英雄伝説・空の軌跡~銀の守護騎士~   作:黒やん

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『因縁』

「まだかレーヴェ!?」

 

「もうすぐだ!」

 

ドラギオンを駆って既に数十分が経つが、未だに『 根源区画』が見えてこない

 

……いくら何でも深すぎだろ…ヨシュアが自分に打ち 克てればいいが…

 

もしもの場合は……

 

「見えたぞ!『根源区画』だ!」

 

レーヴェの指差す方向を見れば、確かに底らしき光 っている場所が見えた

 

…って

 

「オイオイ、いきなり大ピンチじゃねぇか!!」

 

何か禍々しい目の模様と、動けない様子のエステル 達

 

なるほど。あれが魔眼か

 

それにワイスマン(?)の周りにいかにも強力そう な障壁が展開していた

 

…あれは……“輝く環”の力か!

 

「レーヴェ!」

 

「わかっている!しっかり掴まっていろ!!」

 

そうレーヴェが言うのと同時にドラギオンのスピー ドが更に加速する

 

『ククク…やはりお前は殺すには惜しい…… ゆっくり調整し直してから再び“聖痕”を刻み込んで やろう… 幸い“元第三位”というこの上ない実験材料もあるこ とだしな……』

 

そんなワイスマンの声が聞こえてくる

 

……この様子だとヨシュアは打ち克ったみたいだな

 

「……やれやれ…。もはや悪趣味と言うより病気と言 った方が良さそうだな」

 

「いや、もうキチ〇イの域だろ」

 

そしてようやくドラギオンが『根源区画』に到着す る

 

「あ…」

 

「レーヴェ!ケイジ!」

 

そして俺はすぐにドラギオンから飛び降り、レーヴ ェはそのままドラギオンごと“輝く環”の障壁に突撃 して行った

 

俺は飛び降りた勢いを殺さずに魔眼の模様に縮地で 近づき、切り捨てた

 

「!体が…」

 

「“魔眼”の拘束が破れた……?」

 

その直後、エステル達を拘束していた赤い光が消え る

 

「お前ら無事か?」

 

「おかげさまで何とかね……」

 

「助かったぞ」

 

「それにしても……まるで狙ったようなタイミング だったねぇ。流石はケイジだと言ったところかな? 」

 

ヨシュア以外の三人…エステル、ジンさん、オリビ エが俺に礼を言う。ヨシュアはどうもレーヴェの言 った『ハーメルの真実』の真偽の方が気になったら しく、そちらに集中している

 

エステルとジンさんもすぐにレーヴェの話に聞き入 っている

 

「お前は聞かなくてもいいのか?」

 

「………薄々だが自分の中で結論は出していたからね 。彼の話とほぼ一致しているよ。 ……そもそもの犯人がワイスマン教授だとまでは至 らなかったけどね」

 

……まぁコイツはバカじゃないしな。疑問は持って て当然か。

 

『……離れろ………この痴れ者がッ!』

 

「ぐぅっ!!………フフ、もう遅い……!」

 

パキィィィィィン

 

「レ、レーヴェ!?」

 

ワイスマンの空間攻撃に吹き飛ばされるレーヴェと 、衝撃で大破するドラギオン

 

……だが、その剣はしっかりと“輝く環”の障壁を砕 いていた

 

「レーヴェ!」

 

「俺に構うな……!

 

道は拓いた……後はお前達が切り拓け……!!」

 

「……………くぅっ」

 

一瞬駆け寄りそうになったヨシュアだが、レーヴェ の言葉に何とか思いとどまる

 

「……レーヴェの言う通りだ」

 

「ケイジ………」

 

「今、お前がやるべき事はなんだ?倒さなきゃなら ない奴を前にしてレーヴェのところに行く事か?違 うだろ」

 

「………………」

 

「レーヴェは俺に任せて……全部の因縁に決着つけ てこい。レーヴェに説教すんのは後だ」

 

「……そうだね。そうだよね。もう会えない訳じゃ ないだしね………ケイジ」

 

「ん?」

 

「レーヴェをお願いしてもいいかな?」

 

そんなヨシュアのお願いを俺は鼻で笑って

 

「任された」

 

ーーーーーーーー

 

「……レーヴェ」

 

「ケイジか……決着は?」

 

もはや動く事すら億劫なのか、レーヴェが俺にそう 聞いてくる

 

「まだだ。今ちょうどヨシュア達が戦ってるところ だよ」

 

「そうか……」

 

少し満足したように目を閉じるレーヴェ

 

「これで少しはカリンに顔向け出来るな……」

 

「またそのカリンさんとやらか。本当にベタ惚れだ なお前」

 

「フッ……俺の人生で最初で最後の愛した女だから な。恐らくあの世(あっち)で怒られるとは思うが…」

 

もう死んだ気で話しているレーヴェ…だがしかし! そうは問屋が卸さんのですよ

 

ヨシュアに任されたしな

 

「さてレーヴェ、そんなお前に問題です」

 

「?」

 

あの世(あっち)でカリンさんに怒られるのと、現実(こっち)でヨシ ュアに怒られるのと……どっちがいい?」

 

「!?」

 

初めはかなり混乱していたレーヴェだったが、俺の 言いたい事を理解すると目を閉じたまま微笑んで

 

「そうだな……確かにカリンには会いたいが………や はり怒られるならヨシュアの方がマシそうだな」

 

そう生きる意思をはっきりと示した

 

「だろうな。話聞いてる限りなんとなく怖そうだし 」

 

「普段は普通にいい女だぞ?」

 

「はいはいノロケ乙」

 

そんな軽口を叩きながら俺は万華鏡写輪眼を発動さ せた

 

ーー宮比神(アメノウズメ)


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