英雄伝説・空の軌跡~銀の守護騎士~   作:黒やん

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『治療』

ガチャ

 

「ジンさ~ん」

 

「ここにもいないね…」

 

俺はクローゼに車椅子を動かしてもらってジンさん を探している

 

と、言うのも…昨日リクの襲来の時にふと『ジンさ んに気功治療みたいなのやって貰えば割とすぐに治 んじゃね?』と言う考えに行き着いたからだ

 

……え?昨日の件?

 

クローゼに必死で、とにかく死に物狂いで謝ったら 何とか許してくれた。…その代わり何か買ってやる 事になったが。何故だ。

 

「二階にはいないみたいね…」

 

「悪いけど一階探して来てくれねぇか?後いたらケ ビン…さんも」

 

「いいけど……逃げない?」

 

何故か不安そうな声で言うクローゼ

 

…お前状況わかってんのか?

 

「車椅子ナシじゃ移動もできない俺にどうやって逃 げろと?」

 

「それもそうか…ちょっと待ってて」

 

そう言うと、クローゼは軽快に階段を下りて行った

 

――――――

 

「…で?俺に用って何だ?」

 

大体十分後、クローゼがジンさんと何故かシャルを 連れて戻って来た

 

どうやらケビンは見つからなかったらしい

 

「いやその……というか何でシャルが?」

 

「駄目なの!?」

 

ガーンって効果音がつきそうなくらいびっくりした 声が返ってきた

 

「いや、別にいいけど…」

 

「ホッ…ケイジが僕の事嫌いになったかと思ったよ ぉ……」 安心しろ。基本的にお前を嫌いになるような奴は心 が腐ってるから。お前心真っ白だから

 

「まぁとにかく…ジンさん、確か気功使えますよね ?」

 

「ああ、使えるが…それがどうかしたか?」

 

「気功で治癒とかってできます?」

 

これでできないなら…非常に不本意だが奥の手を使 うしかない………ただ、本っ当に嫌なんだが

 

「できんこともないが…」

 

「マジっすか!?」

 

「まぁ落ち着け…俺は確かに

 

クンフー 功夫使いだが、それは 武術に関してだ。治癒に関してはあんまり詳しくな いんだ」

 

「それでも使えるには使えるんでしょう?」

 

「まぁそうだが…効くかどうかは保証できんぞ?」

 

「やらないよりはマシです」

 

そうして、気功による治癒をしてもらえる事になっ た

 

――――――

 

「まずはお前さん自身の事だが…気功は使えるか? 」

 

気…って俺基本的に譜だけど同じようなもんか?

 

「俺の場合は譜って力を使ってるんですが…」

 

「譜?」

 

まぁそりゃ聞いた事無いよな…この世界で使ってる の俺とティアとシャルだけだし

 

…カルバードって現世で言う東アジアに似てるよな …なら

 

「言霊を五行に変換して使う感じ…って言えばわか ります?」

 

「ああ、そういうもんか」

 

普通に通じた。……探せば日本みたいな島とかあり そうだな

 

「ふむ…それなら大丈夫か…

 

…よし、一度気をお前さんに流すからおかしな感じ がしたら教えてくれ」

 

「はい」

 

そういうと俺の足にチクリとした感覚が来る

 

…鍼治療か?

 

「じ、ジンさん!?どうしてケイジに針を!?」

 

「痛いよ!!なんか見てるだけで痛いよ!!」

 

どうやらクローゼ達には馴染みのない治療法だった らしくえらい騒いでいる

 

「まぁまぁ落ち着けって…これは俺の故郷の伝統的 な治療法で鍼灸って言うんだ」

 

「治療法?」

 

「ああ…人体にはツボって場所があってな。具合の 悪い所に対応するツボに針を刺して気を流し、治療 するんだ」

 

「…でも、刺さってるよ?」

 

「刺さなきゃ気を体内に流せないからな。それに俺 は資格が無いからあまりツボは知らないんだ。だか ら直接患部に刺して気を流すしかできない」

 

「シャル、大丈夫だから安心しろ。クローゼもな」

 

「「………うん」」

 

そういうとおとなしくなる二人

 

「さて…いくぞ?」

 

