英雄伝説・空の軌跡~銀の守護騎士~   作:黒やん

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『水面下の攻防』

~グランセル城・女王宮~

 

「も、申し上げます!!」

 

エステル達が話し合いをしている時に、突然王国軍 仕官の一人が女王宮に転がり込んできた

 

「どうした?何かあったか?」

 

「さ、先ほどハーケン門と連絡が取れたのですが…

 

国境近くに、帝国軍の軍勢が集結し始めているのだ そうです!」

 

『!!』

 

「(……なぁ、これって…)」

 

「(うん。原作通りのイベントだと思うよ…けど、 ケイジ来るのかなぁ…彼は原作知識持ってないから …)」

 

「(…アイツの事だからリベルアークが出てる時点 でこっちにくるだろうよ)」

 

「(珍しいね?君がケイジの事でコメントするなん て)」

 

「(ハッ…奴の無駄に強い悪運だけは認めてるから な)」

 

「(全く……素直に認めてるって言えばいいのに…) 」

 

――――――

 

「……ハーケン門と帝国の国境に帝国部隊が集まっ てるわね

 

…どうするの?」

 

「…迷彩使って近くに降ろそう。見つかると面倒だ からな」

 

了解(ヤー)

 

「…俺一人で行く。どうせカシウスのオッサンとケ ビンがやらかすだろうからお前らはそっちに合流し てくれ」

 

「「「了解(ヤー)」」」

 

――――――

 

~ハーケン門・北側~

 

……あれは蒸気機関?この世界にもあんなもんあっ たのか…

 

「――だが、この戦車があればこそ、市民達の不安 も和らげられるし、貴国の窮状を救うことも叶いま しょう。どうか、ご理解いただけませんか?」

 

「くっ…」

 

アイツは…確かゼクス少将…いや、中将か

 

つーか爺さん…アンタ交渉事とか全く向いてないん だから無茶すんなや…

 

…仕方ねぇな

 

「少し待って頂けますか?」

 

「…!お主!」

 

「(とりあえず話は後で。爺さん交渉事とか向いて ないんだから下がってろ)」

 

「(く…頼んだぞ)」

 

「(イエス・サー)」

 

「貴公は……」

 

「『王室親衛隊大隊長兼、王国軍大佐』、ケイジ・ ルーンヴァルト。…お久しぶりですねゼクス・ヴァ ンダール中将」

 

「……百日戦没以来ですな。再び会えて光栄です。 《白烏》殿」

 

ゼクス中将が《白烏》と呼んだ事で、帝国軍に少し だが動揺が走る

 

…新兵が混ざってんのか?このオッサンの部隊が名 前だけでビビるとは思えないが…

 

「ここまでご足労頂き大変申し訳無いが、ここは『 穏便』に退いて頂きたい」

 

「……それは脅しですかな?」

 

「人聞きの悪い。ただのしがない小僧のお願いです よ」

 

そう言って微笑みを浮かべるものの、右目は既に写 輪眼を展開する

 

「…だが、我々もそう簡単には引けないのです。貴 国の窮状、ひいては我が国の南部の異変を止めるた めに―――」

 

「……お気遣い、とても嬉しく思います」

 

涼しい声が聞こえてくると同時に、俺の背中に冷や 汗がどっと溢れる

 

……ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバ いヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤ バいヤバい

 

即刻で逃げようとするが、運悪く声が聞こえたのは すぐ後ろ

 

当然、腕を掴まれて逃げられない

 

……目が!目が!「月夜ばかりと思うなよ…?」って 言う某守銭奴の如く黒いんだけど!?ハイライト完 っ全に消えてるし!!今までの比じゃねぇんだけど !!

 

「(…何でお前がここにいんの?」

 

「(ふふ…私王太女になったから…… それと、もう逃がさないから……!!!)」

 

ナンテコッタイ

 

とりあえず、ここから先をクローゼに任せて一歩下 がる

 

その時に後ろにいたエステルとヨシュアを見たが… …スッゴい笑顔でサムズアップしてやがった

 

…お前ら絶対いつかシメる。というかヨシュア、お 前結局捕まってんじゃねぇかコノヤロー

 

…まぁとりあえずクローゼに任せるか。失敗したら 失敗したで戦車全部ぶっ壊せばいい話だし…

 

*凄く簡単そうに言ってますが普通はムリです

 

「…どうやら、交渉相手が変わったようですな」

 

何故かホッとしたような表情を浮かべるゼクス中将

 

「(…ケイジ、もしかしてあのまま何も無かったら …)」

 

「(俺の勝ちだったな)」

 

「(…やっぱり?)」

 

「(あんま気にすんな。クローゼの経験を積めるチ ャンスとでも思っておけばいい)」

 

「(相変わらず自由人だね…)」

 

それが俺だからな

 

