英雄伝説・空の軌跡~銀の守護騎士~   作:黒やん

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『リアル鬼ごっこ』

「ムリムリムリムリ!!何ですかアレ!?完全に 狩る者の目じゃないスか!」

 

「バカヤロー!アレはそんな生易しいもんじゃね ぇ!アレに捕まったら…」

 

「捕まったら?」

 

「…死ぬな」

 

「「好き勝手に悪者にするな~!

 

!来たァァァ!

 

「「ギャァァァ!

 

どーも、ケイジです

 

とりあえず一言言わせて下さい

 

…何でこうなった?

 

―――――

 

そう、あれは今日の放課後…

 

「~♪」

 

俺は授業が終わってやっと何の気兼ねもなく昼寝出 来る!、と意気揚々とクラブハウスの屋根の上に行 こうとしていた時だった

 

「あ、あの!」

 

「ん?」

 

確か同じクラスの…名前は忘れたからいいや。Aさ んに話しかけられた

 

「どうした?俺に何か用か?」

 

「ええと、その、あの…」

 

…何かじれったい

 

しばらく待っていると、心を決めた様子で

 

「うん、…あの…初めて会った時から好きでした! 付き合って下さい!」

 

告白してきた

 

…はい?

 

え~っと、この空気は冗談じゃないな。ガチだね。 うん。

 

とは言っても、俺からしたら名前も知らない一般人 Aさんからの告白だったわけで…

 

「…ごめん。」

 

断るしかねーじゃん。遊びで付き合うとか最低だと 思う

 

「…そっか。ごめんね。急に変な事言っちゃって」

 

「いや、こっちこそごめんな?せっかく勇気出し てくれたのに断って」

 

「いいの。何となくこうなるのわかってたから」

 

その後、少しだけ話して、そいつを慰めて俺達は別 れた

 

…俺もバカじゃないからアフターケアくらいはしま すよ

 

あ、そういや名前聞くの忘れた

 

そんな事を考えながら後ろを向くと…

 

「………」

 

ものっっっすごい笑顔のクローゼがいた

 

その笑顔を見たら十人が十人惚れるんじゃないかっ て笑顔なんだが…何故だろう。冷や汗が止まらない

 

そんな俺の心境を知ってか知らずか、普段より三割 増しの低さの声で

 

「…今の人、誰?」

 

と仰られました

 

「…多分同じクラスの奴。名前は忘れた。つーか 知 らん」

 

表面上は落ち着いて返答する俺だが、実際は冷や汗 ダラダラの足ガクガクだ

 

…そこ、チキンとか言うなら今すぐ俺と変わって下 さい。お願いします。マジで

 

だって殺気とかそんなんじゃねぇもん。無条件で土 下座したくなるとか初めての体験だぜ?

 

そんな中耐えてる俺を褒めてやりたい

 

「へぇ~知らない人なんだ~…だったらなんで… 告 白なんてされてたのかな?」

 

「俺が知るかよ…こっちが知りたいくらいだ」

 

「へぇ~…それじゃあ無意識であの娘落としたん だ 。凄いね~モテるんだね~ケイジは」

 

…最後の方が恐ろしく棒読みだった

 

「噂じゃケイジのファンクラブまで出来てるらし いしね~…」

 

「…とりあえずお前は何しに来たんだ?」

 

「べっつに~?何も無いけど~」

 

「じゃあブツブツ文句言うなよ~(怖いから)」

 

と、俺は恐怖の余りそう言った。言ってしまった

 

ブチッ

 

何かが切れる音がした(Dグレ風)

 

「フフフフフフフフ…」

 

「く、クローゼ?」

 

「ケイジ…ちょっとO☆HA☆NA☆SHI…しようか ?

 

「何故そのネタを知っている!?」

 

「問答無用!少しは反省しろ~」

 

「何にだァァァ!?」

 

やぶ蛇だったと、思わなかったんだ…

 

――――――

 

それから途中でこれまた何故かルーシーさん(生徒 会の対会長最終兵器)から逃げてる会長を発見、合 流して、魔王二人から逃げている

 

会長は廊下で女子とだべっていたら、何故か般若と なったルーシーさんに追い掛けられてるらしい

 

クローゼ共々謎だ。俺達が何をした!