少しずつ、足が暖かくなっていく……譜で足を強化 するのと同じような感覚だな

 

「痛いとか気分が悪いとかは無いか?」

 

「大丈夫です…譜を足に流した時と同じ感覚ですね 」

 

「そうか。なら反対の足にも治療を始めるぞ?」

 

「はい」

 

そして、その日は両手両足、それから目は流石に危 ないので、目に対応するツボに治療をして貰った

 

…それでもクローゼとシャルは一回一回針を刺す度 にキャーキャー言っていたが

 

――――――

 

「治ったー!!」

 

治ったよ、治ったぜ、治りましたー!!

 

身体は動くし目は見える!!復活じゃああああああ !!

 

「興奮しないの!まだ左目見えないんでしょ!」

 

「うっ…」

 

そう、まだ完治では無い。まだ左目は治らないのだ

 

……イザナギで見えない目無理やりこじ開けた挙げ 句、須佐能乎とか天照とか調子乗ったからかな…

 

まぁ、昨日までと違って光はわかるからその内治る 気はする

 

「とにかく安静にしなさい!左目が治るまで無茶は 許さないからね!」

 

「お前は俺の母さんか」

 

いや、母さんいないけど。母さんどんなんか知らん けど

 

「いいから!今からご飯持って来てあげるからじっ としてなさい!」

 

「いや、俺も下に行くからいい」

 

……オイ、何だその「コイツ何言ってんの」的な視 線は。当たり前だろうが。誰が好き好んであんな精 神ダメージイベントこなさなきゃならんのだ

 

「じゃあ…はい」

 

「…何故に車椅子?」

 

「これが無いと移動できないでしょ?」

 

「だから治ったって言ってんだろうが!?」

 

何コイツ!?何でこんなに俺を恥ずかしい目に遭わ せようとすんの!?何か俺に恨みでもあんの!?

 

……恨み、買ってたな。割と

 

「そんな!?じゃあ私はケイジの何を世話すればい いの!?」

 

「まさかのペット扱い!?いらねぇよ!?だからも う身体も動くし目も(片方だけ)見えるって!」

 

そう俺が言うと床に手をついてorzのポーズをとる クローゼ

 

…もう訳がわからん。コイツに何があった?

 

「……こうなったらせめてケイジの目をもう一度潰 すしか…」

 

「オイコラ」

 

少し見ない間にコイツに何があったんだ

 

…って本当に目に指向けてんじゃねぇよ!?…ちょ !?目に光が無いんですけど!?イっちゃった奴の 目なんだけど!?

 

そんな感じでクローゼとじゃれて(?)いると…

 

「クローゼ!無事か!?」

 

馬鹿がやってきた

 

…この際もう誰でもいい!!とにかく…

 

「助けてくれ!このままだと俺の目が!」

 

「貴様!クローゼに手を出すな!?」

 

「お前の目は節穴か!?」

 

この状況でどうやったらそう見えるんだ!?重力振 り切ってんじゃねぇの!?精神が!!

 

「早くクローゼから離れろ!!」

 

「じゃあコイツさっさと引き剥がせや!!」

 

「貴様ァ!!引き剥がせるものならやってみろだと ォォォォォォォ!!?」

 

「ダメだコイツ役に立たねェェェェェェェ!!」 結局、朝飯は食べ損ねた…というかシャルに食われ ていた(泣)

 

そしてひとしきり落ち込んでいた後…

 

「おい」

 

「あん?」

 

この機嫌最悪な時に、馬鹿が急に話しかけてきた

 

「俺と勝負しろ!!俺が勝ったらクローゼを解放し ろ!」

 

「………は?」

 

「俺が負けたらクローゼは好きにするがいいさ…ま ぁ、勝つのは俺だがな!! 場所は紺碧の塔の前、時間は一時間後だ!!」

 

そう何時も通り好き勝手に言うと、馬鹿は勝手にズ カズカ歩いていった

 

……え?何この超面倒くさそうなイベント

 

…え?やらなきゃダメ?マジで?

 

とりあえず、リハビリだと無理やり自分に言い聞か せせて、嫌々紺碧の塔に向かう俺だった…


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