英雄伝説・空の軌跡~銀の守護騎士~   作:黒やん

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『vs ティア』

ガギィ

 

「チッ…お前が俺に勝てる訳ねぇだろうが!」

 

「そんなのわかってる!!それでも…それでも!! 」

 

ナイフを握るティアの力が一段と強くなる

 

くっ…ティア自身がなりふり構ってない所為で動き が読み辛い…いつものコイツなら接近戦なんて絶対 に仕掛けて来ないだろうしな

 

「もう見てられないのよ…!あんなリーシャも!無 理して片意地はってる貴方も!」

 

「…昔の自分を見てるみたいで…か?」

 

「!!」

 

「笑わせんな。当時自分すら救えなかった奴がリー シャはともかく俺を救うだと?冗談もほどほどにし やがれ」

 

「それでも!私は!」

 

「まだお前は過去から先に進めてないだけだ。そん な奴に何が救える?まして…

 

お前は俺を何から救うつもりだ?」

 

「…貴方を縛るその元凶からよ」

 

「縛る?別に俺は縛られちゃいねぇよ。俺はただ力 を欲した。それだけだ」

 

「その考えが既に縛られてるのよ! ――エクレールラルムッ!!」

 

ティアの無詠唱の中級譜術が発動し、聖なる刻印が その上に在る邪なるものを焼き尽くす

 

その直前にティアを弾き飛ばして距離を保ったため 、事なきをえた

 

「聖なる槍よ、敵を貫け…!ホーリーランス!!」

 

「雷雲よ、我が刃となりて敵を貫け…サンダーブレ イド!」

 

俺の雷の剣とティアの聖なる槍が同時に発動し、真 ん中で爆発する

 

…相殺された?今までのティアなら耐えきれないレ ベルの譜と導力を込めたはずだ…

 

……ここに来てティアの術の威力が上がっている?

 

「違う。貴方の譜が弱くなってるの」

 

「ッ!…言うじゃねぇか。 ――零の名を冠すものよ、ソイルの下にて具現せん …」

 

「(!!あれは…ヤバい!) ――其は聖光、祝福にして破滅の調べ…」

 

「受けよ!無慈悲なる白銀の抱擁!」

 

「穢れなき風、我らに仇なすものを包み込まん…! !」

 

「アブソリュート!」 「イノセント・シャイン!!」

 

絶対零度の凍雪と、聖なる天風がせめぎ合う

 

「俺は…俺の往く路は俺が決める!誰にも介入なん てさせはしない!」

 

「私は貴方の人生なんて否定してない!だけど…今 まで抱えたものを貴方の都合で放り出さないで!! 」

 

「!!」

 

放り出す…何を?

 

俺は…何を抱えていた…?

 

俺は…何故強くなろうとしている…?

 

………ぐっ…

 

「自分の事も救えないのに誰かを救うなんてふざけ るな?そっくりそのまま返してやるわ!」

 

「…もう、遠慮はしない…決めにいく!!」

 

「上等!!」

 

四の五の考えるのはもう…やめだ!!

 

今はティアを…進む路を遮る奴を…斬る!!

 

「おおおぉぉぉ!!」

 

「数多の刃よ此処に集え…」

 

ティアが真っ直ぐナイフを投げたかと思えば、それ がいつの間にか無数に増えて滞空している

 

「汝が見る夢、刹那と消える…」

 

ナイフが俺に向かってその先端を向ける

 

……が、関係ねぇ。ナイフ諸共斬り伏せてやる!!

 

「斬空刃…」

 

「奥義!百花繚乱!!」

 

「無塵衝!!」

 

縮地にさらに加速を加えたままナイフの雨に突っ込 み、落とす落とす落とす落とす落とす落とす落とす 落とす!!

 

そのままティアに斬りかかる寸前にふと、気が付い た

 

――何故ティア自身は何も動いていない

 

「――破邪の天光煌めく神々の歌声――」

 

「なっ!?」

 

ぬかった!?

 

なら…術の発動前に潰す!

 

「グランドクロス!」

 

そしてティアに俺の斬撃が届き、ほぼ同時にグラン ドクロスが俺を飲み込――

 

「…何をやっているんだ貴様等はァァァ!!」

 

――まなかった

 

物凄いスピードでナニカが俺とティアの間に入って 来たかと思えば、その瞬間には俺は壁まで吹き飛ば されていた

 

「ぐっ!?」 「きゃ!?」

 

「馬鹿共が…今お前達が何をしたかわかっているの か?」

 

さっきまで俺達が立っていた場所には、総長が立っ ていた

 

「ケイジ…お前、本気でティアを斬ろうとしていた な?」

 

「………」

 

「ティア…お前は守護騎士に、しかも第二位に挑む など、自殺願望でもあるのか?この馬鹿が本気なら お前は死んでいたんだぞ?」

 

「………」

 

俺達は何も言い返せない

 

…全部、図星だから

 

確かに俺は今の今までティアを斬ろうとしていた

 

そしてティアは俺が聖痕や万華鏡写輪眼を使ってい れば間違いなく息絶えていただろう……使ってない が

 

「………はぁ、まぁ今は言うだけ無駄だろう。細かい 事は言わないが…ここの修繕費はお前達の給料から きっちり引いておくからな」

 

…まぁ、仕方ない

 

「それとティア…私に着いて来い。任務だ」

 

「任務…ですか?私が?」

 

ティアが若干戸惑っているが、それも当然だ

 

ティアは基本的に俺やシャルがこなした任務の報告 書を纏める事が多く、俺達の任務の付き添いくらい しか動かない

 

正直、一人の任務をしたのは片手で数えられる程度 しか無いのだ

 

「ああ。この任務は“今は”お前にしか頼めないから な」

 

…やたらと“今は”を強調して言ったな

 

「……リーシャ嬢が誘拐された」

 

「「!?」」

 

さらわれた…?リーシャが…?

 

「犯人は元守護騎士第三位のジュリオだ。要求は自 分の守護騎士復帰と、それに伴う第二位のイスだ」

 

「……俺か」

 

ジュリオ。元三位の名前・出自が不明の男。

 

信仰心はそれなりだが、野心が強く、さらに女癖が 悪かった

 

俺がティアを連れてアルテリアに来た時、ティアを 寄越せと脅しを掛けて来た男でもある

 

また、シャルの時も同じような事があり、初めは能 力の高さから許されたが、流石に『女神に仕える身 で女に現を抜かすとは何事か!』と、強制的に聖痕 を剥奪され、正騎士に降格された

 

…確かにアイツとは敵対していたが、まさか聖痕が 得られないのに二位の座を求めるとはな

 

「両方無理だろ。第一その条件に必要な聖痕がもは や奴には無い」

 

「そうだ。それに奴が聖痕を顕現させたのはたった 一回のみ。深淵にも至っていないしな」

 

…俺も至ってないがな。どっちも

 

「…どこだ?」

 

「何がだ?」

 

「奴の居場所だ!」

 

「お前には任務があるだろう?…ティアを斬ってま で行こうとした大切な大切な任務がな」

 

「!!」

 

…そういうことかよ。“今は”を強調した意味がよく わかったぜ

 

「ホラ行くぞティア。私の執務室で任務について説 明する」

 

「え?あ、は…はい」

 

そうして、総長とティアは去って行った

 

「……行くか」

 

自分で自分にティアなら無事にこなせると言い聞か せ、俺は任務に向かった

 

…心のどこかに、何か言い知れない重さを感じたま ま

 


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