英雄伝説・空の軌跡~銀の守護騎士~   作:黒やん

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『すれ違い』

「………」

 

「何故こうなったし」

 

紺碧の塔に行く前に白龍取りに部屋に戻ると、何故 か部屋にいたクローゼに抱きつかれてます

 

………本当に何故だ

 

「ハッハッハ、いいじゃないか。役得とでも思って おくといい」

 

「この体勢だと何故か恐怖しか湧かないんだが…」

 

「…一体何があったんだい?」

 

アレはトラウマだからな…いや、マジで。

 

まさか七歳でバックドロップをあそこまで完璧に決 めるとは…クローゼ、恐ろしい娘!

 

………と、オリビエと漫才してても仕方ないので

 

「何でいんの?というか何で抱きついてんの?」

 

「行っちゃダメ」

 

わけがわからないよ

 

「オリビエ、翻訳プリーズ」

 

「幼なじみの君でさえわからないのに、僕にわかる とでも思っているのかい?」

 

こんな時だけ正論で返すなよ

 

「…クローゼ?」

 

「行っちゃダメ」

 

「詳しく、かつわかりやすく」

 

「リクなんかと戦う為に無理しちゃダメ」

 

なるほど

 

「大丈夫だ。問題ない」

 

「それ死亡フラグだよね?」

 

何故オリビエが知っている

 

「ケイジ、真面目に聞いて」

 

…割と真剣な顔をしていたので、オリビエとのネタ を止める

 

「…で?行くなってのはどういう事だ?」

 

「どういう事って…!ケイジ昨日まで寝たきりだっ たんだよ!?ロクにリハビリもしてないのに試合な んて無茶だよ!!」

 

「大丈夫だって。さっき確認したけど特に鈍ってな かったからな。唯一不安なのは勘と実戦での誤差く らいだ」

 

「それが不安なの!もし打ち所が悪かったらどうす るの!?」

 

…そんな事言われるとキリが無いんだがな

 

兵士とか騎士なんてもんは常に死と隣り合わせだ。 だからこそ、死なない為に必死に訓練をする。死に たくないから必死に生き延びる術を身に付ける

 

「クローゼ、離せ」

 

「嫌」

 

「……離せ」

 

「嫌!!」

 

子供のように俺にしがみつくクローゼ

 

「…また、どこかに行くんでしょ…?」

 

「………」

 

「リクと戦ったら、またアルテリアに行っちゃうん でしょ」

 

「!!」

 

何故クローゼがアルテリアの事を……!シャルか!

 

…ここで詳しく聞いておきたい所だが、あいにく時 間が無い

 

…………仕方ない

 

「クローゼ」

 

「………」

 

俺の服に顔を埋めたまま動こうとしないクローゼを 、半ば無理やり顔を上げさせて………瞳を見つめる

 

そして、クローゼはそのままその場に眠りこけた

 

……全く、コイツは…俺の心を読んでるんじゃねぇだ ろうな?アルテリアに戻る事は誰にも言ってねぇの に

 

……けど、俺は絶対にアルテリアに戻らなきゃなら ない。左目を完全に治して身体の感覚のブレを無く すために

 

「…良かったのかい?」

 

先程まで一切口を挟んでこなかったオリビエがよう やく口を開いた

 

「君だって本当は気づいているんだろう?クローゼ 君の好意に」

 

「……アレは“LIKE”の類だよ。箱入り娘なばっかり に俺しか年の近い男がいなかったからな… まぁ…『恋に恋した』ってやつだ」

 

「…君は……いや、君がそう思っているならそれでい い …ただ、君は…」

 

「オリビエ、クローゼ頼んだぞ」

 

俺はその先を聞かないまま、部屋を出た

 

「“LIKE”か…なら、どうして学園で“LOVE”の対象が 見つからなかったのかな」

 

そう言うと、オリビエはクローゼをケイジのベッド に寝かせる

 

…クローゼの目には、涙が一筋伝っていた

 

「…全く、二人とも不器用だね。だが…」

 

オリビエは、その場で静かにリュートを弾き始めた

 

――――――

 

~紺碧の塔~

 

「………」

 

「やっと来たか!逃げ出したかと思ったぜ!!」

 

紺碧の塔の前で、リクが腕を組んで待っていた

 

「最後のチャンスをやるよ。今すぐクローゼを解放 して負けを認めろ!!そうすれば「…前置きはどう でもいい」

 

