わたしの名はロクサーヌ。
狼人族で16才の獣戦士、そしてご主人様(加賀道夫)の一番奴隷。
大好きなご主人様、かわいい後輩奴隷のセリーとミリアの4人で、
クーラタルの一軒屋でしあわせにくらしている。
お仕事は迷宮探索。
少し前までクーラタルとベイルの2つの迷宮を同時に探索していたが、最近はハルツ公爵からの依頼でハルバー、ターレ、ボーデの迷宮を優先的に探索している。
ちなみにクーラタルは11階層、ベイルは11階層、ハルバーは12階層、ターレは13階層まで到達。
発見されたばかりのボーデは1階層を探索中だ。
昨日新しくミリアがパーティーメンバーとなったので、今日から4人での迷宮探索となる。
朝、目が覚めると目の前にご主人様の顔があった。
ご主人様が目の前、ご主人様の向こう側にセリー、背中にミリア、がピッタリ貼り付いている。
うちのベットは大きめだけど、さすがに4人で寝るとみんながぴったりくっついた状態だった。
私はご主人様の左うでを枕にして寝ており、抱きかかえられている。
ご主人様の顔を眺めていると、すぐに目が開いたのでおはようのキスをした。
「チュッ...... はむ...... ん......」
私はご主人様のくちに吸い付いて、ご主人様のくちのなかに舌を滑り込ませる。
するとご主人様は私の舌を優しく迎え入れ、自分の舌を絡めてくれた。
私はしばらくご主人様とのキスを堪能したあと、くちびるをはなして挨拶した。
「おはようございます。ご主人様」
「おはよう、ロクサーヌ。今日も早いな。狭いけどちゃんと寝れたか?」
「はい。ぐっすりねました」
「そうか。でも、さすがにこのベットで4人は厳しいな」
「そうですね。狭いのは問題ないと思いますが、もう夏ですし、ちょっと暑いですね」
そこまで話すとご主人様はあお向けになった。
次はセリーの番なので私は起きあがろうとしていると、ご主人様に抱き寄せられたセリーの話が聞こえた。
「えっと。よろしいのですか」
「……」
「順番は変わらないのでしょうか」
私はその言葉を聞いて、からだが固まった。
私は一番奴隷として頑張っているつもりだし、ご主人様からも一番と言われている。
でも、それがずっと変わらないとまでは言われていない。
セリーの言う通り、順番を変えられることがあるのか...... そう考えると怖くてからだが動かなくなる。
私が混乱していると、ご主人様は
「大丈夫。すぐ変えるつもりはない」
とセリーにこたえてキスをしていた。
わたしはホッとして横で寝ていたミリアをゆすって起こした。
『おはようございます、ミリア。昨日伝えたうちのルールは覚えてますね』
『おねえちゃん、おはようございます。ちゃんと覚えています』
私がミリアと話していると、ご主人様とセリーの挨拶が終わった。
『ミリアの番ですよ』
私がミリアに声をかけると、ミリアは元気よくご主人様に飛びついた。
どうやら昨日の状態は引きずっていないようだ。......というか、セリーに冗談っぽく話した通り、忘れているのかもしれない。
「おはよう、です。ご主人様」
ミリアはブラヒム語で挨拶すると、ご主人様に軽くキスした。
ご主人様はミリアを抱こうと腕を回したが、その前にミリアが離れてしまった。
ふふ。さすが猫人族ね。
私はそう思いながらセリーのほうを見ると、セリーもご主人様を見てニコニコしていた。
ご主人様は一瞬残念そうな顔をしたが、気を取り直して皆に声をかけた。
「おはよう、ミリア。では、全員着替えて迷宮に行くか」
「かしこまりました」
「はい」
「はい、です」
みんなで起き上がり着替えていると、ご主人様はミリアに話しかけた。
「昨日は一度戦っただけだからな。最初は十二階層で様子を見よう。
ミリアは昨日と同じく見学に徹するように」
『ミリア。最初は十二階層で様子を見るので、あなたは声をかけるまでは見学に徹してください』
私が通訳するとミリアはご主人様に返事した。
「はい、です」
ミリアの言葉づかいがおかしかったので、私はミリアに指導した。
『ミリア。ブラヒム語で丁寧に話すときは、なになにですって教えましたけど、返事に「です」はつけません。
ブラヒム語の丁寧な返事は「かしこまりました」と言いますので、覚えておいてください』
『丁寧な返事は「かしこまりました」ですね。やっぱりブラヒム語は難しいです』
『ミリア。お魚もかかってますので頑張って覚えなさいね』
『はい。頑張ります』
ミリアは目を輝かせながら返事をし、グッとこぶしを握った。
着替え終わると、真っ暗な壁からご主人様のワープで迷宮にむかった。
迷宮に入ると、ご主人様は皆を確認してからミリアに声をかけた。
「よし。ミリアもちゃんとついてきたな」
「はい、です」
「迷宮の中では、はいでいい。一刻一秒を争うことがあるかもしれない。迷宮ではことさらに丁寧な言葉遣いをする必要はない」
『ミリア。さっき、ブラヒム語の返事に です はつけないって教えましたよね?』
『ごめんなさい』
『迷宮内での返事は「はい」でいいです。一刻一秒を争うこともあるので、丁寧な言葉遣いをする必要はありません。わかりましたか?』
私が注意とご主人様の言葉を通訳するとミリアはブラヒム語でご主人様に返事した。
「はい」
「ここはハルバーの迷宮十二階層だ。ロクサーヌ、魔物を探してくれ。セリーは何か注意することがあったら意見を言ってくれ」
「かしこまりました」
「わかりました。ご主人様、この階層の魔物...... グラスビーですが、毒針を飛ばすときは一瞬止まります。
出来るだけ目を離さないようにして下さい」
「わかった」
私は周りのにおいを嗅ぐと、先のほうからグラスビーとミノのにおいがした。
ミノのにおいが少し濃いので2匹いるようだ。
「ご主人様。この先にグラスビー1匹とミノが2匹います」
「わかった。案内してくれ」
「かしこまりました」
私の案内で迷宮を進むと、すぐに魔物と遭遇した。
私とセリーで魔物を抑えているうちに、ご主人様は風魔法を4発はなって全滅させた。
それからも私の案内で迷宮を探索し、魔物をかり続けた。
しばらくするとご主人様が話しかけてきた。ずっと魔法を使っていたのでMPが減ってきたのだろう。
「次は剣で戦ってみる。遠距離攻撃があるから、グラスビーが出たら待たずに突っ込むぞ。先導はロクサーヌが頼む」
「はい」
私は魔物を探すと、少し戻ったほうからグラスビーのにおいがした。3~4匹くらいいそうだ。
「ご主人様、少し戻ったほうにグラスビーが3~4匹います。そちらでよろしいですか?」
「ロクサーヌ、よろしく頼む」
「わかりました」
1分ほど歩くと、グラスビーが3匹見えたので駆け出した。
ご主人様は私のすぐ後ろを追従しながらミリアとセリーに指示を出した。
「俺、ミリア、セリーの順だ。セリーはしんがりを頼む」
セリーはすぐにしんがりに回り、後ろを警戒しながら追従しはじめた。
すると、前方のグラスビー1匹の下に魔法陣が浮かんだ。
「来ます」
私は立ち止まり、グラスビーが飛ばした毒針を盾で受けた。
そのご再び走り出し、先行してきたグラスビー2匹の前に陣取った。
私がグラスビー2匹をけん制していると、ご主人様は素早く横に回り込んで愛剣で切りつけた。
ご主人様は先行してきたグラスビーのうち1匹を倒すと、遅れて向かってきたグラスビーを攻撃した。
そのご、ご主人様は毒針を飛ばして遅れていたグラスビーを倒し、最後に私がけん制し続けていたグラスビーを倒した。
「ロクサーヌ、セリー、お疲れ様」
「いえ、ぜんぜん大丈夫です。ご主人様に魔物を早く倒していただけるので、ほとんど疲れません」
私が答えると、なぜかご主人様は肩をすくめた。
「そうか?早いのはロクサーヌとセリーがしっかりけん制してくれるからで、俺一人だったら早くは倒せないぞ」
「そんなことはありません。でも、ご主人様にそのように言っていただけるのはうれしいです」
