シンジュ団の捻くれ者   作:ユフたんマン

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後日談

空を赤く覆った時空の歪みはパルキアと共に暴走したディアルガを鎮めることで解決し、元の時代に帰るべく謎の言葉、全てのポケモンに出会えを達成すべく、私は今日もポケモン達と共にヒスイの地を踏む。

 

コトブキ村、ギンガ団本部から出ると、近くの広場でシンジュ団の団長、カイさんとキクイくんが2人で話していた。

カイさんは私に気づくと話を中断し、大きく手を振る。満面の笑みを浮かべており、私の脳裏に、イーブイの尻尾が付き、尻尾をブンブン降っているカイさんが過ぎる。

 

「カイさんにキクイくん!おはようございます!」

 

カイさん達に挨拶をしながら近寄ると、カイさんはニコニコとしながら籠を持ち上げた。

 

「おはようショウさん!今日ね、これからヨネ姉も誘って野掛けをしにいくの!ショウさんもどうかな?」

 

野掛け…確か現代で言うところのピクニックだっただろうか…。今日は元々ポケモンの調査に行くつもりだったが、どうしようか…

 

「最近君は根を詰めすぎだね。大事な予定が無いのなら今日くらい1日ゆっくり休んだ方がいいんじゃないかね?」

 

どうしようか迷っていると、そうキクイくんに諭された。今振り返れば、あの異変を解決してからずっと動き続けていたかもしれない。

最近バクフーン達からも休めと圧が掛けられていた気がするし、ちょうどいいかもしれない。

 

「ほら、美味しそうでしょ!?今日の為に無理言って作ってもらったんだから!」

 

カイが籠の蓋を開けると、そこには色彩豊かに盛られた食材が所狭しと詰められている。そんな中に何やら見覚えのあるものが眼に映りこんだ。

 

「…え…、カイさん…この…おにぎり…誰から?」

 

私が指さしたのは、海苔で表面全体を覆い、耳のような突起が生えたおにぎり。これはあの時の…

 

「カビゴンおにぎりのこと?可愛いよね!中の具は教えてもらってないから楽しみだなぁ!

作ったのは………」

 

「ごめんなさい!用事が出来ましたッ!!」

 

私はすぐにウォーグルを呼び出し、紅蓮の湿地へと飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

▽▽▽

 

紅蓮の湿地の南に位置する試練の中洲。そこから歩いて数分の小高い崖の上に1つの小屋が建っている。

試練の中洲の一角、そこは親分ヌメルゴンの縄張りである。親分ヌメルゴンは比類なき力を有しており、キングにはやや劣るものの、凄まじい力を兼ね備えている。

だが、それ故に遺跡の番人として、感情の神に選ばれ、縄張りから姿を消すことが多々ある。

そんな時に、最弱の龍とも呼ばれるヌメラ。彼らの面倒を誰が見るのか。

ヌメイル?まだまだ半人前、大勢のヌメラを統率出来るほどの力はない。

ヌメルゴン?親分程ではないが統率力は十分。だがヌメラの数が非常に多く、また全てのヌメラを見守ることは困難である。

そんなヌメルゴン達の手伝いをする為に、小屋で生活する者が、シンジュ団所属の『クォーク』である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は目的地に到着すると、ウォーグルに礼を言いながら飛び降りる。

 

『このおにぎりを作ったのはクォークさんだよ』

 

先程のカイさんの言葉が脳裏に再生される。そんな馬鹿な。彼が…彼が嫌う余所者である私に…?

