『修○チャレンジ!』
クローゼside
「クラム~!どこにいるの~!?」
私は今マノリア村に繋がる海道を歩いています
クラム…マーシア孤児院で引き取られている子供の 一人…が孤児院を抜け出してしまったので、先生に お願いされて捜索中です。
…本当にどこまで行ったんでしょう?流石にクロー ネ峠までは行っていないと思うんだけど…
後はクラムが誰かにイタズラしてなければいいんだ けど…
「クラム~!…まったく、ケイジがいない時に限 っ て問題ばかり起こすんだから…」
まあケイジがいるときにこんな事をすればお仕置き はまず間違いないんですけどね
だからってケイジがいない時を狙って孤児院を抜け 出すのはズルいと思います
「困ったな…どこに行っちゃったのかしら…」
そんな風に考え事をしながら歩いていたのがいけま せんでした
「ヨシュア!ほらほら早く!」
「ちょっとエステル…ちゃんと前見て歩かないと… 」
突然目の前に同い年くらいの二人組みが現れて…
「きゃっ!?」 「あうっ!?」
ぶつかってこけてしまいました
…結構痛いです
するとすぐに
「あいたた…ご、ごめんね、大丈夫?あたしが前を 見てなかったから…」
と、オレンジ色の髪の女の子が手を差し伸べてくれ ました
「あ、いえ。大丈夫です。私の方こそよそ見をし てしまって…」
「あ、そうなの?じゃあおあいこって事で!」
女の子が笑う
明るい人ですね。太陽って言葉がピッタリな感じで す
そんな事を考えていると
「まったく…エステル…何やってるのさ…………………」
「?」
横から男の子が女の子を注意してから私を見て固ま ってしまいました
…私の顔に何かついてるのでしょうか?
ハッ!?まさかクラムが!?
「ヨシュア、どうしたの?」
と、女の子が男の子の方を見ると、男の子は帰って きたようで
「い、いや…ごめんね?連れが迷惑掛けちゃって。 どこにもケガはないかな?」
「はい。大丈夫です。私も人を探していて…それ で よそ見をしちゃって…」
私がそう言うと
「え?誰を探しているの?」
「帽子を被った10歳くらいの男の子なんですけ ど… どこかで見かけませんでした?」
ケイジがいればすぐに…え~と、
ったかな?を使って見つけてくれるのに…
本人曰わく「一人一人の纏っているチャ…オーラは 個人によって違う」らしいです
「帽子を被った男の子…?ヨシュア、見かけたりし た?」
「いや、ちょっと見覚えがないな…」
やはりお二人共知らないようですね…
「そうですか…どこに行っちゃったのかしら……私 、これで失礼します。どうもお手数をお掛けしまし た」
そう言って私はその場を後にして孤児院に向けて歩 き出しました
本当に人に迷惑ばかりかけて…!
これはお仕置きが必要ですよね?
「ジーク!」
――ピューイ!
そんな鳴き声が聞こえたと共に、白い隼が私の腕に とまる
そしてそのまま私はペンと紙を取り出して手紙を書 くと
「ジーク、これをケイジに届けてくれないかな? 多分ハーケン門にいると思うから」
「ピュイ!」
任せて、と言うように一鳴きすると、ジークは手紙 をくわえて飛んでいきました
…ケイジが帰って来るまで一時間くらいですかね?
side out
~ハーケン門~
「は~い、後30分以内に5周な~」
『だぁぁぁぁ!!大佐の鬼~!!』
「………いいのか?そんな事言って…」
!』
『さーせんしたぁぁぁ!
「よし!後10周だ!」
『…くそォォォ!この鬼畜大佐ァァァ!』
はい、見ての通り現在訓練中です。
俺はクローゼの護衛(アリシアさん曰わく友達かそ れ以上…それ以上ってなんだ?)兼王室親衛隊大隊 長なもんだから、いくら学生とは言っても自分の隊 の訓練をしなけりゃならない
まあ俺の隊は全員で30人だから時間はかからない んだけどな
…え?大隊じゃなくないかって?