「わ、私もうれしいです」
私が答えると、セリーもあわててご主人様に気持ちを伝えていた。
「ははは。俺としては、遠距離攻撃をロクサーヌが受けてくれて助かった」
「そうですか?今日はミリアがいますので」
「いや、これからも受けてくれるとありがたい」
「分かりました。避けるより時間がかかってしまいますが」
「かまわない」
「はい」
「次はミノかニートアントのいるところを頼む」
「かしこまりました」
それからさらに30分ほど魔物をかると、ご主人様は何かを考え込んでから話してきた。
「ハルバーは十二階層に入ったのでクーラタルの迷宮も十二階層に行っておきたいが、ミリアが一緒でも大丈夫だろうか」
「大丈夫だと思います」
「杖も強化していますし、まず問題はないでしょう」
私が同意すると、セリーからもお墨付きが出た。
私は全く問題ないと思うけど、迷宮移動の判断は難しいから、セリーが同意してくれるのは安心ね。
「そうか...... ただ、地図は家にあるので、明日の朝クーラタルの十二階層に行こう。
今日はそうだな、ベイルの八階層にでも行ってみるか」
「ご主人様、ちょっと待っていただけますか?」
私はミリアが暗くても見えると言っていたのを思い出し、聞いてみた。
『ミリア。あなたは暗くても見えるのですよね。文字も読めますか?』
『はい。私は夜でも手紙が読めます』
『じゃあ、ご主人様のワープで家に送ってもらえたら、地図をとってこれるわね』
『はい。家の中にあるならすぐに取ってこれると思います』
「えっと。家の中にあるならミリアが取ってこれると言っています」
「じゃあ行ってみるか」
ミリアは私とご主人様が話している雰囲気をさっして返事した。
「はい」
ミリアが返事すると、ご主人様はワープゲートを開いた。
家に戻ると中は暗くてよく見えなかったので、私はご主人様の左側にピッタリ貼り付いた。
ご主人様の向こうにセリーの気配がするので、どうやら彼女は右側に貼り付いているようだ。
「棚の上の方に冊子が置いてある。冊子は解いてあるから、表紙の下、十一番めのパピルスだ。
それと、棚の横に槍が立てかけてあるのは分かるか。それも取ってこい」
私が通訳すると、ミリアはうなずいて走り出した。
真っ暗の中でご主人様に抱きついているといたずら心に火がついてしまい、
少しだけ前にまわってご主人様にキスをした。
「む、ロクサーヌ、どうした?」
「ふふ。なんでもありません」
私が笑いをこらえていると、ご主人様がビクンとからだをこわばらせた。
「せ、セリーもどうした?」
「いえ。なんでもありません」
どうやらセリーも何かしているようだ。
私とセリーがご主人様にちょっかいをかけていると、次の瞬間にはミリアが戻って来た。
『......おねえちゃん。とって来たよ。ふたりとも何してるの?』
『い、いえ。何もしてませんよ』
「ご主人様。と、取ってきたそうです」
「早いな」
ミリアがあまりにも早かったので、ご主人様はちょっとおどろいていた。
私とセリーも少し焦った。
「じゃ、じゃあ、クーラタルの十一階層に移動する。ちゃんと付いてくるように」
『ミリア、迷宮にワープするからついて来て』
「はい」
ミリアの返事を聞きつつご主人様にくっ付いてワープゲートをくぐると、迷宮に出た。
私はミリアから地図を受け取り、現在位置を確認した。
「間違いないですね。現在地は?」
「入り口の小部屋だ」
「分かりました。ボス部屋はこっちです」
「あ、ロクサーヌ。案内はちょっと待ってくれ。
ミリア、その槍はミリアが使え。チャンスがあれば攻撃してもいい。
最初だから安全を第一に考えて、無理はするな。前に出てはだめだ」
ミリアは槍をご主人様にわたそうとしていたので、ご主人様の考えをミリアに説明した。
『ミリア、あなたは今から槍で戦ってください。
あなたは魔物がりの経験が足りないので、私とセリーの後ろに位置どって、チャンスと思ったら攻撃すること。決して前に出てはダメですよ。
ご主人様は、私たちがケガすることを嫌がりますので、無理したらダメですからね』
『はい』
『では、ダガーと盾はご主人様に返して下さい』
『おねえちゃん、ダガーはもってちゃダメですか?』
『いいけど邪魔じゃない?』
『これなら大丈夫』
『ミリアがいいなら持っていても問題ないです。盾だけご主人様に返しておいてね』
『わかりました』
ミリアはダガーを腰に下げて盾はご主人様に返した。
ご主人様は盾をアイテムボックスにしまい、私にむかってうなずいた。
「では、ボス部屋はこちらです。少し先にグリーンキャタピラーがいるようですので、近づいたらまたお知らせします」
「わかった。では進もう」
途中で4回魔物をかりながら、順調に進んで待機部屋についた。
待機部屋につくとセリーから改めて注意することを教えてもらった。
それからフォーメーションをどうするか打ち合わせ、方針が決定したのでミリアに説明した。
『ミリア、ここのボスはホワイトキャタピラー。さきほど戦ったグリーンキャタピラーの大きい版です。
ホワイトキャタピラーは部屋に入ると最初に糸の広範囲攻撃を仕掛けてきます。ですが、壁までは届かないので、最初の攻撃が済むまでつっこまないこと。
フォーメーションは、正面は私、セリーが右側、ご主人様が後方につきます。
あなたは左側について、攻撃してください。
ホワイトキャタピラーは前にジャンプすることがありますが、向きを変えたりうしろに下がる動きは早くないので、常に左側になるよう魔物の動きに合わせて立ち位置を変えること』
『わかりました』
『あと、攻撃されるとごくまれに毒をもらうことがあります。
攻撃された場合、ちょっとでもからだに違和感があると思ったらすぐにご主人様から毒消し丸をもらって飲んでください。我慢したり躊躇したりしないこと』
『はい』
「ご主人様。ミリアへの説明は終わりました。もう大丈夫です」
「わかった。では行くぞ」
それからボス部屋に突入してホワイトキャタピラーと対面。最初の攻撃のあとに4人で取り囲んで攻撃すると、2分ほどで煙になった。
戦闘が終わるとセリーから話しかけられた。
「ロクサーヌさん。ミリアには、普通はもっと大変ってことを教えておいたほうがいいと思います。勘違いして調子に乗らないように」
「セリー、どういうこと?」
「クーラタルの探索者ギルドで確認したとき、ホワイトキャタピラー討伐時間の目安は30分から40分って書いてあったので...... それが2分ですからね。
私たちはご主人様が圧倒的に強いからってことがわかってるので大丈夫ですけど、経験の少ないミリアはボスは大したことはないって勘違いしないか心配で......」
「......そうですね。セリーの言う通りだと思います。
ミリアに勘違いしないよう釘を刺しておきますね」
「よろしくお願いします」
セリーは小さくおじぎした。
『ミリア。普通ここのボス戦は30分から40分かかります』
『そうなんですか?』
私が話しかけると、ミリアはおどろいて返事した。
セリーの言う通り、ミリアはボスは大したことはないって勘違いしてそうね。
『普通ボスは、その階層の魔物の何倍も強いんです。だから倒すのに時間がかかりますし、攻撃を受けたらすごくダメージを負います。このパーティーはご主人様が圧倒的に強いのでボス戦の時間が短く済みますが、12階層から上はボス部屋は2体魔物が出ますので、決してボスは大したことがないなんて思わないで下さいね』
『わかりました。気を引き締めて頑張ります』
ボス部屋奥の扉から12階層に上がると、いつも通りセリーのブリーフィングが始まった。
「クーラタルの迷宮十二階層の魔物はサラセニアです。消化液を飛ばす特殊攻撃をしてきます。体当たりされた場合毒を受けることがあります。消化液には毒はないとされています。耐性のある魔法属性はなく、火魔法が弱点です」