 

『フン、こちらはよろしくするつもりはない。余所者はさっさと何処かへ行ってくれ』

『は、クレベースを鎮めた?それがどうした。クレベースは何かしたのか?例え好物だとしてそれを投げ付けるなどと無礼千万ッ!』

 

彼は私を認めなかった。カイさんやセキさん、最初は否定的だったハマレンゲさんも、最後はキングを鎮めることで私を認めてくれた。だけど彼は違う。最後まで私を突き放した。

 

私は彼が苦手だった。当然だ。ヒスイの皆を思って、荒ぶるキング達を命懸けで鎮めたというのに、彼はそれを全否定したのだ。私の為に傷ついたポケモン達をも侮辱するその発言に頭に血が上った。その場はカイさんが諌めたことでどうにか落ち着いたが…

彼が私を助けてくれたと言われてもはいそうですか、と納得出来るはずもない。

どうせまた、私の顔をみれば「余所者め」っと嫌味な言葉がぺラップのおしゃべりのように吐き出されることだろう。

 

 

「ヌメェ…ヌメヌメェ〜」

 

誰だこの人は…!?私は夢を見ているのだろうか…

今私の目の前にいるのはいつも嫌味を言ってくるクォークさんなはず…だが彼は今、地面に這いつくばり、ヌメラに視線を合わせ、ヌメヌメと語り掛けているただのポケモン愛好家ではないか!

 

「ヌメヌメ〜ヌメヌm…………」

 

彼が私に気づいた。口が半開きになりながら、絶対零度を食らったかのように固まっている。

 

「……………」

「……………」

 

無言の時間が続く。この膠着状態の中、先に動き出したのはクォークさんだった。

 

「こッ…この余所者めぇぇ!!!」

 

彼は顔を紅潮させながら叫ぶ。そしてポケモンを呼び出した。

出てきたポケモンはヌメルゴン、エンペルト、ハガネールと、非常に強力なポケモン達。

だが彼の剣幕に対して、ポケモン達はやれやれとでも言わんばかりにのそのそと場に出てくる。

 

「退屈なぁッ!勝負はするなよ余所者ォッ!!」

 

とりあえず私はクレセリアをボールから繰り出し、唐突なポケモンバトルが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ポケモンバトルが終わった。見事に3タテを決めたクレセリアは誇らしげに胸を張りながらボールへと戻っていった。

 

「フンッ…余所者がここに何の用だ?」

 

冷静さを取り戻したのか先程のことは無かったかのように振る舞い、げんきのかけらでポケモン達を回復させながら彼は問い掛けてきた。

 

「ヌメェ」

「貴様ッ!!このッ!!用がないならさっさと帰れ!ここは余所者が来ていい場ではないッ!」

 

しまった…!つい口に出てきてしまった…!そのせいでクォークさんも機嫌が悪くなってしまった。小屋の方に踵を返し、中に入ろうとしている。私は礼を言いに来たのだ。それを忘れてはいけない。決して煽りに来た訳では無いのだ。

 

「あ、あの…ッ!!」

 

彼は足を止め振り向いた。

 

「この前は…ありがとうございましたッ!!」

 

「…なんの事だ?」

 

「あの、私がコトブキ村から追放された時に…!食べ物を置いていってくださって…!」

 

「知らん、俺ではない」

 

「カイさんから聞きました…!あのおにぎりは貴方が作ったものだって…!」

 

「チッ…長も余計なことを…」

 

「本当に…ありがとうございました…!私はあのシチューやおにぎりのお陰で…」

 

「フン、勘違いするな。別に俺は貴様に食べ物を作ってやった訳じゃない。ただただそこに鍋や食材を置き忘れていただけだ。だから貴様に感謝される筋合いはない」

 

クォークさんはそう言うと私に背を向け小屋に戻ろうと歩き始める。

待って、まだしっかり感謝を伝えられていないのに…

私はあの行為に救われた。お腹は満たされた…荒んでいた心も満たされた…心の奥底から暖かくなった…

彼の優しさに救われた…彼は否定しているけど…

キクイくんの言葉を思い出す。

 

『あの人は素直じゃないからね。このヌメイルのことも口ではどうでもいいとか言っている割には定期的に異常がないかわざわざ巨木の戦場まで通っているからね』

 

カイさんも言っていた。彼は不器用なだけなのだと。

 

口から思っていることが上手く発せない。ああ、彼が行ってしまう…

 

「何を突っ立っている。さっさと上がれ余所者」

 