いいんだよ。30人で大隊分働けば
つー事で今ウォーミングアップをしていたんですが …
『…………』
―死~ん―
全員見事にくたばってますね~…まあ甘やかすつも りは一切ありませんが
「後休憩5分な」
「…なんで俺達と同じ時間、俺達の二倍以上の速度 で走ってんのに、一切疲れてないんですか?」
「鍛え方が違うからだよワトソン君(仮)
、休憩終了!一対一で組み手をしろ!」
『…イエス・マム』
「…不満なら全員対俺でやるか?」
『イエス・マム!!あ~、一対一楽し~な~!
』
…そんなに嫌か、全員対俺
そしてその後三対三、五対五をやり、時間が余った ので午前中の締めに何をしようかと考えていると…
――ピューイ
「…ん?ジークか?」
「ピューイ!」
突然ジークが何かをくわえて降りてきた
「どうした?」
「ピュイピュイ、ピュピュイ」
「ふむふむ」
わからん。何言ってんのかさっぱりわからん。
と言うか良く紙くわえたまま鳴けるな
「ピュイ!」
ジークがくわえている紙を突き出す
俺はそれを受け取り
「なんだよ………………ほぉ…」
そこには、急ぎで台も無しに書いたのか、少し雑な 字で「クラム イタズラ 先生が困ってる」と書いて あった
他の人なら何コレ?となる文章だが、俺にはコレで 十分だ
…流石幼なじみ、よくわかってらっしゃる。
「ジーク、クローゼに昼過ぎ位に帰るって言って おいてくれ」
「ピュイ!」
そう鳴くと、ジークはクローゼの所に戻って行った
「さて…嬉しいお知らせだ。今日の訓練は午前中 だ けになった。」
『よっしゃァァァ!!』
そう言っただけでめちゃくちゃ喜ぶ兵士達。どんだ け訓練嫌いなんだよ
「つー訳で、今日の締めは…やっぱり全員対俺だ 」
『…………』
一瞬で沈む。何か面白い
つーか今更だがコイツ等連帯感つきすぎだろ。戦闘 中なんかアイコンタクトで動くんだぜ?凄くね?
「まあそういう訳だ…今から正午の鐘が鳴るまで … 大体二時間か、俺に一撃入れれたらその場で終了 、治療班の5人がくたばっても続行、のルールで行 くから …そんじゃあ…掛かって来いやァァ!」
俺が開始を宣言すると
『オラァァァ!!日頃の恨みィィィ!
と、数人が突撃してくる。
「甘いわァァ!」
俺はそれを軽く避け、全員を巻き込んで吹き飛ばす ように横から蹴りを入れる
それで吹き飛んだ兵士達が壁に穴を開けて瓦礫に埋 もれている
「さあ…どんどん来いよ」
今の一瞬の出来事にビビったのか、残りの奴らは動 こうとしない
「来ねぇんなら…こっちから行くぞ?」
そう言って俺はいわゆる縮地を使って治療班を沈め る
『なっ!?』
反応出来なかったのか、はたまた見えてすらいなか ったのか、驚く兵士達
「甘い…クローゼのアップルパイに砂糖と蜂蜜か け て食うより甘い! …さて、これで治療班が消えた訳 だ…どうするお前 ら?」
『ち、チクショォォォォォ!!』
ヤケになったのか、全員が一斉に掛かってくる
ここはあの台詞を言うしかないだろ!
「もっと熱くなれよォォォ!!」
「まったく…もう少しまともに訓練できんのか… 」
「無理ですよ…ルーンヴァルト大佐ですからね…」
揃って溜め息をつくモルガン将軍とその副官
「年に二回とはいえ、毎回どこかしらを壊すのは どうにかならんものか… あ、また待機舎の壁が…」
「でもあの隊は実質王国の最強部隊ですから… あ、 執務舎の扉が…」
「他の隊と模擬戦をしても負けた所を見た事ない からな」
「せめて大して変わらない強さだったら何かしら言 えるんですがね」
「カシウスの奴でももう少し真面目に訓練はして いたんだがな…」
「ルーンヴァルト大佐に真面目を求めるだけ無駄で すよ。面白さと楽しむ事と姫殿下の事しか頭にあり ませんから、あの人は」
「「はあ………」」
モルガン将軍、今も昔も部下に苦労する人
因みに訓練は鐘が鳴る前にケイジ以外の全員が動け なくなって終了した
兵士達には罰ゲームとして、午後の他の隊の訓練中 ずっと走る事を命令された
その訓練を見ていた全ての人がケイジを『鬼教官』 と認識したのは言うまでもない…