 

「レクター、いい加減に捕まりなさい!」

 

「嫌だ!今お前に捕まったら俺の中の大切な何か を失う気がする!」

 

「ケイジ、何で逃げるんですか?」

 

「会長に同じ!」

 

「そうですか…あくまで抵抗しますか…」

 

「つーかお前絶対キレてるだろ!お前に敬語なん か使われたの初めてだぞ!」

 

「いやですねぇ…キレてるなんて…ケイジが捕ま っ てくれたら治る気がしますよ」

 

「嫌だ!諸々危険な予感しかしねぇもん!

 

俺が)」

 

「大丈夫ですよ。痛いのは一瞬ですから」

 

「それ何かお前が言ったらダメな気がする!」

 

会長は会長で同じような会話をルーシーさんとして いる

 

くそう、タイムリミット

 

切れば俺達の勝ちだというのに…まだ一時間もある

 

(因みに現在7時)

 

だと!?

 

 

 

「ちっ!切りがない!これは奥の手をきらないと …

 

お願いします。いつもの優しい先輩に戻って下さい 。そしてクローゼの暴走を止めて下さい

 

もちろんそんな儚い願いが叶う訳も無く…

 

「行きなさい!レオ!」

 

「こっちも出番ですよ!ハンス!」

 

ガサッ

 

「「うらぁぁぁ!」」

 

「「!?」」

 

クローゼ達が二人の名前を呼ぶと同時に草むらから レオ先輩とハンスが出てくる

 

「なっ!レオにハンス!?お前ら裏切ったのか! ?」

 

「そもそもお前についていた覚えはないんだが …す まんケイジ、大人しくアレに捕まってくれ」

 

「謹んで遠慮します。それより早くアレを止めて 下さい。」

 

「つーか何でオレには聞かねぇんだ!」

 

頃の行いの差だ」

 

「むしろ会長はざまぁみろって感じだからな」

 

「ひどっ!!」

 

今の状況を説明すると、二人が俺をスルーして会長 をとり押さえていて、その会長が俺の足に半端じゃ ない力でしがみついている

 

「そしてケイジ。すまん。ルーシーはコレを献 上 しなくても明日になれば止まってくれる気はする が…正直ああなったクローゼは止まると思えん。無 駄な抵抗は止めて捕まってくれ(俺達の平穏の為に )」

 

「そうだぜケイジ。ルーシーさんは会長が怒らせ てばっかりだから止める方法はよくわかるが、クロ ーゼは今までに本格的にキレた事がない。つまり止 める方法がわからないって事だ。…そう言う訳だか ら大人しく捕まってくれ(俺達の命の安全の為に)

 

二人共心の声がだだ漏れなんだがな

 

「絶対嫌です。俺の何かが確実に危ないんで。… と 言う訳で離して下さい会長。」

 

もう奴(魔王)がうっすら見える距離まで来てるん で

 

「後生だから助けてくれ!まだ捕まりたくない!

 

くらいの気概はねーのかア

 

「『俺に構わず行け』

 

ンタは!」

 

「お前こそ『お前を見捨てるくらいなら死んだ方 がマシだ』くらいの優しさは無いのか!」

 

「今までお世話になりました。骨くらいは拾って あげますんで潔く逝って下さい」

 

「ふざけんな!お前も道連れだ!」

 

「いやガチでふざけんな!もうクローゼの顔が見 える距離まで来てんだよ!」

 

「人生諦めが肝心だと俺は思う!」

 

「知らねーよ!つかアンタが手を離せば俺は諦め なくてもいいんだよ!」

 

そして仲間割れをした挙げ句、クローゼが後100m くらいまで来たときに思いっきり会長の手を蹴って 逃げた

 

…後ろから断末魔っぽい悲鳴が聞こえてきたが俺は 気にしない。俺のせいじゃない。俺は何も聞いてい ない

 

会長が「覚えてろケイジー!