「お初にお目にかかります。わたくしの名はクロー ディア・フォン・アウスレーゼ。リベール女王アリ シアの孫女にして先日、次期女王に指名された者で す」

 

「!!こ、これは失礼致した。自分の名はゼクス・ ヴァンダール。エレボニア帝国軍、第3師団を任さ れている者です」

 

「(…あのおじさん、有名なの?)」

 

「(そうだね。『隻眼のゼクス』。帝国でも五本の 指に入る猛者だよ)」

 

「(ま、帝国版カシウスのオッサンって考えればい い)」

 

実際英雄視されてる地域もあるし。何か知らんが俺 を悪者にしてる地域もあるけど

 

「して…王太女殿下がどうしてこのような場所に? モルガン将軍や《白烏》殿と同じように我々に抗議 するおつもりですかな?」

 

…さて、ここからが本番だ

 

こう言っちゃ悪いが…たかだか軍の中将程度、看破 してもらわなくてはリベールに未来は…無い

 

「いえ、そのつもりはございません。帝国南部の方 々もさぞ不安な思いをなされている事でしょう」

 

「………」

 

「ですが、考えて頂きたいのです。このまま貴国の 軍隊が我が国に入って来た場合の問題を。ただでさ え混乱しているこの状況で、『他意は無い』、と言 っても貴国の軍隊がリベールを堂々と進む状況を… 」

 

「………」

 

今、少し俺の顔はにやけていると思う

 

…心配はいらなかったみたいだな……最善手だ

 

他意は無い、と強調し、さらにリベールに入って来 たと言うことで遠回しに百日戦没の件を引き出して いる

 

「せっかくの貴国の善意が誤解されてしまうのは、 こちらにとっても望む所ではございません」

 

「……で、ですが…」

 

「勿論、目下わたくし達はこの異常現象を解決する 方法を最優先で模索しております。また、件の犯罪 組織についても自力で対処出来ている状況です」

 

「………」

 

「不戦条約で培われた友情に無用な溝を作ってしま わぬよう…ここはどうかお引き取り願えませんか? 」

 

「………むむ…」

 

完全にやりこめた。そう思った時…

 

「残念だが、それはそちらの事情でしかない」

 

そう言って前に出てくる見覚えのある面倒くさい顔 。というかオリビエ

 

「お初にお目にかかる。クローディア殿下。エレボ ニア帝国皇帝ユーゲントが一子、オリヴァルト・ラ イゼ・アルノールと言う」

 

……今考えてみれば、俺帝国皇子に逆さ吊りして鼻 から水飲ませてたよな

 

………あれ?マズくね?

 

後ろでエステル達が騒いでいるが…まぁ、置いとこ う

 

……というか…アルノール…?

 

………………あ゛

 

「(クローゼクローゼ)」

 

「(どうしたの?)」

 

「(あれリシャールさんが用意しようとしてたお前 の縁談相手)」

 

「(……………え゛)」

 

「…《白烏》殿はどうやら覚えていてくれたようだ ね」

 

「ええ。侵入者と間違えて斬っては外交問題になり ますので」

 

自分に出来る限りの最高の笑顔を浮かべる。何故か オリビエは顔を青くして冷や汗をかいていたが

 

「ま、まぁその事は別に気にしなくていい。だが… 今回の事態は見過ごせないな」

 

一瞬で交渉口調に戻るオリビエ。ここら辺は経験の 差だな。

 

…クローゼまだ固まってるし

 

仕方無いのでクローゼとチェンジする

 

…どうせこっから出来レースだし…

 

「今、帝国でどのような噂が囁かれているかご存じ かな?」

 

…聞いてないが予想はできる

 

「大方、あの突然出現した変な渦巻きが王国軍の新 兵器だ。王国はそれを使って復讐を企てている…っ てところでしょう?」

 

『!!!』

 

「フッ…その通りだ。今《白烏》殿が言ったような 噂がまことしやかに流れているのだよ」

 

「そ、そんな…誤解です!」

 

クローゼは必死に弁論するが……やっぱり経験不足 だな

 

「無駄だクローゼ」

 

「でも…!」

 

「こっちには無実を証明する証拠が無い。証拠無き 弁論は全て詭弁だ」

 

「……っ…」

 

裁判然り、警察の捜査然り…証拠が見つからない限 り、有罪判決など下らないし、犯人検挙など出来る はずもない

 

大言壮語は聞くだけなら美談だが、それができると 証明できなければただの妄言だ

 

「出来ないのであればこちらもそれなりの対応をさ せてもらうしか無いわけだ」

 

「そして噂の通りなら条約違反として正当防衛もや むを得ない………って訳ですか」

 

「…あくまで噂通りなら、ね」

 

「いい加減にしなさいよ!!」

 

あ~面倒くさいな~と思っていると、突然エステル がキレた

 

そして前に出ようとするが…

 

「はいちょっと黙ってようね~」

 