奴のうっとうしい口上を遮る

 

…何故かオリビエに何かを言われかけた時からイラ イラして仕方ない…

 

今は、とにかくこのイライラをどうにかしたかった

 

「…フン!!あくまで俺のクローゼを盗もうとしや がるか!!…だったら力ずくで取り返すだけだ!! 」

 

コイツがクローゼの名前を呼ぶ度に何故かイライラ が更に強くなる

 

…何でだ?前に同じような事を言ってた時には何と もなかったはずだ

 

「…さっきから黙って聞いてりゃクローゼを物みた いに言いやがって…お前何様のつもりだ?」

 

「はっ!!お前こそ何様だ!!お前がクローゼを洗 脳何てしなけりゃ、とっくに俺とクローゼは両想い だった!!」

 

そう言いながら、両手にどこから出したのか、中国 剣の双剣を握るリク

 

……投影?だとすれば奴の能力はまず間違いなくエ ミヤの能力…

 

多分今は遠き理想郷(アヴァロン)は無いが

 

「はあぁぁぁぁぁ!!」

 

気合いと共に突っ込んでくるリク

 

…ただ、ぶっちゃけ隙だらけだ

 

しかし、俺はあえて攻撃せず、避けた

 

連続して斬りつけてくるのを避ける避ける避ける避 ける避ける…

 

…素人以外の何者でも無いな。身体能力まかせの素 人剣術…これならクローゼの方がよっぽど筋がいい

 

「クソッ!!いい加減当たれ!!」

 

「当たれって言われて当たる馬鹿がどこにいるんだ …よっ!」

 

「ぐあっ!」

 

そして隙を見てリクの腹を蹴り飛ばし、距離を取る

 

「集え氷槍……鋭く空を駆け抜けろ!」

 

「譜術!?」

 

――フリーズランサー!!

 

「くっ…織天覆う七つの円環(ロー・アイアス) !!」

 

リクの前に七つの花弁が展開されるが、フリーズラ ンサーの直撃によって一瞬で全ての花弁が砕け散る

 

「なっ!?」

 

「やっぱりな…」

 

「何がだ!!というよりお前今何をした!?」

 

「単純にフリーズランサー撃っただけだ」

 

「嘘をつくな!たかが中級の術で宝具が壊される訳 がない!!」

 

……はぁ

 

「お前…投影の訓練とかしたのか?」

 

「はぁ?するわけねーだろ。そんな事よりこっちの 質問に答えろ!!」

 

……もういいや、こんなもんか

 

譜力を使って縮地を使い、峰打ちをリクの腹に叩き 込む

 

「がっ………!?」

 

「スカスカなんだよ…お前の剣は」

 

確か投影は…それの骨組み、構造、その他諸々を完 璧に理解して投影。それでやっと原典(オリジナル)より1ランク ダウンだったはずだ

 

それをコイツは何の努力も無しに使った。普通に使 う分には問題ないだろうが…

 

「確かに中級譜術くらいで宝具が壊れる訳がない… だが、それはお前が投影を使いこなしていれば、の 話だ」

 

「俺が…投影を使いこなせていないだと…?」

 

リクが気を失う寸前になって俺に話しかけてくる

 

…プライドだけは一人前だな

 

しかしもう俺はリクに一切の興味を失っており、さ っさとボースへと歩を進め始めていた

 

「おい…待てよ」

 

ザッ…ザッ…

 

「まだ終わってないだろ……」

 

ザッ…ザッ…

 

「待てって…言ってんだろうがよォォォォォォ!! 」

 

そう叫ぶと、リクは最後の力か、立ち上がって剣の ような何かを投影した

 

天地乖離す(エヌマ)…」

 

そしてそれをそのまま振りかぶり…

 

開闢の星(エリシュ) !!!」

 

そのまま俺に向けて打ち出した

 

力の奔流が唸りを上げて俺に向かってくる

 

…が

 

「…八汰之鏡(やたのかがみ)

 

俺の背後に出現した女神の持つ鏡が奔流を全て吸収 し、そっくりそのまま反射した

 

「…努力もしないようなクソ野郎に負ける訳にはい かねぇんだよ。でないと…アイツ等に申し訳がたた ねぇんでな

 

…血反吐吐くほど訓練してから出直して来い 今のお前に力を力として奮う権利は…無い」

 

そして、俺は、背後を振り返る事無く、今度こそボ ースへと歩を進めた

 

 


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