 

華麗にスルーして俺は再び逃げ始めた

 

…さようなら会長、迷わず成仏して下さい。

 

死んでません)

 

~30分後~

 

…やべぇ…後30分もあるのに体力が…

 

あの危機を乗り越えてから、クローゼの手が容赦な くなった

 

…いくら人が周りにいない所だけとはいえ、アーツ もクラフト(ジーク)も使ってくるんだぜ?俺以外 なら間違いなくもう死んでる

 

「み~つ~け~た~!」

 

!」

 

 

 

 

「ギャァァァァァ!

 

 

 

しかもたまにこうやって角に隠れてるし!

 

レオ先輩とハンスには探させて自分は一つの場所に 隠れて待ち伏せって…

 

しかも何言われたか知らねーけど先輩とハンスが俺 を見つけると必死な顔で「頼む!捕まってくれェェ ェ!」って叫びながら追い掛けてくるようになった …本当に何言ったんだアイツ?

 

因みにジルはいち早く身の危険を感じて寮に逃げ込 んだらしい

 

「ケイジ…どうして逃げるの?私の事嫌いなの? 」

 

と、普通に言えばかなりキュンとくる台詞を言って いるが、実際は追い掛けながらアクアブリードと、 時々ダイヤモンドダストを溜め無しで連発してきて いる

 

物理的に無理だろその攻撃!

 

「嫌いじゃねぇけど、俺の本能が逃げろって言っ てんだよ!」

 

ていうか今日でちょっとクローゼが嫌い…というよ りトラウマになりそうです

 

「じゃあ…私の事どう思ってるの?」

 

アーツを放つのを止め、足も止めたクローゼがいつ もの声で問う

 

どう思ってるって言われてもな~…ん~…

 

「…大切な人、かな」

 

「大切な…人?」

 

「ああ。昔っから一緒にいるからかな?周りの奴 らより、一番大切な人だな(友達的な意味で)」

 

「…嘘じゃない?私が一番大切な人なの?

 

な意味で)」

 

「ああ(フレンドリィ的な意味で)」

 

「そっか…ふふ♪」

 

「?」

 

何かクローゼからプレッシャーが消えた?

 

…まあいっか。危険が去った訳だし

 

「じゃあ帰るか。そろそろ門限だぞ?」

 

「あ、ホントだ。」

 

「ほら行くぞ。」

 

「うん。…えいっ!」

 

ギュッ

 

何故かクローゼが腕に抱きついてきた

 

「何してんのお前?」

 

「いいじゃない。別に」

 

…まあいっか。またクローゼの機嫌が悪くなっても 面倒だし

 

そう考えた俺はそのままクローゼを送ってから寮に 帰った

 

そして帰って早々にハンスが秘密で保管している秘 蔵本を全て外に放り出し、イラプションで灰も残さ ずに焼却した

 

こういう時に指向性のある術って便利だよね

 

~その頃のハンス達~

 

「…なあハンス。」

 

「…何ですか先輩」

 

「俺達は何の為にこの一時間走り続けたんだ? 」

 

「…言わないで下さい。何か無性に悲しくなるん で

 

「「はあ…」」

 

溜め息を吐いた二人の目はどこか遠くを見つめてい た

 

「…では俺は生徒会室に荷物を取りに行ってか ら寮 に帰る。お前も早く帰れ」

 

「はい。…お疲れ様でした」

 

「お前もな」

 

ハンスはまだ知らない。帰ってからもまだ不幸が待 っている事を…

 

~そして数ヶ月後~

 

今生徒会室は結構騒然としている

 

「全く何を考えているんだアイツは!」

 

机を叩きつけ、怒りを露わにするレオ先輩

 

「…………レクター」

 

言葉は少ないが、見るからに悲しんでいるルーシー 先輩

 

「…あのバカ会長…」

 

「前々から何をするかはわからなかったが…」

 

なんとも言えない表情のジルとハンス

 

「会長…」

 

何かを思い返すように目を閉じているクローゼ

 

…こうなった理由は簡単だ。あのアホ生徒会長が卒 業まであと数日と言うタイミングで退学したからだ

 

自由人だ自由人だ言っていたがまさかここまでやる とはな

 

一つだけ言える事は、その日は、いつもは騒がしい はずの生徒会がやけに静かだったって事だ

 

そして卒業式は何の滞りもなく終わった

 

…物足りない何かを残して


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