「まあ一度戦ってみるべきだろう」
ご主人様が返事をするとセリーは続けて説明した。
「クーラタルの十二、十三階層は私たちのパーティーにとっては金銭的に有利です。
ハルツ公領内の迷宮に入るのでなければ、狩場にしたいくらいです」
「そうなのか?」
「えっと。サラセニアは附子を残します。滋養丸の原料です。お作りになれますよね」
セリーが説明すると、ご主人様は少し思案して答えた。
「なるほど。ではロクサーヌ、サラセニアのところに案内してくれるか」
「わかりました。こちらのほうからかいだことがない魔物のにおいがしますので、案内します」
私が先導すると、すぐに草の魔物が1匹だけ現れた。
私、セリー、ミリアの3人は魔物にむかって駆け出した。
1匹だったので私が中央、セリーが右側に回り込む。
走りながらミリアには左側に回り込むよう指示した。
魔物の所につく前に、ご主人様はファイヤーボールを二発当てていた。
囲んで攻撃を始めると、サラセニアの根元にオレンジ色の魔法陣が浮かび上がったので、みんなに警告した。
「来ます」
サラセニアが頭を下げて私にむかって消化液を飛ばして来たが、右に交わしてよけた。
その時に少しだけ盾にかかったが、盾を溶かすことなくすぐに乾いた。
その後も3人で囲んで攻撃、ご主人様が3発目、4発目のファイヤーボールを当てると、サラセニアが火にまみれて崩れ落ちた。
戦闘が終わるとご主人様が話しかけてきた。
「消化液は大丈夫だったか?」
「少し盾にかかりましたが、ほとんど避けたので大丈夫です」
「盾は大丈夫か?」
「はい。溶けたりしてませんし、消化液はすぐ乾くみたいです」
「そうか」
「消化液よりも通常攻撃のほうが危ないですね。かなりの大振りですし、草で柔らかいので軌道が安定しません。盾や剣で受けるにも、巧く受けないとしなってくるかもしれません」
「すまん。正面を張るロクサーヌには負担をかけるな」
「いえ、ご主人様が早く魔物を倒してくださるので大丈夫です」
その後、セリーがドロップアイテムの附子を持ってくると、ご主人様は滋養丸を作成した。
「よし。ちゃんと滋養丸もできるな」
ご主人様がつぶやくと、ミリアが興奮して私に話しかけてきた。
『おねえちゃん。ご主人様ってクスリも作れるんだ!』
『おどろいた?』
『はい。私のいた村にはクスリを作れるひとはいなかったので』
『ふふ、ご主人様ですからね。
ミリア、ご主人様がすごいと思ったら、ちゃんと言葉で伝えたほうがいいですよ。よろこんでいただけますからね』
『はい。頑張って早くブラヒム語を覚えます』
ミリアは私と話し終わると、ご主人様のほうをむいてブラヒム語で話しかけた。
「ご主人様。すごいです」
「たいしたことはない。だが、ミリア。ありがとう」
ご主人様はミリアに答えながらアタマとネコ耳をなでていた。
それからしばらくは私の案内でサラセニアを狩りまくり、ご主人様は滋養丸を大量に作成していた。
その後、ミリアについて実験するためベイルの迷宮八階層に移動した。
ベイルの迷宮に移動すると、ご主人様は海女のスキルについて質問しだした。
「セリー、対水生強化というスキル技があるわけじゃないよな」
「それは聞いたことがありません」
「ロクサーヌ、ミリアに聞いてみてくれるか」
「はい」
『ミリア。海女というジョブは水の魔物に強い攻撃が出来るらしいけど、何かスキルがあるの?例えば対水生強化とか』
『海女ギルドの人からは、スキルがあるってことは聞いてないし、対水生強化なんて知らないです』
「ミリアも知らないそうです」
ご主人様は少し考えた後、再度くちを開いた。
「ロクサーヌ、ミリアにいろいろなパターンで攻撃させたいので、なるべくコラーゲンコーラルだけの所を探してくれ」
「わかりました」
「ところで...... ミリアは何階層まで入ったことがある?」
『ミリア、迷宮は何階層まで入ったことがありますか?』
『一階層だけです』
「一階層だけだそうです」
「それでは八階層は大変かもしれないが、水生の魔物だ。海女ならばなんとかなるだろう」
『ミリア、今から実験です。ここからあなたに頑張って戦ってもらいます。
八階層は大変かもしれませんが、水生の魔物ですので、海女のあなたなら大丈夫なはずです。どう動けばいいか都度指示しますので、頑張ってください』
「はい」
ご主人様はコラーゲンコーラルに魔法を二発当て、生き残ったコラーゲンコーラルを
ミリアに攻撃するよう指示した。
そして、鋼鉄の槍、シミター、素手と、武器を変更させてミリアが戦う様子を見ていた。
ご主人様はミリアが素手で戦ってるときに
「ミリア、そこだ!ネコパーンチ!」ってなんだかテンションが上がっていたのは気になったけど、それを除けば私やセリーが最初にやった実験と同じだった。
ミリアは何度か攻撃を受けたが、その都度ご主人様に回復魔法をかけてもらっていた。
一通り武器を変えさせながらミリアを戦わせた後、ご主人様がミリアに話しかけた。
「魔物の攻撃はどうだ?」
『ミリア、コラーゲンコーラルの攻撃はどうでした?』
『ちょっと痛かったけど、大丈夫でした』
「大丈夫だそうです」
「水生じゃない魔物でもいけそうか」
『ミリア、水生じゃない魔物でも戦えそう?』
「はい」
その後、クーラタル八階層に移動して、ご主人様はミリアにニードルウッドとも一度戦わせた。
「どうだ?」
『ミリア、ニードルウッドはどうでしたか?』
『コラーゲンコーラルよりは大変だけど...... 戦えます』
「コラーゲンコーラルよりは大変だけど戦えると言っています」
「よし、大丈夫そうだな。
この後は、九、十、十一階層で一発ずつ魔物の攻撃を受けながら一撃では死なないことを確認しつつ順に上がっていくのと、一気に十二階層へ行って後ろで見学させるのと、どっちがいいだろうか」
私は少し考えてから、ご主人様に回答した。
「一階層ずつ試した方がいいと思います。攻撃を受けることなどたいしたことではありません。魔物に対峙すればその可能性は常にあるのです」
私が答えるとセリーも回答した。
「安全を考慮すれば順に上がっていった方が断然いいでしょう。わざと攻撃を受けるくらいは仕方がありません」
私はご主人様が何を聞いているのか、そして私とセリーの回答について説明すると、ミリアはすぐに回答した。
『お姉ちゃんの言う通りです』
「ミリアもお姉ちゃんの言う通りだと言っています」
「わかった、九階層に移動する」
その後、ミリアの状態を見ながら実験を行い、十一階層まで一階層ずつ上がった。
十一階層のグリーンキャタピラの攻撃にミリアが耐えると、ご主人様は再び私たちに質問してきた。
「十二階層では魔物が強くなる。いけそうか」
『ミリア、十二階層では魔物が一段強くなりますが、大丈夫ですよね?』
「大丈夫です」
「では、ハルバーの十二階層に移動する。ハルバーの十二階層が今の俺たちの狩場だ。十二階層ではわざと攻撃を受けることはない。無理をする必要もない。徐々に慣れてくれればいい。当面は後ろから槍を突き入れて戦え。しばらくはセリーが前、ミリアが後ろのポジションだ」
私がご主人様が言ったことを通訳すると、ミリアは力強くうなずいた。
それからハルバーの十二階層に移動し、魔物へ案内していると、ある場所からずっと動かない人がいることに気が付いた。
私はそのことが気になったが、前にご主人様から、他のパーティーにはなるべく合わないように先導するよう言われていたので、私はその場所を避けて皆を案内した。
朝の狩を終え、クーラタルの冒険者ギルド経由で街に出た。そして、朝食の買い物をした。
魚屋の前を通ったが、ミリアが一瞥しただけで素通りした。
ご主人様はそんなミリアを見て疑問顔になっていたので、私は小声でご主人様に説明した。
「ご主人様、ミリアがつぶやいていましたが、あの魚はあまり活きがよくないそうです」
「そうか。どおりで......