いつの間にか、こちらに振り向いていた彼の翡翠色の瞳が私の目を見ながらそういった。初めて目を見ながら話したかもしれない。

 

すると何やら布を投げつけられる。

 

「拭いておけ、返さなくてもいい」

 

ふと、自身の顔を触ると、涙が零れていた事に気づく。恥ずかしくなりすぐに涙を拭き取るも、次々と零れ落ちて行く。

そんな私を見兼ねたのか、彼は私の手を取り、ゆっくり引きながら家へと上がらせた。

 

 

部屋の中は、湿地帯にも関わらずジメジメとしておらず、湿度は丁度いい程になっている。よくよく見てみると、部屋の真ん中には鉱石が生えた岩が置かれている。あれは恐らくさらさらいわでは無いだろうか。あれで湿度を抑えているのだろうか、本来の使い方とは違うがこんな応用法があったなんて…

 

「そこに座っていろ、丁度飯時だ」

 

私は指示された通り、囲炉裏の側に敷かれた座布団に腰を下ろす。

彼はキッチンで料理を始める。といってももう既に殆ど用意していたらしく、皿に盛り付けお盆に乗せて私の前に差し出した。

 

「食え」

 

お盆の上にはバスラオの切り身、味噌汁、白米、スナハマダイコン漬物が置かれている。とてもシンプルな献立だ。

対面して座った彼のお盆にも同じ物が乗っていた。

 

「「いただきます」」

 

まずはバスラオの切り身から食べる。油が程よく乗っており、噛めば噛むほど旨みが溢れ出る。少しバトルをして時間が経っていたからか、少し冷めてはいたものの、その美味さは健在だ。

次は白米。バスラオの切り身を少し乗せて一緒に食べる。とても良く会う。漬物もしっかり味が染み込んでおり、シャキシャキとした食感が堪らない。

味噌汁を飲み込む。出汁がよく聞いており、飲み終えるとホッと一息つく。

 

「そう言えば、クォークさんの家は囲炉裏を使っているんですね…それに…よく見ると内装も他とは違うような…」

 

「…ここはギンガ団がここに来たばかりの時に作られた建物だ。シンジュ団との交流の第一歩としてな…

まぁ先代も余所者には忌避感があったからな。集落から離れたここを試しに造らせたのだろう…」

 

そして無言の時間が続く。お互い何も話さない。ただただ空間には食器の音がカチャカチャと鳴るだけだ。

「「ご馳走様でした」」

 

食べ終えると、ササッとクォークさんはお盆を持ち片付けを始める。私も手伝おうとするも、客人なのだから座っておけと止められる。

 

座布団に座りながら黙々も片付ける様子を見る。ブロンドの綺麗な髪が、窓から差し込む日光が反射し、キラキラと宝石のように輝く。

彼は皿を洗い終えると、バスラオの骨を取り出し洗い出す。そして洗い終えると、近くにあった巾着袋を開き、中に骨を入れる。

 

「それは?」

 

つい聞いてしまったが、彼はしっかり答えてくれた。

 

「シンジュ団としてではなく、我が一族に伝わる風習だ。川や海で捕まえたポケモンを食べた後は、綺麗に洗い水の中に返す。そうすると骨は再び肉体を付けて蘇る…と言われている」

 

そう言えば…かつてミオ図書館でそんな昔話を聞いたことがあった気がする。たしか、食べたポケモンの魂を、神々の世界に送り返す…という感じの…

 

「今から出かける。後は好きにしろ」

 

彼はそう言うと、巾着袋を手に小屋から出ていった。

 

「わ、私も行きますッ!」

 

私は慌てて彼の後を追う。

 

小屋から少し離れた試練の中洲の隣にある川。彼はエンペルトに跨り、私はイダイトウに跨る。

 

「どこに行くんですか?」

 

「群青の海岸、戻りの洞窟にある隠れ泉だ。そこで骨を清める」

 

「え?さっき洗っていたのでは?」

 

「馬鹿か…あの程度で穢れを清められる訳なかろう。行け、エンペルト」

 