「え?ちょっ………」

 

シオンが俺のやろうとしてる事を読んで、先にエス テルを止めてくれた

 

「(ナイスシオン!)」

 

「(気にしないで。ちなみにこれも原作イベントだ から…)」

 

「(マジでか。俺いらなくね?)」

 

シオンとアイコンタクトで会話する

 

……どうせ遊撃士協会の立場使ってアレがリベール の兵器じゃ無いって言うつもりだろうが…だから証 拠が無いんだっての

 

「…もういいかな?」

 

「ええ。ご迷惑をおかけしました」

 

「フガフガフガ~!!(無視するな~!!)」

 

「エステル…ちょっと黙ってようか」

 

「………(ヨシュアまで…)」

 

エステルがorzになった所で交渉再開。異論反論は 一切認めない

 

「今言った事が大半の理由だが、それにだ。

 

…この異常現象を止める方法が果たして君達にある のかね?」

 

「(………ある?)」

 

「(ここで私に振るの!?)」

 

どうやら無いらしい

 

「…無いのであれば我々としても手をこまねいてい るつもりは無い。幸い戦車に積んでいるのは火薬式 の大砲でね…」

 

……あの浮遊都市は落としてやる。その代わり、リ ベールの統治権を寄越せって事な

 

「丁重にお断りします。大砲如きで落とせるならと っくに落ちてますので」

 

「フフ…やってみなくては分かるまい。いずれにせ よ…君達には我々の善意と正義を退けるだけの根拠 も実力も無いのだろう?」

 

「………ならば、証明すれば宜しいですね?」

 

「……ほう?」

 

あんま使いたくはねぇが…適当な飛行船を譜で浮か せばいい

 

「あの浮遊都市を攻略する、その可能性があれば、 問題など無いのでしょう?」

 

「…ふむ。確かにその可能性があれば一時撤退もや むを得ないだろうね」

 

芝居がかった動作で首をすくめるオリビエ

 

「……いいだろう。君達が可能性を提示できるので あればこちらは撤退を約束しよう。『黄金の軍馬』 の紋章と皇族たる私の名にかけてね」

 

はい言質とった!!

 

「『その言葉、しかと聞きましたぞ』」

 

『!』

 

どっかで聞いたような声と、俺の声がハモる

 

そして全員が上を見ると……リベールが誇る白き翼 がこの導力停止現象下で、悠々と空を舞っていた

 

そしてそのまま着陸し、カシウスのオッサンとティ アが出てきた

 

「これが現時点で我々が提示できる可能性です

 

…どうぞじっくりとご覧あれ」

 

「父さん…!」

 

「カ、カシウス・ブライト!?どうしてこんな所に …それよりもその船は何なのだ!?」

 

「ゼクス中将。だからこれが我々の提示する可能性 ですよ。そして何故飛べるのかは国家機密なのであ しからず」

 

「ぐっ…」

 

俺がそう言うと、ゼクス中将は渋々引き下がる

 

…突っ込んできたら戦車についてネチネチつついて やろうと思ったが…まぁいいや

 

「ふむ…これが噂の『アルセイユ』か… そして貴殿がカシウス・ブライト准将かな?」

 

「お初にお目にかかります。殿下

 

…何やらどこかでお会いしたような気も致しますが 」

 

「おや、奇遇だな。准将。私もちょうど同じ事を感 じていた所でね」

 

「それはそれは…」 「全く…」

 

「「ハッハッハッハッハッ」」

 

よく言うぜ全く…初めっから出来レースだったくせ に…

 

「じゃあ、そういう訳で……撤退の程、よろしくお 願いしますね?」

 

「ああ。私も誇り高きエレボニア人だ。約束は守ら せてもらうよ」

 

「ああ、後、ゼクス中将。少しお話が…」

 

「………何か御用かな?」

 

おおう、不機嫌…

 

「すみませんが、『アルテリア』の人間としてお聞 きしたい事が御座いまして…」

 

「!!?」

 

まぁそりゃビックリするわな。リベールとアルテリ アの両方に関わってるのは俺くらいしかいねぇだろ うし

 

「詳しくはカシウス殿の横にいる彼女に…」

 

「………わかった」

 

そうして、帝国軍は撤退して行った…

 

……燃費の悪い蒸気機関の導入、そして迅速すぎる 事態への対応…

 

ギリアス・オズボーン………《鉄血宰相》、か

 

全く…人生そう簡単には行かないもんだな

 

――――――

 

「…結果だけ言うと、ゼクス中将は白。彼は彼で領 地を見る暇が無くて多くの貴族達に土地を貸してい たみたいね」

 

「まぁ何と言うか…予想通りなんだけどな」

 

「…で?結局?」

 

「乗せられましたが何か?」

 

「やっぱりね…ああ、私達も乗るから。というか乗 ってるから」

 

「…マジで?」


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