じゃあ今日は、ミリアにも何か作ってもらうか」
『ミリア、ご主人様はミリアにも何か作ってほしいそうです』
『じゃあ、肉を焼きます』
「肉を焼くと言っています。私も一緒に作るので、大丈夫でしょう」
「わかった。ロクサーヌ、ミリアの面倒をよろしく頼む」
「おまかせください」
「肉とパンだけじゃ寂しいな」
するとセリーが返事した。
「では、私がスープを作ります」
「セリー、そのスープの中に、卵を入れられるか」
「卵ですか? はい、大丈夫です」
「じゃあ、あとで卵白だけ渡すから、スープに入れてくれ」
「はい」
食材を買って家に帰り、みんなで朝食の準備を始めると、ご主人様は何やら作りだした。
卵の黄身にお酢を足し、針金を曲げていくつも重ねたようなものでかき混ぜ始めた。そして、オリーブオイルを少し足してはかき混ぜ、また少し足してはかき混ぜている。
しばらくかき混ぜていると、色が白っぽく変色し、とろりと固くなった。
ただ、ご主人様は必死にかき混ぜていたせいで、疲れて息切れしていた。
「じゃあ、これな」
ご主人様は残った卵白をセリーに渡し、スープに入れさせた。
私はご主人様が作ったものを初めて見たので、質問してみた。
「卵白は分かりますが、それは何ですか?」
「マヨネーズっていう調味料だ。すぐには食べられないのでフタをして少し寝かせる。
ミリア、明後日の夕方は魚にしよう。魚、かける、美味しい、オーケー?」
「お、お、お、お」
ご主人様が言い終わると、私が訳す前にミリアは魚というブラヒム語に反応し、目を丸くしてご主人様を見つめていた。
『ミリア、これはマヨネーズっていう調味料です。明後日の夕方は魚料理にしてくれるそうですよ』
『本当っ!うれしいです』
「がんばって迷宮に入ってくれるみたいだからな。ご褒美だ」
『迷宮で頑張っていたのでご褒美だそうです。このマヨネーズを魚にかけると美味しいってご主人様は言ってますよ』
「おいしい、です」
「ご褒美だ。ごほうび」
「ご褒美、です」
ご主人様はちょっと苦笑いして、ミリアにブラヒム語を教えた。
その後マヨネーズについて、すぐに食べるとおなかを壊すことがあるので、勝手に食べないよう注意されたので、ミリアに伝えておいた。
朝食の後もクーラタルの十二階層とハルバーの十二階層で狩を続けた。
夕方近くになると、ご主人様から本日の探索終了を告げられ、ミリアのネグリジェを買いに帝都のいつもの服屋に移動した。
「俺は店の人に話があるからミリアのネグリジェは三人でえらんでくれ」
「わかりました」
私が返事をすると、ご主人様は店の奥に入っていった。
ミリアにこの店でネグリジェを買うことを伝え、三人でネグリジェのコーナーに移動した。
『ミリア、私は薄紅色、セリーは白にしています。出来ればあなたは別の色にして欲しいんだけど、どうします?』
『じゃあ、青でもいいですか?』
『そうね。あなたのイメージに合っていていいですね。では、その方向で選びましょう』
「セリー、ミリアは青がいいって言ってるので、その方向で選びましょう」
「わかりました。青って言っても少し明るい色のほうがいいですよね。
この色でどうですか?」
「そうですね。ちょっと待ってください」
『ミリア、こんな色でいい?』
『はい。とても綺麗です。この色がいいです』
『わかったわ、この色で探しましょう』
「この色がいいって」
「わかりました。サイズはM、L?」
「Mですね」
「じゃあ、この色でMサイズのものを探します」
それから30分くらいでネグリジェを選び終わると、女性店員がメジャーでミリアのからだの採寸をはじめた。
「ご主人様、ミリアにどんな服を作るのですか?」
「ベイルの商館で一緒に買った服があるだろう。ミリアだけないからな。あれと同じようなものを作る」
「そうですね。確かにミリアだけありません」
『ミリア、ご主人様はあなたに帝宮の侍女が着るようなメイド服を作ってくれるそうです。
私とセリーは持っていますので、出来上がったら3人で着ましょう』
私が説明すると、ミリアはご主人様にブラヒム語でお礼を言ってお辞儀した。
「ありがとうございます、です」
その後、家に帰って夕食を作り、4人で話しながら食事した。
食事のあと、ミリアは食器の片づけ、私は装備品の手入れ、セリーとご主人様は鍛冶をおこなった。
みんなの作業が終わったら、全員で脱衣所に移動し服を脱いだ。
お風呂場でご主人様にお湯を作っていただき、石鹸でからだを洗って頂いた。
それから私たち三人でご主人様をお洗いし、終わるとみんなで泡を流した。
今日は湯船にお湯を張っていないので、泡を流し終わった後は手拭いでからだを拭き、ネグリジェに着替えて寝室に移動した。
そして、今日もご主人様に可愛がっていただく時間になった。
今日は寝室に入ると、ご主人様はベットにねころんだ。
最初はミリアがご主人様に覆いかぶさり、キスをした。
「ミリア、そのネグリジェは髪の毛の色と合っていて、いい色だね。とても似合ってるよ」
「ご主人様、ありがとうございます」
次にセリーがご主人様に覆いかぶさり、キスをした。
「セリー、今日も可愛いよ」
「ご主人様、ありがとうございます。でも、わたしなんか......」
セリーが答えると、ご主人様はセリーの耳元に口を寄せて何かささやいた。
するとセリーは顔を真っ赤にしてうつむいていた。
そして私の番。
私もご主人様に覆いかぶさり、キスをした。
「ロクサーヌは今日も最高だ」
「ご主人様、ありがとうございます」
私はご主人様の耳に口を寄せ、小さくささやいた。
「私にはなにかささやいてはくれないのですか?」
するとご主人様は私の耳に口を潜り込ませ、小さくささやいた。
「今日は抑えがきかないかもしれない。覚悟しておいてね」
私は一瞬で体が熱くなるのを感じた。
そして次の瞬間、ご主人様は私にキスをする。
私のくちのなかに舌がはいって来て、強引に私の舌を絡め取る。
同時にネグリジェを脱がされてベットに寝転がされた。
「ん......」
ご主人様は私に覆いかぶさり、再度キスをしてきた。今度は私の舌をご主人様の口の中に優しく誘う。
さっきと違う、とても優しいキス。心の中がキュンキュンして胸が苦しくなる。
そして、胸を揉みしだかれて、両方の乳首を親指で嬲られる。
「んん...... んあっ!」
声が漏れると同時に再びご主人様のくちびるが私から離れる。
そして、ご主人様は乳首に吸い付き舌で嬲り始める。
「あっ!...... すごい......」
ご主人様は私の乳首を蹂躙しながら、こんどは片手を下腹部に伸ばし、指で秘部を愛撫しはじめる。
私はどんどん気持ちよくなり、秘部の奥から愛液があふれだす。
「んん...... ご主人...... 様...... 気持ち...... ん...... いい...... です」
そしてご主人様のゆびが私の敏感な部分を転がし始める。
すると、気持ちよすぎてからだが小刻みに痙攣してしまう。
「あっ...... いいっ...... んん......」
ほどなくして、私の秘部はすっかり濡れそぼり、ご主人様が欲しくてたまらなくなる。
「ご主人様...... 私...... もう......」
私が必死に訴えると、ご主人様はすぐにこたえてくれた。
ご主人様は私の股を開かせてからだをねじ込み、秘部を押し分けてアレを添える。
そして......
「ロクサーヌ、いくよ」
次の瞬間、ご主人様はアレが私の子宮に当たるまで、一気に突き入れた。
「ああああああああっ!」
同時にものすごい快感と、幸福感が一気に押し寄せ、からだがビクンと跳ねる気がした。
そして、嬌声をあげてしまう。
ご主人様が私を突くたびに快感の波にのまれる気がする。そして。どんどん上り詰めていく。
「ご主人様...... イク...... いっちゃう......」
「ロクサーヌ、俺もイクぞ」
「ご主人様...... 私...... 私...... イ...、イクッ! んああああああ!」
私が絶頂をむかえると同時にお腹の中にご主人様の精液がそそがれる感覚が伝わってくる。そして、あたまの中にもやがかかったような気がして、幸福感が一気に押し寄せた。
「ご主人様...... ありがとう...... ございました」
「気持ちよかったよロクサーヌ。今夜はまだ寝かさないから、少しだけ休んでてね」
ご主人様は私の秘部からアレを引き抜くと、耳元で小さくささやいてからセリーを可愛がり始めた。
私は余韻にひたりながら少し休んでいると、ご主人様はセリーとの行為が終わり、ミリアを可愛がりはじめた。
私は少し心配だったので見ていたけど、ミリアは昨日のように痛がってはおらず、少し感じているようだった。
私は少しほっとして目を閉じると、すぐにご主人様から声がかかった。
「ロクサーヌ。2回目いくよ」
「はい。ご主人様。いっぱい可愛がってください」
結局その夜は、セリーとミリアは3回、私は5回も可愛がって頂いた。
私の4回目が終わったとき、セリーとミリアはイキ疲れたせいか、すでに眠っていた。
ミリアは1回目は少し感じているていどのようだったけど、2回目はだいぶ喘いでいた。そして3回目はイッたみたいね。少し安心したわ。
セリーはからだが小さいから大変そうだけど、相変わらずアソコの具合は良さそうね。
入れてるときのご主人様のかおを見ていると、ちょっと嫉妬しちゃうわね。
私はそんなことを考えつつ、息を整えてからご主人様に話しかけた。
「ご主人様、今日はいっぱい可愛がって頂きありがとうございました」
「ああ、ロクサーヌ。すごく気持ち良かったよ。今日は4回もしたし、疲れただろう。
俺のほうこそありがとな」
「いえ、私はいっぱい可愛がっていただけて、うれしかったです。
二人だけだったときに何度も可愛がって頂いたときのことを思い出しました」
「はは、そうだな。まだそんなにたってないのだけど、ふたりの時は、すごく盛り上がったこともあったな」
「そうですよ。メンバーが増えて、最近はちょっとだけ寂しかったので......
