『クロスベル、クロスベルです。帝国方面にご用の 方はしばらくお待ち下さい』
「あ゛~…やっと着いた~」
教団を壊滅させてから3日。俺はリベールに戻るた めにクロスベルに来ていた
共和国…首都にくらい空港作ればいいのに…
「全く…半日くらい鉄道に乗ってただけで何でそん なに疲れてるのよ」
「うっせ。昨日が昨日だったんだから仕方ねぇだろ …」
「あれは自業自得でしょうが」
否定できない…
「…リーシャがあんな酔い方するなんて思わなかっ たんだよ…」
あれは…思い出したくない。クローゼが黒ーゼにな るのと同じくらいヤバかった
「…まぁ、私もまさかカクテル一杯で酔うなんて思 わなかったけど…」 そう、しかも極端に弱かったんだよ…
「…もう、この話題止めよう」
「……そうね」
ちくせう。何でクロスベルに来て早々こんな空気に なるんだ…
「ケイジさーん」
「リーシャ!ナイスタイミング!」
「?」
そして何故かリーシャが俺とティアに着いて来てい る
何故か聞いたら「ひ、秘密ですっ!!///」って顔 を真っ赤にして言われた
…そして何故かティアに睨まれた
え?リース?アイツならまだカルバードの東方人街 で食べ歩きしてるぞ?…ケビンの金で
「…リーシャ、それで次の便はいつだ?」
「三時間後らしいです」
「三時間なぁ…」
「じゃあ私はアルテリアに帰るわね」
「「え?」」
思わずリーシャと被ってしまった
「報告なら総長に導力通信すればいいんじゃ?」 「今回の任務はモース枢機卿の命令だったのよ…」
あ~、樽豚の任務だったのかよ…
「それ先に言われてたら断ったのに…」
「…総長の予想は正しかったわね」
やっぱり総長の仕業か。俺が樽豚の命令だったら何 が何でも断るって先読みしてやがったか
因みにリーシャには星杯騎士団の事は教えてある。 ぶっちゃけ将来リーシャが星杯騎士に手を出さない ようにするためだ
勿論口止めはしてあるし、リーシャもそれを納得し て了承している
…流石に守護騎士とか聖痕については教えてないが
「そんな訳だからそろそろ行くわね」
「おう、気ィつけろよ?樽豚がウザかったら金〇蹴 り飛ばしちまえ」
「考えとくわ」
「あわわわ…」
ティア苦笑い。リーシャ戦慄…うん、いつも通りだ
『まもなくアルテリア法国行きの列車が発車します 。お乗りの方は…』
駅内にアナウンスが流れる
「ヤバ…じゃあ、気を付けて。……というか殿下とは ちあわせて殺されないようにね?」
「ハハハ…」
現実になりそうで本当に怖い
…そしてリーシャ、さりげなく抓るな。地味に痛い
そんな感じでティアは先にアルテリアに帰っていっ た
「…さて、三時間なぁ…」
「どうしましょうか?」
「お前は何かしたい事とか無いのか?」
「そうですね…」
むむむと考え出すリーシャ
…俺も何かなかったっけなぁ…
「あ!」
「どした?」
「ミシュラム行きたいです!」
「三時間しか無いっつってんだろうが!」
リーシャの頭を軽くはたく。ミシュラムとか行くだ けでも半日かかるわ
…そういやテーマパーク出来たんだっけ?オープン 直後に言っても疲れるだけだろ
「むー…それじゃあケイジさん何か案あるんですか ?」
ん~…ワジとアッバスの所へ行くにもあんなとこに リーシャを連れてく訳にも行かねーしなぁ…
「もう個人行動でよくね?」
「わかりました」
リーシャも納得した事だし、上手い事個人行動にで きたし、早く…って
「何で付いてきてるんだお前?」 「ダメですか?」
いや、ダメじゃないが…
「…面白くねぇぞ」
――――――
~クロスベル大聖堂・共同墓地~
「………」
クロスベルの東通りで花を買い、そのままクロスベ ル大聖堂に来た
そして、目的の墓を見つけて花を供える
…ここはクローゼの両親のユーディス夫妻を弔って いる。
本当はカルバード領海での事故だったのだが…リベ ールの王家の墓をカルバードに建てる訳にもいかず 、やむなく事故現場に最も近いクロスベルに墓を建 てたらしい
…まぁ一応リベールにもあるんだけどな。墓
「………」 「………」
そのまま教会式の祈りを捧げている間、リーシャも 空気を感じ取っていたのか、こちらをチラチラ見て くるものの、見よう見まねで祈りを捧げていた
「……ご両親ですか?」
大聖堂から帰る途中、リーシャが恐る恐る聞いてき た
「いや…俺は孤児だから両親はいないぞ?」
「……すみません」 「謝らなくていいって
…でも、両親がいたらあんなんだったんだろうなー 、とは思うけどな」
俺は前世でも親父は俺が生まれる前に事故死、お袋 も俺を生むと同時に衰弱死して叔父夫婦に育てられ た
でも、やっぱりどこかよそよそしく…俺は中学校は 全寮制の学校を選んだ
「…立派な人達だったんですね」
「立派っつーか…万年新婚夫婦?部屋に俺て二人し かいなかった時にはいつもコーヒーのブラックが飲 みたくなったな」
当時赤ん坊だけどな。俺
「あはは…」 いや、冗談抜きで。しかも夜になるたびに妙に艶や かな声が聞こえるもんだから赤ん坊のクローゼが泣 き出すのを抑えるのに苦労したな…体だって思うよ うに動かなかったし
ドアを開けるのに一苦労、アリシアさんを起こすの に一苦労、アリシアさんにクローゼが泣いてること を伝えるのに一苦労…
あの時、改めて言葉って大事だと思ったんだったな …
「ケイジさん?」
黙り込んでいたのか、リーシャが心配そうに俺の顔 を覗き込んでいた
「フッ…あ~!もう暗い話は終わりだ!何か美味い モンでも食いに行くぞ!」
まだ次の便が来るまで二時間ちょい残っている
メシ食って、後はリーシャの行きたいところに付き 合ってやろう
「任せて下さい!さっき東通りで美味しいお店聞い ておいたんです!」
「お、マジか!じゃあ案内頼むぞ?」
「はい!」
そして昼飯を食べて、その後百貨店でリーシャにリ ボンを買ってやってからリベールへと向かった