英雄伝説・空の軌跡~銀の守護騎士~   作:黒やん

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閑話『異世界リリカル滞在記』きゅうっ!

「はぁ……はぁ……」

 

「あんまり声を出すな…気付かれるぞ」

 

「う、うん……」

 

「いけるか?」

 

「うん……私は大丈夫。大丈夫だから早く……

 

早く逃げよう…!!」

 

走る走る。ただ走る

 

足を止めるな。限界まで気配を消せ。奴に気付かれ るな…!

 

俺となのは、はやては今、管理局の本局って場所で 逃げ回っている

 

「…………」

 

ヒュヒュヒュヒュ

 

「っ!……もう追って来やがったか…」

 

認識阻害も掛けてるのになんて疾さだ…

 

「にゃああ!?かすった!今かすったのぉぉ!!」

 

「バーロー!口じゃ無くて足動かせ!アレに捕まっ たら死ぬぞ!!」

 

「せやでなのはちゃん!今のあの娘に捕まったら―――」

 

ズドォォォン!!

 

「はやてェェェェェェェ!!?」 「はやてちゃんんんんんん!!?」

 

まるで「こうなるで」とでも言わんばかりに散って 行くはやて

 

何もこんな時にまでお笑い魂を発揮しなくても…… !

 

「はやてちゃん!はやてちゃん!!」

 

「止めろなのは!!今はやてを助けるのは無理だ! !」

 

「そんな……」

 

『………はやて』

 

『な、なんや……?どうしたんや?何か相談あるん やったらうちがじっくり…』

 

『…………邪魔。プラズマザンバー…』

 

『……え?嘘やんな?友達に向かってそんな物騒な もん……』

 

『………なのはは撃ったよ?』

 

『いや、ソレ昔の『ブレイカー』

 

ズドァァァァァ!!

 

「「…………」」

 

「……はやてちゃん…はやてちゃんの分まできっと逃 げ切ってみせるから……!」

 

「成仏しろよ…!」

 

というかなのは。お前昔に何をした…

 

……さて、とりあえず今、魔王ならぬ死神に追われ てます

 

理由はわからん。どうしてこうなった……

 

―――――――

 

~その日の朝~

 

「ケイジ……起きて。朝だよ」

 

「………」

 

「うぅ……起きない… どうしよう…はやてが手がかりを見つけたのに…」

 

朝、フェイトはケイジの寝起きの悪さに悪戦苦闘し ていた

 

…何を隠そうケイジは低血圧低血糖低体温の三つ揃 った青年である

 

………要するに、この上なく朝に弱いのだ。それはも う夜行性動物ばりに

 

「ケイジぃ~……起きてよぉ~…」

 

「………」

 

ひたすらケイジが寝ているソファの前でオロオロす るフェイト

 

端から見ているとどこの新婚夫婦だと言いたくなる 様子である

 

「………ん……」

 

「!ケイジ!朝だよ起きて!!」

 

ケイジにほんの少しだが反応があったのを見て、こ こぞとばかりに毛布を剥がしにかかる

 

「………うるせぇな…こっちは眠いんだから寝かせろ …」

 

「ダメ!もう朝だから起きて!」

 

「うるせぇな…だから寝れる時くらい寝かせろや……

 

“クローゼ”……」

 

「…………」

 

ケイジがそう言った瞬間、フェイトの目からハイラ イトが消えた

 

「………バルディッシュ」

 

『y…yes sir!!』

 

フェイトの妙なプレッシャーに圧されてバルディッ シュが逆らえない…まぁ逆らった所も見たことない が

 

「………」

 

『s…sir…?』

 

「大丈夫だよバルディッシュ。ちょっとケイジを二 度と動けなくするだけだから…」

 

『Please stop that!?』(止めて下さい!?)

 

バルディッシュの説得も虚しくフェイトは剣を振り 下ろす――

 

「不穏な気配っ!?」

 

――が、間一髪気配に気付いたケイジが跳ね起き、 フェイトの剣はソファに突き刺さった

 

「………お前何してんの!?何してくれてんの!?」

 

「ケイジ………………………大人しくキラレテ…?」

 

「お前本当にフェイトか!?」

 

――――――

 

「…わからん。さっぱりわからん」

 

とりあえず撒けたようで、一息つく

 

……リーシャにフェイトを気絶させてでも止めろっ て頼んだんだが…いけっかな…?

 

「ケイジくんがフェイトちゃんに何かしたんじゃ無 いの!?」

 

「いや、朝起きたら(叩き起こされたら)もうあん なんだった」

 

「嘘なの!!」

 

「嘘言ってどうするよ…つーか静かにしろや。あん ま大声だしたら…」

 

「ミィツケタァ…」

 

「「来たァァァァァァ!!」」

 

リーシャの野郎ォォォォォォォ!!止めろって言っ ただろうがァァァァァァ!!