ですから、今日はうれしかったです」
「そうか。だが、ロクサーヌだけ何度もって訳にはいかないから...... すまんな」
「いえ、わがままを言ってしまい、申し訳ありません」
「まあ、みんなダウンしちゃったから、今日はしかたがないよな」
「ふふ。そうですね」
ご主人様が茶目っ気たっぷりに言ったので、私はくすくすと笑いながら可愛く返事した。
「じゃ、じゃあロクサーヌ。もう1回、する?」
「私はうれしいですけど、ご主人様はお疲れではないのですか?」
「大丈夫だ。色魔があるからな」
「ご主人様、大好きです。 チュッ......んむ......」
私はうれしさで我慢が出来なくなり、ご主人様の上に跨ってくちびるに吸い付いてしまった。
そしてそのままご主人様をむかい入れ、激しく腰を振ってしまった。
ご主人様はしばらくしたから私の胸を揉みしだいたあと、からだを起こして私を抱え込んだ。
そしてくちびるに吸い付き、同時に胸も揉まれる。
一度に3か所も責められた私は快感の波にのまれ、すぐにイッてしまった。
イッてはしまったが、私はご主人様に抱えられたままで3か所を責められ続けている。
私は絶頂の余韻にひたることも出来ず、またすぐにイッてしまう。
そして、何度もイかせてもらい、あまりにもイキすぎてしまい、いつのまにか気を失ってしまった。
気が付くと、私はご主人様の上に跨ったまま、胸の上に倒れていた。
しかも、私の秘部はご主人様のアレをしっかりくわえこんでいた。
ご主人様は眠っていたので、私はそっと腰を浮かしてアレを秘部から引き抜いた。
引き抜くと、秘部の割れ目からご主人様の精子があふれだしたので、私はベットの脇に置いていた手拭いで拭きとり、ご主人様を起こさないよう上からおりて寝間着を着た。
そしてご主人様のとなりにすがりつき、しあわせを感じながら眠りについた。
翌日も朝から迷宮探索。
ご主人様と朝のキスを交わしたあと、着替えてハルバーの十二階層へ飛んだ。
今日はミリアを積極的に攻撃に参加させて、パーティーの一員として機能するようにすることが目標だ。
魔物を探してみんなを案内していると、ある場所からずっと動かない人がいることに気が付いた。
たしか昨日もそこにいたはずなので気になったが、他のパーティーに合わないようにするため今日もその場所を避けて皆を案内した。
そうして魔物をたくさん狩り、朝の探索を終えて迷宮を出た。
その後、ご主人様は魚屋でハマグリを購入した。
昨日食事の際に、迷宮でとれる蛤がおいしいって話をしたことを覚えていてくれたようだ。
ご主人様は最初2個買おうとしていたようだったが、1個が小さいので4個に変更していた。
ご主人様は優しいから、4個買ったってことは、ひとり1個ずつってことね。
そう思った次の瞬間、魚屋のおじさんの言葉に私は凍り付いた。
「いつもありがとうございます。蛤四個で、八百九十六ナールにサービスさせていただきます」
た、高すぎる。ハマグリってそんなに高かったんた。
私は動揺を抑えつつ、ご主人様に確認した。
「よろしいのですか」
「ああ、問題ない。今朝はこれで俺がスープを作るから、他にもう一品か二品くらい頼む」
「はい。かしこまりました。ご主人様、ありがとうございます」
私はご主人様の優しさがうれしすぎて、思わず右腕に抱きついてしまった。
すると、後ろからセリーの声が聞こえた。
「ありがとうございます」
セリーはご主人様の左の袖をちょこんとつまみ、左肩の少し下にうつむき加減で額を付けていた。
セリーの家族は昔は羽振りがよかったと言っていたし、なにか思うところがあるようね。
ご主人様は、私とセリーの反応に少し戸惑った感じだったが、すぐに家に帰るよう私たちを促した。
そんななか、ミリアだけ何が起きたかわからないようにボケっとしていたので、私はハマグリの値打ちについて説明した。
『ミリア、ご主人様が今買ったハマグリは、4個で八百九十六ナールです。ご主人様は優しいので私たちに食べさせてくれますけど、当たり前のことではありません。感謝しないといけませんよ』
私が説明するとミリアは一瞬考え、次の瞬間には目を見開いてご主人様を見つめながら発言した。
『えっ、そんな小さな貝が4個で八百九十六ナールもするの?それだったらいっぱい魚を買ったほうがよかったんじゃないの?』
『えっ、そこですか? そうじゃなくて、4個で八百九十六ナールもする物を食べさせてもらえることを驚くべきでは?』
『た、確かにそうだけど......』
私はミリアの自分本位な考え方に一瞬おどろいたけど、自分本位は猫人族の特性だからしかたがないと思い、これ以上掘り下げるのをあきらめた。
『はぁ...... ミリア、帰ったらちゃんとご主人様に感謝を伝えなくちゃダメですよ』
『はい』
はぁー、やっぱりミリアには根気よく教育していかないとダメね。
その後、パンと野菜を買って家に帰り、皆で料理を作り始めた。
ご主人様は毎回私たちの知らない料理を作ってくれるので、どんな料理が出来るのか今から楽しみだ。
私は葉野菜でお浸しを作り、セリーはジャガイモとウサギの肉の炒め物を作った。
私は料理しながらご主人様を見ていると、ミリアに野菜とハムを細かく切って炒めさせていた。そして、気付くとご主人様の横に、白い調味料のようなものが置いてあった。
あれって前にホワイトシチューを作って頂いたときの......
ホワイトルーだったかな?