「あ、待ってください!」

 

 

 

 

そうして私達は群青の海岸へと向かった。

道中にある天高く聳え立つ崖は、私はオオニューラで、彼は生身で登りきった。化け物だ。人間じゃない…ハマレンゲさんといい、シンジュ団は化け物だらけなのだろうか…登る速度もオオニューラと殆ど同じ速度だったし…

 

そんな大きな崖の内側には、澄み渡る綺麗な湖と、薄暗い洞窟が存在していた。

何やら洞窟からピリリと異様な雰囲気を感じる。少し前、テンガン山の山頂で感じたものと同じ…

警戒?敵意?心の奥底から震え上がらせる異様な雰囲気…!

 

私はすぐにボールを手に取り、ポケモンを出そうとするも、クォークさんに手で制される。

 

「黙って見ていろ」

 

クォークさんは、巾着袋をバッグから取り出し、一緒に大きな彩色された器を取り出す。皿の中に、湖の水で濯いだ骨を入れ、酒を取り出し杯に注ぐ。

まるで供え物のようだ。

 

そして洞窟へ向けて、カンナギの笛を鳴らす。

 

――♪――♪

 

何か…何か、いつも聞いている笛の音と違う、妙な音域で、空間に音が響き渡る。

 

すると突如、クォークさんの影が揺らぎ、拡大する。影は次第に形を形成し、かつて戦ったギラティナが、オリジンフォルムで現界する。

 

『ピシャーン…』

 

だがそこには戦意は無い。敵意も無い。ただただ笛の音を聞き入る。何か、懐かしいものを聞くかのように、ギラティナが耳を澄ます。

 

「我が一族には代々言い伝えられてきたシンジュ団と異なる風習がある。世代を超えている事で昔とはかなり相違点があるだろうが…根本的な事は同じだ。

もう一柱の神、ギラティナ様…シンオウ様とはまた違うらしいが…

我が一族が信仰していたのはパルキア様ではなくギラティナ様だった」

 

衝撃の告白。驚きを隠せない。シンジュ団はパルキアを信仰し、空間を尊重している。他の団員と同じく、彼は空間を重んじていたはずだ。なのに彼は今、空間を司るパルキアではなく、忘れ去られた神ギラティナが信仰対象だと言う。

 

「天冠の山麓での貴様との戦いの後、試練の中洲に訪れたウォロが同族のよしみで俺に教えた。奴は俺の一族と同じ血を引く…古代シンオウ人の末裔…だったらしい。

古代シンオウ人が何やらとまでは知らんがな。

この儀式はせめて後世にギラティナ様の存在を遺す為のものだったのだろうな。

俺の一族がシンジュ団の集落から離れた場所で生活していたのは余所者であるシンジュ団から離れるためか、それともシンジュ団が追いやったかは分からないが…」

 

言い切ると彼は振り返り私の目を真っ直ぐと見つめる。

 

「ショウ、俺ともう一度勝負してくれ。俺は貴様を見極めたい…いや、もう十分に見極めは済んでいる…だがそれをもう一度この目で今、ギラティナ様と確認したい」

 

いつものような、どこか高圧的な態度ではない。私のことを認めてくれている?今の台詞からはそう読み取れる。本当に?いつも私を認めず、私を全否定していた彼が…?

いや、今はそれよりも…

 

「今…名前で…?」

 

彼は初めて私の名を呼んだ。貴様、余所者、ではない。ショウ、ショウと名前を呼んだ。

 

「受けるのか、受けないのかどっちだ」

 

「しますッ!!」

 

食い気味に答える。

 

「よし、では始めようか…ッ!」

 

 

シンジュ団のクォークが勝負をしかけてきた! ▽

 

 

彼の前にギラティナが現れる。漆黒のオーラが溢れ出し、凄まじい力に満ち溢れている。

 

「行け、バクフーンッ!」

 

私はバクフーンを繰り出した。

眠そうな顔で力強く雄叫びを上げ、地に足を付けた。

 

 

 