 

そんなことを考えているものの、体は勝手に走り出 す。どうやら本能的に恐怖を刷り込まれたようだ

 

シュタッ

 

「ケイジさん!」

 

役立たず、帰還

 

「何ノコノコ戻って来てんだ役立たず」

 

「酷っ!?というか絶対無理ですよ今のフェイトさ んを止めるの!!何か周りの空間が歪んでますもん !!」

 

……フェイト、空の聖痕持ってんじゃね?

 

「いや、正直お前はどうなってもいいからフェイト 止めてくれ」

 

「いやいや無理です!!」

 

「ケイジくん危ないの!!」

 

そうなのはが言うので後ろを見ると、すぐそこまで 金色の斬撃が迫っていた

 

「「嘘ォォォォォォ!?」」

 

「ちょ!?ケイジさんどうにかして下さいよ!?」

 

「くっ…仕方ない。これは最後の手段だったが…」

 

ガシッ

 

「え?」

 

「リーシャバリアー!!」

 

「薄々はやるなって気付いてましたけどまさかこの タイミングとは思わなかったァァァァァァァァァァ ァァ!!」

 

そしてリーシャにフェイトのハーケンが直撃する

 

「ふぅ……危ない危ない」

 

「ケイジくん…鬼畜なの…」

 

なのはが何か言ってるが気にしない

 

…しかし、ハーケンを防いだだけでフェイトを撒け た訳じゃない。となると…

 

「そして伝説へ!!」

 

やっぱりリーシャを投げるしかない訳で……

 

「ケイジくん本物の鬼なの!!人間じゃないの!! 」

 

「うるさい魔王。リーシャにはギャグ補正っていう 素晴らしい能力が備わってくれていたらいいのにな ~」

 

「それ完全なる願望だよね!?しかもメタ発言! それと私魔王じゃ無いもん!!」

 

でもフェイトのパソコン使った時に軽くネットいじ ったら大見出しに『管理局の魔王(エースオブエース) 大活躍!!』 ってあったぞ

 

「私魔王じゃ無いもん!!普通の女の子だもん!! 」

 

「ちょ!?お前ポカポカこっち叩いてる暇があった ら足動かせ!!」

 

ホラ!!リーシャがフェイトになぶられてる間に逃 げようとしてたのにもうボッコボコにされて捨てら れてんじゃねぇか!!

 

「フフフ………ケイジ、モウニゲバハナイヨ…?」

 

「いやお前本当に誰だよ!?あの大人しい犬属性の フェイトはどこにいった!?」

 

「ワタシガフェイトダヨ?マッタク…ケイジハモノ ワスレガハゲシインダネ」

 

「嘘だ!!」

 

少なくともフェイトは人語を話していたはずだ!!

 

「ダイジョウブダヨ………ケイジガウゴケナクナッテ モワタシガイッショウオセワシテアゲルカラ…」

 

「まさかの介護前提!?というかお前俺に何するつ もりだ!?」

 

「ソンナノ……ハズカシクテイエナイヨ…」

 

「コイツ変態だァァァァァァァァ!!」

 

前に模擬戦した時から「露出狂?」とは思ってたけ ど!!ここまで救いようが無いとは思わなかった! !

 

「私魔王じゃないもん!!」

 

「お前はしつこいな!!………ってアレ?」

 

気がつけば前の少し離れたところになのはがいた

 

…………レイジングハートを構えて

 

……え?何これ?前門の魔王(なのは)、後門の死神(フェイト)

 

アレ?詰んでね?

 

「フフフ……ケイジ…モウニガサナイ…!」

 

『Plasma zamber』

 

「魔王じゃ……ないもん!!」

 

『Starlight』

 

「「ブレイカー!!」」

 

俺の脳裏に今までの記憶が甦っていく

 

……ああ、これが走馬灯ってヤツか…

 

そう理解した瞬間、俺はピンクと金色に呑まれた

 

………俺が何をしたって言うんだ…!!

 

「………ハッ!?ケイジ!?どうしたの!?何があっ たの!?」

 

「………フェイトちゃん、覚えて無いんだ…」

 

「なのは!!誰がこんな酷いことを!?」

 

「(いや、やったのフェイトちゃんなんだけど…) 」

 

そう言いたいのは山々だったものの、心底ケイジを 心配している様子のフェイトには言うに言えないな のはだった

 

「ケイジ!ケイジ!!しっかりして!!」

 

「……ユーノくんにでも愚痴聞いてもらおうかな…」

 

同時に、フェイトの発するピンクのオーラにげっそ りしているなのはだった…


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