確かとてもおいしかった記憶があるし、すごく期待できそう。
ご主人様はハマグリを切って煮込み、そこにミリアに作らせた野菜とハムの炒め物とホワイトルーを入れて煮込んでいた。
クラムチャウダーという料理だそうだ。
『おねえちゃん。私、蛤を食べるのは初めて』
『よかったわね』
「ご主人様。ミリアは蛤を食べるのは初めてだそうです」
「ふっ。そうか。楽しみにしておけ」
ご主人様はサムズアップしながら答えた。
ご主人様は自信満々のようね。すごく期待しちゃうわ。
料理がすべて出来上がり食卓に並べると、ご主人様がクラムチャウダーを皿に盛り付けて配りだした。
順番は、ご主人様、私、セリー、そして最後にミリアに皿が渡され、食事が始まった。
クラムチャウダーからいい香りがするので、私は匙ですくって口に入れると、以前食べたホワイトシチューとは違う、濃厚なハマグリの風味がする深い味わいのスープだった。
「ご主人様、これは美味しいです」
「今まで食べた蛤の中で一番かもしれません」
「おいしい、です」
私に続いてセリーとミリアもあまりのおいしさに感想を漏らした。
食事が終わるとご主人様は少し出かけてくると言って家を出た。
私たちは3人で食器の片づけを行ってると、すぐにご主人様が帰ってきた。
「セリー、ちょっといいか?」
「はい。なんですか?」
「硬革の帽子を買ってきたので、さっき拾ったアリのモンスターカードと融合してくれ」
「わかりました。一応聞きますけど、大丈夫なんですよね?」
「ああ、大丈夫だ」
セリーは食卓の席に着くと、ご主人様から帽子とモンスターカードを受け取り目を閉じた。
ひと呼吸おいて、セリーがスキルの詠唱を始めた。
「今ぞ来ませる御心の、ことほぐ蔭の天地の、モンスターカード融合」
セリーの手元が強烈に光り、少しして光が収まると帽子だけが残っていた。
「おお。できたな」
ご主人様は防具鑑定で成功を確認したようね。
「やりましたね、セリー」
「すごい、です」
「さすがはセリーだ」
私、ミリア、ご主人様の順でセリーを褒めると、少し照れくさそうな複雑な表情をしていた。
『おねえちゃん。このパーティーの人たちはみんなすごい』
『そうですね。あなたも頑張ってね』
『はい。頑張ります』
「ご主人様。このパーティーの人たちはみんなすごいと言っています。
ミリアもがんばるそうです」
「わかった。よろしく頼むとミリアに伝えといてくれ」
「かしこまりました。ご主人様」
『ミリア。このパーティーで一緒に頑張れば、あなたも必ず成長できます。
しっかり頑張ってくださいね』
『本当ですか?』
『ええ。間違いありません。
私もセリーも、ご主人様に買われる前は、正確には奴隷になる前は、2年近く迷宮探索の経験がありましたが、力が足りず低階層にしかはいれませんでした。
それが、私はたった2か月、セリーは1か月くらいで12階層で戦えるまでの力を付けました。
それに、セリーは鍛冶師にジョブチェンジしてもらいました。
ご主人様は本当に素晴らしい人なので、自分だけではなくパーティーのみんなが成長して、みんなで強くなることを本気で考えています。
だから、このパーティーで一緒に頑張れば、あなたも必ず成長できます。
もう一度言いますが、しっかり頑張ってくださいね』
『わかりました。頑張ります』
その後、装備を整えて、再度ハルバーの十二階層に移動した。
そのまま夕方まで私が先導してグラスビーを大量に狩り、その日の探索は終了した。
今日の夕食は私とミリアが担当。
セリーはご主人様と鍛冶仕事をした後、装備品の手入れをすることになった。
ご主人様はセリーと鍛冶仕事をした後、セリーが作った武器や防具で不要な物をクーラタルの武器屋と防具屋に売りに行くことになっている。
ご主人様のアイテムボックスに、ウサギの肉がたくさん残っているため1品はシェーマ焼き、あとは南瓜と芋の煮つけ、それに玉ねぎスープとパンという献立にした。
先ずは、ご主人様からウサギの肉をもらい、包丁の背がわで丁寧に叩いた。
ご主人様いわく、肉は包丁の背で叩いて繊維質を壊しておくと、柔らかく仕上がるとのこと。
それからひとくち大にカットして、塩とコショウを振って下味をつける。
そしてシェーマにくるんで竹串に刺す。
中華鍋を火にかけてからオリーブオイルをひいてウサギの肉の串を次々に放り込んだ。
焼きあがったらシェーマ焼きの完成。
次は南瓜と芋を洗ってひとくち大にカットする。
手鍋に水と魚醤を1:1で張り、料理酒と砂糖を少々入れて切った具材を投入。
具材に竹串が通るまで煮込んだら煮つけの完成。
最後に別の手鍋に水を張って火にかけ、薄くスライスした玉ねぎをいれて煮込む。
それに塩と香辛料で味を調えれば玉ねぎスープの完成。
出来上がったものを食卓に並べ、夕食の準備が完了した。
その後、みんなで夕食を食べながら、ご主人様に明日の予定を確認した。
「ミリアがだいぶ成長したので、明日は頃合いを見て先頭にしたい」
「となると、槍では戦いにくいので、ダガーと木の盾にしたほうがいいですね」
「そうだな。ミリアに説明しといてくれ」
「かしこまりました」
『ミリア、明日は頃合いを見て先頭に出てもらいます。
その時は私が右側、あなたが左側の担当、真ん中の中央にセリーを配置して遊撃。
ご主人様は最後方から魔法を放つ...... 基本的には今言った態勢になります』
『はい』
『魔物の種類や数によっては態勢を変えることもありますので、戦う前にみんなの話を聞いて指示に従うこと。いいですね』
『はい』
食事が終わり、片づけが終わったので、全員でお風呂場に移動してからだを洗った。
今日も湯船にお湯を張ってはいないので、石鹸でからだを洗って流すだけだが、
ただのお湯でからだを拭くよりは何倍もスッキリする。
今日は全員あたまも洗ったので、みんな爽快な気分だ。
その後はネグリジェを着て寝室に移動し、ご主人様に可愛がって頂いた。
その夜は、セリーとミリアは3回ずつ。そして私は4回。
昨日よりは1回少ないけど、とても満足している。
ご主人様はほんとに凄い。
ただ回数が多いだけでなく、1回1回、私たちをとても満足させてくれる。
以前ご主人様が眠った後にセリーと話したことがあるんだけど、ご主人様はただ可愛がってくれるだけではなく、私たちを愛して、そして慈しんでくれている。
だからご主人様との行為は、気持ちいいだけでなく、しあわせを感じることができる。
私はイッた次の瞬間にすごい幸福感に包まれる気がするし、セリーは行為が終わったあと、余韻にひたるときにしあわせな気分になるらしい。
そして最近は......
色魔というジョブのせいか、3人を相手しているのに毎晩何回も可愛がってくれる。
私はメンバーが増えると、必然的にご主人様に可愛がっていただける回数が減ってしまうと思っていたけれど、そんなことはなかった。
なので、ここ最近はずっと心が満たされている気がする。
そんなことを考えながら、今日もご主人様のとなりで眠りについた。
翌日、昨日と同じようにご主人様と朝のキスを交わしたあと、着替えてハルバーの十二階層へ飛んだ。
いよいよ今日からはミリアを前衛に配置し、本格的に探索を開始することになる。
十二階層入り口の小部屋を出て魔物を探すと、すぐ右のほうからグラスビーの強いにおいがした。4匹で間違いないと思う。
「ご主人様、右方向にグラスビーが4匹います」
「わかった。とりあえず今日の1戦目だから昨日と同じでミリアが後ろ寄りのフォーメーションで戦おう。その後、みんなに異常がなければミリアの武器をダガーに変えて、最前列に配置する」
「わかりました」
その後、すぐにグラスビー4匹と会敵。
ミリアが攻撃を受けていたが、大したダメージは負わなかった。
ご主人様は全員の状態を確認したのち、ミリアにむかってフォーメーションの変更を指示した。
「ではそろそろいいだろう。木の盾を渡すから、ロクサーヌと並んで一番前で戦え。
最初はあまり無理をすることはない。ロクサーヌも頼むな」
「かしこまりました」
私はご主人様に返事をしてからミリアにフォーメーション変更を伝えた。
ご主人様は、私に対してうなずいているミリアに木の盾を渡し、銅の槍を受け取った。
ミリアが腰からダガーを抜いて私の左側に立つ。
「ご主人様、グラスビー三匹とミノが一匹います」
「わかった。そちらに向かってくれ」
そちらにむかうとすぐに魔物と会敵した。
「ミリア、魔物が来るまでは一歩下がれ」
ご主人様は指示するなりブリーズストームをはなった。
すると、グラスビー1匹の動きが止まった。あれは、先日セリーから聞いた針を飛ばす前兆だったはず。
「来ます」
私はみんなに注意喚起すると、私にむかって針が射出された。
遠距離だったので私は難なく針を盾ではじくと、ご主人様が二発めのブリーズストームをはなつ。
さらにご主人様が三発めのブリーズストームをはなったので、私とセリー、ミリアの3人はそろって前に出た。
私とセリーがグラスビーをブロック。ミリアはミノを止めた。
3人でおのおの魔物を抑えていると、ご主人様が四発めのブリーズストームをはなった。
すると、グラスビーが落下し、ミノが倒れ、すべての魔物が煙になった。
しばらくハルバーの十二階層で狩りを行い、朝食でいちど家に帰ったが、朝食を食べたのちもハルバーの十二階層に戻って昼過ぎまで魔物を狩り続けた。
その後、迷宮内の小部屋で少し休憩すると、ご主人様は今日の夕食にオリーブオイルが必要と言い出したのでベイルの迷宮六階層に移動した。
