヤベェぞ!!ここ降りたら地獄だ!!」 「いや、ある意味天国だろうけども!」 「誰が上手いこと言えって言ったよ!!」

 

そして更に下っ端が一人落とされる

 

「はいよーん!!」

 

「あふぉう!?」

 

勿論ティアの犠牲になるが

 

「とんだドSだよあの女」 「ヤベェよあの女。悪魔の化身だよ」

 

「失礼ね。これでもシスターよ」

 

『ないないないない』

 

「全員で言うとは良い度胸してるわね。………潰すわ よ?」

 

どことは言わない。それが更に恐怖を煽る

 

…前例がある分特に

 

「ダメだ!普通に一階から出るぞ!」

 

そしてマフィア達は近い方の階段に向かうが…

 

「にがトマトが一個」

 

ベチャ!

 

「にがトマトが二個」

 

ベチャ

 

「無理だ!こっちはにがトマトの嵐だ!」 「つーか何故にがトマト!?」

 

「昔…総長がケイジに私の訓練を頼んだ時だった… 」

 

「何か昔話始めた!?」

 

――――――

 

「一週間か…」

 

「私は何をすればいい?」

 

「そだな…とりあえずぶっ倒れるまでひたすら斬り かかって来い」

 

「…え?」

 

「だからとにかく斬りかかって来い。俺に一撃でも 当たったらお前のやりたい事に付き合ってやるよ」

 

「わかった………ご飯!!」

 

「あれ?聖職者って三大欲求抑えるモンじゃねぇの ?」

 

――――

 

「もう…無理…」

 

バタッ

 

「ふぅ…やっぱりこんなモンか… お~い!起きろ~!」

 

ボタボタボタボタ

 

「………苦っ!?」

 

「おお、流石にがトマト」

 

――――――

 

「そしてその後、体力切れで倒れる度ににがトマト シェイクを顔にかけられて起こされた…!!」

 

『いや知らねーよ!?』

 

「許すまじケイジ…そして何よりも許すまじにがト マト!!」

 

『何でやねん!!』

 

その後も泣きながらにがトマトを投げてくるリース

 

「仕方ねぇ!遠い方の階段使うぞ!」

 

「応!…って」

 

マフィア達(残り三人)が目を向けた先には…

 

「………」

 

涙目のリーシャ(フル装備)がいた

 

『標的戻って来ちゃった!?』

 

「…さっきから私ばっかり狙われて…ケイジさんな んか目の前にいたのに…!」

 

「じょ、嬢ちゃん…?」

 

「それに嬢ちゃん嬢ちゃんって何なんですか!?私 これでも15です!!」

 

「「「えっ?」」」

 

マフィア達の視線がリーシャの顔から少し下に移動 する

 

それからティアへ

 

『…?』

 

「私は16よ」

 

そしてリースへ

 

『……』

 

「私は17」

 

そして再びリーシャへ

 

『………………』

 

「…まぁ、その…なんだ」 「きっと…大きくなるさ」 「諦めたらそこで終わりだぜ?」

 

「下手な慰めなんて…いりませーん!!(泣)」

 

『ぎゃあああああ!』

 

『(だが…これはこれで…ご褒美!!)』

 

最後までどうしようもないマフィア達であった

 

「………可愛いは正義!!」

 

「ティア、それ何かが違う」

 

「うぅ…私だって…私だって大きくなるもん…」

 

こうして、マフィア達は一斉確保されたのであった

 

 


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