 

 

 

そして始まったのは神話の戦いだった。

クォークさんのポケモンはギラティナただ1匹。だがそれだけで私のポケモン達は既に3匹倒されている。

 

「パルキア!あくうせつだん!」

 

「ギラティナ、シャドーダイブ!」

 

あくうせつだん、それは名の通り、空間を切断する神の一撃。この攻撃に距離は意味を成さない。

何処にいてもあたる。空へいても、地中にいてもそれは変わらない。そう、例え相手が別次元にいたとしても変わらない。

必ず当たる。空間を切り裂くのは必中の必殺。それこそが空間を司る神の権能。

 

だが相手は反物質を司る神。空間を切り裂く程度の一撃では怯まない。

ギラティナのシャドーダイブ、自らの世界へと姿を移し、現世へと現れ、その衝撃を相手に与える技。口頭だけでは何が強力なのか分からないその技だが、その衝撃が凄まじいものなのだ。

その世界の名は反転世界。現世での常識が通じない神の領域。

反転世界と現世には大きな壁がある。世界を繋げる時空の壁だ。それをぶち壊し相手にその衝撃をぶつける。次元の壁を破る程の破壊力を持つ衝撃が弱いはずもない。

似た技であるゴーストダイブはそれを擬似的に影の世界で再現しているものである。

 

だがシャドーダイブは違う。真に次元の壁を突き破っているのだ。

それを可能とするのがギラティナの司る権能、反物質の対消滅と言われる力である。

世界と世界の狭間にある壁を、破壊する。

次元の壁は消滅し、それは凄まじいエネルギーと姿を変え、その全てが敵対象にぶつけられるという訳だ。

 

しかしパルキアもまた伝説の1柱。それほどの衝撃を食らってもなお未だ健在。

 

「アクアテール!」

 

「ドラゴンクロー!」

 

刹那、パルキアの尻尾水の力を纏い、刀の抜刀術のように、ギラティナに斬り掛かる。パルキアの前に距離など存在しない。空間を瞬時に移動しギラティナの目前に迫る。

ギラティナはそれにドラゴンクローで応戦。力ではギラティナに軍杯が上がるが、機動力では当然のごとくパルキアに敵わない。

 

アクアテールの一撃目は防がれた。だが、それだけでは終わらない。ギラティナの背後に瞬間移動し、再度斬り掛かる。

ギラティナは瞬時に反応。ドラゴンクローで迎撃するも、アクアテールとぶつかり合う寸前、パルキアはまたしても瞬間移動でギラティナの背後を取る。

 

フェイント。だがクォークさんはそれを読んでいた。

 

「背後にだいちのちから!」

 

瞬間、パルキアの足元から大地のエネルギーが放出される。それを冷静にパルキアは私の目の前まで瞬間移動で躱し態勢を整える。

 

「やりますね…!」

 

「フン、当然だ」

 

強い。元々分かっていたことだがクォークさんのポケモンバトルの才能は極めて高い。現代に居ればジムリーダー、或いは四天王にもなれる程だ。

ノボリさんの次、つまりはシンジュ団の2番手のポケモンの使い手。強いと言えば当然か。

今初めて会ったとは思えない程の連携…!

 

「りゅうのはどう!」

「はどうだん!」

 

次の瞬間、りゅうのはどうとはどうだんが両者から放たれ拮抗する。最初は互角だったのに対し、次第にはどうだんが押され始める。

りゅうのはどうは放出型だ。りゅうのはどうを起動させながら移動するのは困難である。だがそれ故に威力は落ちない。出し続ける事により、更に威力が上昇する。パルキアともあれば増えはしても減りはしない。

対してはどうだんは発射型。1度出せば、そこから次の技へ移れる連射性能が極めて高い。故に威力が少し低く、持続力が低くなってしまう欠点がある。

本来のポケモンならこのままはどうだんを押しのけられ、りゅうのはどうを食らってしまうだろう。だがギラティナは違う。

 

「力強くシャドーダイブ!」

 