「ロクサーヌ、ナイーブオリーブを探してくれ」
「わかりました」
私は左右をむきながらその場でスン、スンとにおいをかいだ。
「......ご主人様、左のほうからナイーブオリーブのにおいがします。たぶん3匹です」
「わかった。では案内してくれ」
すぐにナイーブオリーブ3匹を発見し、ご主人様の魔法2発で殲滅。オリーブオイルを拾った。
「ロクサーヌ、多少他の魔物が混ざってもよいがナイーブオリーブを優先的に探してくれ」
「わかりました。次の角を右に曲がったほうにナイーブオリーブが2匹います」
「わかった。では案内してくれ」
その後も私の案内でナイーブオリーブを狩りまくった。
炒め物などの料理に使うにしてはかなり多めのオリーブオイルを拾っているので、私は気になって聞いてみた。
「ご主人様、そんなにオリーブオイルが必要なんですか」
「まあちょっとな」
ご主人様はなんだか自信ありげな顔をしているので、今日の夕食が楽しみになった。
いつもより少し早い時間に探索を終え、クーラタルの冒険者ギルドに出た。
そこから魚屋にむかうと、ミリアが張り切って先頭を歩きだした。
毎日同じ道を歩いているのですっかり道を覚えたようだ。
「魚。魚。魚、です」
ミリアな上機嫌で、鼻歌交じりにブラヒム語で魚を連呼している。
そして、先陣を切って魚屋に突っ込んで行った。
「なんかいい魚があったか?」
『このロクスラーは新鮮!絶対美味しいはず』
ミリアはご主人様に訴えかけた。
「ロクスラー、です」
『ミリア、ご主人様はロクスラーがわかりませんので、指さしてください』
私が訳すと、ミリアがぴたりと指を差した。
すると、魚屋のおじさんが感心した顔になった。
「これはお目が高い。マスモドキは先ほど入荷したばかりです。とれたて新鮮ですし、よく肉もついてます。煮ても焼いてもいけます」
ご主人様は軽くうなずくとおじさんに注文した。
「では、マスモドキを四尾」
「まいど」
「いつもありがとうございます。四匹で、特別サービスで二十八ナールです」
ご主人様がお金を払い、店のおじさんが魚をパピルスにくるむと、商品はミリアが受け取った。
「俺とミリアで魚料理を作るから、ロクサーヌとセリーもなんか頼む」
「分かりました。セリー、スープはどうします?」
「そうですね。あっさりした味のものがいいような気がします。今日は私がスープを作ります」
「では下ごしらえは手伝いますので、煮込みと味付けはお願いしますね」
「わかりました」
それからパンや卵、野菜などの食材も買うと、ご主人様は家を世話してくれた金物屋へ行くと言い出した。今日の料理に使う鍋を買いたいらしい。
ますます何ができるのか楽しみになる。
お店の中に入ると、奥のほうから家を紹介してくれたおばさんが出てきた。
「あら、ミチオさん、ロクちゃん。いらっしゃい」
「おせわになってます」
私が返事をすると、おばさんは私たちをジーっと見てきた。
あ、これはいつものやつね。
「ふーん。みんな可愛いわね。誰かひとりうちの息子の嫁にならない?」
やっぱりいつものくだりね。私はクスッと笑って返事した。
「すみません。みんなもう売れちゃってますので」
「あははは、冗談よ。みんな、よくしてもらってる?ミチオさんが嫌になったらいつでもうちにおいでね」
「大丈夫です。最高のご主人様ですから」
ふふ。ご主人様は冗談って分かってはいるけど、少し苦笑気味ね。
「あいかわらずね。ところでロクちゃん。今日は何を買いに来たの?」
「今日は鍋を買いに来ました」
「そう、なら、浅いものはそこの棚、深い鍋はその棚の裏側にもあるので料理に合うものを探してみてね」
「やっぱり鍋って料理に合わせてかえるものなんですか?」
「料理人でなければ普通はそこまでしないけど、ミチオさんってこだわるタイプでしょ」
「そうですね。料理には妥協しないタイプです」
「料理に “も” でしょ」
「えっ? “も” ですか?」
「“も” よ。 女の子に“も”妥協はしてないじゃない。みんなかわいいし」
「あはは。そうですね。ご主人様はかわいい女の子が好みなことは否定しません」
「でしょ。 まあ、ミチオさんは見た目だけじゃなくて、性格までみてるわね。ロクちゃんを見てればわかるわ」
「そうですか? ありがとうございます」
私がおばさんの相手をしていると、ご主人様、ミリア、セリーの3人は鍋を選び始めた。
私は...... しばらく抜けられそうにないわね。
「ふふ。ところでロクちゃん。あの小さな子がこの前言っていたドワーフの娘よね。
猫人族の娘は新しい子?」
「はい。3日前に仲間になりました」
「そう、やっぱりミチオさんってすごいわね。もしかしてどこかのお金持ちの息子だったり」
「違いますよ。たまたま臨時収入があったので、メンバーが増やせたってとこです」
「そうなの。まあ、ただの探索者がぽんぽん奴隷を買うことなんて出来ないから、よっぽどいい臨時収入があったようね」
「さあ、私はお金のことはわからないので」
「まあいいわ。ところであの二人の名前は?」
「えっと。ドワーフの娘はセリー、猫人族の娘はミリアです」
私が名前を教えると、おばさんは鍋を選んでいるご主人様たちをジッとみた。
「本当にみんな可愛いわね。それにみんなミチオさんを慕っているようね。
ミチオさんとあなたたちの関係性がわかるわ」
「見ただけでわかるのですか?」
「ながねん世話役をやってるからね。
ミチオさんはあなたたちを奴隷として扱ってないわね。恋人として扱われてるでしょ」
「こ、恋人だなんて、おそれ多いです」
私は一瞬で火が出るくらい顔が熱くなり、思わず目をふせてしまった。
おばちゃんはニヤニヤしながら私の顔を覗き込み、言葉を続けた。
「そう? ミチオさんはともかくロクちゃんはそうなりたいんじゃないの?」
「そ、それは......」
「ロクちゃんは一人の女の子として大事にされてるんじゃない?」
「はい。とっても大事にされています」
「なら、悩むことないじゃない。
ロクちゃん。あのタイプは、意外と自分に自信を持ってないの。だから、拒否されるのが怖くて告白してはくれないわよ。
あなたから行かないとダメだからね」
「ですが、私は奴隷ですし。ご主人様に告白なんて......」
「あのねロクちゃん、ミチオさんはそんなことを気にする人じゃないでしょ。
いい、ちゃんと言葉にして伝えなきゃダメよ。ウチの亭主もそうだけど、イイ男は鈍感だからね。
なんなら私からミチオさんに言ってあげましょうか?」
「だ、大丈夫です。あの...... ちゃんと自分で言いますから」
「そう? ならいいけど」
「......」
「ロクちゃん。ミチオさんを逃しちゃダメよ」
「はい。絶対に逃しません」
「ふふ。いい返事ね」
私が力強く答えると、なぜかおばさんの目が光った。
私とおばさんが話していると、ご主人様がこちらに話しかけたそうにしている姿が目に入った。
私が視線をご主人様に向けると、おばさんも気づいたようだ。
「ロクちゃん、なんだかミチオさんが困っているようだから、そろそろ行ってあげなさい。
それから買うものが決まったら、奥のカウンターまで持ってきてね」
「はい」
私はおばさんにかるくおじぎをして、ご主人様の所に戻った。
「ご主人様、只今もどりました」
「だいぶつかまってたけど大丈夫か?」
「大丈夫ですよ。いがいと優しいかたですから」
「そうか、俺はちょっと苦手なんで、ロクサーヌが相手してくれると助かる」
「はい。おまかせください。ところで何か困っていたのでは?」
「ああ、ちょっとミリアに聞きたいことがあるので通訳してくれ」
「かしこまりました」
「ミリアはなんか使いたい調理器具とかあるか」
『ミリア、あなたが料理するときに使いたい調理器具とかってあります?』
『使い慣れたものがいいんだけど...... いいの?』
『大丈夫。ご主人様ですから』
『じゃあ、この平鍋がいいです。煮つけにも油炒めにも使えますので、
この鍋があれば、おいしい魚料理が作れます』
『わかったわ』
「ご主人様、この平鍋がいいそうです」
「これか」
「この鍋があれば、おいしい魚料理が作れるそうです」
「魚限定か?まあ、これなら他の料理にも使えそうだから買うことにしよう」
それからご主人様が選んだフタつきの小さい寸胴鍋とミリアが選んだ底の浅い平鍋を購入し、家に持って帰った。
家につくと早速料理を開始する。
「ミリアは魚をおろしてもらえるか」
キッチンでご主人様がミリアに頼むと私の翻訳を待たずに調理に取りかかった。
魚関連のブラヒム語はかなり覚えたようだ。
ミリアが魚をさばいているあいだ、ご主人様はお湯を沸かしてゆで卵を作っていた。
そして、卵と一緒に少しだけ野菜を湯がいている。
ミリアは魚をさばき終わると、ご主人様の指示でレモンをしぼりはじめた。
ご主人様はゆがいた野菜をみじん切りにし、一昨日作ったマヨネーズ、つぶしたゆで卵、レモン果汁とあわせてソースを作った。
タルタルソースというらしく、今から作る料理にかけるものらしい。
「では、次はパンを粉々に砕く。こうして細かくちぎるんだ」
私はミリアに説明しようとして気が付いた。
「ご主人様、これはパン粉ですね」
「パン粉あんのか」
「チーズが買えないとき、代わりに振りかけます」
「……で、では、ミリア、頼む」
ご主人様はパン粉は手でちぎって作ると思っているのかしら?
私は疑問に想い、ご主人様に普通に作ってよいか聞いてみた。
「ご主人様、おろしがねでパンを削ってもよろしいですか?
そのほうが細かいパン粉が出来ますが......」
「へ? おろしがね?」
「はい。おろしがねです」
私がおろしがねを持って見せると、ご主人様は苦笑いしながらほほをかいた。
「はははは...... そ、それでいいぞ」
「わかりました」
どうやらご主人様は、パン粉の作りかたを知らなかったみたい。
久しぶりにご主人様の可愛いところが見れた気がして、思わずほっこりしてしまった。
私はミリアにパン粉を作るよう指示し、自分の料理に取り掛かった。
私は中華鍋に浅く水を張り、セイロをセットしてお湯を沸かす。
セイロの中にジャガイモとくき野菜を入れて蒸し始める。
これはご主人様に教わった蒸し料理で、先日作ったマヨネーズという調味料をかけると美味しいらしい。
ご主人様をふと見ると、新しい鍋にオリーブオイルを大量に入れて火にかけていた。
そして、ミリアから受け取った切り身に塩コショウし、小麦粉、溶き卵、パン粉をまぶして鍋の中にほおりこんだ。
次の瞬間、ジュワッという音がして、魚の切り身が鍋の中で茶色に変色しだした。
ご主人様は、魚の切り身が全体的に薄茶色に変わったのを確認すると、長めのさいばしで切り身を鍋から取り上げた。
そして薄茶色になった切り身を少しさますと、そこにタルタルソースをかけた。
ご主人様いわく、これはフライという料理方法らしい。
食卓にフィッシュフライ、蒸し野菜、スープ、パンが並べられ夕食が始まると、ミリアが早速フィッシュフライにかぶりつき、目を見開いてほおばった。
「お、お、お、おいしい、です」
ミリアが感動しているので、私もフィッシュフライをかじってみた。
すごくおいしい。特にこのタルタルソースが絶品だわ。
「美味しいです。こんな料理は食べたことがありません」
「私もありません」
私が感想を言うとセリーも追従した。
「魚を調理するには優れたやり方だ」
「さすがはご主人様です」
「ご主人様って本当にいろいろな料理を知っていますね。それに、感動的なおいしさです」
「そうか?俺はみんながよろこんでくれれば満足だ」
「ご主人様は、いつもすごくおいしいものを食べさせてくれます。うれしすぎて言葉では表せません」
「わたしもそうです」
「それならよかった。フライ系の料理でもう一つ作ってみたいものがあるので、明日の朝も楽しみにしててくれ」
「「はい」」
私とセリーはとびっきりの笑顔で返事した。
私とセリーがご主人様と話していると、横でミリアがしょんぼりしていた。
自分の分のふた切れを食べおわってしまったようだ。
ご主人様はそれに気づき、ミリアに声をかけた。
「俺の分も一つ食べるか?」
「ありがとうございます、です」
ご主人様が皿を差し出すと、ミリアはフィッシュフライを素早く奪ってかぶりついた。
『ミリア、前にも言ったけど、自分の分を食べ終わったからって人の分を物欲しそうに見てはいけませんよ。そんなことだと、そのうちご主人様に嫌われますよ』
『......ごめんなさい。すごくおいしかったので、なくなったら悲しくなって...... つい』
ミリアは反省っぽい言葉を言いつつも、ご主人様からもらったフィッシュフライをすぐに食べ終わり、また横でしょんぼりした。
私はセリーを見ると、あきれた感じのポーズをしてからミリアに皿を差し出したので、
私も同じように皿を差し出した。
すると、ミリアは私とセリーの皿からフィッシュフライを奪い取り、ニコニコしながらかぶりついた。
私はそのあと蒸し野菜のマヨネーズがけを食べてみた。
「ご主人様、これもおいしいです」
「これが蒸し料理ですか...... 野菜のあじが濃いですね」
私は素直に感動していたが、セリーはなにか考えながら食べていた。
「ああ。野菜を蒸すと、素材からあじが逃げないからな」
「あじが逃げない......?」
「そうだ。茹でたり炒めたりすると水や油のなかにあじがしみだすから、素材のあじが薄まるんだ。蒸した場合はしみだす場所がないからな」
「なるほど、だから濃く感じるんですね」
「そういうことだな」
ご主人様は説明しながらドヤ顔になった。
「このマヨネーズも野菜にあっていて、とてもおいしいです」
「そうだろう。マヨネーズはいろんな料理に合う万能調味料だからな。
そのままでもいいし、ひとてまかけるとあじが進化する。タルタルソースもその一つだ」
「他にもあるのですか?」
「ああ、マヨ醤油とかオーロラソースとか。それに、油の代わりにマヨネーズで炒めたりすることもできる」
「すごいです。それならマヨネーズは常備しましょう」
「いや、そんなに日持ちしないから常備は難しいな。それに、作るの大変だから......」
私はご主人様がマヨネーズを作っていた時のことを思いだして納得した。
「......確かに」
翌日も朝から迷宮探索。
ご主人様と朝のキスを交わしたあと、着替えてハルバーの十二階層へ飛んだが、魔物と1戦するとターレの十三階層へ移動した。
「ロクサーヌ、朝食用に豚バラ肉が欲しいので、ピッグホッグを探してくれ」
「わかりました」
私はにおいをかぐと、左のほうにかすかにピッグホッグのにおいがした。しかし、その前にラブシュラブの濃いにおいがする。
「ご主人様、左のほうにいそうですが、その前にラブシュラブが3匹います」
「では、ラブシュラブを倒して先に進もう」
それから3時間ほどターレの十三階層で狩りを行い、大量の板と少しの豚バラ肉を拾った。
早朝の探索を終えてクーラタルの冒険者ギルドに移動。そこからまちなかに出て野菜と卵、パンを買って家に帰った。
家に帰ると早速朝食の準備を開始。
ご主人様は昨日のオリーブオイルの鍋を火にかけて準備し、ミリアにパン粉を作らせた。
そして昨日のフィッシュフライと同様に、豚バラ肉に塩コショウし、小麦粉、溶き卵、パン粉をまぶして鍋の中にほおりこんだ。
そして、パン粉を付けて白くなった豚バラ肉が薄茶色に変色するまで揚げていた。
「ご主人様、これは豚バラフライですか?」
「いや、これはトンカツっていう料理だ。本当はあまからいソースをかけて食べるんだけど、残念ながら作りかたを知らないので、帝都かどこかで見つけたら買うつもりだ。
今日はレモン果汁をかけて、サッパリ味でいただこう」
ご主人様はチュウノウソース?と言う専用のソースが無いので今日のトンカツはいまひとつという評価みたいだったけど、とてもおいしかった。
魚以外には興味を示さないミリアでさえもよろこんで食べていた。
食事が終わり迷宮に行く準備をしながら...... ふと考えた。
ご主人様って、本当に食には妥協しないわね。
特にここ最近は、高い食材を購入したり、食材を求めてわざわざ迷宮を探索したりしているし。
ご主人様の料理はとてもおいしいので、私としてはうれしいのだけれど、誰かに見られたら喰い道楽なんて呼ばれるかもしれないわね。
そんなことを考えると、おかしくなってしまい、口元がにやけてしまう。
そして、ご主人様のことが可愛く思えてしまい、今まで以上に愛おしくなってしまう。
今から迷宮に入るのに、こんな顔してちゃ危ないわね。
集中しないと......
私が心を落ち着かせるよう静かに深呼吸していると、ご主人様から号令がかかった。
「よし、行くぞ」
その言葉を聞き、私はご主人様の出したゲートにむかって歩き始めた。