ギラティナは再度反転世界へと潜り込んだ。これではどうだんが押しのけられようとギラティナには関係ない。むしろりゅうのはどうを放出中のパルキアが隙を晒す事になる。

そしてそこに力業。大きなタメと隙を晒す事になるが、本来の威力、命中率を大幅に上げることが可能。

このタイミングでの力業。即ち、クォークさんはここで勝負をかけてきた。

 

「パルキア!受け止めて!」

 

「なっ!?」

 

ギラティナの渾身の一撃。それを真正面からパルキアが受け止める。当然容易に受け切れるはずもなく、突進するギラティナごと吹き飛び、叩き付けられ崖は大きく陥没する。

 

傍目から見てもパルキア瀕死、ボロボロな状態だ。だがそれでも、パルキアはギラティナのシャドーダイブを受けきり、更には捕まえて見せた。

 

「素早くあくうせつだん!そして力強くだいちのちから!」

 

パルキアはギラティナを拘束しながらあくうせつだんを放つ。避ける事が出来るはずもなく、硬直し拘束されているギラティナに直撃する。

堪らず吹き飛ばされたギラティナへ追い討ち。

倒れた地点から空へ向けてのだいちのちから。放出されるエネルギーがギラティナの体を飲み込んだ。

 

 

だいちのちからのエネルギーが消え去ると同時に姿を現したのは倒れ横になるギラティナ。

戦闘不能、私達の勝利だ。

 

「優雅、見事…!」

 

クォークさんは負けて嘆くことも無く、落ち込むことも無く、憑き物が落ちたかのような清々しい表情で笑みを浮かべた。

彼はげんきのかたまりでギラティナを回復させ、私の方へ歩み寄り、深く頭を下げた。

 

「クレベースを鎮めた後、ショウ達を侮辱した発言を取り下げさせてくれ…すまなかった」

 

クォークさんは頭を上げ、ギラティナの頭を撫でながら続ける。

 

「俺はクレベース戦を遠くから見ていた。命を懸けて戦うお前を見て、俺はお前を美しいと思った。

だがそれでも俺はお前を認められなかった。理由はお前が余所者だったということだけだ。

あの食べ物も、自分には認識出来なかった心にあった罪悪感。即ち自己満足。

感謝する必要もない」

 

そこまで言うとクォークさんはギラティナを撫でるのをやめて、一歩後ろに下がる。

 

「ギラティナ様からの意志だ。

ワれハギラティナ…アルセウスノ シシャヨ…

ワれヲツカまエヨ…チカラヲシメしタ…

だそうだ。ギラティナ様を連れていくといい。きっとお前の助けになってくれるはずだ」

 

ギラティナがじっと私を見つめてくる。見つめ返していると、少し怯えるように震えた。何だか可愛い。

 

ボールを差し出すと、素早くボールの中に逃げるように収まった。

 

「さぁ、少し遅くなった。コトブキ村まで送ってやる。着いてこい」

 

クォークさんは中断していた儀式を手早く終わらせ、しばしの黙祷の後、コトブキ村の方面へと歩いていく。

 

「クォークさん!」

 

私が声を掛けると、彼は足を止めて振り返る。

 

「罪悪感でも…私を助けてくれたのは事実です。私は貴方に救われました。

誰も味方がいない中…暖かい食事には心にと言うか何と言うか…

ともかく!とても美味しかったです!もちろん今日のご飯も美味しかったです!ご馳走様でした!そしてありがとうございました!」

 

「フッ…そうか」

 

素っ気ない返事。だけどクォークさんの口は弧を描いていた。





・クォーク
名前は素粒子のグループの名称から。一応カトレアさんのご先祖という設定。ゲームではこのイベント後、小屋に行くとご飯を食べる事ができ、手持ちのポケモンのなつき度が上がるイベントが追加される。
シンジュ団とか技の説明とかヌメルゴンとかは全部独自解釈。
ポケモン勝負はノボリさんの次に強い。
ギラティナは主人公に二度ボコされすっかり恐れている。
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